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8歳の旅回り。
獣人伯の館に到着。
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獣人の自治領に入ってから数日、僕たちはようやく領都に到着した。緑深い森の中、石造りの重厚な門をくぐると、獣人伯の館がその姿を現した。木と石が組み合わされた堅牢な造りに、見張り塔の上には弓を持った獣人の兵士たちが並ぶ。
「これが…獣人伯の館か」
思わず口にすると、隣を歩いていたエメイラが僕の肩に手をかけて答えた。
「警戒心いっぱいって顔だわね。でも、歓迎の匂いもするわ」
門が開かれ、中から出迎えに現れたのは堂々とした黒豹族の男。獣人伯の側近らしく、品位と野性を兼ね備えた雰囲気があった。
「リョウエスト殿、遠路ご足労いただき感謝いたす。伯はお待ちかねじゃ。どうぞお通りを」
僕が一礼すると、エメイラがひょいと肩越しに囁いた。
「ふふ、緊張してる?大丈夫、私がついてるよ」
通された大広間では、すでに数十名の獣人たちが待っていた。様々な種族、狼、虎、鹿、狐、熊……その視線の多くが好意的だった。けれど、中には露骨に鼻を鳴らす者もいる。
やがて、獣人伯…白銀の鬣をなびかせた老ライオン族の男が高座に現れ、ゆっくりと両手を広げて口を開いた。
「よくぞ来てくれた、リョウエスト。我ら獣人の地へ、よくぞ道を繋いでくれた」
この挨拶に、会場の半数以上が歓声をあげた。
「道を繋ぐ者だ!」
「伝承の再来だ!」
僕は戸惑いながらも軽く手を振る。が、その時、一部の獣人たちが立ち上がった。中でも、筋骨隆々の熊獣人が声を上げる。
「伝承?笑わせるな!ジレイガ一派とはぐれを拾っただけの若造が、『繋ぐ者』とは…俺たちの誇りを侮辱しているのか!」
その言葉に、空気が張りつめる。エメイラが立ちかけたが、僕はそっと手を上げて止めた。
「…彼らを『拾った』わけじゃない。ジレイガさん達は、僕たちが探し求めていた『道を繋ぐ力』を持っていたんだ」
ざわめく獣人たち。熊獣人は鼻を鳴らす。
「奴らは縄張り争いに敗れて去っていった、落ちこぼれだ」
「落ちこぼれ? では聞くけど口笛一つで百の小動物を呼び寄せ、最短経路で森を抜け、荷を目的地に届ける力は『落ちこぼれ』のもの?」
静まり返る広間。僕は一歩前へ進んで続ける。
「強さだけが獣人の価値じゃない。狩る力、動かす力、道を覚える力…それぞれの特性を活かすからこそ、種族は強くなれるんだ」
その時、獣人伯がゆっくりと手を叩いた。
「…見事だ。お主の言葉、我が心に深く響いた」
伯が立ち上がり、会場を見渡す。
「これよりの獣人は、『力』の定義を広く捉えねばならぬ。誇りとは、己の持つ能力を最大限に活かすこと。異種の才を尊ぶことだ」
やがて拍手が起こった。最初はちらほらだったが、やがてそれは力強いものとなっていった。
しかしまだ納得しない者がいた。
「うぬぼれるな、子供が!」
叫んだのは、先ほどの熊獣人。つかつかと僕に詰め寄る。
「貴様の口の上手さに誤魔化されるほど、俺は愚かではない」
その言葉に、エメイラがすっと僕の前に立った。
「じゃあ…少し体で分かってもらおうか。模擬戦、受ける?」
熊獣人は唸り声をあげ、腕をぶんと振りかぶる。だがその瞬間。
『誘眠』
エメイラの指先が光ったかと思うと、熊獣人はそのまま地面に崩れ落ち、ぐーぐーと寝息を立て始めた。
「ただ強いだけじゃ…だめだって、言ったでしょ」
エメイラが肩をすくめると、周囲から爆笑が起こった。獣人伯も笑いながらうなずく。
「異種族の術もまた力。よい教訓となったな」
こうして僕は、獣人伯の館に逗留することになった。
獣人伯の館での生活が始まって三日目。僕たちは館内の一室を借りて滞在していた。朝から火の民の護衛団は屋外で訓練をしており、ミザーリは早くも三人の狼獣人と手合わせして打ち解けていた。ナビは窓辺で日向ぼっこ、青の技たちは周囲の警戒に余念がない。
「意外と……いいところだな」
僕がそう呟くと、エメイラが後ろから首に肘をかけてきた。
「ほら見て。あんなに警戒してたくせに、もう馴染んでるわね」
「エメイラ、それ苦しい…!」
「んふふ」
獣人伯の配慮もあり、各部族の代表者たちとの交流も進んでいた。鹿族の長老は植物の育て方に詳しく、僕の甜菜栽培に興味津々。狐族の青年は、光触媒の消臭瓶を欲しがっていた。
そんななか、ジレイガと彼の一派10人も館に呼ばれた。僕が来ると知った獣人伯がスサン商会に頼み、来させたのだと言う。数年前彼らが難民として漂流していたのを拾い上げたのが僕だった。物流の要として僕らが重用し始めたのは彼らの力を僕が知ったからだ。今では難民できた者の他に獣人の移住者が増えて150人はリョウエスト商会とスサン商会で働いている。
「リョウ様…ありがとうございます。故郷に一時帰ることができました」
ジレイガは館の広間で深く頭を下げた。彼の後ろには、鹿耳の女、狼男、猫族の子と様々な顔が並ぶ。皆、僕と一緒に苦難を生き抜いてきた者たちだ。
「僕は、君たちがここで胸を張れるようにしたいだけさ。変わらないよ」
その言葉に、ジレイガは唇を噛んで頷いた。
「よく来た。ジレイガ達よ。お前達がスサン商会、ならびにリョウエスト商会でどのような仕事をしているのか伝えて欲しい。どのように役にたっているのだ?」
獣人伯は彼らに問いかけた。
「これが…獣人伯の館か」
思わず口にすると、隣を歩いていたエメイラが僕の肩に手をかけて答えた。
「警戒心いっぱいって顔だわね。でも、歓迎の匂いもするわ」
門が開かれ、中から出迎えに現れたのは堂々とした黒豹族の男。獣人伯の側近らしく、品位と野性を兼ね備えた雰囲気があった。
「リョウエスト殿、遠路ご足労いただき感謝いたす。伯はお待ちかねじゃ。どうぞお通りを」
僕が一礼すると、エメイラがひょいと肩越しに囁いた。
「ふふ、緊張してる?大丈夫、私がついてるよ」
通された大広間では、すでに数十名の獣人たちが待っていた。様々な種族、狼、虎、鹿、狐、熊……その視線の多くが好意的だった。けれど、中には露骨に鼻を鳴らす者もいる。
やがて、獣人伯…白銀の鬣をなびかせた老ライオン族の男が高座に現れ、ゆっくりと両手を広げて口を開いた。
「よくぞ来てくれた、リョウエスト。我ら獣人の地へ、よくぞ道を繋いでくれた」
この挨拶に、会場の半数以上が歓声をあげた。
「道を繋ぐ者だ!」
「伝承の再来だ!」
僕は戸惑いながらも軽く手を振る。が、その時、一部の獣人たちが立ち上がった。中でも、筋骨隆々の熊獣人が声を上げる。
「伝承?笑わせるな!ジレイガ一派とはぐれを拾っただけの若造が、『繋ぐ者』とは…俺たちの誇りを侮辱しているのか!」
その言葉に、空気が張りつめる。エメイラが立ちかけたが、僕はそっと手を上げて止めた。
「…彼らを『拾った』わけじゃない。ジレイガさん達は、僕たちが探し求めていた『道を繋ぐ力』を持っていたんだ」
ざわめく獣人たち。熊獣人は鼻を鳴らす。
「奴らは縄張り争いに敗れて去っていった、落ちこぼれだ」
「落ちこぼれ? では聞くけど口笛一つで百の小動物を呼び寄せ、最短経路で森を抜け、荷を目的地に届ける力は『落ちこぼれ』のもの?」
静まり返る広間。僕は一歩前へ進んで続ける。
「強さだけが獣人の価値じゃない。狩る力、動かす力、道を覚える力…それぞれの特性を活かすからこそ、種族は強くなれるんだ」
その時、獣人伯がゆっくりと手を叩いた。
「…見事だ。お主の言葉、我が心に深く響いた」
伯が立ち上がり、会場を見渡す。
「これよりの獣人は、『力』の定義を広く捉えねばならぬ。誇りとは、己の持つ能力を最大限に活かすこと。異種の才を尊ぶことだ」
やがて拍手が起こった。最初はちらほらだったが、やがてそれは力強いものとなっていった。
しかしまだ納得しない者がいた。
「うぬぼれるな、子供が!」
叫んだのは、先ほどの熊獣人。つかつかと僕に詰め寄る。
「貴様の口の上手さに誤魔化されるほど、俺は愚かではない」
その言葉に、エメイラがすっと僕の前に立った。
「じゃあ…少し体で分かってもらおうか。模擬戦、受ける?」
熊獣人は唸り声をあげ、腕をぶんと振りかぶる。だがその瞬間。
『誘眠』
エメイラの指先が光ったかと思うと、熊獣人はそのまま地面に崩れ落ち、ぐーぐーと寝息を立て始めた。
「ただ強いだけじゃ…だめだって、言ったでしょ」
エメイラが肩をすくめると、周囲から爆笑が起こった。獣人伯も笑いながらうなずく。
「異種族の術もまた力。よい教訓となったな」
こうして僕は、獣人伯の館に逗留することになった。
獣人伯の館での生活が始まって三日目。僕たちは館内の一室を借りて滞在していた。朝から火の民の護衛団は屋外で訓練をしており、ミザーリは早くも三人の狼獣人と手合わせして打ち解けていた。ナビは窓辺で日向ぼっこ、青の技たちは周囲の警戒に余念がない。
「意外と……いいところだな」
僕がそう呟くと、エメイラが後ろから首に肘をかけてきた。
「ほら見て。あんなに警戒してたくせに、もう馴染んでるわね」
「エメイラ、それ苦しい…!」
「んふふ」
獣人伯の配慮もあり、各部族の代表者たちとの交流も進んでいた。鹿族の長老は植物の育て方に詳しく、僕の甜菜栽培に興味津々。狐族の青年は、光触媒の消臭瓶を欲しがっていた。
そんななか、ジレイガと彼の一派10人も館に呼ばれた。僕が来ると知った獣人伯がスサン商会に頼み、来させたのだと言う。数年前彼らが難民として漂流していたのを拾い上げたのが僕だった。物流の要として僕らが重用し始めたのは彼らの力を僕が知ったからだ。今では難民できた者の他に獣人の移住者が増えて150人はリョウエスト商会とスサン商会で働いている。
「リョウ様…ありがとうございます。故郷に一時帰ることができました」
ジレイガは館の広間で深く頭を下げた。彼の後ろには、鹿耳の女、狼男、猫族の子と様々な顔が並ぶ。皆、僕と一緒に苦難を生き抜いてきた者たちだ。
「僕は、君たちがここで胸を張れるようにしたいだけさ。変わらないよ」
その言葉に、ジレイガは唇を噛んで頷いた。
「よく来た。ジレイガ達よ。お前達がスサン商会、ならびにリョウエスト商会でどのような仕事をしているのか伝えて欲しい。どのように役にたっているのだ?」
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