【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
419 / 806
9歳の記す者。

ナミリアと双子と遊ぶ。

「リョウエスト、いらっしゃい!」

 庭先で元気に駆け寄ってきたのは、マックスさんの娘、ナミリアだ。9歳で僕と同じ学年、今年から王都に同行している。

「ナミリア、久しぶりだね。背がまた伸びた?」
「うん!お母様が『リョウエスト様より背が伸びちゃだめよ』って言ってるけど、私、負けてないよ!」
「それは負けられないなあ」

 彼女の笑顔にほっとしながら、ふと振り返ると双子のアルフォンスとアメリアが僕の足元でじゃれ合っている。

「おにいちゃん、おそとであそぼう!」
「アメリアもアルフォンスも、こんにちは。今日はお兄ちゃんがいっぱい遊んであげるよ」

 抱き上げると、3歳の双子は「キャッキャ」と笑いながら手足をばたつかせた。

「ナミリアはお兄ちゃんと何して遊ぶ?」
「うーん、かくれんぼ?それともお絵描き?」
「じゃあ、先にかくれんぼしようか。双子はその間、こっちで一緒にボール投げしよう」
「わーい!」

笑い声が庭いっぱいに響く。

「ねえリョウエスト、今年の社交シーズンはどう?」
「なかなか楽しいよ。でも君たちと遊ぶのが一番好きだけど」

 ナミリアがにっこりと頬を染める。

「そうだ、王子のことどう思う?」
「ウルリッヒ王子か。とても頼もしいし、優しいよ。王太子としてみんなの期待を一身に背負っている」
「私、ちょっと緊張しちゃうけど、あの人がいると安心する」
「そうだね。僕も彼とはいい友達だ」
「また一緒に遊びたいな」
「もちろんだよ」

 そのとき、庭の奥から深い声が聞こえた。

「あれはお爺様かな」
「そう、リョウのお爺様と叔父さん、レウフォおじ様がいるよ」
「会いに行こう!」

 ふたりの笑顔に僕も自然と頬が緩む。

 ルステイン伯爵家のタウンハウスは、外観こそ控えめながら、中に入れば格調高い石造りの廊下と、落ち着いた装飾の応接間が出迎えてくれる。庭からナミリアと手をつないで戻ってくると、奥の書斎の扉が開いていた。

「お爺様、失礼します。リョウエストです」
「おう、よう来たなあ」

 大きな椅子に深く腰かけていたのは、ルステイン騎士爵…僕の母方の祖父、カイスル・ナフェル。白髪交じりの髪と深い皺、それでいて背筋はまっすぐだった。

「王都入りの挨拶、済ませてきたか?」
「うん。スサン商会のエアコンが快適すぎると笑ってた」
「はは、それは良かった。あれを考えたのもお前か?」
「うん。基本設計は僕」
「年端もいかぬ子供が、貴族の間で話題の品を作るとは……こいつぁ痛快だな」

 そう言ったのは、後ろから歩いてきた叔父――レウフォ・ナフェルだ。母の兄で、騎士ながら気さくで陽気な人。

「叔父様。久しぶり」
「背が少し伸びたな、リョウ。ナミリアとは、うまくやってるか?」
「うん。今日は一緒に双子の子守りもした」
「はは、将来有望な婿候補ってとこか?」
「そ、それは…まだ早い!」

 レウフォ叔父が豪快に笑うと、祖父も目を細めた。

「タウンハウスにも慣れたか? ここは元々、名の一団に関係した貴族の持ち物だったろう。王が手配してくれたとはいえ、気を使うだろうと思ってな」

「ううん。七種族の人が働いてくれている。本当にありがたい」
「そうか。そう言ってくれると我々も安心できる」

 祖父の声が、少しだけ柔らかくなった。

「お爺様、僕は…未来を記す者として、あらゆる種族と共に進むと決めたの。差別も偏見も、できるだけ小さくしていきたいの」
「…お前の母が、そう願っていた。わしも、あの子の志を誇りに思うておる。リョウエスト、お前もだ」
「ありがとう…」

扉の外から、ナミリアの声が響いた。

「リョウ!お茶の用意ができたって!」
「今行く!」

 立ち上がると、祖父が微笑む。

「行ってこい。若者は、よく食い、よく遊び、よく笑うことだ」
「うん!」

応接間に戻ると、すでにお茶の準備が整っていた。丸テーブルには焼きたてのクッキーや小さなケーキ、香ばしい香りの紅茶が並べられ、双子のアルフォンスとアメリアが椅子にちょこんと座っていた。

「リョウ!ここ、となり空いてるよ!」

ナミリアがにこにこと手を振っている。

「ありがとう、ナミリア」

 僕は彼女の隣に座り、まずはアルフォンスにスプーンを渡した。

「ほら、これでプリンをすくってみて」
「ぷ、ぷりん…やるーっ!」
「アメリアは…うん、おしぼり使えたね。えらい!」
「えへへー」
「リョウエストくん、子守うまくなったね」

 ナミリアが横目で笑う。

「訓練済みだからね。訓練よりこっちの方が大変かもしれないけど」
「ふふっ。ナビちゃんも、ちゃんと見てるよ」

 足元では翼猫のナビがふさふさと尻尾を揺らしながら見守っていた。
 そのとき、マックスさんが部屋に入ってきた。

「やあ、ティータイムに混ぜてもらっても?」
「もちろんです、マックスさん」
「おじいさまはお話終わったの?」

 ナミリアが聞くと、

「おうとも。レオニス卿もレウフォも、お前の相手が大仕事だったって笑ってたぞ」
「もうっ、失礼しちゃう!」

 一同が和やかに笑う中、レイアム夫人がふんわりと紅茶を注ぎながら話しかけた。

「リョウ、王都の暮らしは慣れてきたかしら?」
「うん。新しくもらったタウンハウスにも七種族のひとがいて、本当に心強い」
「それはよかったわ。エメイラさんもご一緒なんでしょう?」
「はい。彼女は女主人のつもりで振る舞っていて、毎日笑わされてます」
「なんだか微笑ましいな」

 マックスさんが目を細める。

「ねえリョウ、今度わたし、あなたのタウンハウスに行ってもいい?」

 ナミリアが少し照れたように言った。

「もちろん。双子も一緒に来てよ」
「やったー!」

 ふと、アルフォンスが小さく呟いた。

「りょうくん、おとうさんになって……」

「お、お父さんじゃなくて、友達だからね!?」

 ナミリアは顔を真っ赤にして、思わずアルフォンスの頭をぺちんと叩いた。

「ふえ~…いたいぃ…」
「よしよし、泣かない泣かない。クッキー、もう一枚あげようか」

 僕がそう言うと、アメリアも小さく手を伸ばしてきた。

「…ふふっ、リョウくんって、やっぱりお兄ちゃんだね」

 ナミリアが、ちょっとだけ嬉しそうに呟いた。
 午後の陽光が窓から差し込み、紅茶の香りがふわりと立ちのぼる。

 笑いと温もりに包まれたこの場所で、僕の社交シーズンは、またひとつ優しい思い出を刻んでいったのだった。
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する! 農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。 逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。 これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~

九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます! 七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。 しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。 食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。 孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。 これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。