5番目の王子

Moma

文字の大きさ
23 / 61

デート①

しおりを挟む
「おい、そろそろ婆ど…も…」

勢いよく部屋の扉を開けたアルだったが――次の瞬間、リューネの姿を目にした途端、動きを止めた。その場で顔を掌で覆い、横を向いたまま微動だにしない。

「アル?」

予想外の反応に、リューネは不安を覚え、慌てて駆け寄った。

「アル、どうしたの?具合が悪いの?医師様を呼んだ方が――」

「いやいやいやいや」

アルはそのままリューネを腕の中に抱き込み、早鐘を打つ心臓を必死に落ち着かせる。 

(ヤベェ、めちゃくちゃ可愛い)

もともと中性的な顔立ちのリューネだが、女性の手が入ると印象がぐっと変わる。今回の衣装と髪型のせいで、完全に”可憐な令嬢”の雰囲気になってしまっていた。
もちろん、それを狙ったはずのアルだったが――仕上がりが予想を遥かに超えてきた。

「……よく、見せて」

アルはリューネの頬に指を滑らせ、輪郭を辿るように撫でながら顎へと指を添え、そっと上を向かせる。
瞳を際立たせる差し色が目元に施され、頬は薄く染まっている。
唇は艶を帯び、どう見ても”キスを誘っている”としか思えない。
何時もはストレートな髪も、ゆるくウェーブをかけられ、ふんわりと優しい印象に仕上がっている。

(婆共……いい仕事しやがるじゃねぇか)

アルは思わずリューネへ屈み込み、軽く唇にキスを落とす。

「行くぞ」

そう告げると、リューネの手を強く引き、店の外へと歩き出した。
アルの服装も先ほどとは異なっていた。長いエプロンのような布を背面に流し、中はロングパンツ。全体的にタイトなシルエットで、スタイルの良さが際立つ。
相変わらず墨色一色ではあるが、そのシンプルさが却って洗練された印象を与えていた。

「アル、着替えたの?すごく素敵!」

リューネは目を輝かせ、嬉しそうにアルの服装を褒める。

「お前とデートすんのに、エスコート役の俺がショボくちゃカッコつかないだろ」

「嬉しい!アルとデート!」

リューネはぴょんと軽く跳ね、まるで子どものように無邪気に喜ぶ。

「デートのために僕に服を新調してくれたの?」

「折角なら街に馴染む服装の方がいいだろ?ルブテールズは古くから同性婚が認められてた街だから、服装も男女問わず、筒形の布を腰に巻くのが一般的なんだ。俺は動きやすさ重視で、大体こんな感じだけどな」

アルの言葉を聞いて、リューネはふと婚約の顔合わせのときのアルの装いを思い出す。確かに、彼の正装も腰に布を巻くスタイルだった。

「僕、好きな人とデートができる日が来るなんて夢にも思わなかった。ありがとう、アル」

そう言って、リューネは満面の笑顔をアルに向ける。
ただデートをするだけでなく、街に馴染むように配慮してくれるアルの心遣いが何よりも嬉しかった。
一方のアルは、そんなリューネの笑顔で心臓を撃ち抜かれ、完全に撃沈しかかっている。

(ヤバい……今日のリューネの笑顔、破壊力が凄まじい)

「こんなに可愛い婚約者をエスコートできるなんて、俺も嬉しいよ」

囁くようにそう言って、アルはリューネの頬に軽くキスを落とす。そして、迷いなく手を取り恋人繋ぎのまま歩き出した。
リューネはアルの言葉が嬉しくて、ぎゅっと指を絡ませる。そして、その手の温もりに甘くとろけるような笑顔を浮かべた。その様子を見たアルは、もう一度撃沈しそうになりながら、懸命に平静を保つ。 

街を行き交う人々は、アルの隣に寄り添うリューネを見て”アルステルス様と……ご一緒なのはどなたかしら?”とひそひそと声を交わしていた。リューネにもその声は届き、アルの手を引きながら小声で告げる。

「ね、アル……街の人たちに注目されてる気がするんだけど……」

アルは薄く笑いながら答えた。

「それが目的。お前のこと、みせびらかしてんの。だから今日のデートは転移は無しな」

リューネは驚いたものの、アルの隣で微笑みながら街を歩き続けた。アルとのデートは、まるで物語の一幕のように心躍るものだった。


――ちょっと長くなったので、つづく――

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

【完結】自称ワンコに異世界でも執着されている

水市 宇和香
BL
「たとえ異世界に逃げたとしたって、もう二度と逃さないよ」 アザミが高校二年生のときに、異世界・トルバート王国へ転移して早二年。 この国で二十代半ばの美形の知り合いなどいないはずだったが、 「キスしたら思いだしてくれる? 鳥居 薊くん」 その言葉で、彼が日本にいたころ、一度だけキスした同級生の十千万堂 巴波だと気づいた。 同い年だったはずのハナミは、自分より七つも年上になっていた。彼は王都から辺境の地ーーニーナ市まではるばる、四年間もアザミを探す旅をしていたらしい。 キスをした過去はなかったこととして、二人はふたたび友人として過ごすようになった。 辺境の地で地味に生きていたアザミの日常は、ハナミとの再会によって一変し始める。 そしてこの再会はやがて、ニーナ市を揺るがす事件へと発展するのだった…! ★執着美形攻め×内弁慶な地味平凡 ※完結まで毎日更新予定です!(現在エピローグ手前まで書き終わってます!おたのしみに!) ※感想や誤字脱字のご指摘等々、ご意見なんでもお待ちしてます! 美形×平凡、異世界、転移、執着、溺愛、傍若無人攻め、内弁慶受け、内気受け、同い年だけど年の差

狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない

結衣可
BL
戦の傷跡が癒えた共生都市ルーヴェン。 人族と獣人族が共に暮らすその街で、文官ユリス・アルヴィンは、穏やかな日々の中に、いつも自分を見守る“優しい視線”の存在を感じていた。 その正体は、狼族の戦士長出身の護衛騎士、ガルド・ルヴァーン。 無口で不器用だが、誠実で優しい彼は、いつしかユリスを守ることが日課になっていた。 モフモフ好きなユリスと、心配性すぎるガルド。 灰銀の狼と金灰の文官―― 異種族の二人の関係がルーヴェンの風のようにやさしく、日々の中で少しずつ変わっていく。

処理中です...