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9歳の記す者。
練磨の時間。
「さて、それじゃあ今日から本格的に『魔術』を教えるわよ。基礎は座学で教えた通りよ。今日は実践ね」
エメイラは軽やかに言いながら、いつものように冷静な眼差しをこちらに向けていた。その表情は優しいが、どこか厳しさも帯びている。周りは林、周囲にはミザーリが警護している。そのミザーリも面白そうにニコニコしていた。
「今までは『魔力の矢』だけで満足していたかもしれないけど、それだけじゃ通用しない相手も増えてくる。特に、これからリョウが関わっていくであろう『現実』にはね」
「はい、よろしくお願いします!」
僕は大きく頷いた。ルステインの発展とともに僕自身の立場も大きくなりつつある。その分、護衛や防衛の手段として魔術は必須だった。
「あら。殊勝な態度ね。まずは『初級魔術』からしっかり叩き込むわ」
エメイラが指を鳴らすと、空間に簡易魔術演習場が展開される。周囲には模擬の標的や防御魔法道具の練習用ゴーレムが並ぶ。
「最初に『火』系ね。『小火弾』」
エメイラの指先から、小さな火球がシュッと音を立てて放たれた。ゴーレムの胸に当たり、パッと火花を散らす。
「これは敵を威嚇したり、軽いダメージを与えるのに使える。スピードが命。詠唱の短縮が鍵になるわ」
僕も構えて、集中する。
「《小火弾》」
火球が一瞬、ふらつきながらも真っすぐ飛び、ゴーレムの足元に命中した。火花が散る。
「うん、悪くない。もっと詠唱のリズムを意識して。次は《恐怖》」
「はい、《恐怖》!」
標的のゴーレムが一瞬ビクリと震えたように見えた。エメイラが微笑む。
「これ、意外と効く相手多いのよ。相手の『本能』を刺激する魔術。小さな隙を作るのに便利」
その後も訓練は続く。
「《眩惑》」
僕の姿がふっとかき消えたようになり、ゴーレムの視界から外れた。エメイラが小さく拍手する。
「その『眩惑』はなかなか良い出来ね。すぐ解けるけど、不意打ちには使えるわ。で、次。『魔力の盾』
「はい、《魔力の盾》!」
魔力の壁が腕元に展開される。だが、エメイラが軽く放った『火矢』の模擬魔術はそれを貫通してしまった。
「まだまだ、盾の『質』が低いわね。もっと魔力の流れを均一にして」
「くっ…が、がんばる」
汗が額に滲む。
その後も、
「《誘眠》」
「効かないわよ、私には」
「《念動》」
「んー、もうちょっと強く意識して」
「《幻影》…これは、どう?」
「まあまあね。リョウの幻影は動きがまだぎこちない。工夫の余地はあるわ」
休憩時間、エメイラはお茶を淹れながらぽつりと呟いた。
「でも、これだけできていれば、初級魔術としては申し分ないわ。これから先は応用をどう効かせるか。戦いは『知恵』と『技』の勝負よ」
「ありがとう。あ、そうだ。『生命感知』も練習したい」
「ふふ、よく思い出したわね。《生命感知!》してみて」
僕は目を閉じて魔力を外へと広げる。すると、森の小動物や、遠くにいたナビの気配が『泡』のように浮かび上がった。
「うん、いい反応。そう、『種類』まで把握できるようになれば完璧よ。では応用で『植物探知』と『毒見』、『鉱物探知』なんかも今度教えるわね」
「ありがと」
休憩をしばらく取る。林に良い風が吹いている。
「ここからが『中級』よ」
エメイラの声が一段と真剣になる。
「《呪縛の荊》、やってみて」
「《呪縛の荊》」
地面から黒い蔓のような魔力が伸び、ゴーレムの足を絡め取る。だがすぐに引き千切られてしまった。
「まだまだね。魔力の『重み』を加える意識を忘れないで」
続けて、
「《魔術の目》」
小さな青白い球体が浮かび上がり、空をふよふよと舞う。その視界が僕の頭の中に流れ込んでくる。
「うお…これ、面白い…!」
「偵察や監視、裏手の確認なんかにも使えるわよ。地味に便利。『《大治癒》』」
僕が魔術の詠唱を終えると、標的となる傷を負った模擬ゴーレムに光が降り注ぎ、傷がゆっくり癒えていった。
「……これは、すごい」
「でしょ? でも、かなり魔力を使うから乱用は厳禁よ。つづいて『《危険感知》』」
薄い膜のような物が広がって探知する。残念?ながら危険なものは感じなかった。
「これはかなり使えるわ。何かあったら使ってみて。これが反応してたら要注意よ」
「わかった」
「攻撃系は基本魔法で覚えましょ。あなたの魔力量ならそれでいいでしょうね。最近『嵐』系も覚えたでしょ?」
「うん。水の嵐と光の嵐」
「なら良いわ。複数を狙えるもの。まだ三系統?」
「うん。風と水と光」
「四系統は楽に使えるわよ」
「もうちょっと慣れてからにする」
「わかったわ。そろそろ終わりましょ」
「うん」
ミザーリがニコニコしながら言う。
「これで主の手数が増えましたね。今度手合わせを」
「怖いなぁ。手を抜いてよ」
「いえ。手を抜いたら訓練になりません」
「うへぇ」
訓練を終え、夕方の光が差し込む。
「…まだまだ、だなぁ。全然エメイラには通用しなかった」
「当然でしょ。私は百年以上訓練してるんだから」
エメイラは微笑んで僕の頭を軽く撫でた。
「でも、今日のリョウはとても良かったわよ。魔術は一朝一夕で身につくものじゃない。積み重ねこそが力になるの。焦らず、自信を持って」
「……うん!」
夕焼けの中で、僕は確かな手応えと課題を感じながら、次なる魔術の階段へと心を燃やすのだった。
エメイラは軽やかに言いながら、いつものように冷静な眼差しをこちらに向けていた。その表情は優しいが、どこか厳しさも帯びている。周りは林、周囲にはミザーリが警護している。そのミザーリも面白そうにニコニコしていた。
「今までは『魔力の矢』だけで満足していたかもしれないけど、それだけじゃ通用しない相手も増えてくる。特に、これからリョウが関わっていくであろう『現実』にはね」
「はい、よろしくお願いします!」
僕は大きく頷いた。ルステインの発展とともに僕自身の立場も大きくなりつつある。その分、護衛や防衛の手段として魔術は必須だった。
「あら。殊勝な態度ね。まずは『初級魔術』からしっかり叩き込むわ」
エメイラが指を鳴らすと、空間に簡易魔術演習場が展開される。周囲には模擬の標的や防御魔法道具の練習用ゴーレムが並ぶ。
「最初に『火』系ね。『小火弾』」
エメイラの指先から、小さな火球がシュッと音を立てて放たれた。ゴーレムの胸に当たり、パッと火花を散らす。
「これは敵を威嚇したり、軽いダメージを与えるのに使える。スピードが命。詠唱の短縮が鍵になるわ」
僕も構えて、集中する。
「《小火弾》」
火球が一瞬、ふらつきながらも真っすぐ飛び、ゴーレムの足元に命中した。火花が散る。
「うん、悪くない。もっと詠唱のリズムを意識して。次は《恐怖》」
「はい、《恐怖》!」
標的のゴーレムが一瞬ビクリと震えたように見えた。エメイラが微笑む。
「これ、意外と効く相手多いのよ。相手の『本能』を刺激する魔術。小さな隙を作るのに便利」
その後も訓練は続く。
「《眩惑》」
僕の姿がふっとかき消えたようになり、ゴーレムの視界から外れた。エメイラが小さく拍手する。
「その『眩惑』はなかなか良い出来ね。すぐ解けるけど、不意打ちには使えるわ。で、次。『魔力の盾』
「はい、《魔力の盾》!」
魔力の壁が腕元に展開される。だが、エメイラが軽く放った『火矢』の模擬魔術はそれを貫通してしまった。
「まだまだ、盾の『質』が低いわね。もっと魔力の流れを均一にして」
「くっ…が、がんばる」
汗が額に滲む。
その後も、
「《誘眠》」
「効かないわよ、私には」
「《念動》」
「んー、もうちょっと強く意識して」
「《幻影》…これは、どう?」
「まあまあね。リョウの幻影は動きがまだぎこちない。工夫の余地はあるわ」
休憩時間、エメイラはお茶を淹れながらぽつりと呟いた。
「でも、これだけできていれば、初級魔術としては申し分ないわ。これから先は応用をどう効かせるか。戦いは『知恵』と『技』の勝負よ」
「ありがとう。あ、そうだ。『生命感知』も練習したい」
「ふふ、よく思い出したわね。《生命感知!》してみて」
僕は目を閉じて魔力を外へと広げる。すると、森の小動物や、遠くにいたナビの気配が『泡』のように浮かび上がった。
「うん、いい反応。そう、『種類』まで把握できるようになれば完璧よ。では応用で『植物探知』と『毒見』、『鉱物探知』なんかも今度教えるわね」
「ありがと」
休憩をしばらく取る。林に良い風が吹いている。
「ここからが『中級』よ」
エメイラの声が一段と真剣になる。
「《呪縛の荊》、やってみて」
「《呪縛の荊》」
地面から黒い蔓のような魔力が伸び、ゴーレムの足を絡め取る。だがすぐに引き千切られてしまった。
「まだまだね。魔力の『重み』を加える意識を忘れないで」
続けて、
「《魔術の目》」
小さな青白い球体が浮かび上がり、空をふよふよと舞う。その視界が僕の頭の中に流れ込んでくる。
「うお…これ、面白い…!」
「偵察や監視、裏手の確認なんかにも使えるわよ。地味に便利。『《大治癒》』」
僕が魔術の詠唱を終えると、標的となる傷を負った模擬ゴーレムに光が降り注ぎ、傷がゆっくり癒えていった。
「……これは、すごい」
「でしょ? でも、かなり魔力を使うから乱用は厳禁よ。つづいて『《危険感知》』」
薄い膜のような物が広がって探知する。残念?ながら危険なものは感じなかった。
「これはかなり使えるわ。何かあったら使ってみて。これが反応してたら要注意よ」
「わかった」
「攻撃系は基本魔法で覚えましょ。あなたの魔力量ならそれでいいでしょうね。最近『嵐』系も覚えたでしょ?」
「うん。水の嵐と光の嵐」
「なら良いわ。複数を狙えるもの。まだ三系統?」
「うん。風と水と光」
「四系統は楽に使えるわよ」
「もうちょっと慣れてからにする」
「わかったわ。そろそろ終わりましょ」
「うん」
ミザーリがニコニコしながら言う。
「これで主の手数が増えましたね。今度手合わせを」
「怖いなぁ。手を抜いてよ」
「いえ。手を抜いたら訓練になりません」
「うへぇ」
訓練を終え、夕方の光が差し込む。
「…まだまだ、だなぁ。全然エメイラには通用しなかった」
「当然でしょ。私は百年以上訓練してるんだから」
エメイラは微笑んで僕の頭を軽く撫でた。
「でも、今日のリョウはとても良かったわよ。魔術は一朝一夕で身につくものじゃない。積み重ねこそが力になるの。焦らず、自信を持って」
「……うん!」
夕焼けの中で、僕は確かな手応えと課題を感じながら、次なる魔術の階段へと心を燃やすのだった。
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