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8歳の旅回り。
三角航路の構想。
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その後、港の鍛冶場からさらに鉄板をもらって、簡易な『たこ焼き屋台』をいくつか製作し、市場の一角に設置した。材料の配分表、作り方、焼き方、味付けまで、詳細に紙にまとめ、水竜人の若者たちに配布した。
「これは商売になります。水の民の新しい収入源になるかもしれませんよ」
「うむ、これは確かに――特に若者が面白がってやりたがるだろうな」
料理ギルド、商業ギルドの長が納得し、商業登録と許可がその日のうちに済んだ。
夕方、市場に戻ってくると、既に二つの屋台が営業を始めていた。たこ焼きの香ばしい香りが風に乗って町中に広がっている。
「リョウエスト様!これ、さっきの紙にあったレシピ通りにやってみました!」
水竜人の青年が笑顔で焼き器の前に立っていた。
「すごく楽しいです、これ!商人の血が騒ぐって感じ!」
「うん、焦げないように焼くの、けっこう難しいでしょ?」
「はい!でもそれがまた燃えます!」
焼けたたこ焼きを一つ口に入れて、青年は満面の笑み。
「……うまい!やっぱり、こういう味、今までなかった!」
市場にはすでに行列ができており、子供も大人も、観光客も列をなしていた。
ナビがくるりと空を回りながら言う。
「にゃにゃ!」
「…本気でそうかもね」
「なんて言ってるの?」
「ここなら流行るねって」
「そうね。流行りそうだわ」
「主はどこでも料理しはじめますね」
「それはリョウ様だから仕方ありません」
「ふふふ。そうね」
異種族と異文化の交流、それを食の力で繋げることができた。そんな実感を感じた時間だった。
市場の騒ぎが一段落すると、水竜人伯の邸宅に戻った。案内されると水竜人伯が控えの間から姿を見せた。
「まったく、君という者は…どこへ行っても面白い風を運んでくるな、リョウエスト君」
「ごめんなさい水竜人伯。まさか港の一角がたこ焼き広場になるとは思いませんでした」
「ふふ、それが面白い。水竜人の港で、海の命をこうして新しい形で取り入れるとは。これも『波を分ける者』の力か」
「…その呼び名、どこで広まってるんでしょうね?」
「皆、お前の足跡を見てきたのだよ。ルステインで数々の発明をし、火の民の地で稲を見つけ、獣人の森で物流を整え、そして今ここに新たな味を生んだ。『波を分ける者』とは、ただ水を操る者ではなく、価値観や時代を切り開く者の意でもある」
「……光栄です。でも、僕はあくまで『きっかけ』をつくってるだけで、動かしてるのは地元の人たちですから」
「それが大事なのだ。強引に変えるのではなく、彼らの中にある力を引き出している。お前が触れた水は、確実に波紋を広げているよ」
水竜人伯はそう言って、たこ焼きを一つ手に取り、口に運んだ。
「…うん、熱いが旨いな。しかもこの丸い形。船上でも崩れにくい。輸送食にもなる。これは商機だぞ」
「港を通じて、王都やルステインに運ぶことも可能ですね。冷めても美味しく食べられるよう、保存法も工夫できます」
「まさかタコ一つで、王国の物流が変わるとはな」
水竜人伯は目を細め、空を仰いだ。
「小人族の守護を引き受けたあの日の決断も、こうして広がっていくのかもしれんな。あの子らと暮らしていなければ、食材の無駄や暮らしの不便にも気づけなかった」
「伯が護った小人たちは、ルステインでも工房や研究所で働いてます。新しい発明の裏には、彼らの細やかな手仕事が欠かせません」
「うむ。あの小さな手が、王国の基盤を支えている。…リョウエストよ、お前に一つ頼みがある」
「はい」
「この港と王都、そしてルステインとを結ぶ水上輸送路――“三角航路”を構想している。お前の商会が動いてくれれば、民の暮らしも変わるだろう」
「……それって、つまり?」
「お前に、この航路の基礎計画を任せたい。具体的には、各港での荷扱い施設の設計や、便の本数、協力商会との調整などだ。すでに地図も用意してある」
そう言って渡された巻物には、海と川を繋ぐ航路、主要な港町と中継地点、さらに『浮き舟式の市場』などの構想が描かれていた。
「……すごい。本気ですね」
「ああ。陸が繋がった今、次は水路だ。風の通り道だけでなく、水の道にも変革を…それが水の民としての責任だと思っている」
「わかりました。ルステインに戻ったら、すぐに商会に資料を送ります。技術班とも連携を取って、浮き市場の設計にも取りかかります」
「助かる。ああ、そうそう、あのカニ。もし商業利用するなら、名をつけねばな」
「カニは…この世界では名がないから、僕がそのまま『カニ』って呼んじゃってました」
「うむ。『カニ』か。短くて、少し不思議な響きだが…いいだろう。タコとカニ…港の二大新名物になりそうだ」
「なら、今度は『カニクリームコロッケ』も作りましょうか?」
「ははは、それはまた次の波紋だな」
そう言って、水竜人伯は空を見上げた。
夜空は澄みわたって、港の帆が風を受けて揺れている。新しい風、新しい水路、新しい食と文化。
ここにもまた、小さな革命が始まっていた。
「これは商売になります。水の民の新しい収入源になるかもしれませんよ」
「うむ、これは確かに――特に若者が面白がってやりたがるだろうな」
料理ギルド、商業ギルドの長が納得し、商業登録と許可がその日のうちに済んだ。
夕方、市場に戻ってくると、既に二つの屋台が営業を始めていた。たこ焼きの香ばしい香りが風に乗って町中に広がっている。
「リョウエスト様!これ、さっきの紙にあったレシピ通りにやってみました!」
水竜人の青年が笑顔で焼き器の前に立っていた。
「すごく楽しいです、これ!商人の血が騒ぐって感じ!」
「うん、焦げないように焼くの、けっこう難しいでしょ?」
「はい!でもそれがまた燃えます!」
焼けたたこ焼きを一つ口に入れて、青年は満面の笑み。
「……うまい!やっぱり、こういう味、今までなかった!」
市場にはすでに行列ができており、子供も大人も、観光客も列をなしていた。
ナビがくるりと空を回りながら言う。
「にゃにゃ!」
「…本気でそうかもね」
「なんて言ってるの?」
「ここなら流行るねって」
「そうね。流行りそうだわ」
「主はどこでも料理しはじめますね」
「それはリョウ様だから仕方ありません」
「ふふふ。そうね」
異種族と異文化の交流、それを食の力で繋げることができた。そんな実感を感じた時間だった。
市場の騒ぎが一段落すると、水竜人伯の邸宅に戻った。案内されると水竜人伯が控えの間から姿を見せた。
「まったく、君という者は…どこへ行っても面白い風を運んでくるな、リョウエスト君」
「ごめんなさい水竜人伯。まさか港の一角がたこ焼き広場になるとは思いませんでした」
「ふふ、それが面白い。水竜人の港で、海の命をこうして新しい形で取り入れるとは。これも『波を分ける者』の力か」
「…その呼び名、どこで広まってるんでしょうね?」
「皆、お前の足跡を見てきたのだよ。ルステインで数々の発明をし、火の民の地で稲を見つけ、獣人の森で物流を整え、そして今ここに新たな味を生んだ。『波を分ける者』とは、ただ水を操る者ではなく、価値観や時代を切り開く者の意でもある」
「……光栄です。でも、僕はあくまで『きっかけ』をつくってるだけで、動かしてるのは地元の人たちですから」
「それが大事なのだ。強引に変えるのではなく、彼らの中にある力を引き出している。お前が触れた水は、確実に波紋を広げているよ」
水竜人伯はそう言って、たこ焼きを一つ手に取り、口に運んだ。
「…うん、熱いが旨いな。しかもこの丸い形。船上でも崩れにくい。輸送食にもなる。これは商機だぞ」
「港を通じて、王都やルステインに運ぶことも可能ですね。冷めても美味しく食べられるよう、保存法も工夫できます」
「まさかタコ一つで、王国の物流が変わるとはな」
水竜人伯は目を細め、空を仰いだ。
「小人族の守護を引き受けたあの日の決断も、こうして広がっていくのかもしれんな。あの子らと暮らしていなければ、食材の無駄や暮らしの不便にも気づけなかった」
「伯が護った小人たちは、ルステインでも工房や研究所で働いてます。新しい発明の裏には、彼らの細やかな手仕事が欠かせません」
「うむ。あの小さな手が、王国の基盤を支えている。…リョウエストよ、お前に一つ頼みがある」
「はい」
「この港と王都、そしてルステインとを結ぶ水上輸送路――“三角航路”を構想している。お前の商会が動いてくれれば、民の暮らしも変わるだろう」
「……それって、つまり?」
「お前に、この航路の基礎計画を任せたい。具体的には、各港での荷扱い施設の設計や、便の本数、協力商会との調整などだ。すでに地図も用意してある」
そう言って渡された巻物には、海と川を繋ぐ航路、主要な港町と中継地点、さらに『浮き舟式の市場』などの構想が描かれていた。
「……すごい。本気ですね」
「ああ。陸が繋がった今、次は水路だ。風の通り道だけでなく、水の道にも変革を…それが水の民としての責任だと思っている」
「わかりました。ルステインに戻ったら、すぐに商会に資料を送ります。技術班とも連携を取って、浮き市場の設計にも取りかかります」
「助かる。ああ、そうそう、あのカニ。もし商業利用するなら、名をつけねばな」
「カニは…この世界では名がないから、僕がそのまま『カニ』って呼んじゃってました」
「うむ。『カニ』か。短くて、少し不思議な響きだが…いいだろう。タコとカニ…港の二大新名物になりそうだ」
「なら、今度は『カニクリームコロッケ』も作りましょうか?」
「ははは、それはまた次の波紋だな」
そう言って、水竜人伯は空を見上げた。
夜空は澄みわたって、港の帆が風を受けて揺れている。新しい風、新しい水路、新しい食と文化。
ここにもまた、小さな革命が始まっていた。
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