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8歳の旅回り。
道を繋ぐもの。
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「はい。我々はリョウエスト商会、並びにスサン商会の荷をヤク牛や大狼を使って運んでいます。森を抜け、荒地を抜け王都や近隣の領地に物を運んで、荷を届ける。それが仕事です」
ジレイガは背筋を伸ばして語った。
「立派にやっておるな」
獣人伯は満足そうに頷く。
「いえ。我々だけでは到底そこまではやれませんでした。ドワーフが荷車を製作し、荒地を整備し、エルフが森の道を開き、我々が荷を運ぶ。そうやって協働してやっております」
「ほう、誇らないのだな」
「我らの誇りは荷を安全に届け、お客様に笑顔になってもらう事です」
「なるほど。後ほど詳しく聞かせて欲しい。興味を非常にそそられた」
「はい」
またしても一部の獣人がざわついた
「まだ受け入れんつもりか……!」
「獣人の誇りをどこへやった!」
反発の声は根強く獣人伯の前でも議論が巻き起こる。そこで僕はあえて言葉を選ばず、率直に口を開いた。
「あなたたちは、『誇り』という言葉で、自分の視野を狭めてない?」
獣人たちがざわついた。
「誇りは大事。でも、それは自分たちの過去にすがるための言葉じゃない。未来に向けて、どう変わるかを示す言葉だよ」
「未来…だと?」
狐族の年配者が眉をひそめた。
「うん。ジレイガたちは、過去に縛られず、新しい生き方を選ぼうとしてる。だったら、僕たちがすることは、蔑むことじゃなくて手を貸すことじゃないの?」
広間が静まり返る。そのとき、獣人伯が重々しく立ち上がった。
「我が誇りは、かつて族の長たちが互いを信じ、手を取り合った時代にある。リョウエストの言葉、それを思い出させてくれた」
「伯……」
「若者が語る未来こそ、耳を傾けるべきだ」
と、伯は続ける。
「我ら獣人の未来は、腕力だけでは切り拓けぬ。異なる視点、異なる知恵が必要だ。それこそが『道を繋ぐ者』の力。そうであろう?」
伯の言葉に、ついに残る獣人たちも無言でうなずいた。中には俯いて涙を流す者もいた。
その晩、館では小さな宴が開かれた。囲炉裏を囲みながら、獣人の歌や舞、異種族の物語が披露され、僕はひとつの輪の中で静かに温かい空気を感じていた。
「ねえ、リョウ」
隣で、エメイラが僕の肩に頭を乗せる。
「今日のあなた…すごかった。たぶん、あの場にいた全員の心を動かしたわよ」
「そうかな」
「そうよ。だって、私も泣きそうだったもの」
炉の火が赤々と燃え、狩猟肉と香草の煮込みが振る舞われる。獣人たちの喧騒と笑い声の中で、僕はジレイガと向き合っていた。
「お前が……『道を繋ぐもの』だと、本気で信じている奴も多い」
ジレイガが静かに口を開いた。
「……でも、俺は信じる理由がある。あの時、俺たちを拾ったのは、お前の『力』じゃない。言葉だった。目を見て、俺たちの価値を見抜いた」
「ジレイガ…」
僕は杯を置いた。
「強さだけでは、世界は変わらない。あなた達が荷を届けたことで、いくつもの村が救われた。それは『速さ』という強さ。間違ってない」
獣人伯が立ち上がり、重々しく口を開いた。
「よくぞ言った、リョウエスト君。お主の言葉はこの身にも染み入る。我らの時代は、爪と牙こそが力だった…だが、それだけではもう、守れぬ」
「獣人たちは、それぞれ異なる能力を持っています」
僕はみなを見渡した。
「嗅覚、聴覚、脚力、魔力への適応、言葉にできないほどの特性がある。それをどう活かすかが、未来を決めるんです」
「理屈じゃわかっててもな……」
昼間に難癖をつけてきた若い獣人がぼそりと呟く。
「だったら試してみようか?」
エメイラがワインをくいっと飲み干し、腰を上げた。
「模擬戦でもすれば納得する?」
「はっ、エルフの魔術師に戦いを挑むほど、俺は酔ってないぜ」
「酔ってなくても遅いよ」
エメイラが軽く指を鳴らすと、彼はふっと崩れ落ちて床で眠った。魔術で眠らされたのだ。
「ちょっとは頭も使おうよ。強さってのは、体力だけじゃないんだから」
館に静寂が走り、獣人たちは笑いとともに少しばかりの尊敬をエメイラに向けた。
「ふふ、いつもこうやって寝かしつけてるの?」
僕が笑うと、エメイラは肩をすくめて答えた。
「気難しい子には魔術が一番」
その後、獣人伯が改めて立ち上がり、高らかに宣言した。
「皆、聞け。獣人たちよ。我々はこれより、『力の時代』から『能力の時代』へと歩を進める。ジレイガたちはその先駆け。そして、我らの盟友となったリョウエストこそ、『道を繋ぐ者』にふさわしい!」
一斉に響く喝采と足踏みの音。その中心で、僕はこっそりジレイガに聞いた。
「……あの、ジレイガ。『道を繋ぐもの』って、伝承ではどんな存在なんの?」
ジレイガは目を細め、こう言った。
「混沌を越えて民を繋ぎ、種を超えて橋をかける者。時に雷のごとく、時に風のごとく。戦わずして道を開く者…だそうだ」
「それ、僕にはちょっと荷が重いかも」
「…そうか? もうやってるじゃねぇか、お前」
ジレイガの言葉に、僕は黙って笑った。夜は更けてゆく。だが、心の灯火はなお消えない。
ジレイガは背筋を伸ばして語った。
「立派にやっておるな」
獣人伯は満足そうに頷く。
「いえ。我々だけでは到底そこまではやれませんでした。ドワーフが荷車を製作し、荒地を整備し、エルフが森の道を開き、我々が荷を運ぶ。そうやって協働してやっております」
「ほう、誇らないのだな」
「我らの誇りは荷を安全に届け、お客様に笑顔になってもらう事です」
「なるほど。後ほど詳しく聞かせて欲しい。興味を非常にそそられた」
「はい」
またしても一部の獣人がざわついた
「まだ受け入れんつもりか……!」
「獣人の誇りをどこへやった!」
反発の声は根強く獣人伯の前でも議論が巻き起こる。そこで僕はあえて言葉を選ばず、率直に口を開いた。
「あなたたちは、『誇り』という言葉で、自分の視野を狭めてない?」
獣人たちがざわついた。
「誇りは大事。でも、それは自分たちの過去にすがるための言葉じゃない。未来に向けて、どう変わるかを示す言葉だよ」
「未来…だと?」
狐族の年配者が眉をひそめた。
「うん。ジレイガたちは、過去に縛られず、新しい生き方を選ぼうとしてる。だったら、僕たちがすることは、蔑むことじゃなくて手を貸すことじゃないの?」
広間が静まり返る。そのとき、獣人伯が重々しく立ち上がった。
「我が誇りは、かつて族の長たちが互いを信じ、手を取り合った時代にある。リョウエストの言葉、それを思い出させてくれた」
「伯……」
「若者が語る未来こそ、耳を傾けるべきだ」
と、伯は続ける。
「我ら獣人の未来は、腕力だけでは切り拓けぬ。異なる視点、異なる知恵が必要だ。それこそが『道を繋ぐ者』の力。そうであろう?」
伯の言葉に、ついに残る獣人たちも無言でうなずいた。中には俯いて涙を流す者もいた。
その晩、館では小さな宴が開かれた。囲炉裏を囲みながら、獣人の歌や舞、異種族の物語が披露され、僕はひとつの輪の中で静かに温かい空気を感じていた。
「ねえ、リョウ」
隣で、エメイラが僕の肩に頭を乗せる。
「今日のあなた…すごかった。たぶん、あの場にいた全員の心を動かしたわよ」
「そうかな」
「そうよ。だって、私も泣きそうだったもの」
炉の火が赤々と燃え、狩猟肉と香草の煮込みが振る舞われる。獣人たちの喧騒と笑い声の中で、僕はジレイガと向き合っていた。
「お前が……『道を繋ぐもの』だと、本気で信じている奴も多い」
ジレイガが静かに口を開いた。
「……でも、俺は信じる理由がある。あの時、俺たちを拾ったのは、お前の『力』じゃない。言葉だった。目を見て、俺たちの価値を見抜いた」
「ジレイガ…」
僕は杯を置いた。
「強さだけでは、世界は変わらない。あなた達が荷を届けたことで、いくつもの村が救われた。それは『速さ』という強さ。間違ってない」
獣人伯が立ち上がり、重々しく口を開いた。
「よくぞ言った、リョウエスト君。お主の言葉はこの身にも染み入る。我らの時代は、爪と牙こそが力だった…だが、それだけではもう、守れぬ」
「獣人たちは、それぞれ異なる能力を持っています」
僕はみなを見渡した。
「嗅覚、聴覚、脚力、魔力への適応、言葉にできないほどの特性がある。それをどう活かすかが、未来を決めるんです」
「理屈じゃわかっててもな……」
昼間に難癖をつけてきた若い獣人がぼそりと呟く。
「だったら試してみようか?」
エメイラがワインをくいっと飲み干し、腰を上げた。
「模擬戦でもすれば納得する?」
「はっ、エルフの魔術師に戦いを挑むほど、俺は酔ってないぜ」
「酔ってなくても遅いよ」
エメイラが軽く指を鳴らすと、彼はふっと崩れ落ちて床で眠った。魔術で眠らされたのだ。
「ちょっとは頭も使おうよ。強さってのは、体力だけじゃないんだから」
館に静寂が走り、獣人たちは笑いとともに少しばかりの尊敬をエメイラに向けた。
「ふふ、いつもこうやって寝かしつけてるの?」
僕が笑うと、エメイラは肩をすくめて答えた。
「気難しい子には魔術が一番」
その後、獣人伯が改めて立ち上がり、高らかに宣言した。
「皆、聞け。獣人たちよ。我々はこれより、『力の時代』から『能力の時代』へと歩を進める。ジレイガたちはその先駆け。そして、我らの盟友となったリョウエストこそ、『道を繋ぐ者』にふさわしい!」
一斉に響く喝采と足踏みの音。その中心で、僕はこっそりジレイガに聞いた。
「……あの、ジレイガ。『道を繋ぐもの』って、伝承ではどんな存在なんの?」
ジレイガは目を細め、こう言った。
「混沌を越えて民を繋ぎ、種を超えて橋をかける者。時に雷のごとく、時に風のごとく。戦わずして道を開く者…だそうだ」
「それ、僕にはちょっと荷が重いかも」
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