394 / 806
8歳の旅回り。
たこ焼き完成。
朝、まだ太陽が昇りきる前。潮の香りが街を包み、波音が心地よく響く中、僕はナビを肩に乗せて市場を歩いていた。ストークとエメイラ、ミザーリが共だ。
「さすが水竜人の街、魚介が豊富だね…お、これはツバメイワシ? こっちは…赤エビか」
早朝から漁師たちが網から魚を外し、威勢のいい掛け声と共に魚を並べていた。どれも鮮度抜群で、目が澄んでいる。
けれど、魚介をひととおり見て回った僕は、あることに気づいて立ち止まった。
「…あれ?タコがない。カニも、見かけなかったような」
小声で呟き、ナビに問う。
「なあナビ、さっきからカニとタコ、全然見ないよな?」
「にゃ、にゃあ」
「そうだね、見てないよね」
「タコとカニってなんなの?」
「こんなの」
僕は腰のスケッチ帳を取り出し、絵を描いた。小さなタコと、丸いカニ。
「見た事ないわね」
「そうかあ。美味しいのにな」
通りすがりの漁師にそれを見せる。
「これ、見たことある?」
「ん? なんだこれ……ああ、こいつらか。今日も網にかかってたが、邪魔になるんで捨てちまったよ。誰も食わんしな」
「えええ…」
僕の驚いた声に、近くの商人も振り返る。
「カニもタコも、捨てられてる……?」
言葉を失いかけたその時、港に戻ったばかりの漁師たちの中に、一人が大きな籠を持っていた。中には、まだ生きたタコと数匹のカニが!
「すみません、それ、もらえませんか?」
「え?こんなもんでいいのかい?ほらよ」
嬉々として受け取った僕は、それをナビと共に料理ギルドへと走った。
「タコとカニを料理として登録したいんです!」
ギルドの調理登録係が目を丸くする。
「……タコ?カニ?食べるの?本当に?」
「食べます!ちょっと調理道具が必要ですが…鍛冶場から鉄板をもらえますか?」
「え、ええ…SSランクの王命預かるご身分ですから、断る理由はありませんが…近所の鍛冶屋から持ってきます」
鉄板を手にした僕は、その場で錬金術を用いて、たこ焼き器に近い形に変形させた。エメイラも興味深そうに見る。
「リョウ、なにそれ?」
「たこ焼き器っていうんだ。タコを刻んで、小麦粉の生地で丸く包んで焼くんだよ」
タコの下処理を済ませ、小麦粉と出汁、刻みネギを混ぜた生地に入れ、じゅうじゅうと鉄板に流し込む。周囲の人々が集まってきた。
「おお……良い匂いがする!」
「形が……丸くなっていく! まるで魔法だ!」
「うん、これはもう魔法だよ」
僕は笑った。
そして、第一号のたこ焼きが完成した。
「さあ、どうぞ! これが“たこ焼き”です!」
水竜人の商人が恐る恐る口に入れると――
「…うまい! これは…海の香りと、香ばしい小麦…まったく新しい味だ!」
場がどよめく中、僕はストークが書いてくれたギルド登録用紙を出した。
「これを新種の料理として登録してください。名は『たこ焼き』。あと…特別条件があります」
「条件?」
「この料理を用いた商売を許可制にし、使用料は徴収してもいい。ただし、水竜人には格安の使用料で提供してください。彼らの手でこの料理を広めてもらいたいんです」
料理ギルドの長が頷く。
「…わかりました。特例として登録します。これがまた一つ、水の民の誇りになりますな。早速商業ギルド長も呼びます」
一口食べるとナビがくるりと舞いながら鳴いた。
「にゃーん」
「…美味しいんだねね
たこ焼きの試食がひと段落すると、市場の中心に自然と人だかりができていた。商人、料理人、水竜人、観光客まで、皆が興味津々でこちらを見ている。
「…この『たこ焼き』、材料はシンプルなのに奥深い味がするな。これは売れる」
さっきたこ焼きを食べた水竜人の商人が、鼻息荒く僕に詰め寄る。
「リョウエスト殿、うちの店でこれ、すぐに商品化していいか?」
「ちょ、ちょっと待って。料理ギルドとの正式な登録が必要だし、使用料についても水竜人以外は通常の扱いになります」
「ぐぬぬ…まあ、わかった。じゃあ今すぐ水竜人の料理人仲間に声かける! これは逸材だ!」
彼は飛ぶように市場を走り去っていった。
その様子を見ていたギルドの料理長と連れて来られた商業ギルド長が目を細めた。
「やれやれ、これはまた王都あたりで流行りそうなものを……まさか異種族の旅の途中で、こんな料理が誕生するとは」
「偶然ですけど、出会えてよかった。食べ物って文化そのものです」
と、そこに別の商人が口を挟んできた。
「タコはともかく……この“カニ”ってやつ、どうやって食うんだ? 甲羅が硬すぎてどうしようもねえだろ?」
「そこも、ちょっと工夫すればいけますよ」
僕は市場の調理場を借り、茹でたカニを半分に割って、中の身を取り出して見せた。
「こうして、脚の関節ごとに折って中身を吸い出すんです。こっちの胴体の味噌も……はい、一口」
ナビが舌を出していたので、少し分けてやる。ナビは飛び上がって喜んだ。エメイラも口を開けたのでカニの身を入れてあげる。
「えっ…!なにこれ、美味しい!」
周囲がどよめいた。
「おおっ!本当に食えるのか、この硬いヤツ……!」
「信じられん。食材の宝庫なのに、ずっと見落としてたとは……」
その時、観光に来ていたらしい水の民の子供たちが近づいてきて、僕に質問した。
「ねえねえ、リョウエスト様。なんでこんな食べ方、知ってるの?」
「えっとね、昔、夢の中で…海の中で暮らす人たちから教わったんだ。『波を分ける者』って、呼ばれてるからかな」
「わー…ほんとに伝説の人なんだね!」
にこにこと見上げる顔に、僕は少し照れて笑った。
「さすが水竜人の街、魚介が豊富だね…お、これはツバメイワシ? こっちは…赤エビか」
早朝から漁師たちが網から魚を外し、威勢のいい掛け声と共に魚を並べていた。どれも鮮度抜群で、目が澄んでいる。
けれど、魚介をひととおり見て回った僕は、あることに気づいて立ち止まった。
「…あれ?タコがない。カニも、見かけなかったような」
小声で呟き、ナビに問う。
「なあナビ、さっきからカニとタコ、全然見ないよな?」
「にゃ、にゃあ」
「そうだね、見てないよね」
「タコとカニってなんなの?」
「こんなの」
僕は腰のスケッチ帳を取り出し、絵を描いた。小さなタコと、丸いカニ。
「見た事ないわね」
「そうかあ。美味しいのにな」
通りすがりの漁師にそれを見せる。
「これ、見たことある?」
「ん? なんだこれ……ああ、こいつらか。今日も網にかかってたが、邪魔になるんで捨てちまったよ。誰も食わんしな」
「えええ…」
僕の驚いた声に、近くの商人も振り返る。
「カニもタコも、捨てられてる……?」
言葉を失いかけたその時、港に戻ったばかりの漁師たちの中に、一人が大きな籠を持っていた。中には、まだ生きたタコと数匹のカニが!
「すみません、それ、もらえませんか?」
「え?こんなもんでいいのかい?ほらよ」
嬉々として受け取った僕は、それをナビと共に料理ギルドへと走った。
「タコとカニを料理として登録したいんです!」
ギルドの調理登録係が目を丸くする。
「……タコ?カニ?食べるの?本当に?」
「食べます!ちょっと調理道具が必要ですが…鍛冶場から鉄板をもらえますか?」
「え、ええ…SSランクの王命預かるご身分ですから、断る理由はありませんが…近所の鍛冶屋から持ってきます」
鉄板を手にした僕は、その場で錬金術を用いて、たこ焼き器に近い形に変形させた。エメイラも興味深そうに見る。
「リョウ、なにそれ?」
「たこ焼き器っていうんだ。タコを刻んで、小麦粉の生地で丸く包んで焼くんだよ」
タコの下処理を済ませ、小麦粉と出汁、刻みネギを混ぜた生地に入れ、じゅうじゅうと鉄板に流し込む。周囲の人々が集まってきた。
「おお……良い匂いがする!」
「形が……丸くなっていく! まるで魔法だ!」
「うん、これはもう魔法だよ」
僕は笑った。
そして、第一号のたこ焼きが完成した。
「さあ、どうぞ! これが“たこ焼き”です!」
水竜人の商人が恐る恐る口に入れると――
「…うまい! これは…海の香りと、香ばしい小麦…まったく新しい味だ!」
場がどよめく中、僕はストークが書いてくれたギルド登録用紙を出した。
「これを新種の料理として登録してください。名は『たこ焼き』。あと…特別条件があります」
「条件?」
「この料理を用いた商売を許可制にし、使用料は徴収してもいい。ただし、水竜人には格安の使用料で提供してください。彼らの手でこの料理を広めてもらいたいんです」
料理ギルドの長が頷く。
「…わかりました。特例として登録します。これがまた一つ、水の民の誇りになりますな。早速商業ギルド長も呼びます」
一口食べるとナビがくるりと舞いながら鳴いた。
「にゃーん」
「…美味しいんだねね
たこ焼きの試食がひと段落すると、市場の中心に自然と人だかりができていた。商人、料理人、水竜人、観光客まで、皆が興味津々でこちらを見ている。
「…この『たこ焼き』、材料はシンプルなのに奥深い味がするな。これは売れる」
さっきたこ焼きを食べた水竜人の商人が、鼻息荒く僕に詰め寄る。
「リョウエスト殿、うちの店でこれ、すぐに商品化していいか?」
「ちょ、ちょっと待って。料理ギルドとの正式な登録が必要だし、使用料についても水竜人以外は通常の扱いになります」
「ぐぬぬ…まあ、わかった。じゃあ今すぐ水竜人の料理人仲間に声かける! これは逸材だ!」
彼は飛ぶように市場を走り去っていった。
その様子を見ていたギルドの料理長と連れて来られた商業ギルド長が目を細めた。
「やれやれ、これはまた王都あたりで流行りそうなものを……まさか異種族の旅の途中で、こんな料理が誕生するとは」
「偶然ですけど、出会えてよかった。食べ物って文化そのものです」
と、そこに別の商人が口を挟んできた。
「タコはともかく……この“カニ”ってやつ、どうやって食うんだ? 甲羅が硬すぎてどうしようもねえだろ?」
「そこも、ちょっと工夫すればいけますよ」
僕は市場の調理場を借り、茹でたカニを半分に割って、中の身を取り出して見せた。
「こうして、脚の関節ごとに折って中身を吸い出すんです。こっちの胴体の味噌も……はい、一口」
ナビが舌を出していたので、少し分けてやる。ナビは飛び上がって喜んだ。エメイラも口を開けたのでカニの身を入れてあげる。
「えっ…!なにこれ、美味しい!」
周囲がどよめいた。
「おおっ!本当に食えるのか、この硬いヤツ……!」
「信じられん。食材の宝庫なのに、ずっと見落としてたとは……」
その時、観光に来ていたらしい水の民の子供たちが近づいてきて、僕に質問した。
「ねえねえ、リョウエスト様。なんでこんな食べ方、知ってるの?」
「えっとね、昔、夢の中で…海の中で暮らす人たちから教わったんだ。『波を分ける者』って、呼ばれてるからかな」
「わー…ほんとに伝説の人なんだね!」
にこにこと見上げる顔に、僕は少し照れて笑った。
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~
gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。
なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。
一人称視点、独り言多め、能天気となっております。
なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。
ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A
ご指摘あればどんどん仰ってください。
※2017/8/29 連載再開しました!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~
九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます!
七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。
しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。
食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。
孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。
これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。