【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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9歳の記す者。

ストラ兄さんの未来。

 久しぶりに、僕たち三兄弟が同じテーブルについた。場所は王都にあるスサン商会の支店、その会議室。静かに陽が差し込む中、昼食を兼ねての会談だった。

「…それにしても、ほんと久しぶりだな」

 ロイック兄さんが深く背もたれに身を沈めて言った。眉間にはいつも通り、考えごとの皺が刻まれている。

「忙しそうだね、兄さん。新しい支店、火の民自治領にできたんでしょう?」

 僕がそう言うと、兄さんは片手で顎をさすりながらうなずいた。

「四つの支店開設の手配をした。あっちは船の流通、こっちは薬品輸送…もう、頭が回らん。リョウ、店長やる気ないか?」

 冗談めかして言われたけど、僕は苦笑いするしかなかった。

「僕は研究と発明のことで手一杯だよ…でも、応援はするよ」
「そっか」

 ロイック兄さんは小さく笑って、次に隣に座るストラ兄さんに視線を向けた。

「で、ストラ。相談って何だ?」

 ストラ兄さんは頬杖をつきながら、しばし黙っていたが、やがて口を開いた。

「……ウルリッヒ殿下から声がかかってな。来春、学園を卒業したら、側近に迎えたいって話だ」

 その一言に、僕は思わず目を見開いた。

「側近!?それって、つまり…王家直属ってこと?」
「ああ。殿下の書記官として、政務や外交の補佐をする。名誉爵位も授けるつもりだって話だ」

ロイック兄さんが腕を組んだ。

「…ふむ。悪くない話だな。だが、問題は別にあるんだろう?」

「ああ。…俺、小さい頃からずっと言ってたろ? 『いつかスサン商会を手伝う』って。ロイック兄さんが今大変な時だから次は俺が支える番だって…でも、正直、揺れてる」

 僕は少し考えたあと、静かに尋ねた。

「…もしかして、マリーダさんやメリンさんのことも関係ある?」

ストラ兄さんは苦笑した。

「バレバレだな…そう、スクワンジャー公爵の娘マリーダ、ゼローキア侯爵の娘メリン。俺が爵位を持てば、どちらとも結婚が現実味を帯びる。あの二人と…ちゃんと向き合いたいと思ってる」

 するとロイック兄さんが表情を少し引き締めて言った。

「それなら、なおさらだ。本人たちに直接聞いてこい。『爵位があるから結婚する』なんてのは、相手を見くびってる。ちゃんと、今のお前のままで、どう思われてるかをな」

 ストラ兄さんは静かにうなずいた。

「わかった…ちゃんと、聞いてくる」

 翌日、また三人で会おうと決めて、僕たちはそれぞれの時間へと戻った。けれど、その日から、僕の心にも、少しだけ兄の未来がよぎるようになった。


 翌日、再びスサン商会の王都支店会議室に、三人の姿が揃った。昼下がりの空は快晴で、街路のざわめきが窓の外から届いてくる。

「…で? 行ってきたんだな」

 ロイック兄さんが腕を組んで問いかける。
 ストラ兄さんは椅子にどっかり座り、ふうっと長く息を吐いた。

「行ってきたよ。ちゃんと、両方にな」
「どうだった?」

 僕がそっと尋ねると、兄さんは少し笑って言った。

「…二人とも、俺の地位や爵位なんて、どうでもいいってさ。『ストラストが好きなことをしていて、笑っていてくれれば、それでいい』って」

 その言葉に、ロイック兄さんは目を細めた。

「ふん、だろうな…マリーダもメリンも、芯のある娘だ。爵位目当てで尻を追うような奴らじゃない」

 ストラ兄さんはぽりぽりと頭をかきながら、苦笑した。

「…安心したけど、同時に少し情けなかったな。勝手に焦って、自分の価値を爵位で測ろうとしてたんだから」

 僕はそっと口を開いた。

「でも、それってすごく大事なことだと思うよ。自分の足で確かめたんだもん。迷って、聞いて、納得したんだから」

 ストラ兄さんは少しの沈黙のあと、きっぱりと宣言した。

「俺は、スサン商会を支える。王太子殿下の側近は、辞退する」

 ロイック兄さんが無言で頷いた。

「そうか。…なら、覚悟を決めろ。スサン商会はもう『街の商人』じゃねぇ。今じゃ、王国でも屈指の大規模組織だ。お前が入れば、いずれ副会長以上の責務が待つぞ」
「上等だ。こちとら、売上帳と倉庫の数で寝る暇削ってきたんだ。兄貴が商会長になるなら、俺は最強の『右腕』になる」

 僕は笑った。

「三兄弟が揃ったスサン商会、最強だね…そうだ、料理部門だけ僕が独立して管轄してもいい?」
「お前だけ趣味に走るな」

 ストラ兄さんが笑い、僕も苦笑いで返す。

 でも、なんだろう。こんなふうに兄たちと肩を並べて未来を語るなんて、何年ぶりだろうか。

 その夜、ストラ兄さんは王太子殿下に決断を伝えるべく、謁見へと向かった。


 翌日、王城の執務室にて。第一王子ウルリッヒ殿下は、ストラ兄さんの話を静かに聞いていたという。

「なるほど…お前の心のままに、というわけだな」

 ウルリッヒ殿下は穏やかに言葉を返した。

「ああ。側近として働けることは光栄だが…俺の本分は、家族と、商会にあると気づいた」

 殿下は一瞬目を伏せ、やがて微笑んだ。

「ならば…それでもよい。だが、お前ほどの才と忠誠を、ただ見送るのも惜しい。そこで提案がある」
「提案……?」
「卒業後、『私の相談役』として、今後も必要に応じて意見を聞かせてほしい。スサン商会の一員でありながら、王家の耳を持つ立場として動く。それができるのは、お前だけだ」

 ストラ兄さんは目を見開いた。

「……それは、名誉か……それとも、試練か?」
「両方だな」

 ウルリッヒ殿下は笑いながら立ち上がった。

「名誉爵位は授けよう。ただし、それは『信頼』に裏打ちされた名誉だ。覚悟して受け取るといい」

 後日、スサン商会の王都支店に戻ってきた兄さんは、僕とロイック兄さんに報告した。

「……ってなわけで、殿下の相談役になった。爵位ももらったが、商会に残るぜ」

 ロイック兄さんは、珍しくしっかりと頷いた。

「なら、お前は『スサン商会の男爵』だな…がっつり働いてもらうぞ、ストラ」
「任せとけ。ロイック兄貴、リョウ、これからも三人でスサンを支えてこうぜ」

僕は静かに、それでも力強く答えた。

「うん。僕たち三兄弟で、未来をつくっていこう」

 こうして、新たな絆と決意を胸に、スサン商会が新たな形になろうとしていた。
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