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8歳の旅回り。
ドワーフという生き方。
ドワーヴンベースの中心、大集会場――
そこに並んだのは百のジョッキ、百の椅子、百の重鎧の背中。蒸気が吹き上がる中、ドワーフ伯グラド・ヂョウギが腕を組んで仁王立ちしていた。
「……集まったな、親方ども! 今日はただの宴ではないぞ!」
「むろんだ!」
「リョウエスト殿の“魂の酒”が振る舞われるとか!」
「鍛冶より大事な時間だ!」
親方衆はすでに顔が赤い。僕は少しだけ後ろに立ち、ナビを肩に乗せて準備を整えた。
「えー…今日は僕が天啓の知識をもとに作った新しい蒸留酒を、みなさんに試してもらいたいと思います」
「おおおぉおお!!」
ドワーフ百人が同時に咆哮した。ストークが耳を押さえながらぼそっと呟く。
「ドワーフの『試飲』はだいたい本気の飲み会になりますよ……」
僕はまず、黄金色の液体を注いだグラスを掲げた。
「こちらは『アクアヴィット』といいます。ジャガイモ由来の酒で、独特の香草風味が…」
「説明はあとでいい!!飲む!!!」
「乾杯ッッッ!!!」
ドワーフ百人、ジョッキを同時に傾けた。
「…!?」
「ぬおおおおおおっ!!!」
「体が燃える!!!」
突然、数人の親方が席を飛び越え、大地に突っ伏したかと思えば、踊りだした。
「雷が…喉に走ったぞ!!」
「これは魂の燃料だッ!!」
「ワシのヒゲが、蒸気で立った!!」
ナビが僕の肩でピィ、と驚く。
「次は…ブランデーです。果実を蒸留した酒です」
「果実!? 果実でこれほどの烈火を生むだと!?」
一人の親方が吠えた。
「貴様、鍛冶の神か!? いや、酔いの神か!?」
「か、乾杯!」
二杯目、三杯目が進むにつれ、試飲会はもはや混沌。バイオリンを持ち出して歌い出す親方、鍋を叩く者、なぜか自作の詩を朗読する者まで現れる。
グラドが酔いながら僕の肩を組んだ。
「リョウエスト! お前は……もう、ドワーフの友だ……というか……酒の神だ……ヒック」
「ちょっと待ってグラド、それはまだ早……」
「いいから飲めぇぇええええ!!!」
「子供だから勘弁してぇぇええ」
こうして夜は更け、百の杯が交わり、試飲会はただの飲み会へと変貌していった。
翌朝…とは言え、太陽が天頂に達した頃。まだ顔を赤くしたままのドワーフ親方たちが、中央鍛冶場に集まっていた。
「おう…リョウエスト、昨日の酒は、命の水だった…」
「頭がまだ揺れてるが…今度は鋼の話と聞いたぞ…」
僕は軽く頷きながら、図面を巻いた羊皮紙を広げた。
「はい。僕の記憶にある限りですが、『玉鋼』という特殊な鋼の作り方を説明します。非常に純度が高く、折れず曲がらず、よく切れる…そんな理想に近い鋼です」
「おお……!」
「まず、鉄鉱石を選別して…低炭素の鉄と、高炭素の鉄を分けます。その後、何度も折り返して鍛える。鍛えるたびに不純物が抜け、炭素が均一に」
「折り返し鍛錬…?」
「鍛えて、折って、また鍛えて…!」
「よし!!」
「やってみよう!!!」
グラドが槌を構え、吼えた。
「火を入れろォ!! 三日三晩かけてやるぞおおおお!!」
青の技のツヴァイが小声で呟く。
「またやりすぎだ…」
こうして始まった、火の国の実験。巨大な炉に火が入り、親方たちが交代で槌を振るう。
「こんなに正確な炭素制御…やったことがない…!」
「折って、鍛えて…また折って!」
三日三晩、熱と汗と槌の音が絶えず響いた。そして…!
「できた……!」
鋼の輝きはこれまでと違った。黒と銀が交じり合う層模様。その刃を軽く振るうと、空気が裂けるような音がした。
「こ、これは……」
「わしの槌が跳ね返った……!」
グラドが一歩前に出た。
「試し斬りだ!」
分厚い鋼板に向かって振り下ろされた一太刀。
……スパァァン!!!
「切れた…?」
「鋼を、まるでバターのように…」
ドワーフ百人が同時に叫ぶ。
「「「うぉぉおおおおおお!!!」」」
中央鍛冶場は歓喜の渦に包まれていた。誰もが『新たな鋼』の誕生に胸を打たれていた。
「これぞ、火の国における革命だ!」
「この剣なら、折れずに斬れる! しかも、軽い…!」
「なんという技だ…リョウエスト、お前は鍛冶の民を泣かせたぞ!」
グラドは震える手で剣を掲げ、吠えた。
「この剣、名を『魂鋼(ソウルスチール)』とする!」
「おおおおおおっ!!」
僕は恐縮しながらも言った。
「いや、その名はちょっと…恥ずかしい…」
「なら『琥珀剣』はどうだ!? 酒の名と鋼を重ねて!」
「…それはそれで恥ずかしい」
ミザーリが笑いながら割り込む。
「いっそ、『折れず、曲がらず、酔わせる剣』とかどうだ?」
陽炎隊たちがどっと笑う。
グラドは剣を腰に差し、誇らしげに胸を張った。
「リョウエスト!ウイスキーは我らの心を酔わせた!そしてこの鋼は、魂を打った!お前はもう、ドワーフの一族だ!」
「ありがとう。……でも、僕はただ、少し思い出しただけなんだ。本当にすごいのは、三日三晩休まず槌を振った、あなたたちさ」
親方たちが一斉にどっと笑い、誰かが叫んだ。
「ならば今夜は、『魂鋼完成の宴』だ!!」
「酒だああああ!!!」
「また飲むのか!!」
ナビが肩の上で羽ばたいた。
「にゃー!」
「ほんとやりすぎなんだよ」
こうして…。
火と酒と鍛冶に生きる民との絆は、鋼よりも固く、ウイスキーよりも熱く、心に刻まれていくのだった。
そこに並んだのは百のジョッキ、百の椅子、百の重鎧の背中。蒸気が吹き上がる中、ドワーフ伯グラド・ヂョウギが腕を組んで仁王立ちしていた。
「……集まったな、親方ども! 今日はただの宴ではないぞ!」
「むろんだ!」
「リョウエスト殿の“魂の酒”が振る舞われるとか!」
「鍛冶より大事な時間だ!」
親方衆はすでに顔が赤い。僕は少しだけ後ろに立ち、ナビを肩に乗せて準備を整えた。
「えー…今日は僕が天啓の知識をもとに作った新しい蒸留酒を、みなさんに試してもらいたいと思います」
「おおおぉおお!!」
ドワーフ百人が同時に咆哮した。ストークが耳を押さえながらぼそっと呟く。
「ドワーフの『試飲』はだいたい本気の飲み会になりますよ……」
僕はまず、黄金色の液体を注いだグラスを掲げた。
「こちらは『アクアヴィット』といいます。ジャガイモ由来の酒で、独特の香草風味が…」
「説明はあとでいい!!飲む!!!」
「乾杯ッッッ!!!」
ドワーフ百人、ジョッキを同時に傾けた。
「…!?」
「ぬおおおおおおっ!!!」
「体が燃える!!!」
突然、数人の親方が席を飛び越え、大地に突っ伏したかと思えば、踊りだした。
「雷が…喉に走ったぞ!!」
「これは魂の燃料だッ!!」
「ワシのヒゲが、蒸気で立った!!」
ナビが僕の肩でピィ、と驚く。
「次は…ブランデーです。果実を蒸留した酒です」
「果実!? 果実でこれほどの烈火を生むだと!?」
一人の親方が吠えた。
「貴様、鍛冶の神か!? いや、酔いの神か!?」
「か、乾杯!」
二杯目、三杯目が進むにつれ、試飲会はもはや混沌。バイオリンを持ち出して歌い出す親方、鍋を叩く者、なぜか自作の詩を朗読する者まで現れる。
グラドが酔いながら僕の肩を組んだ。
「リョウエスト! お前は……もう、ドワーフの友だ……というか……酒の神だ……ヒック」
「ちょっと待ってグラド、それはまだ早……」
「いいから飲めぇぇええええ!!!」
「子供だから勘弁してぇぇええ」
こうして夜は更け、百の杯が交わり、試飲会はただの飲み会へと変貌していった。
翌朝…とは言え、太陽が天頂に達した頃。まだ顔を赤くしたままのドワーフ親方たちが、中央鍛冶場に集まっていた。
「おう…リョウエスト、昨日の酒は、命の水だった…」
「頭がまだ揺れてるが…今度は鋼の話と聞いたぞ…」
僕は軽く頷きながら、図面を巻いた羊皮紙を広げた。
「はい。僕の記憶にある限りですが、『玉鋼』という特殊な鋼の作り方を説明します。非常に純度が高く、折れず曲がらず、よく切れる…そんな理想に近い鋼です」
「おお……!」
「まず、鉄鉱石を選別して…低炭素の鉄と、高炭素の鉄を分けます。その後、何度も折り返して鍛える。鍛えるたびに不純物が抜け、炭素が均一に」
「折り返し鍛錬…?」
「鍛えて、折って、また鍛えて…!」
「よし!!」
「やってみよう!!!」
グラドが槌を構え、吼えた。
「火を入れろォ!! 三日三晩かけてやるぞおおおお!!」
青の技のツヴァイが小声で呟く。
「またやりすぎだ…」
こうして始まった、火の国の実験。巨大な炉に火が入り、親方たちが交代で槌を振るう。
「こんなに正確な炭素制御…やったことがない…!」
「折って、鍛えて…また折って!」
三日三晩、熱と汗と槌の音が絶えず響いた。そして…!
「できた……!」
鋼の輝きはこれまでと違った。黒と銀が交じり合う層模様。その刃を軽く振るうと、空気が裂けるような音がした。
「こ、これは……」
「わしの槌が跳ね返った……!」
グラドが一歩前に出た。
「試し斬りだ!」
分厚い鋼板に向かって振り下ろされた一太刀。
……スパァァン!!!
「切れた…?」
「鋼を、まるでバターのように…」
ドワーフ百人が同時に叫ぶ。
「「「うぉぉおおおおおお!!!」」」
中央鍛冶場は歓喜の渦に包まれていた。誰もが『新たな鋼』の誕生に胸を打たれていた。
「これぞ、火の国における革命だ!」
「この剣なら、折れずに斬れる! しかも、軽い…!」
「なんという技だ…リョウエスト、お前は鍛冶の民を泣かせたぞ!」
グラドは震える手で剣を掲げ、吠えた。
「この剣、名を『魂鋼(ソウルスチール)』とする!」
「おおおおおおっ!!」
僕は恐縮しながらも言った。
「いや、その名はちょっと…恥ずかしい…」
「なら『琥珀剣』はどうだ!? 酒の名と鋼を重ねて!」
「…それはそれで恥ずかしい」
ミザーリが笑いながら割り込む。
「いっそ、『折れず、曲がらず、酔わせる剣』とかどうだ?」
陽炎隊たちがどっと笑う。
グラドは剣を腰に差し、誇らしげに胸を張った。
「リョウエスト!ウイスキーは我らの心を酔わせた!そしてこの鋼は、魂を打った!お前はもう、ドワーフの一族だ!」
「ありがとう。……でも、僕はただ、少し思い出しただけなんだ。本当にすごいのは、三日三晩休まず槌を振った、あなたたちさ」
親方たちが一斉にどっと笑い、誰かが叫んだ。
「ならば今夜は、『魂鋼完成の宴』だ!!」
「酒だああああ!!!」
「また飲むのか!!」
ナビが肩の上で羽ばたいた。
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