【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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8歳の旅回り。

エルフの領域に入る。

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「……ここが、エルフの領地か」

 ミザーリが警戒するように辺りを見回す。森は静まり返り、まるで僕たちの到着を待ち受けているかのようだった。

 カサリ、と音がして、一瞬にして周囲に十数人の斥候が姿を現した。皆、長身で銀髪。弓と槍を携え、鋭い視線をこちらへ向けている。

「止まりなさい、異邦の者よ。ここはエルフの聖域。我らの許可なく踏み込めぬ」

 先頭の斥候が告げた。だが、その言葉に対して一人が馬車から降り立つ。

「…エメイラヒルデよ。見覚え、あるんじゃないかな?」

 その名に、斥候たちは一瞬息を呑む。

「なぜあなたがここに……?」
「この子と一緒に来たの。この子は私の守るべき存在で、大切な旅の途中なの」
「ですが、彼は異邦の……」

 エメイラが鋭く睨みつける。

「王命を帯びた旅人を排除すれば、それは王国への背信だよ?」
「…通れ」

 斥候が矢を下ろし、道を開けた。

 森の奥に進むと、やがて白樺の巨木に囲まれた、美しい城館が現れた。エルフの自治領、そしてエルフ伯の館である。

「……懐かしいね」

 エメイラがつぶやく。その目はわずかに潤んでいる。

 館の扉が開くと、優雅なエルフの男が現れた。薄金の髪に澄んだ緑の瞳。年若く見えるが、その眼差しは時の重みを湛えている。

「よく来てくれた、小さき賢人よ」
「お久しぶりです。今日はご挨拶に来ました」

 そこへ、さらにもう一人のエルフが姿を見せた。ラシェルアルテだ。

「リョウエスト様。お待ちしていました」

 応接室に通され、四人で会話を始めた。

「王都の情勢については聞いています。あなたの旅の目的も、名の一団の暗躍も…」
 
 エルフ伯が頷いた。

「だからこそ我々は、この子の護衛をしてるのよ」

 エメイラが微笑む。

「異種族の連携と、融和の象徴として……君を、我らエルフも支持しよう」

 だが、そこに一人の青年エルフが踏み込んできた。

「エルフの矜持はどこへ行った!異種族に媚びる必要などない!我らの森は我らが守るべき!」

 会話は、静かに緊張を孕み始めた。
 青年エルフの声は応接室の空気を一変させた。

「我々エルフは、他種族に教えを乞わずとも生きてきた!それが誇りであり、精霊たちへの礼儀でもある!」

 彼の名はゼルレイン。排他主義的な一派に属し、王都でもしばしば異種族との摩擦を引き起こしている人物だった。
 だが僕は、椅子から立ち上がると静かに言った。

「誇りを持つのは、素晴らしいことです。でも、それが他者を傷つけていい理由にはならない」

 ゼルレインは目を細め、鼻で笑う。

「貴様のような人間の子供に、エルフの千年の歴史が分かるものか!」
「分かりません。けれど、だからこそ僕は学ぼうとしている。森を尊び、エルフの文化を大切に思っている。僕を信じてくれたエメイラのような人がいたから、ここに来られたんです」
「小僧……!」

 ゼルレインが一歩前へ出ようとした瞬間、エメイラが遮るように立った。

「やめなさい。リョウエストは、ただ王命で動いているだけじゃない。自分の意志で異種族の未来を考えてる」
「それが、なぜ我らに関係がある?」
「あなた達は、森に守られながらも、この国の一部として生きている。わかる?あなたも国の一員なの。リョウエストはそれを見越してる」

 ゼルレインが言葉を詰まらせたその隙に、僕は一歩、前に出た。

「僕は、戦う力を持っていません。でも、対話を重ね、誰かの思いを『形』にすることならできる。だから、この旅をしています」

 その時、ラシェルアルテが立ち上がった。

「ゼルレイン殿。あなたの心中も分かりますが、時代は変わりつつある。異種族の知恵を拒むだけでは、閉ざされた未来しかないのです」
「…くだらん理想論だ」

 そう吐き捨てて、ゼルレインは部屋を出ていった。

「彼は若く、情熱的だ。…だがその心が時に視野を狭くする」
 
 エルフ伯が苦笑した。
 僕は静かに言った。

「でも、話し合える余地があるなら、いつか分かり合えると信じてます」

 エルフ伯が手を叩いた。

「さすが『橋をかける者』よ。王命とはいえ、そなたの言葉は真に迫る。今宵は宴を開こう。異種族の未来を語らう宴だ」
「いいわね、それは楽しそう」

 エメイラが笑った。

 宴の夜。森を吹き抜ける風が楽器のように枝を鳴らし、樹上のホールでは光る苔と結晶のランプがあたりを優しく照らしていた。木の器に盛られた果実と香草の料理、蜜酒。僕はすっかりエルフの風習に魅せられていた。

「森に響く音楽は、森そのものが歌っているんだよ」

 エメイラが微笑む。

「本当に、静かなのに豊かですね……」
「ふふ、わかってきたじゃない」

 やがてエルフ伯が杯を持って立ち上がった。

「我らが迎えしは、人の王都より来たりし『未来を記す者』リョウエスト殿! その若さで多くの異種族を繋ぎ、分かち、導かんとしている。まさしく『道を繋ぐ者』と呼ぶに相応しきかと存ず!」

 周囲から拍手と笛の音が鳴る。

「過分な言葉をありがとうございます…。でも、僕は導く者ではありません。ただ、皆さんの力を信じて、それを繋ぎたいだけです」

 僕の言葉に耳を傾けるエルフたちの中、ラシェルアルテがふと真剣な顔をした。

「リョウエスト様。今後も、王都に戻れば多くの敵に狙われるだろう。だが、私たちエルフはそなたを『守る義務』があると思っている。…なぜか分かる?」
「……僕が、エメイラを通じて森と縁を持ったから?」
「違う。君が『未来を記す者』だからだよ。私たちが千年かけて見逃してきた異種族との対話を、君はたった数年で始めてしまった。これは、記録すべき出来事なんだ」

 僕は静かに息をのんだ。言葉の重みが胸にのしかかる。
 そこへ、食事を運んでいた若いエルフが声をかけてきた。

「ねえ、リョウエスト様! 人の国では『飛ぶ道具』を作ってるって本当?」
「あ、うん。完成までは遠いけど、少しずつ形になってきてるよ」
「それって、森の上を飛べるの?」
「きっと飛べるようになる」
「…すごいなあ。木の上じゃなくて、空に家を作るのかな」

 無邪気なその声に、僕は笑った。

「いつかね。でもまずは、皆と一緒に空を見上げるところから始めるよ」

 宴は深夜まで続き、火の明かりが星のきらめきと混ざり合った。
 その夜、僕は館の一室でひとり、次の目的地の地図を眺めていた。扉の向こうでナビがくぅくぅと寝息を立てている。

 そこへ、控えめにノックの音。

「……入っていい?」

 エメイラだった。普段より声が柔らかい。

「うん、どうしたの?」
「あなたが、こうして各地を回ってるのを見るたび、思うの。…この世界は、やっぱり変わりはじめてるって」

 彼女は僕の隣に座り、窓の外の星を見上げた。

「でも、すべてを変えるのは時間がかかる。敵も出てくる。…それでも、ついて行くよ、私は」
「ありがとう、エメイラ」



 
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