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9歳の記す者。
僕の新しい拠点。
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王都に入った次の朝。空は澄み、風は涼しく、僕の心もすっきりしていた。
「よし……これが九歳の『挨拶』ってやつだね」
僕は、正装の襟を整えて、玉座の間へ足を踏み入れた。
「謁見を申し上げます。未来を記す者、リョウエスト・バァン・スサン、ただいま王都入りいたしました」
声が石造りの大広間に響く。玉座には、変わらぬ姿の王が腰を下ろしていた。彼は穏やかに微笑みながら、僕に向かってうなずいた。
「よく来たな、リョウエスト…また一段と背が伸びたようだな」
「はい。栄養管理のおかげで」
「ふふ、元気そうでなによりだ」
王はニコリと笑う。
「さて…お前が来る前に一つ言っておきたいことがある。…スサン商会の『冷やす箱』というやつ、あれを寝室に設置したがあまりにも快適すぎて、我が眠りすぎる始末だ」
「ははは! お褒めの言葉と受け取っても?」
「受け取れ。そして開発者と職人達に礼を伝えておけ」
「かしこまりました。次は温度調節が魔法石でできるモデルも…」
「開発中だろう?」
「えっ…もうご存知なんですか?」
「君の噂は王宮より早い。いや、正確には王宮が情報源になっているか」
王の笑顔が少しだけ、意味深になった。
「さて、本題だ。今回はお前の社交活動を助けるため、特別に一つ拠点を与える」
「…拠点?」
王は手をひらりと動かし、側仕えの官吏が巻物を持って現れた。
「『名の一団』の主犯であったロードリン伯爵。その処罰に伴い、彼の持ち屋敷の一つを王国管理下に置いていたが、今日より正式に、お前へと譲渡する」
「……っ」
僕は言葉を飲んだ。王都内、それも上級貴族用の邸宅など、通常は簡単に持てるものではない。
「場所は中央区、王城まで徒歩で十数分。通称『天の庭』と呼ばれる邸宅区画の一角だ」
「そ、そんな…ありがたすぎます…」
「異種族伯爵らとも相談し、整備には我ら七名が関わった。住人や仕組みは見てのお楽しみだ」
そこまで言って、王は真顔で続けた。
「…王国がお前に期待するのは、今や『未来の記録』だけではない。『交わりの要』だ。心せよ、リョウエスト」
「…はい。王よ、必ずやその期待に応えてみせます」
再び、深く膝を折った。
「よろしい。では、行くがいい。『未来を記す者』の新たな場所へ」
王のその声が、まるで旅立ちの鐘のように響いた。
僕たちを乗せた馬車は、王都の中心区画『天の庭』に入った。
「……すごいね。こんな場所に、僕の家が?」
『キッチンエンジェル2』の窓越しに見えたそれは、白壁に黒鉄の飾り、三階建ての瀟洒な屋敷だった。王が言っていた『ロードリン伯の邸宅』…いや、もう僕の家だ。
扉の前に整列していた七人の使用人たちが、一斉に頭を下げる。
「リョウエスト・バァン・スサン様。ようこそお戻りくださいました」
声の主は、金の瞳に漆黒の毛並みをもつ獣人の男性。彼が歩み出て、深く頭を下げた。
「私はレラサンス。今後、このタウンハウスの執事を務めさせていただきます」
彼の背後には、ヒト族の家政婦、ドワーフの厨房番、エルフの庭師、火の民の警備担当、水竜人の水回り技師、そして小人の帳簿係が揃っていた。
「これは…」
「七種族、全て揃ってる」
僕が呟くと、隣でミザーリが腕を組んで言った。
「この構成…王と六伯爵が、それぞれ人を出したってことか」
ナビが肩で「ニャ」と短く鳴いた。翼を少し羽ばたかせ、屋根を見上げている。
「…王の『見せつけ』って意味でもあるかもね」
「だがこれは、信頼の証でもある」
背後からストークの声がした、レラサンスに近づくと、自然な流れで会話を始めた。
「筆頭執事ストーク。こちらでの全体運営を担う君の評判は聞いている」
「恐縮です。ドワーフ伯よりご推薦を頂きました。徹底管理を信条にしております」
「いい心構えだ。機能と人心の両立を期待する」
執事同士、表情一つ変えずに淡々とやりとりを交わす姿はまるで戦士同士の剣合わせのようだった。
一方…。
「まぁ…これは見事ですわ」
エメイラが館の内部に足を踏み入れ、手を軽く広げて笑った。
「この空間、色使い、照明の温度…すべてが落ち着いています。まるで『私の居場所』のよう」
「エメイラ、それ、すごく女主人っぽい発言だよ」
「ふふ、じゃあ今日から、女主人として振る舞ってもよろしいですか?」
その瞬間、レラサンスが微かに笑みを見せた。
「実は…館内の女性用居室に関しては、エルフ伯爵が『女主人の好みに合うように』と指示をくださっております」
「…やるな、エルフ伯」
エメイラが小さく呟いた。
館内にはエアコンディショナーが完備されていた。スサン商会製、最新式の温度調整魔道具。ナビが扉の近くでしっぽを立てている。
「うん…ここに、皆が来て、話して、集まって…未来が繋がっていくんだ」
暖炉には火の民による特殊耐火石が埋め込まれ、キッチンの収納棚には小人たちが設計した圧縮収納構造。水回りは水竜人の手により水圧と流量が最適化され、庭園はエルフの植栽とドワーフの石道が見事に融合していた。
「…王様と、六人の異種族伯爵の心が、全部ここに詰まってる」
僕は手をそっと壁に当てた。
「ありがとう。みんな……ありがとう」
「よし……これが九歳の『挨拶』ってやつだね」
僕は、正装の襟を整えて、玉座の間へ足を踏み入れた。
「謁見を申し上げます。未来を記す者、リョウエスト・バァン・スサン、ただいま王都入りいたしました」
声が石造りの大広間に響く。玉座には、変わらぬ姿の王が腰を下ろしていた。彼は穏やかに微笑みながら、僕に向かってうなずいた。
「よく来たな、リョウエスト…また一段と背が伸びたようだな」
「はい。栄養管理のおかげで」
「ふふ、元気そうでなによりだ」
王はニコリと笑う。
「さて…お前が来る前に一つ言っておきたいことがある。…スサン商会の『冷やす箱』というやつ、あれを寝室に設置したがあまりにも快適すぎて、我が眠りすぎる始末だ」
「ははは! お褒めの言葉と受け取っても?」
「受け取れ。そして開発者と職人達に礼を伝えておけ」
「かしこまりました。次は温度調節が魔法石でできるモデルも…」
「開発中だろう?」
「えっ…もうご存知なんですか?」
「君の噂は王宮より早い。いや、正確には王宮が情報源になっているか」
王の笑顔が少しだけ、意味深になった。
「さて、本題だ。今回はお前の社交活動を助けるため、特別に一つ拠点を与える」
「…拠点?」
王は手をひらりと動かし、側仕えの官吏が巻物を持って現れた。
「『名の一団』の主犯であったロードリン伯爵。その処罰に伴い、彼の持ち屋敷の一つを王国管理下に置いていたが、今日より正式に、お前へと譲渡する」
「……っ」
僕は言葉を飲んだ。王都内、それも上級貴族用の邸宅など、通常は簡単に持てるものではない。
「場所は中央区、王城まで徒歩で十数分。通称『天の庭』と呼ばれる邸宅区画の一角だ」
「そ、そんな…ありがたすぎます…」
「異種族伯爵らとも相談し、整備には我ら七名が関わった。住人や仕組みは見てのお楽しみだ」
そこまで言って、王は真顔で続けた。
「…王国がお前に期待するのは、今や『未来の記録』だけではない。『交わりの要』だ。心せよ、リョウエスト」
「…はい。王よ、必ずやその期待に応えてみせます」
再び、深く膝を折った。
「よろしい。では、行くがいい。『未来を記す者』の新たな場所へ」
王のその声が、まるで旅立ちの鐘のように響いた。
僕たちを乗せた馬車は、王都の中心区画『天の庭』に入った。
「……すごいね。こんな場所に、僕の家が?」
『キッチンエンジェル2』の窓越しに見えたそれは、白壁に黒鉄の飾り、三階建ての瀟洒な屋敷だった。王が言っていた『ロードリン伯の邸宅』…いや、もう僕の家だ。
扉の前に整列していた七人の使用人たちが、一斉に頭を下げる。
「リョウエスト・バァン・スサン様。ようこそお戻りくださいました」
声の主は、金の瞳に漆黒の毛並みをもつ獣人の男性。彼が歩み出て、深く頭を下げた。
「私はレラサンス。今後、このタウンハウスの執事を務めさせていただきます」
彼の背後には、ヒト族の家政婦、ドワーフの厨房番、エルフの庭師、火の民の警備担当、水竜人の水回り技師、そして小人の帳簿係が揃っていた。
「これは…」
「七種族、全て揃ってる」
僕が呟くと、隣でミザーリが腕を組んで言った。
「この構成…王と六伯爵が、それぞれ人を出したってことか」
ナビが肩で「ニャ」と短く鳴いた。翼を少し羽ばたかせ、屋根を見上げている。
「…王の『見せつけ』って意味でもあるかもね」
「だがこれは、信頼の証でもある」
背後からストークの声がした、レラサンスに近づくと、自然な流れで会話を始めた。
「筆頭執事ストーク。こちらでの全体運営を担う君の評判は聞いている」
「恐縮です。ドワーフ伯よりご推薦を頂きました。徹底管理を信条にしております」
「いい心構えだ。機能と人心の両立を期待する」
執事同士、表情一つ変えずに淡々とやりとりを交わす姿はまるで戦士同士の剣合わせのようだった。
一方…。
「まぁ…これは見事ですわ」
エメイラが館の内部に足を踏み入れ、手を軽く広げて笑った。
「この空間、色使い、照明の温度…すべてが落ち着いています。まるで『私の居場所』のよう」
「エメイラ、それ、すごく女主人っぽい発言だよ」
「ふふ、じゃあ今日から、女主人として振る舞ってもよろしいですか?」
その瞬間、レラサンスが微かに笑みを見せた。
「実は…館内の女性用居室に関しては、エルフ伯爵が『女主人の好みに合うように』と指示をくださっております」
「…やるな、エルフ伯」
エメイラが小さく呟いた。
館内にはエアコンディショナーが完備されていた。スサン商会製、最新式の温度調整魔道具。ナビが扉の近くでしっぽを立てている。
「うん…ここに、皆が来て、話して、集まって…未来が繋がっていくんだ」
暖炉には火の民による特殊耐火石が埋め込まれ、キッチンの収納棚には小人たちが設計した圧縮収納構造。水回りは水竜人の手により水圧と流量が最適化され、庭園はエルフの植栽とドワーフの石道が見事に融合していた。
「…王様と、六人の異種族伯爵の心が、全部ここに詰まってる」
僕は手をそっと壁に当てた。
「ありがとう。みんな……ありがとう」
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