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9歳の記す者。
多種族都市の夜会。
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王都に入ってしばらく、ついに今日。年々盛り上がりを見せる、ルステイン伯爵家のタウンハウスでの夜会が開かれた。僕は今年から料理監修から離れてルステインの一貴族として参加する。今回はマックスさんが全部仕切った。
門の前に着いた瞬間、僕は目を丸くした。石畳の通路にはランタンが浮かび、色とりどりの光が弾けていた。中庭には水竜人の給仕がグラスを並べ、火の民の若い料理人が笑いながら薪の温度を見ている。獣人の警備が通路を軽やかに巡回し、小人の召使いが天井のシャンデリアを細やかに磨いていた。
「……すごいな、これは」
「おっ、やっと来たなリョウエスト!」
馴染みある陽気な声に振り返ると、タキシードに身を包んだルステイン伯爵マックスさんが腕を広げて僕を迎えてくれた。
「うわあ、マックスさん。毎年すごいけど、今年は格が違いますね!」
「そりゃあ、我がルステインが『多種族都市』を名乗るからには、やっぱり実物で証明せねばな? お前の助言のおかげだよ。ありがとうな、ほんとに」
僕は照れて笑った。マックスさんは貴族としての威厳もあるけど、普段はすごく気さくに接してくれるから嬉しい。
「そういえば、子供用の会場って…?」
「ふっふっふ、案内しよう。こっちだ」
マックスさんが扉を開けた先には、広い別室があった。中には、ナミリアが他の貴族の子たちとドレス姿でおしゃべりしていて、そのそばで双子のアルフォンスくんとアメリアちゃんがちょこちょこ走り回っている。
「これ全部……子供たち?」
「そうだ。今年から『年齢制限撤廃』ってのをやってみてな。子供たちにこそ、今のルステインを見せて、未来を創る土台になってもらいたかったんだ」
マックスさんは少し得意げに胸を張る。
「でもそれ…王国史上初じゃ?」
「だからこそやる価値がある。こういうのはな、誰かが最初にやらなきゃ始まらんのさ」
僕は感心しきりでうなずいた。そこへナミリアがこちらに気づいて手を振る。
「リョウ、こっち!お会いできてうれしい!」
「ナミリア、元気そうでなにより。アルフォンスくんもアメリアちゃんも…って、あーっ、こら、テーブルの上に登らない!」
あたふたと双子を抱き上げて笑っていると、後ろでマックスさんがくすくすと笑う。
「ま、こういう場も大切だろう? お前が来てくれれば、子供たちも安心して遊べる」
「僕でいいんですか?」
「当然だ。なにせ、お前は王国で一番『子供の心を知る名誉伯爵』なんだからな?」
その言葉に、ちょっとだけ照れながら、僕は「任せてください」と胸を張った。
やがて会場には貴族たちが集まり始め、獣人の執事が名前を読み上げていく。ヒト、エルフ、ドワーフ、獣人、火の民、水竜人、小人…様々な種族が会話を交わし、誰もが自然と打ち解け合っていた。
「ここまで多種族が自然に混ざる夜会、他にないですよね」
「それが理想だろ? この雰囲気を見てくれ、リョウ」
そう言ったマックスさんの目は誇らしく、少し潤んでいた。
「なぁ、次はどこを変えていこうか? 私たちはまだまだやれるぞ」
僕は微笑んで答えた。
「ええ。まだまだ、やれることは山ほどありますからね」
しばらく他の貴族と話をして大広間へと戻ると、マックスさんが、満面の笑みで手を振っていた。白い手袋の隙間からのぞく指先はほんのり料理の香りがする。
「まさか料理してたんですか、マックスさん?」
「見てただけだ。手は出してない…ちょっと味見はしたがな!」
マックスさんはにやりと笑って肩をすくめた。僕が笑うと、彼は小さな声でささやくように言った。
「…あの子らが作ったんだ。水竜人とドワーフの料理人達がな。自分たちで考えて、協力して。すごいだろ?」
「うん、すごい。信頼されてるって証ですよ。伯爵としての」
「やめろって…照れるだろうが」
目の端で、マックスさんがふっと目を細めた。厳しいはずの貴族社会で、ここまで自由で、のびのびとした空気を作り上げるなんて、簡単なことじゃない。
そこへタイミングよく、王家の使いが入ってくる。
「第一王子殿下、第二王子殿下…ご到着です!」
静まり返る会場。その瞬間、騎士たちの敬礼とともに、ウルリッヒ王太子とルマーニ王子が姿を見せた。
「おぉ、殿下…!」
「まさかご臨席とは…」
「ルステインはやはり特別だな…」
周囲がざわめく中、マックスさんはすぐさま一歩前へ出て、膝をついて深く礼をした。
「ウルリッヒ殿下、ルマーニ殿下、ご光臨いただきありがとうございます。ルステイン伯爵マクシミリアン、心より歓迎いたします」
ウルリッヒ王太子は少し笑って答えた。
「堅苦しい挨拶はいい。今日は見学だ。それに…ルマーニがどうしても来たがったのだ」
するとルマーニ王子が、顔をぱっと輝かせて駆け出す。
「あそぼー!」
子供会場の方から「ルマーニさまー!」「こっちですわー!」と声が響く。貴族たちは微笑ましそうに見守っていた。
「…あの光景が、『これから』を変えるんだろうな」
僕がつぶやくと、マックスさんがうなずいた。
「子供たちが偏見なく過ごせる場所。それがルステインであってほしい。王子たちにとっても、未来の『常識』を肌で感じる機会になればと願ってる」
ウルリッヒ王太子が、こちらへ歩いてきた。
「マクシミリアン伯爵。この夜会、まさに理想のかたちだ。私も、正式にルステインを視察したい。王子としてではなく、一人の人間として」
「…光栄にございます! 殿下のそのお言葉、領民すべてにとっての励みになります!」
マックスさんの声が、会場中にしっかりと響いた。誰もが自然と拍手を送る。そしてその場にいた各種族の貴族たちも、それぞれの仲間たちと視線を交わし、うなずき合う。
「なあ、リョウ」
「なんです?」
マックスさんは小さく肩を叩いてきた。
「お前が初めて私の厨房に入って料理してからいったい何年経ったんだ?」
「それ小さい頃の話!」
吹き出す僕に、彼は肩を揺らして笑った。
「でもな。あの時、お前がくれた『違う視点』が、全部の始まりだったんだ。ありがとな」
「…どういたしまして。けど、今日のこの空気を作ったのはマックスさんですよ」
「いや、俺一人じゃムリだった。俺たちだからこそ、できたことだ」
握手を交わし、ふと周囲を見渡すと、エメイラが水竜人の女性と楽しげに話していた。小人の貴族がドワーフの少年と手を取り合ってダンスしている。
夜会というより、まるで『未来』を見ているようだった。
門の前に着いた瞬間、僕は目を丸くした。石畳の通路にはランタンが浮かび、色とりどりの光が弾けていた。中庭には水竜人の給仕がグラスを並べ、火の民の若い料理人が笑いながら薪の温度を見ている。獣人の警備が通路を軽やかに巡回し、小人の召使いが天井のシャンデリアを細やかに磨いていた。
「……すごいな、これは」
「おっ、やっと来たなリョウエスト!」
馴染みある陽気な声に振り返ると、タキシードに身を包んだルステイン伯爵マックスさんが腕を広げて僕を迎えてくれた。
「うわあ、マックスさん。毎年すごいけど、今年は格が違いますね!」
「そりゃあ、我がルステインが『多種族都市』を名乗るからには、やっぱり実物で証明せねばな? お前の助言のおかげだよ。ありがとうな、ほんとに」
僕は照れて笑った。マックスさんは貴族としての威厳もあるけど、普段はすごく気さくに接してくれるから嬉しい。
「そういえば、子供用の会場って…?」
「ふっふっふ、案内しよう。こっちだ」
マックスさんが扉を開けた先には、広い別室があった。中には、ナミリアが他の貴族の子たちとドレス姿でおしゃべりしていて、そのそばで双子のアルフォンスくんとアメリアちゃんがちょこちょこ走り回っている。
「これ全部……子供たち?」
「そうだ。今年から『年齢制限撤廃』ってのをやってみてな。子供たちにこそ、今のルステインを見せて、未来を創る土台になってもらいたかったんだ」
マックスさんは少し得意げに胸を張る。
「でもそれ…王国史上初じゃ?」
「だからこそやる価値がある。こういうのはな、誰かが最初にやらなきゃ始まらんのさ」
僕は感心しきりでうなずいた。そこへナミリアがこちらに気づいて手を振る。
「リョウ、こっち!お会いできてうれしい!」
「ナミリア、元気そうでなにより。アルフォンスくんもアメリアちゃんも…って、あーっ、こら、テーブルの上に登らない!」
あたふたと双子を抱き上げて笑っていると、後ろでマックスさんがくすくすと笑う。
「ま、こういう場も大切だろう? お前が来てくれれば、子供たちも安心して遊べる」
「僕でいいんですか?」
「当然だ。なにせ、お前は王国で一番『子供の心を知る名誉伯爵』なんだからな?」
その言葉に、ちょっとだけ照れながら、僕は「任せてください」と胸を張った。
やがて会場には貴族たちが集まり始め、獣人の執事が名前を読み上げていく。ヒト、エルフ、ドワーフ、獣人、火の民、水竜人、小人…様々な種族が会話を交わし、誰もが自然と打ち解け合っていた。
「ここまで多種族が自然に混ざる夜会、他にないですよね」
「それが理想だろ? この雰囲気を見てくれ、リョウ」
そう言ったマックスさんの目は誇らしく、少し潤んでいた。
「なぁ、次はどこを変えていこうか? 私たちはまだまだやれるぞ」
僕は微笑んで答えた。
「ええ。まだまだ、やれることは山ほどありますからね」
しばらく他の貴族と話をして大広間へと戻ると、マックスさんが、満面の笑みで手を振っていた。白い手袋の隙間からのぞく指先はほんのり料理の香りがする。
「まさか料理してたんですか、マックスさん?」
「見てただけだ。手は出してない…ちょっと味見はしたがな!」
マックスさんはにやりと笑って肩をすくめた。僕が笑うと、彼は小さな声でささやくように言った。
「…あの子らが作ったんだ。水竜人とドワーフの料理人達がな。自分たちで考えて、協力して。すごいだろ?」
「うん、すごい。信頼されてるって証ですよ。伯爵としての」
「やめろって…照れるだろうが」
目の端で、マックスさんがふっと目を細めた。厳しいはずの貴族社会で、ここまで自由で、のびのびとした空気を作り上げるなんて、簡単なことじゃない。
そこへタイミングよく、王家の使いが入ってくる。
「第一王子殿下、第二王子殿下…ご到着です!」
静まり返る会場。その瞬間、騎士たちの敬礼とともに、ウルリッヒ王太子とルマーニ王子が姿を見せた。
「おぉ、殿下…!」
「まさかご臨席とは…」
「ルステインはやはり特別だな…」
周囲がざわめく中、マックスさんはすぐさま一歩前へ出て、膝をついて深く礼をした。
「ウルリッヒ殿下、ルマーニ殿下、ご光臨いただきありがとうございます。ルステイン伯爵マクシミリアン、心より歓迎いたします」
ウルリッヒ王太子は少し笑って答えた。
「堅苦しい挨拶はいい。今日は見学だ。それに…ルマーニがどうしても来たがったのだ」
するとルマーニ王子が、顔をぱっと輝かせて駆け出す。
「あそぼー!」
子供会場の方から「ルマーニさまー!」「こっちですわー!」と声が響く。貴族たちは微笑ましそうに見守っていた。
「…あの光景が、『これから』を変えるんだろうな」
僕がつぶやくと、マックスさんがうなずいた。
「子供たちが偏見なく過ごせる場所。それがルステインであってほしい。王子たちにとっても、未来の『常識』を肌で感じる機会になればと願ってる」
ウルリッヒ王太子が、こちらへ歩いてきた。
「マクシミリアン伯爵。この夜会、まさに理想のかたちだ。私も、正式にルステインを視察したい。王子としてではなく、一人の人間として」
「…光栄にございます! 殿下のそのお言葉、領民すべてにとっての励みになります!」
マックスさんの声が、会場中にしっかりと響いた。誰もが自然と拍手を送る。そしてその場にいた各種族の貴族たちも、それぞれの仲間たちと視線を交わし、うなずき合う。
「なあ、リョウ」
「なんです?」
マックスさんは小さく肩を叩いてきた。
「お前が初めて私の厨房に入って料理してからいったい何年経ったんだ?」
「それ小さい頃の話!」
吹き出す僕に、彼は肩を揺らして笑った。
「でもな。あの時、お前がくれた『違う視点』が、全部の始まりだったんだ。ありがとな」
「…どういたしまして。けど、今日のこの空気を作ったのはマックスさんですよ」
「いや、俺一人じゃムリだった。俺たちだからこそ、できたことだ」
握手を交わし、ふと周囲を見渡すと、エメイラが水竜人の女性と楽しげに話していた。小人の貴族がドワーフの少年と手を取り合ってダンスしている。
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◇ ◇ ◇
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全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
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