ふたりのよるに

Moma

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アル視点

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結婚の儀式は、王族同士とは思えぬほど簡素なものだった。
 
金の刺繍が施された薄い羽織を肩に掛け、二人は神官の前に並んで立った。
書面にサインを交わし、神官が静かに頷くだけ。
鐘の音も、祝宴の喧騒もない。ただ、誓いの言葉と瞳の奥に宿る決意が、全てを物語っていた。

リューネの細い指が、筆を走らせる。
その瞬間――アルステルスの心は、抑えていたものすべてを堰を切ったように噴き上げそうになった。
やっと、手に入れた。ようやく、この身体も、心も、すべてを――俺のものと呼べる。

だがアルは、いつものように冷静な態度を崩さなかった。
平静を装いながらリューネの横顔を盗み見ては、喉の奥に甘い熱を抱きこんでいた。

神官に礼を述べたあと、ふたりは静かに自室へと戻り、普段通りの晩餐をとった。特別でも何でもないいつも通りの食事。それでもリューネはにこやかに笑い、アルはその笑顔を見るたび胸が締めつけられる。
今夜、ようやく、彼を――その思いを無理に胸の奥に沈めながら、落ち着いたふりをし続けた。

食後はゆったりと香り立つアロマバスに共に浸かった。リューネの肌を視界の端にとらえながら、触れたい欲求をぐっと飲み込み、湯気の中で穏やかな会話を交わす。それが、幸福で、同時に焦れるほどもどかしい。

湯上がりの手をそっと握る。細くて、温かい手。これから先、何度でも繋いでいくつもりのその手を導いて、寝室へと向かった。

開けられた扉の先、空間のあちこちにキャンドルが灯され、天蓋のレースは揺らめく光を柔らかく受け止めている。
淡い香りと静寂の中、ベッドのシーツさえ、今日の夜を祝福しているようだった。

「……きれい」

幻想的に彩られた部屋に、リューネの頬がほのかに染まっていく。瞳はゆっくりとアルを見上げ、口元に柔らかな笑みを浮かべる。無言のまま手を握り返され、その指先の力に、アルの胸はまた強く脈打った。
ベッドの上、リューネは身を沈めるようにシーツへ腰を下ろし、アルを見上げて微笑む。
その顔が、今夜だけのものだと思うと──すでに理性が軋み始めていた。

「……本当に、綺麗だな」

言葉は胸の奥から漏れた。アルはそっと、リューネの頬に指を添え、髪を撫で、首筋へと手を滑らせた。
キスをひとつ、額に。頬に。唇の端に。そして、甘く唇を重ねる。
キスの深さに比例するように、リューネのまぶたがとろりと落ちていく。
かすかな吐息と共に、首を傾け、アルを求める。その仕草すらいじらしく、愛おしい。
服の合わせを外しながら、アルは愛撫をゆっくり始めていく。

柔らかな衣が一枚ずつ、音もなく滑り落ちていく。
露わになったリューネの肌は、真珠のように白くなめらかで、キャンドルの光を纏って微かに輝いて見えた。
アルは指先で、喉元から鎖骨、胸元へとゆっくりなぞっていく。ふるりと肩が震え、リューネが甘く目を伏せた。

「……アル」

名を呼ばれただけで、心臓が跳ねる。
今にも崩れ落ちそうなほど、欲に突き動かされそうになる──けれど、アルはゆっくりと、慈しむように唇を這わせた。胸元に触れると、リューネが小さく身をよじる。指先で、慎重に柔らかな乳首を挟み、転がす。甘く尖った先端を吸い上げると、リューネの指がシーツをきゅっと握りしめた。

「……ふぁ……んっ、んん……」

かすれた声が、抑えきれず漏れていく。アルはその音に、ぞくりと背筋を震わせた。
求めていたのはこの音、この反応だった。どれだけ夢に見たか分からない。
何度もくちづけを落としながら、腹部、腰、そして太腿へと指が滑っていく。
膝の裏や足首、普段なら気にしないような場所にさえ、舌を這わせ、何度も優しく口づけた。

「……アル……そこ……、や……」

呼吸は浅く、頬は紅潮し、全身が甘く震えている。胸元に触れただけでぴくんと跳ね、舌が内腿をかすめれば、息を飲む音が部屋に響いた。

触れるたびに、反応がどんどん敏感になっていく。リューネの身体が、まるで自分に溶かされるように変わっていくその様子に、アルの中の抑圧されていた衝動が、じわじわと牙を剥き始める。

柔らかな内腿から熱のこもる秘奥へと指先を這わせ、そっと撫でるように愛撫するとリューネの身体は、アルを迎えるように静かに震えていた。きゅっと目を閉じ、首を傾げながらアルの背に腕を回す。

「アル……お願い……来て……」

その一言が、最後の理性の鍵を外した。

震える身体を抱きしめ、指先に用意していた潤滑油を塗る。
リューネはうっすら涙を滲ませながらも、すがるような目でアルを見上げた。

身体を包み込むキャンドルの柔らかな灯が、交わされる影を揺らしていた。

リューネの脚をゆっくりと開き、アルはその中央に膝を差し入れる。
リューネの手をそっと握り、目を合わせる。

「痛かったら、すぐ言って。どんなときも、お前を苦しめたくない」

「ん…だい…じょうぶ…」

潤滑を重ねた指を丁寧に抜き、代わりに自身を導く。
先端が押し当てられた瞬間、リューネのまぶたが震え、息が詰まるような吐息が洩れた。

ゆっくりと、奥へ。きつく柔らかい内壁が、アルを締め付けてくる。
入るたびにリューネの身体は跳ね、快楽と戸惑いの入り混じった声が喉からこぼれる。

「あっ、あ……アルっ、……っ」

腰をしっかりと抱え、ぐっと奥まで押し込むと、リューネの脚が自然とアルの背中に絡みついた。

熱を分かち合いながら、少しずつ、互いの動きが重なっていく。
ゆっくりと腰を動かすたび、リューネは甘く啼き、肌は薄紅に染まっていく。

「アル……もっと、欲しい……」

「……お前は、本当に……」

そんな声を聞けば、抑えていたものが溢れそうになる。それでも、アルはできる限り優しく、深く、リューネを満たしていく。

そして、一度リューネの身体を抱き起こし、膝に座らせる。
挿れたまま、リューネの細い腰を支えると、その顔がほんのりと恥ずかしげに揺れる。

「や……この体制……恥ずかしい」

「リューネの全てを見たい、声も、表情も……全部」

抱きしめたまま、揺れるように腰を動かす。リューネはその動きに合わせて喉を鳴らし、甘い涙をこぼす。

「あっ、アル、そこ……なんで……気持ち……」

「お前の身体が教えてくれる。お前の好きなところ……」

身体が火照り、絡み合う熱がさらに深くなる。
限界が近づいてくるのを感じながら、アルはリューネをそっと抱き上げ、体位を変える。

うつ伏せに寝かせ、リューネの腰を後ろから優しく抱える。

「そんな……や、アル、そこからじゃ……」

「綺麗だよ、リューネ……お前のすべてが、たまらない」

白い背中にキスを落としながら、再び自身をゆっくりと挿入する。
リューネの声が震え、細い指がシーツをきつく握る。

「う、ううっ……アル、だめ、奥、あああっ……!」

奥を突かれるたび、リューネは快感に喘ぎ、もう逃げられない身体へと変わっていく。
理性をかすめながら、ただ愛しく、狂おしく、リューネを貪る。
リューネもまた、全身で応えるようにアルを受け入れ、声を震わせながら懇願する。

「あっ、あ、んっ、あああ……っ、ん……だめ、壊れちゃいそう……」

交わりはどこまでも深く、どこまでも甘やかで、まるで魂ごと溶け合うようだった。
アルはリューネの身体に己を刻み込む。
肌が打ち合う音が蝋燭の揺らめく空間に響き渡り、何度も貫かれるたびリューネの身体が跳ね、背中が反る。

「も、う……、っあ、アルっ……だめ、気持ちいいの、止まらない……」

涙混じりの声、潤んだ瞳、紅潮した肌。そのどれもが、アルの中の本能をさらに煽った。

自分を許し、すべてを差し出してくれるこの美しい存在。
壊してしまいそうなほど細く、けれど芯から強いリューネを、心の底から愛しいと思った。

「リューネ……リューネ……愛してる……」

耳元で繰り返される囁きに、リューネの肩が震えた。
 腰が揺れるたび、奥を打たれるたび、熱が膨らんでいく。

「あ……なにか、くる……っ、アル……!」

「俺も……リューネっ」

深く、深く突き入れたまま、アルはリューネの奥で全てを放つ。
リューネもまた、波のように押し寄せる快感に身を委ね、指を震わせながら甘い声を漏らした。

――すべてが、ひとつになった。

熱が静まり、呼吸が整うまで、二人はただ抱き合っていた。
キャンドルの灯が揺れ、汗ばむ肌をやさしく照らしている。

「……痛くなかった?」

 リューネは首を横に振り、微笑んだ。

「ううん、この日の為にずっとアルが僕の身体準備してくれてたから。それに……すごく、気持ちよかった」

小さな声での告白に、アルの胸が熱くなる。その言葉が、どんなに自分を救うものか。

「本当は……もっと優しくしたかった」

自分を責めるような声。リューネはその手を握り、そっと唇を寄せた。

「優しかったよ、すごく。全部、幸せだった。アルと、結ばれて……よかったって、思ってる」

その言葉に、アルの胸が詰まる。抑えきれずにキスを落とす。額に、瞼に、唇に、首筋に。

二人はもう一度、抱き合い、ぬくもりを確かめるように寄り添った。
夜の帳は深まり、キャンドルの火が静かに揺れている。

その温もりの中で、ふたりは静かに眠りについた――。


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