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9歳の記す者。
第三回新製品発表会。
王城の会議室。毎年恒例となった新製品発表会が、今年も幕を開けようとしていた。室内はすでに満席に近く、王、王妃、第一王子ウルリッヒ様、そして今年から加わった第二王子ルマーニ様の姿もあった。宰相、大臣、官僚たちも顔を揃えている。今年はさらに数が増えてるなあ。
僕は壇上に立ち、深く一礼する。
「本日はご多忙の中ありがとうございます。今年は去年に比べて出品数が少ないです。でもどれも実用性に富んだ品ばかりです」
会場には小さな拍手が起こり、僕は一つ目の発明品を紹介する。
「ではまず、こちらをご覧ください。『軽量携帯式薬箱』…家庭用置き薬システムです」
「家庭用置き薬システム?」
新しく内務大臣になった貴族が聞く。僕は頷く。
僕が机の上に出したのは、片手で持てる木箱だった。中には小瓶がずらりと並んでいる。
「はい。これは各家庭に常備できる簡易な薬箱なの。中には風邪薬、消毒薬、傷薬、整腸剤、さらに頭痛薬といった基本的な薬が揃っています。そして重要なのは、この薬箱は薬師ギルドと提携して定期的に巡回して補充と精算を行うシステムになっております」
「補充と……精算?」
内務大臣が目を丸くする。
「はい。必要なときに必要な分だけ使用し、巡回の薬師が来た際に使った分だけ支払ってもらう。薬を買い置きする負担がなく、緊急時の備えにもなります」
「おお……! それは便利だ!」
と第一王子ウルリッヒ様。
ルマーニ様が身を乗り出してきた。
「それって……ぼくの部屋にも置ける?」
「もちろん、ルマーニ様。とても軽いのでお一人でも持てます。お城の中にも巡回ルートを作る予定です」
「わーい!」
その様子に王様が微笑み、うなずいた。
「家庭単位での健康管理が、ここまで来たか…。素晴らしい発想だな」
「これを行政の方と組めないかという提案です。どうでしょうか?」
僕は大臣と官僚を見渡す。財務大臣が手をあげる。
「その置き薬システム、最初に金がかかるのかな?」
「はい」
「ではそれを税金の一つとして手数料をいくらか上乗せして徴収しよう。そして薬箱を配布する。そう言う形なら手伝えるはずだ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「配布は行政部の仕事にしてもいいかもしれないな。より家族の構成がわかりやすくなるはずだ」
と内務大臣。
「うむ。その辺は閣議で相談をしてみよう」
と財務大臣がニコニコしながら言う。
「ありがとうございます。では次の発明に参りましょう」
僕は次に、灰色の布地でできたマントと上着を取り出した。
「こちらは耐火繊維で作られた衣服です。特殊な植物由来の繊維を使用しており、火の粉がかかっても燃え広がりません」
「耐火? ほんとうに?」
と官僚の一人が疑いの声を上げる。
僕は事前に用意しておいた火をマントの一部に近づける。誰かが息をのむ音がしたが、炎は一瞬はぜただけで燃え広がらなかった。
「……おおお!」
と場内がどよめく。
軍務大臣が手を挙げて質問する。
「これは兵士の装備にも利用できるのか?」
「もちろん可能です。既にドワーヴンベースにて試験運用中で、鍛冶職人たちからも高評価を得ています。火を扱う作業現場や台所でも活躍するでしょう」
「貴婦人方の料理中の事故も減りそうですね」
と王妃様が微笑んだ。
僕は続けて、三つ目の装置を持ち上げる。
「そしてこちらが、自動巻き上げ装置です。重い荷物を簡単に持ち上げる仕組みになっております」
テーブルの上に重石を置き、装置のレバーを回すと、軽々と持ち上がった。
「な、なにっ!? ぼくでも動かせるのか?」
と第二王子ルマーニ殿下がまた身を乗り出す。
「ええ、殿下。ぜひお試しください」
装置の取っ手を持ったルマーニ殿下が回すと、重石がふわりと上がった。
「すごい! ぼく、魔法使いみたいだ!」
会場から笑いが起こる。王様が満足げに頷き、肩越しにエメイラへ目をやった。
「…うむ、エメイラヒルデの見る目は間違いないな」
「ええ。中級魔術師程度の腕を誇るより王としての仕事をしっかりやるように言うぐらいは」
エメイラは涼やかに微笑みながら、王様へ一礼する。王様は少しだけ背筋を正した。相変わらず、彼女の前では王様も「子供」なのかもしれない。
「では、次は女性向けの商品でございます」
僕は小瓶と丸い玉を机に並べた。
「まずこちらが、ボディクリーム。乾燥を防ぎ、肌を滑らかに保つ効果がある。香りは数種類ご用意しました。そして、こちらが入浴剤、通称バスボム。お湯に入れると溶け出して香りと色が広がり、身体を芯から温めます。エルフの協力によりこちらはできました」
「まぁ……!」
と王妃様が声を上げる。
「溶けるの? 入浴剤が?」
「はい。見ていただきましょう」
僕が用意していたお湯の入った桶にバスボムを入れると、ぶくぶくと泡を立てながら色鮮やかに溶けていく。
「きれい…これは乙女心をくすぐりますね王妃様」
と王妃様付き女官長が目を輝かせながら言う。
女性官僚たちの間からもざわめきが広がる。
「香りも優しい……。これは欲しくなるな」
「既にスサン商会で試験販売を行っております。今後、王都支店でも取り扱い予定です」
女性たちが声を潜めながら「欲しい」「買いたい」とささやいている。
「ふむ、女性向けの市場を見越しているとは…リョウエスト、年の割に抜け目がないな」
「お褒めに預かり、光栄です、陛下」
そして――いよいよ次は、酒だ。
僕は壇上に立ち、深く一礼する。
「本日はご多忙の中ありがとうございます。今年は去年に比べて出品数が少ないです。でもどれも実用性に富んだ品ばかりです」
会場には小さな拍手が起こり、僕は一つ目の発明品を紹介する。
「ではまず、こちらをご覧ください。『軽量携帯式薬箱』…家庭用置き薬システムです」
「家庭用置き薬システム?」
新しく内務大臣になった貴族が聞く。僕は頷く。
僕が机の上に出したのは、片手で持てる木箱だった。中には小瓶がずらりと並んでいる。
「はい。これは各家庭に常備できる簡易な薬箱なの。中には風邪薬、消毒薬、傷薬、整腸剤、さらに頭痛薬といった基本的な薬が揃っています。そして重要なのは、この薬箱は薬師ギルドと提携して定期的に巡回して補充と精算を行うシステムになっております」
「補充と……精算?」
内務大臣が目を丸くする。
「はい。必要なときに必要な分だけ使用し、巡回の薬師が来た際に使った分だけ支払ってもらう。薬を買い置きする負担がなく、緊急時の備えにもなります」
「おお……! それは便利だ!」
と第一王子ウルリッヒ様。
ルマーニ様が身を乗り出してきた。
「それって……ぼくの部屋にも置ける?」
「もちろん、ルマーニ様。とても軽いのでお一人でも持てます。お城の中にも巡回ルートを作る予定です」
「わーい!」
その様子に王様が微笑み、うなずいた。
「家庭単位での健康管理が、ここまで来たか…。素晴らしい発想だな」
「これを行政の方と組めないかという提案です。どうでしょうか?」
僕は大臣と官僚を見渡す。財務大臣が手をあげる。
「その置き薬システム、最初に金がかかるのかな?」
「はい」
「ではそれを税金の一つとして手数料をいくらか上乗せして徴収しよう。そして薬箱を配布する。そう言う形なら手伝えるはずだ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「配布は行政部の仕事にしてもいいかもしれないな。より家族の構成がわかりやすくなるはずだ」
と内務大臣。
「うむ。その辺は閣議で相談をしてみよう」
と財務大臣がニコニコしながら言う。
「ありがとうございます。では次の発明に参りましょう」
僕は次に、灰色の布地でできたマントと上着を取り出した。
「こちらは耐火繊維で作られた衣服です。特殊な植物由来の繊維を使用しており、火の粉がかかっても燃え広がりません」
「耐火? ほんとうに?」
と官僚の一人が疑いの声を上げる。
僕は事前に用意しておいた火をマントの一部に近づける。誰かが息をのむ音がしたが、炎は一瞬はぜただけで燃え広がらなかった。
「……おおお!」
と場内がどよめく。
軍務大臣が手を挙げて質問する。
「これは兵士の装備にも利用できるのか?」
「もちろん可能です。既にドワーヴンベースにて試験運用中で、鍛冶職人たちからも高評価を得ています。火を扱う作業現場や台所でも活躍するでしょう」
「貴婦人方の料理中の事故も減りそうですね」
と王妃様が微笑んだ。
僕は続けて、三つ目の装置を持ち上げる。
「そしてこちらが、自動巻き上げ装置です。重い荷物を簡単に持ち上げる仕組みになっております」
テーブルの上に重石を置き、装置のレバーを回すと、軽々と持ち上がった。
「な、なにっ!? ぼくでも動かせるのか?」
と第二王子ルマーニ殿下がまた身を乗り出す。
「ええ、殿下。ぜひお試しください」
装置の取っ手を持ったルマーニ殿下が回すと、重石がふわりと上がった。
「すごい! ぼく、魔法使いみたいだ!」
会場から笑いが起こる。王様が満足げに頷き、肩越しにエメイラへ目をやった。
「…うむ、エメイラヒルデの見る目は間違いないな」
「ええ。中級魔術師程度の腕を誇るより王としての仕事をしっかりやるように言うぐらいは」
エメイラは涼やかに微笑みながら、王様へ一礼する。王様は少しだけ背筋を正した。相変わらず、彼女の前では王様も「子供」なのかもしれない。
「では、次は女性向けの商品でございます」
僕は小瓶と丸い玉を机に並べた。
「まずこちらが、ボディクリーム。乾燥を防ぎ、肌を滑らかに保つ効果がある。香りは数種類ご用意しました。そして、こちらが入浴剤、通称バスボム。お湯に入れると溶け出して香りと色が広がり、身体を芯から温めます。エルフの協力によりこちらはできました」
「まぁ……!」
と王妃様が声を上げる。
「溶けるの? 入浴剤が?」
「はい。見ていただきましょう」
僕が用意していたお湯の入った桶にバスボムを入れると、ぶくぶくと泡を立てながら色鮮やかに溶けていく。
「きれい…これは乙女心をくすぐりますね王妃様」
と王妃様付き女官長が目を輝かせながら言う。
女性官僚たちの間からもざわめきが広がる。
「香りも優しい……。これは欲しくなるな」
「既にスサン商会で試験販売を行っております。今後、王都支店でも取り扱い予定です」
女性たちが声を潜めながら「欲しい」「買いたい」とささやいている。
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「お褒めに預かり、光栄です、陛下」
そして――いよいよ次は、酒だ。
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