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12歳の疾走。
12歳の疾走。
12歳になった。僕、リョウエスト・バァン・スサンは現在、旅の準備中だ。久しぶりの王都行の旅である。と言うのは2年間、社交シーズンはドラゴンのリディアの面倒を見よ、との王命により参加しなかったからだ。リディアはかなり自立してきたので、飲みにきた王様がもう良いか、と言い出し今年からまた社交シーズンに参加ということになった。僕の身長は伸びてもう大人、と言っても良い身長になったので、この王都行きのために新たに衣装を揃えた。特に貴族服はレディルステインが丹精込めてデザインしたもので、『名誉伯爵』らしいものになったと思う。普段着もこれを機に統一して黒を基調にしたメキシコのマリアッチ衣装のような軽い装飾がついたものにした。理由は6歳から色々用意した中で各種族から評判が良かった服だったからである。そんな衣装と旅装を整えて収納にしまい、準備を終える。ストークが呼びにきたので、僕はナビ、エメイラとミザーリを連れてアトリエに向かった。
アトリエにはいつものメンバーであるリディア、フィグさん、ギピア、キーカ、サッチ、アレク、ボルク、セルブロに加えて青の技の6人とエルグナ率いる陽炎隊10人が揃っている。陽炎隊の6人をアトリエの警備に回して残り4人と青の技、アレクが王都行きのメンバーだ。リディアがいるからそんな警備はいらないと思うが、これも王命なので仕方ない。
このメンバー内で変わった事と言うと『子供メンバー』が全員成人となった。そしてストークが有言実行で近くに家を借り、ギピアと暮らしはじめた。どちらも親類が縁遠く結婚式はしないそうだ。青の技は青の技で幸せになって欲しいが毎日僕の警護や情報収集に明け暮れているのを見ると結婚は遠そうである。
僕は、というと特に変わりはない。初等学校の学びを続けつつ、アトリエで研究し、リョウエスト商会の商会長としての責務を果たしている。アトリエでの料理試作も繰り返し、『未来を記すもの』としてはリディアを連れて異種族の拠点に足を運び、交流し、生産現場や市場の視察に出向いた。リディアはあまり種族の違いをわかっておらず、何故僕が調停役をやっているのかと不思議がっていたが、実際に赴いてみるとその多様性に驚き、より人間、というものが好きになったようである。その他王様が時折飲みに来るのでそれに付き合ったり、王太子となったウルリッヒ殿下や上級貴族が視察に来た時に案内役をしたりと、貴族としても職務を全うしていると思う。
家族に関しては色々と変化があった。まずロイック兄さんのお嫁さんの中でマリカ姉さんと、ケリィ姉さんとジェン姉さんが同時期に出産予定である。それからミシェ姉さんも第一子をみごもっている。つまり、お父さんお母さんはおじいちゃん、おばあちゃんとなるのだ。喜んだのは王都にいるお爺さんと、ルステインで騎士爵をしているお爺様とお婆様で、休みが取れるとしょっちゅう見にくる。孫は可愛いと言うが、ひ孫はさらに可愛いのであろう。ストラ兄さんはかなり長い話し合いのあと、スクワンジャー公爵家のマリーダさんと、ゼローキア侯爵家のメリンさんと婚約が決まり、結婚間近である。ストラ兄さんの結婚式が終わったあと、僕はアトリエに住もうと思っている。今もほとんど寝に帰っているだけだしね。
ルステインから王都の運河開通がもうすぐというニュースが届き、物流は劇的に変わるだろうと思われる。僕の事業の未来にも大きな影響があるはずだ。獣人隊商もこの為大きく形態を変えた。ルステインから王都間の路線は残しつつも他領に向けて網の目のように森に道標を張り巡らせ、各地に向けて荷物が運ばれる形になったのだ。ルステインのこうした流れの変化を受け、王都も動き、国主導でこの獣人隊商システムが採用された。エルフ、獣人の雇用拡大にエルフ伯、獣人伯よりお褒めの言葉をもらった。
しかし飛行機の製作は依然として難航している。発明品は特に目覚ましいものはないが、地道な努力を積み重ねるしかないと自分に言い聞かせている。米は収量と味に驚いた王様一家と大臣達の意向で今年まで市場に出さず、増産増産で一気に市場に出す話になった。この社交シーズンで発表しても良いと言う事で、王都に行ってから早速イタヌさんを呼んでレシピ登録をする事になっている。
僕は身支度を整えて、アトリエの外に出る。肩の上にナビが乗る。御者のアレクが厳格な表情で馬車の前で立っている。ストーク、エメイラ、ミザーリと馬車に乗り込み、護衛の皆がそれぞれ馬に乗り付き添う。
馬車は静かにルステインの街を離れた。城門を抜けて、見慣れた広い畑や林がゆっくりと後ろへ遠ざかっていく。朝の澄んだ空気の中、僕はこれから始まる長い旅路を思いながら、少しだけ緊張を覚えた。
この旅の目的は明確だった。久しぶりの王都の社交シーズンに参加し、新たな商談や人脈を築き、未来の礎を固めること。今回は新製品の発表はないが、それだけにじっくりと各貴族や要人と向き合う時間を持てるだろう。
馬車は運河沿いの道を走る。間もなく完成する運河の工事現場がちらほらと見える。水路を通じて物資が大量に行き来する様子を思い浮かべ、事業の拡大を夢見た。
途中、青の技たちは細かな警戒を続けている。彼らの厳しい目つきは、危険を察知し、守るためのものだ。ミザーリは時折僕の横で静かに見守ってくれる。火の民らしい鋭い視線は赤外線で遠くの動きを捉え、夜間の警備に役立つだろう。エメイラは冷静に資料を見返し、社交の場で使う知識を磨いている。
ナビは小さく丸まりながらも、翼をゆっくりと動かしている。まるで旅の始まりを祝うように。
馬車が小さな村を通り過ぎ、森の中の道に入る。自然の息遣いが聞こえる中、僕は未来のことを考えた。これからの一年で、どんな発明や料理、外交が待っているのか。
そして、この旅が終わる頃、十一歳の僕はさらに多くの経験を積み、より大きな未来を見据えているだろう。
馬車は今日も進む。社交シーズンの幕開けはもう間近だ。
アトリエにはいつものメンバーであるリディア、フィグさん、ギピア、キーカ、サッチ、アレク、ボルク、セルブロに加えて青の技の6人とエルグナ率いる陽炎隊10人が揃っている。陽炎隊の6人をアトリエの警備に回して残り4人と青の技、アレクが王都行きのメンバーだ。リディアがいるからそんな警備はいらないと思うが、これも王命なので仕方ない。
このメンバー内で変わった事と言うと『子供メンバー』が全員成人となった。そしてストークが有言実行で近くに家を借り、ギピアと暮らしはじめた。どちらも親類が縁遠く結婚式はしないそうだ。青の技は青の技で幸せになって欲しいが毎日僕の警護や情報収集に明け暮れているのを見ると結婚は遠そうである。
僕は、というと特に変わりはない。初等学校の学びを続けつつ、アトリエで研究し、リョウエスト商会の商会長としての責務を果たしている。アトリエでの料理試作も繰り返し、『未来を記すもの』としてはリディアを連れて異種族の拠点に足を運び、交流し、生産現場や市場の視察に出向いた。リディアはあまり種族の違いをわかっておらず、何故僕が調停役をやっているのかと不思議がっていたが、実際に赴いてみるとその多様性に驚き、より人間、というものが好きになったようである。その他王様が時折飲みに来るのでそれに付き合ったり、王太子となったウルリッヒ殿下や上級貴族が視察に来た時に案内役をしたりと、貴族としても職務を全うしていると思う。
家族に関しては色々と変化があった。まずロイック兄さんのお嫁さんの中でマリカ姉さんと、ケリィ姉さんとジェン姉さんが同時期に出産予定である。それからミシェ姉さんも第一子をみごもっている。つまり、お父さんお母さんはおじいちゃん、おばあちゃんとなるのだ。喜んだのは王都にいるお爺さんと、ルステインで騎士爵をしているお爺様とお婆様で、休みが取れるとしょっちゅう見にくる。孫は可愛いと言うが、ひ孫はさらに可愛いのであろう。ストラ兄さんはかなり長い話し合いのあと、スクワンジャー公爵家のマリーダさんと、ゼローキア侯爵家のメリンさんと婚約が決まり、結婚間近である。ストラ兄さんの結婚式が終わったあと、僕はアトリエに住もうと思っている。今もほとんど寝に帰っているだけだしね。
ルステインから王都の運河開通がもうすぐというニュースが届き、物流は劇的に変わるだろうと思われる。僕の事業の未来にも大きな影響があるはずだ。獣人隊商もこの為大きく形態を変えた。ルステインから王都間の路線は残しつつも他領に向けて網の目のように森に道標を張り巡らせ、各地に向けて荷物が運ばれる形になったのだ。ルステインのこうした流れの変化を受け、王都も動き、国主導でこの獣人隊商システムが採用された。エルフ、獣人の雇用拡大にエルフ伯、獣人伯よりお褒めの言葉をもらった。
しかし飛行機の製作は依然として難航している。発明品は特に目覚ましいものはないが、地道な努力を積み重ねるしかないと自分に言い聞かせている。米は収量と味に驚いた王様一家と大臣達の意向で今年まで市場に出さず、増産増産で一気に市場に出す話になった。この社交シーズンで発表しても良いと言う事で、王都に行ってから早速イタヌさんを呼んでレシピ登録をする事になっている。
僕は身支度を整えて、アトリエの外に出る。肩の上にナビが乗る。御者のアレクが厳格な表情で馬車の前で立っている。ストーク、エメイラ、ミザーリと馬車に乗り込み、護衛の皆がそれぞれ馬に乗り付き添う。
馬車は静かにルステインの街を離れた。城門を抜けて、見慣れた広い畑や林がゆっくりと後ろへ遠ざかっていく。朝の澄んだ空気の中、僕はこれから始まる長い旅路を思いながら、少しだけ緊張を覚えた。
この旅の目的は明確だった。久しぶりの王都の社交シーズンに参加し、新たな商談や人脈を築き、未来の礎を固めること。今回は新製品の発表はないが、それだけにじっくりと各貴族や要人と向き合う時間を持てるだろう。
馬車は運河沿いの道を走る。間もなく完成する運河の工事現場がちらほらと見える。水路を通じて物資が大量に行き来する様子を思い浮かべ、事業の拡大を夢見た。
途中、青の技たちは細かな警戒を続けている。彼らの厳しい目つきは、危険を察知し、守るためのものだ。ミザーリは時折僕の横で静かに見守ってくれる。火の民らしい鋭い視線は赤外線で遠くの動きを捉え、夜間の警備に役立つだろう。エメイラは冷静に資料を見返し、社交の場で使う知識を磨いている。
ナビは小さく丸まりながらも、翼をゆっくりと動かしている。まるで旅の始まりを祝うように。
馬車が小さな村を通り過ぎ、森の中の道に入る。自然の息遣いが聞こえる中、僕は未来のことを考えた。これからの一年で、どんな発明や料理、外交が待っているのか。
そして、この旅が終わる頃、十一歳の僕はさらに多くの経験を積み、より大きな未来を見据えているだろう。
馬車は今日も進む。社交シーズンの幕開けはもう間近だ。
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