【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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9歳の記す者。

9歳の王都の旅。

   9歳になった僕、リョウエスト・バァン・スサン。今日からまた、王都へ向かう。

 春の社交シーズン。貴族たちが集まり、夜会だの茶会だの、顔見せと情報交換の場が山ほどある。正直、どれも子どもには退屈だけど…今年は少し違う。

 僕には今、王国から正式に与えられた新しい称号があるのだ。

『未来を記す者』…なんだか物書きみたいな響きだけど、これは王国初の名誉伯爵の称号で、地位としては上級貴族扱いになる。いわば僕の行動や発明が、この国の未来を形づくっていると、王様が認めてくれた証だ。

「おい、坊っちゃん。もう積み終わったぞ。あとは乗るだけだ」

 声をかけてきたのは、御者のアレク。最近成人して真面目だけど朝が弱い。最近は剣士としても鍛えている。隣ではボルクが鼻歌まじりに手綱を弄っている。

「了解。じゃあ出発だね。…ストーク乗ってる?」
「もちろんです、リョウ様。席、確保済みです」
「リョウ、遅いわよ」
「エメイラ…ごめん」
「主よ、座ってください」
「はい。ミザーリ」
 
 何故か社交シーズンなのにエメイラが乗ってる。名誉伯爵になったからパートナーが必要でしょ?だって。エメイラの性格でパーティーが耐えられるかは知らないけど、僕はエメイラを信じてパートナーになってもらう事にした。

 馬車…というか改良型移動式厨房馬車『キッチンエンジェル2』は、僕の設計によるもの。軽量合金フレームに、シャッター式防御システム、車内にはコンロや水槽、小さな冷蔵庫まで備えた快適空間だ。

「さて……行こうか。王都へ」

 馬車が軽やかに走り出す。揺れも少なく、快適そのもの。

「……この一年でいろいろあったなぁ」

 窓の外を眺めながら、僕は一人つぶやいた。

 まず、ルステインと王都近郊で米の試験栽培が始まったこと。僕が持ち込んだ『稲』という作物は、湿地にも強く、この大陸の風土にも適応できそうだ。成長具合によっては、来年には各地で本格的な稲作が始まるかもしれない。

 飛行機の製作計画は……正直、行き詰まってる。

 肝心のエンジンが、燃料の消費効率の問題でどうにもならなかった。小人の老学者バレトが遺した図面を元に何度も改良を重ねたけど、安定稼働まで持っていけない。化石燃料というものがないので既存のエンジンは無理そうなのだ。ドワーヴンベースでも試作を続けてるけど、まだ「飛ばせる機械」にはなっていない。

「やっぱり、空って遠いなあ……」

 けれど、ドワーヴンベース自体はますます拡張していて、僕が発明した道具や構造物が次々と製造されている。ドワーフや小人、エルフたちの技術力と情熱は、本当にすごい。

 酒の蒸留も、僕が初めて試みてから各地に広がりはじめ、今では各地に蒸留所ができている。味の評価は上々。特にドワーフの評価が高いのは…うん、当然だよね。

 さらに、スサン商会がついにエアコンディショナーを完成させた。

「空気を冷やす箱だって? そんなもん売れるのかねぇ」

 最初はドワーフ伯がそう言ってたけど、今じゃ注文が殺到してる。スサン商会の支店は、ルステイン本店、王都、エフェルト公爵領に続いて、火の民自治領やスクワンジャー、ゼローキア侯爵領にも開く予定だ。

 僕の料理を出すレストラン『スサンの天使』も、今では各地に十五店舗。最初は『子どものレシピ』なんて笑われたけど、味で黙らせた。あとは料理ギルド本部の講習で『古い』料理人をやりこめた。

「食べればわかる、ってやつだよね」

 僕は少し笑って、また窓の外に目をやる。

 王都には、兄のストラ兄さんがいる。今年で学園三年生。生徒会の副会長になって、会長はなんと、第一王子ウルリッヒ様。そのウルリッヒ様も、来年には王太子になるって決まったらしい。

 これから王都では、もっともっと変化が起きていくんだろう。

「……僕も、変わらなきゃな」

 少しだけ背筋を伸ばして、馬車の振動に身を任せた。

 未来は、待ってなんかくれない。


 王都に到着した僕たちを迎えたのは、いつもの喧騒と——少し違う視線の数々だった。

「ねぇ、あれが……」
「『未来を記す者』だって」
「見た目は子どもだけど、あれで名誉伯爵らしいわよ」

 ささやかれる声。こそこそというより、わざと聞こえるように言っている気もする。

「まったく、街の空気が騒がしいな」

 ミザーリが小声でぼやいたが、僕はただ笑った。

「別に悪い気はしないよ。むしろ、よくも悪くも注目されてるってことだしね」

 とはいえ、王都の社交界はそれなりに気を遣う。すでに会場のあちこちで貴族の子女たちが集まり、僕の到着を待っていると聞いた。

 それが証拠に——

「リョウエスト様、お久しぶりですわ!」

 待ち構えていたのは、某伯爵の子女アリュシア嬢。フリルのついたドレスを揺らして駆け寄ってきた。

「こんにちは、アリュシアさん。お元気そうでなによりです」
「あら、ご挨拶も大人びて…やっぱり未来を記す者は違いますわね。そうそう、あの『スサンの天使』、うちの領でも大人気ですのよ!」

 嬉しそうに話す彼女の背後から、さらに数名の貴族子女たちが現れた。もはや取り囲まれる勢いだ。

「リョウエスト様、蒸留酒って本当にお子様が作ったのですか?」
「エアコンディショナー、どういう仕組みで冷えるのですか?」
「化粧水の新作は?いつ出るの?」
「口紅の新色つけてみました。どうですか?」

 質問攻めだった。僕は一つ一つ丁寧に答えていったけど、正直ちょっと疲れた。

 そこへ…。

「やっぱり、来てたか。未来の伯爵殿」
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