パンドラの箱庭へ

塩豆

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二ノ一

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1層3番ゲート、座り込んだリコリスは、盛大にため息をついていた。当日集合とやらの相棒が、1時間たっても来ないのだ。歳は低けれどリコリスは上司。ましてや部下が上司を待たせるとは、言語道断である。


  また、一緒に集合した担当軍人もずっと頭を抱えている。さっきから無線がひっきりなしに鳴っている。上層部との板挟みなのだろう、同情してしまう。


  
 「すいませ~~~ん!」

  200メートル先から猛ダッシュで走ってくる女がー人。寝坊したのだろう、寝癖まみれ、ボタンはかけ違え、ブーツは解けた紐が宙を舞っている。


  「……ッハァ、ハァ…モ、モネ二等…ハァ……で…あります…ハァ…遅れても…申し訳、ありません。」


  途切れ、途切れ喋る彼女が、この遅延の主のようだ。担当軍人からやかましく注意を受けてペコペコしている。


  「あの……リコリス一等……申し訳ありませんでした。」

   申し訳なさそうな彼女は、勢いよく土下座をしだした。勢い余って地面に頭を強打している。ゴッ、っという音が辺りに響いた。
  ここまでくると、少し可哀想な気さえ湧いてくる。

  「モネ二等、頭をあげてください、もういいですから。落ち着いて、服装を直してください。みっともないですよ。」

  「あ、は、はい~あはは…」

    
  もう怒るに怒れない。モネは、額からタラタラと血を流しながら身だしなみを直す。こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか。幸先が不安になる。

  「ゴホン、、では、メンバーが揃いましたので装備品を支給します。」

  板挟みから解放され、水を得た魚の用に生き生きとなった担当は、いつもの調子を取り戻したのか、ササッとリュックを2つ。武器をそれぞれ1つずつ持ってきた。


  リコリスには、ライフル ″二四〇式狙撃銃″


  モネには、軍刀  ″三七式 村雨″


  「もう時間もありませんので、武器の詳細、能力については、これに目を通してください。」


  お前のせいだぞ、と言わんばかりに、モネを睨みつけ、担当は走り書きの簡易的なメモをファイルから引っ張り出した。


  「では、ご武運を。」


  担当の敬礼と共に、ビーーーーっという音が鳴り響き、3番ゲートがゆっくりと開き出した。か細いライトが通路を照らす、3番ゲートの奥には、地上に繋がるエレベーターの入口がある。

  覚悟は、決まっていた。だが、地上へ続くこの道は、否が応でも脳裏に死の香りを漂わせる。


  "リコリス一等、モネ二等、乗リ込ミ完了。射出マデ、残リ五。地上到達予定秒数、約三〇。到達次第、任務開始。成果ヲ期待スル"



  乗り込むと共に流れるアナウンス。機械的な口調は、異様な不気味さで心を煽り、淡々と、ゆっくりと、カウントダウンを始める。



”五”


「私たち、生きて帰って来れますよね。」

"四"


 「…………」


”三”


  「死なせませんよ。」


”二”


  「もう誰も死なせません。」


”一”


  「生きて帰りますよ。」


”零”


  「この狂った世界を」






                      ”   終わらせて。  ”
  

  
  
  
    



  
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