【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
389 / 689
8歳の旅回り。

獣人伯の館に到着。

しおりを挟む
 獣人の自治領に入ってから数日、僕たちはようやく領都に到着した。緑深い森の中、石造りの重厚な門をくぐると、獣人伯の館がその姿を現した。木と石が組み合わされた堅牢な造りに、見張り塔の上には弓を持った獣人の兵士たちが並ぶ。

「これが…獣人伯の館か」

 思わず口にすると、隣を歩いていたエメイラが僕の肩に手をかけて答えた。

「警戒心いっぱいって顔だわね。でも、歓迎の匂いもするわ」

 門が開かれ、中から出迎えに現れたのは堂々とした黒豹族の男。獣人伯の側近らしく、品位と野性を兼ね備えた雰囲気があった。

「リョウエスト殿、遠路ご足労いただき感謝いたす。伯はお待ちかねじゃ。どうぞお通りを」

 僕が一礼すると、エメイラがひょいと肩越しに囁いた。

「ふふ、緊張してる?大丈夫、私がついてるよ」

 通された大広間では、すでに数十名の獣人たちが待っていた。様々な種族、狼、虎、鹿、狐、熊……その視線の多くが好意的だった。けれど、中には露骨に鼻を鳴らす者もいる。

 やがて、獣人伯…白銀の鬣をなびかせた老ライオン族の男が高座に現れ、ゆっくりと両手を広げて口を開いた。

「よくぞ来てくれた、リョウエスト。我ら獣人の地へ、よくぞ道を繋いでくれた」

 この挨拶に、会場の半数以上が歓声をあげた。

「道を繋ぐ者だ!」
「伝承の再来だ!」

 僕は戸惑いながらも軽く手を振る。が、その時、一部の獣人たちが立ち上がった。中でも、筋骨隆々の熊獣人が声を上げる。

「伝承?笑わせるな!ジレイガ一派とはぐれを拾っただけの若造が、『繋ぐ者』とは…俺たちの誇りを侮辱しているのか!」

 その言葉に、空気が張りつめる。エメイラが立ちかけたが、僕はそっと手を上げて止めた。

「…彼らを『拾った』わけじゃない。ジレイガさん達は、僕たちが探し求めていた『道を繋ぐ力』を持っていたんだ」

 ざわめく獣人たち。熊獣人は鼻を鳴らす。

「奴らは縄張り争いに敗れて去っていった、落ちこぼれだ」
「落ちこぼれ? では聞くけど口笛一つで百の小動物を呼び寄せ、最短経路で森を抜け、荷を目的地に届ける力は『落ちこぼれ』のもの?」

 静まり返る広間。僕は一歩前へ進んで続ける。

「強さだけが獣人の価値じゃない。狩る力、動かす力、道を覚える力…それぞれの特性を活かすからこそ、種族は強くなれるんだ」

 その時、獣人伯がゆっくりと手を叩いた。

「…見事だ。お主の言葉、我が心に深く響いた」

 伯が立ち上がり、会場を見渡す。

「これよりの獣人は、『力』の定義を広く捉えねばならぬ。誇りとは、己の持つ能力を最大限に活かすこと。異種の才を尊ぶことだ」

 やがて拍手が起こった。最初はちらほらだったが、やがてそれは力強いものとなっていった。

 しかしまだ納得しない者がいた。

「うぬぼれるな、子供が!」

 叫んだのは、先ほどの熊獣人。つかつかと僕に詰め寄る。

「貴様の口の上手さに誤魔化されるほど、俺は愚かではない」

 その言葉に、エメイラがすっと僕の前に立った。

「じゃあ…少し体で分かってもらおうか。模擬戦、受ける?」

 熊獣人は唸り声をあげ、腕をぶんと振りかぶる。だがその瞬間。

誘眠スリープ

 エメイラの指先が光ったかと思うと、熊獣人はそのまま地面に崩れ落ち、ぐーぐーと寝息を立て始めた。

「ただ強いだけじゃ…だめだって、言ったでしょ」

 エメイラが肩をすくめると、周囲から爆笑が起こった。獣人伯も笑いながらうなずく。

「異種族の術もまた力。よい教訓となったな」

 こうして僕は、獣人伯の館に逗留することになった。

 獣人伯の館での生活が始まって三日目。僕たちは館内の一室を借りて滞在していた。朝から火の民の護衛団は屋外で訓練をしており、ミザーリは早くも三人の狼獣人と手合わせして打ち解けていた。ナビは窓辺で日向ぼっこ、青の技ブルーアーツたちは周囲の警戒に余念がない。

「意外と……いいところだな」

 僕がそう呟くと、エメイラが後ろから首に肘をかけてきた。

「ほら見て。あんなに警戒してたくせに、もう馴染んでるわね」
「エメイラ、それ苦しい…!」
「んふふ」

 獣人伯の配慮もあり、各部族の代表者たちとの交流も進んでいた。鹿族の長老は植物の育て方に詳しく、僕の甜菜栽培に興味津々。狐族の青年は、光触媒の消臭瓶を欲しがっていた。

 そんななか、ジレイガと彼の一派10人も館に呼ばれた。僕が来ると知った獣人伯がスサン商会に頼み、来させたのだと言う。数年前彼らが難民として漂流していたのを拾い上げたのが僕だった。物流の要として僕らが重用し始めたのは彼らの力を僕が知ったからだ。今では難民できた者の他に獣人の移住者が増えて150人はリョウエスト商会とスサン商会で働いている。

「リョウ様…ありがとうございます。故郷に一時帰ることができました」

 ジレイガは館の広間で深く頭を下げた。彼の後ろには、鹿耳の女、狼男、猫族の子と様々な顔が並ぶ。皆、僕と一緒に苦難を生き抜いてきた者たちだ。

「僕は、君たちがここで胸を張れるようにしたいだけさ。変わらないよ」

 その言葉に、ジレイガは唇を噛んで頷いた。

「よく来た。ジレイガ達よ。お前達がスサン商会、ならびにリョウエスト商会でどのような仕事をしているのか伝えて欲しい。どのように役にたっているのだ?」

 獣人伯は彼らに問いかけた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜

naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。 ※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。 素材利用 ・森の奥の隠里様 ・みにくる様

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...