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8歳の旅回り。
工業化の一歩。
「もう一台だ!」
「いや、十台いける! この旋盤、各工房に配備だ!」
「旋盤工房つくるぞ! 回せ! 未来を!」
ドワーフたちの熱狂は、止まらなかった。
工房の壁には、すでに設計図が貼られ、足踏みペダル式の旋盤が三台、新たに組み上がろうとしていた。踏み台の改良、歯車構造の強化、さらにはバネによる自動復帰機構まで追加されている。
「やりすぎだ……」
僕が呆れ気味に呟くと、ナビがくるりと首をかしげる。
「にゃ!」
「いや、良いことなんだけどさ……さすがドワーフだよ」
そんな僕の肩に、ドワーフ伯グラドの分厚い手が置かれた。
「リョウエスト、お主のおかげで、我らは『削れる』という概念を得た。木だけでなく、鉄も、石も、そして…考え方までもな」
「考え方?」
「この技術が、異種族との協力から生まれた。ドワーフだけで閉じこもっていては、辿り着けなかった道だ。…この地で、エルフや人間と共に学ぶ。それが本当に『鍛える』ということなのかもしれんな」
グラドの言葉に、親方たちも静かにうなずいた。
「リョウエストさん、正直、最初は『外の者』が口を出すことに反発もあったさ。口を出すなってな」
と、親方の一人が前に出て言った。
「けど、あんたはちゃんと『一緒に作る』って姿勢だった。俺たちの手と、あんたの知識が合わさって…こんなすげぇもんが生まれた。…こりゃあもう、あんたはドワーフだ」
「それは…光栄です」
「それとよ…一つお願いがある」
「なんですか?」
「『技術の記録帳』を作ってほしいんだ。あんたが伝えた技術、そして今後の開発記録。それをまとめて残しておきたい」
「記録帳か……いいね、それ。『未来を記す者』って、エルフにも言われたし」
「ほう、名誉職だな」
親方たちが笑い声を上げる。
「名前は…『リョウエスト工書』ってどうだ?」
「やめろ、それはさすがに恥ずかしい!」
「じゃあ『未来を削る帳』?」
「もっと恥ずかしい!」
ワイワイと笑いながら、僕はふと旋盤を見つめた。
回転する円筒、金属の火花、踏み鳴らす足のリズム。それは確かに、世界を削っている。過去と未来の境界を。
そしてその先に、ドワーフたちのさらなる『創造』があるのなら。
「…グラド、親方たち。僕、次に進みます。けど、また来ます。もっと面白いもの、いっぱい持って」
「おう!次はなんだ?陸を進む何かか?飛行船か?」
「ふふ、そこまでは…秘密ってことで」
「よっしゃ、楽しみにしとくぜ!」
その日の夕方、ドワーフの子供たちが組み立てた木の小型旋盤を回して遊んでいた。
「ほら見て! 回ったー!」
「これで剣の柄、作れる?」
「未来を回せー!」
どこかで誰かが叫んだその声が、森を越えて、空へ昇っていくように感じられた。
きっとそれは、ドワーフという『地の民』が、未来へ歩き出した鼓動だった。
…と終わるはずが終わらなかった。さすがドワーフ。
翌朝、工房の空気はいつになく張り詰めていた。
「リョウエストさん、ちょっと来てくれやす!」
アインスが走ってきて、興奮気味に僕の腕を引いた。旋盤工房の一角に行くと、そこにはうちの青の技の工兵ゼクスとドワーフの親方たちが集まり、何やら新たな構造の模型を囲んでいた。
「これ……?」
「旋盤を、もう一段階『進化』させたんです」
ゼクスが歯車の配置を指し示しながら続けた。
「こっちはベルト駆動、ここはクランク。で、ペダルを踏む代わりに、動力源を『水』にしたんです」
「水車か!これはすごいなあ」
僕の声に、ドワーフ親方が大きく頷いた。
「そうさ、近くの小川の流れを使って、常時回せるようにしてやった。足踏みより安定するし、力も強い」
「つまり……これが『工業化』の第一歩ってことか」
「こういうの、あんたの頭にもあったんだろ?」
親方がにやりと笑う。
「正直言うと…こんなに早く進化するとは思ってなかった。すごいよ、みんな」
僕がそう言うと、親方が鼻をこすって言った。
「へへっ、やりすぎがドワーフの信条さ」
「じゃあ次は…動力を水だけじゃなく、風も考えた方がいいかも。エルフの森で見た風車は、構造が良かったからね。あれが応用できるなら最高じゃないかな」
「ほぉ、風でも回すか。やるじゃねえか、リョウエスト!」
グラドと親方たちの目が輝く。僕の言葉は、もう『異邦人の提案』ではなく、『共に未来を描く仲間の言葉』として受け止められていた。
例によってストークが商業ギルド長を連れて来て商業登録をする。毎回毎回ありがとうございます。
そのとき、ナビがゆっくりと入ってきて、回転する水車をじっと見つめた。
「ナビ、気になる?」
「にゃに。にゃーにゃ」
「だよな。お前、風を操れるしな…もしかして、ナビの力で回すこともできるのか?」
「にゃー!」
ナビが翼を広げ、そっと一振りすると回転板が、風を受けて勢いよく回り出した。
「おおおっ!?まわったぁぁぁ!!」
「やべぇぞこれ!風力旋盤!ナビ式!!」
僕たちは笑いながら、回る未来を見つめた。
それは、新たな風の時代のはじまりだった。
「いや、十台いける! この旋盤、各工房に配備だ!」
「旋盤工房つくるぞ! 回せ! 未来を!」
ドワーフたちの熱狂は、止まらなかった。
工房の壁には、すでに設計図が貼られ、足踏みペダル式の旋盤が三台、新たに組み上がろうとしていた。踏み台の改良、歯車構造の強化、さらにはバネによる自動復帰機構まで追加されている。
「やりすぎだ……」
僕が呆れ気味に呟くと、ナビがくるりと首をかしげる。
「にゃ!」
「いや、良いことなんだけどさ……さすがドワーフだよ」
そんな僕の肩に、ドワーフ伯グラドの分厚い手が置かれた。
「リョウエスト、お主のおかげで、我らは『削れる』という概念を得た。木だけでなく、鉄も、石も、そして…考え方までもな」
「考え方?」
「この技術が、異種族との協力から生まれた。ドワーフだけで閉じこもっていては、辿り着けなかった道だ。…この地で、エルフや人間と共に学ぶ。それが本当に『鍛える』ということなのかもしれんな」
グラドの言葉に、親方たちも静かにうなずいた。
「リョウエストさん、正直、最初は『外の者』が口を出すことに反発もあったさ。口を出すなってな」
と、親方の一人が前に出て言った。
「けど、あんたはちゃんと『一緒に作る』って姿勢だった。俺たちの手と、あんたの知識が合わさって…こんなすげぇもんが生まれた。…こりゃあもう、あんたはドワーフだ」
「それは…光栄です」
「それとよ…一つお願いがある」
「なんですか?」
「『技術の記録帳』を作ってほしいんだ。あんたが伝えた技術、そして今後の開発記録。それをまとめて残しておきたい」
「記録帳か……いいね、それ。『未来を記す者』って、エルフにも言われたし」
「ほう、名誉職だな」
親方たちが笑い声を上げる。
「名前は…『リョウエスト工書』ってどうだ?」
「やめろ、それはさすがに恥ずかしい!」
「じゃあ『未来を削る帳』?」
「もっと恥ずかしい!」
ワイワイと笑いながら、僕はふと旋盤を見つめた。
回転する円筒、金属の火花、踏み鳴らす足のリズム。それは確かに、世界を削っている。過去と未来の境界を。
そしてその先に、ドワーフたちのさらなる『創造』があるのなら。
「…グラド、親方たち。僕、次に進みます。けど、また来ます。もっと面白いもの、いっぱい持って」
「おう!次はなんだ?陸を進む何かか?飛行船か?」
「ふふ、そこまでは…秘密ってことで」
「よっしゃ、楽しみにしとくぜ!」
その日の夕方、ドワーフの子供たちが組み立てた木の小型旋盤を回して遊んでいた。
「ほら見て! 回ったー!」
「これで剣の柄、作れる?」
「未来を回せー!」
どこかで誰かが叫んだその声が、森を越えて、空へ昇っていくように感じられた。
きっとそれは、ドワーフという『地の民』が、未来へ歩き出した鼓動だった。
…と終わるはずが終わらなかった。さすがドワーフ。
翌朝、工房の空気はいつになく張り詰めていた。
「リョウエストさん、ちょっと来てくれやす!」
アインスが走ってきて、興奮気味に僕の腕を引いた。旋盤工房の一角に行くと、そこにはうちの青の技の工兵ゼクスとドワーフの親方たちが集まり、何やら新たな構造の模型を囲んでいた。
「これ……?」
「旋盤を、もう一段階『進化』させたんです」
ゼクスが歯車の配置を指し示しながら続けた。
「こっちはベルト駆動、ここはクランク。で、ペダルを踏む代わりに、動力源を『水』にしたんです」
「水車か!これはすごいなあ」
僕の声に、ドワーフ親方が大きく頷いた。
「そうさ、近くの小川の流れを使って、常時回せるようにしてやった。足踏みより安定するし、力も強い」
「つまり……これが『工業化』の第一歩ってことか」
「こういうの、あんたの頭にもあったんだろ?」
親方がにやりと笑う。
「正直言うと…こんなに早く進化するとは思ってなかった。すごいよ、みんな」
僕がそう言うと、親方が鼻をこすって言った。
「へへっ、やりすぎがドワーフの信条さ」
「じゃあ次は…動力を水だけじゃなく、風も考えた方がいいかも。エルフの森で見た風車は、構造が良かったからね。あれが応用できるなら最高じゃないかな」
「ほぉ、風でも回すか。やるじゃねえか、リョウエスト!」
グラドと親方たちの目が輝く。僕の言葉は、もう『異邦人の提案』ではなく、『共に未来を描く仲間の言葉』として受け止められていた。
例によってストークが商業ギルド長を連れて来て商業登録をする。毎回毎回ありがとうございます。
そのとき、ナビがゆっくりと入ってきて、回転する水車をじっと見つめた。
「ナビ、気になる?」
「にゃに。にゃーにゃ」
「だよな。お前、風を操れるしな…もしかして、ナビの力で回すこともできるのか?」
「にゃー!」
ナビが翼を広げ、そっと一振りすると回転板が、風を受けて勢いよく回り出した。
「おおおっ!?まわったぁぁぁ!!」
「やべぇぞこれ!風力旋盤!ナビ式!!」
僕たちは笑いながら、回る未来を見つめた。
それは、新たな風の時代のはじまりだった。
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