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◇ ご機嫌なお姫様(1)
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ジョスランが作ってくれた巣で、ノエルはしばらく微睡んだ。
周りからジョスランのフェロモンがふわりと立ちのぼってきて、ノエルの頭の中にベルクール大公領で過ごした一年が蘇る。どうしてこんなに安らぐのだろうと思ったら、ローランとよく日光浴に出かけた、本邸のそばにある森に似ているのだ。木々の葉が日差しを柔らかく遮り、深呼吸すれば土と緑の匂いで胸が満たされる、あの場所に。
王都の喧騒から遠く離れ、ゆったりと時間が流れていた自然豊かな土地。契約期間が終わるまでここに居ていい。自分の居場所を約束されていることが、婚約破棄で何もかも失ってしまった当時のノエルにとってどんなに心強かったか。再びその居場所を失いそうになった時も、ジョスランは無理せず頼ってとノエルに言ってくれた。そして今は、ジョスランの腕の中もノエルの居場所になっている。
まだ番になっていないのに、しかも巣を作るのはオメガのほうなのに、ジョスランの気遣いはいつだってノエルを夢見心地にさせてくれる。
──好きです。ジョスラン様。
心の中でそう囁いて、ノエルは自分の体重を完全にジョスランの胸に預けた。ジョスランの温もりと穏やかな心音が伝わってきて、また眠ってしまいそうだ。
そのままうとうとしていたが、ジョスランの腕に体を抱え直されて、ノエルはふと大事なことを思い出した。
「……あっ。そういえば、シャレー伯爵令息から手紙が届いていたんです」
読む前に倒れてしまったのだと手紙を探そうとするノエルを、ジョスランが腕の中に引き戻した。あの手紙はジョスランが代わりに読んで、もう返事を出してくれたそうだ。
「君が匂いを嗅いだ瞬間に倒れたと聞いて心配になってね。迷惑だったかな?」
「いえいえ! ありがとうございます。どんな内容でしたか?」
「王太子からしつこく頼まれてる件だよ。でも大丈夫。忙しくて何の手伝いもできないって返しておいたから」
あんな手紙が来ることはもうないだろうとジョスランに言われるも、ノエルは少し不安を覚えた。思い返せばもう、半年以上も同じ要求をされているのだ。
ある時はアロイスの誕生日を祝う舞踏会で、断ったら今度はノエルの父親経由で。その後も王宮で出くわした時だったり、ローランの入学式の時はわざわざひとりで戻ってきたりして、顔を合わせれば「アロイスのために働け」と王太子はノエルに言う。
ついにはアロイス本人からも手紙で同じ要求をされるなんて、一体何度断ればあのふたりは諦めてくれるのか。
いっそ週に一度、半日だけでも手伝いに行けば納得してくれるだろうかと思っていると、侍従がノエルを呼びに来た。
「奥様。入浴の準備が整いました」
「あっ……」
「行っておいで。ここはそのままにするよう言っておくから」
「ありがとうございます……」
ノエルは名残惜しく思いながらベッドを出た。浴室に向かおうとして、ふとベッド横の棚に目がいく。ジョスランの部屋に移って眠っている間にノエルの部屋は一旦掃除されたようで、棚の上に取っておいたはずの花びらが見当たらない。
他の花びらもきれいに片づけられているので、きっと一緒に捨てられてしまったのだろう。ノエルは少ししょんぼりしながら浴室でガウンを脱ごうとしたのだが……
「……あれ?」
誰がそうしてくれたのか、体はきれいに拭き清められてすでにさっぱりしているのだが、自分の記憶にない場所に点々と赤い発疹のようなものができている。あまりの数の多さに、ノエルは脱ぎかけていたガウンをもう一度着て、グレアム医師を呼んだ。
「奥様。まだお加減が優れませんか?」
「いえ。大公殿下のおかげで良くなったのですが……」
ちょっと気になることがあるのだと言って、ノエルは上半身を見せた。点々と散らばった発疹らしきものを、グレアム医師がなるほどと頷きながら診察する。
「今までこんなふうになったことがなくて。昨日打ってもらった抑制剤の注射が体に合わなかったのでしょうか?」
「いえ奥様。見たところ、すべて吸引性の皮下出血です」
「吸引性の皮下出血……?」
聞きなれない言葉にノエルは一瞬首を傾げたが、それが何なのかすぐわかった。肌を吸引されて皮下に出血が起きている状態。それはつまり、キスマークの医学的な呼称だ。
これ全部キスマークですかとノエルは半信半疑だったのだが、グレアム医師によくよく皮膚を診てもらった後に「間違いありません」と断言されてしまった。
ゆっくりお休みになってくださいと言い残してグレアム医師が浴室を出て行き、ノエルは改めて自分の体を鏡で確認した。首筋や肩に痕をつけられたことは覚えているのだが、それ以外の場所はまったく記憶にない。
──もしかして、私が気を失っている間に……?
ジョスランがあちこちにキスマークをつけたのだろうか。でも太腿の内側にまで痕がつくなんてどういう体勢だったのかと想像して、ノエルの頬が一気に熱をもった。
まだ湯に浸かってもいないのに、鏡の中にはのぼせたように顔が赤い自分が居る。入浴の手伝いにやってきた侍従たちにも心配されてしまったが、大丈夫だと言い張ってお湯に浸からせてもらった。
今まで生きてきた中で最も恥ずかしい出来事。この恥ずかしさを塗り替えるようなことは自分の人生でもう起こらないだろうと、ノエルは思っていたのだが……
その週。休日を控えた昼間に、仕事をすべて片づけたノエルは自室のベッドの上に居た。
「ジョスラン様。カーテンがちゃんと閉まってないです」
「少しくらい開いててもいいじゃないか」
「駄目です……!」
ジョスランの手で天蓋のカーテンが隙間なく閉じられると、辺りが真っ暗になった。次の発情期で確実に番になれるよう、少しずつ準備をしようというジョスランの提案にノエルが応じた格好だ。
夜にするとローランに朗読できなくなるので、お互いに仕事を終わらせた日の昼間にしようというのはノエルが出した要望。恥ずかしくないように、天蓋のカーテンも光が遮られる厚手のものに変えてもらった。
ただ、これがあまりよくなかった。本当に視界が真っ暗になってしまうと、恥ずかしくない代わりにジョスランの次の行動がわからない。しかも発情期の時と違って、ノエル自身の意識がしっかりある状態だ。
何も見えず、視覚以外の感覚が鋭くなっている体を手探りで触られる。ジョスランの息遣いも自分のもののようにはっきりとわかって、結局ノエルはこれまで感じたことのない恥ずかしさを何度も上書きされることになった。
+++
そんなふうに仕事、ローランの父、そしてジョスランの婿としての務めをノエルはぐるぐるとこなし、いよいよ結婚式が来月に迫ってきた。
今晩のノエルは銀糸の刺繍があしらわれた濃緑の礼服に身を包み、スフィア公爵邸の夜会に参加している。
主催のスフィア公爵夫人をはじめ、情報交換仲間の夫人たちと挨拶を交わすノエルの隣にジョスランの姿はない。婚約者のエスコートなしで夜会に参加しているノエルに好奇の目が向けられる。
「見て。カルリエ侯爵令息だわ」
「大公殿下は? もしかしておひとりで?」
「そうみたいね。じゃああの噂は⋯⋯」
ノエルは談笑するふりをしながら、周囲の会話に聞き耳を立てた。というのもこのパーティーに来たのは、王太子とノエルに関する新たな噂が流れていると聞いたからなのだ。
知人への挨拶を済ませてノエルがひとりになると、会話したことのないオメガ女性に声をかけられた。胡桃色でさらりとした長い髪はハーフアップに結われ、サファイアブルーのドレスを纏っている。指輪をつけていない。番の気配も感じられないところから察するにまだ独身の婦人だ。
「ごきげんよう、カルリエ侯爵令息。少しお時間をいただいてもよろしいですか?」
「……ええ。構いませんよ」
口元を扇子で隠したまま小声で話しかけられ、あまり良くない話だろうなと推測する。番を持たないオメガは、同じアルファを巡って敵対することもあってオメガ同士であまり交流しない。特にノエルは未婚のオメガの中で最も地位が高いので、アロイスを除けばこうして他のオメガから話しかけられるのは稀なこと。なおかつ、普段交流しない相手がわざわざ持ってくる話は面倒なことがほとんどだ。
あまり人が多いところで話すことではないと言われて、ノエルは黙って後ろをついていく。貴族のオメガはめずらしいので、名乗られずとも誰かはわかる。この婦人はインス子爵家の次女、イザベラ・インス子爵令嬢。ノエルより七つほど年上のはずだが、この頃は宴会であまり見かけなかった気がする。
人通りが少ない窓際に差しかかったところで、イザベラ嬢の足が止まった。こちらに向き直った彼女は相変わらず口元を扇子で隠し、こげ茶色の瞳にはノエルへの敵意が滲んでいる。
「カルリエ侯爵令息。結婚式を中止なさるのでしたら、そろそろ公表していただけませんか?」
「結婚式を中止? そのような予定はありませんが」
「白々しい。大公殿下との結婚を取りやめて王太子婿になるのだと聞きましたけど?」
──はぁ……そんな話、一体誰から聞いたんだろう?
仲の良い夫人たちから前もって情報を得ていたので驚きはしなかったが、あまりにでたらめな話にノエルは心の中で溜息をついた。
もちろん、イザベラ嬢が話しているような事実はない。しかしこの頃になって、「カルリエ侯爵令息がベルクール大公との婚約を破棄して王太子婿になるらしい」と、まるで確定したことを伝え聞いたような噂が急激に広まりだしたらしいのだ。
予定どおり挙式すれば跡形もなく消え去る噂。しかし保護者を介して王立学院まで伝わるようなことがあったら、ローランが不愉快な質問を受けるかもしれない。そう考えると結婚式まであとひと月とはいえ放置できず、スフィア公爵邸の夜会に様子を見に来たというわけだ。
止めに入る人間が周りに居ないのをいいことに、イザベラ嬢が苛立ちを隠すことなくノエルとの距離を詰める。しかしノエルも怯むことなく、事務的な笑みで応戦する。
「聞いた、というのはどなたからですか?」
「覚えていませんわ。この頃はどこへ行っても聞きますから」
「そうですか。ただの噂話が事実のように広まっているのですね」
「ただの噂話? それならなぜ、大公殿下と一緒ではないのです?」
「私の婚約者は後ほど来ますよ」
いつもは家族三人で寝るのだが、今日はスフィア公爵夫人からの招待だったのでジョスランに息子を任せて自分が先に出てきた。今頃、ローランに寝る前の朗読をしているところだとノエルが説明すると、イザベラ嬢の扇子がみし、と音を立てた。扇子を握る手が怒りで震えている。ノエルがジョスランを「婚約者」と言ったことも、すでに家族の一員として受け入れられているような話も大いに気に入らないのだろう。
「インス子爵令嬢。誰が言い出したか定かでない話を信じ込むのはやめましょう。その話が真実なら、王室から何の発表もないのはおかしいですよね?」
王弟の再婚取りやめと、王太子の再婚約。結婚式のひと月前になっても王室が何も公表していないということは、つまりはどちらもありえないことなのだとノエルに説明されても、イザベラ嬢はどこか納得いかない様子だ。
これ以上の対話は無意味だと、ノエルは早々に話を切り上げた。
「あなたの気持ちもわかりますから、今回の無礼は大目にみます。ただ、私はカルリエ侯爵家の長男です。あなたのほうが年上とはいえ、次に話す機会があればもう少し礼儀を弁えてください」
去り際に無礼を指摘して、賑やかな場所に戻る。ノエルがちらりと後ろを振り返ってみると、イザベラ嬢は窓際から動かず、こちらを探るようにじっと見つめていた。王太子との復縁がただの噂かどうか、まだ様子見するつもりのようだ。
その後もノエルがひとりになると、タイミングを見計らったように未婚のオメガが噂の真偽を確かめにやってきた。それもジョスランと年が近い、ノエルより年上のオメガばかり。その度にノエルは淡々と復縁を否定し、誰からその話を聞いたのかと尋ねた。
しかし誰々から聞いたという話を辿っていくと、最後は「王宮で小耳に挟んだ」「王宮で立ち聞きした」という話に行きついてしまう。王宮でという部分は共通しているが、言い出した張本人を突き止めるのはさすがに難しそうだ。
そのうち声をかけてくるオメガもいなくなり、スフィア公爵夫人も他の情報交換仲間も見当たらない。もしかしてと思ってノエルが休憩室に向かってみると、お馴染みの面々がすでに集まっていた。
「スフィア公爵夫人。こちらでしたか」
「ええ。そろそろ頃合いかと思って待っておりましたわ」
他の招待客を案内する休憩室とは別に、スフィア公爵夫人が準備してくれた部屋。宴会の途中で、いつものように情報交換をしようと約束してあったのだ。
夫人たちから話を聞くと、今日の宴会もジョスランとノエル、そして王太子の話で持ちきりだという。夫人たちの協力で王太子とローランを比較するような話題が聞かれなくなり、このまま結婚まで何事もなく穏やかに……と思っていたのに、当てが外れてしまった。
「やはりご本人が来ると周りの食いつきが違いますね」
「今晩だけで噂はおさまりそうかしら?」
「まだなんとも。特に未婚のオメガからの反応が気がかりで」
ノエルに接触してきたのはきっと、他の縁談に目もくれずジョスランのことを想い続けてきたオメガたちだ。ノエルがきっぱり否定しても、納得いかない、信じられないという気持ちが彼女たちの表情から伝わってくるようだった。
ジョスランとの婚約を破棄するらしいと人づてに聞いて、彼女たちはどんなに喜んだだろうか。そう思うと同じくジョスランを慕っているノエルも複雑な気持ちになってしまう。しかし彼女たちにとって酷なことだとわかっていても、本当にただの噂なので否定するほかない。
せめて事実無根の話を流したのが誰かを突き止めて、自分の発言がどれほど多くの人を振り回したか反省を促したいところだが……
溜息を飲み込むノエルの隣で、スフィア公爵夫人が少し身を乗り出す。
「ねぇお婿様。馬鹿げた噂がぴたりとおさまる方法を教えてあげましょうか?」
「えっ? ぜひ知りたいです……!」
「大公殿下と番になってしまえばいいのよ。口で説明しても納得しない人たちだって、さすがに諦めがつくでしょう?」
「うぐっ……」
夫人のアドバイスに、ノエルは言葉を詰まらせた。アルファとオメガは、相手に番がいるか感じ取れる。そしてオメガが番になれるのは一生のうちひとりのアルファだけ。ジョスランと番になって公の場に出れば、王太子とノエルが復縁するなんて話はあっという間に消え去るはずだ。
ジョスランのフェロモンは非常に強いので、ノエルの発情期が来るのを待たずとも意図的に発情を起こせるだろうし、早くジョスランの番になって安心したい気持ちも大いにある。ただ、心の準備は万端でも、体のほうがなかなか追いつかない。
ジョスランが言うには、少しずつ慣れてきてはいるらしい。しかしノエルに経験がなさすぎるのか、体力がなさすぎるのか、それともジョスランが巧み過ぎるのか、いつもノエルが気を失って終わってしまう。そして起きた時にはもうローランが帰ってくる時間が迫っていて、遅すぎる昼食を急いで胃に詰め込んでいるのだ。
「結婚まであとひと月なんだから。もう番になっても構わないでしょう?」
「はい……できるだけ早く番になれるよう、私も頑張ってはいるのですが」
「あら。頑張るというのはどのように?」
──あっ。余計なことを言ってしまった……!
何をどう頑張っているのかと、夫人たちが興味津々といった様子でノエルにたずねてくる。彼女たちはきっと、ノエルがどんな努力をしているのか察しがついている。しかしわかっていても、あえてノエルの口から聞きたい。それがこの頃の夫人たちの楽しみなのだ。
夫人たちの質問にノエルが慌てふためいていると、休憩室のドアがノックされた。入ってきたのはノエルと揃いの礼服に身を包んだジョスランだ。
「やあ婿殿。迎えに来たよ」
周りからジョスランのフェロモンがふわりと立ちのぼってきて、ノエルの頭の中にベルクール大公領で過ごした一年が蘇る。どうしてこんなに安らぐのだろうと思ったら、ローランとよく日光浴に出かけた、本邸のそばにある森に似ているのだ。木々の葉が日差しを柔らかく遮り、深呼吸すれば土と緑の匂いで胸が満たされる、あの場所に。
王都の喧騒から遠く離れ、ゆったりと時間が流れていた自然豊かな土地。契約期間が終わるまでここに居ていい。自分の居場所を約束されていることが、婚約破棄で何もかも失ってしまった当時のノエルにとってどんなに心強かったか。再びその居場所を失いそうになった時も、ジョスランは無理せず頼ってとノエルに言ってくれた。そして今は、ジョスランの腕の中もノエルの居場所になっている。
まだ番になっていないのに、しかも巣を作るのはオメガのほうなのに、ジョスランの気遣いはいつだってノエルを夢見心地にさせてくれる。
──好きです。ジョスラン様。
心の中でそう囁いて、ノエルは自分の体重を完全にジョスランの胸に預けた。ジョスランの温もりと穏やかな心音が伝わってきて、また眠ってしまいそうだ。
そのままうとうとしていたが、ジョスランの腕に体を抱え直されて、ノエルはふと大事なことを思い出した。
「……あっ。そういえば、シャレー伯爵令息から手紙が届いていたんです」
読む前に倒れてしまったのだと手紙を探そうとするノエルを、ジョスランが腕の中に引き戻した。あの手紙はジョスランが代わりに読んで、もう返事を出してくれたそうだ。
「君が匂いを嗅いだ瞬間に倒れたと聞いて心配になってね。迷惑だったかな?」
「いえいえ! ありがとうございます。どんな内容でしたか?」
「王太子からしつこく頼まれてる件だよ。でも大丈夫。忙しくて何の手伝いもできないって返しておいたから」
あんな手紙が来ることはもうないだろうとジョスランに言われるも、ノエルは少し不安を覚えた。思い返せばもう、半年以上も同じ要求をされているのだ。
ある時はアロイスの誕生日を祝う舞踏会で、断ったら今度はノエルの父親経由で。その後も王宮で出くわした時だったり、ローランの入学式の時はわざわざひとりで戻ってきたりして、顔を合わせれば「アロイスのために働け」と王太子はノエルに言う。
ついにはアロイス本人からも手紙で同じ要求をされるなんて、一体何度断ればあのふたりは諦めてくれるのか。
いっそ週に一度、半日だけでも手伝いに行けば納得してくれるだろうかと思っていると、侍従がノエルを呼びに来た。
「奥様。入浴の準備が整いました」
「あっ……」
「行っておいで。ここはそのままにするよう言っておくから」
「ありがとうございます……」
ノエルは名残惜しく思いながらベッドを出た。浴室に向かおうとして、ふとベッド横の棚に目がいく。ジョスランの部屋に移って眠っている間にノエルの部屋は一旦掃除されたようで、棚の上に取っておいたはずの花びらが見当たらない。
他の花びらもきれいに片づけられているので、きっと一緒に捨てられてしまったのだろう。ノエルは少ししょんぼりしながら浴室でガウンを脱ごうとしたのだが……
「……あれ?」
誰がそうしてくれたのか、体はきれいに拭き清められてすでにさっぱりしているのだが、自分の記憶にない場所に点々と赤い発疹のようなものができている。あまりの数の多さに、ノエルは脱ぎかけていたガウンをもう一度着て、グレアム医師を呼んだ。
「奥様。まだお加減が優れませんか?」
「いえ。大公殿下のおかげで良くなったのですが……」
ちょっと気になることがあるのだと言って、ノエルは上半身を見せた。点々と散らばった発疹らしきものを、グレアム医師がなるほどと頷きながら診察する。
「今までこんなふうになったことがなくて。昨日打ってもらった抑制剤の注射が体に合わなかったのでしょうか?」
「いえ奥様。見たところ、すべて吸引性の皮下出血です」
「吸引性の皮下出血……?」
聞きなれない言葉にノエルは一瞬首を傾げたが、それが何なのかすぐわかった。肌を吸引されて皮下に出血が起きている状態。それはつまり、キスマークの医学的な呼称だ。
これ全部キスマークですかとノエルは半信半疑だったのだが、グレアム医師によくよく皮膚を診てもらった後に「間違いありません」と断言されてしまった。
ゆっくりお休みになってくださいと言い残してグレアム医師が浴室を出て行き、ノエルは改めて自分の体を鏡で確認した。首筋や肩に痕をつけられたことは覚えているのだが、それ以外の場所はまったく記憶にない。
──もしかして、私が気を失っている間に……?
ジョスランがあちこちにキスマークをつけたのだろうか。でも太腿の内側にまで痕がつくなんてどういう体勢だったのかと想像して、ノエルの頬が一気に熱をもった。
まだ湯に浸かってもいないのに、鏡の中にはのぼせたように顔が赤い自分が居る。入浴の手伝いにやってきた侍従たちにも心配されてしまったが、大丈夫だと言い張ってお湯に浸からせてもらった。
今まで生きてきた中で最も恥ずかしい出来事。この恥ずかしさを塗り替えるようなことは自分の人生でもう起こらないだろうと、ノエルは思っていたのだが……
その週。休日を控えた昼間に、仕事をすべて片づけたノエルは自室のベッドの上に居た。
「ジョスラン様。カーテンがちゃんと閉まってないです」
「少しくらい開いててもいいじゃないか」
「駄目です……!」
ジョスランの手で天蓋のカーテンが隙間なく閉じられると、辺りが真っ暗になった。次の発情期で確実に番になれるよう、少しずつ準備をしようというジョスランの提案にノエルが応じた格好だ。
夜にするとローランに朗読できなくなるので、お互いに仕事を終わらせた日の昼間にしようというのはノエルが出した要望。恥ずかしくないように、天蓋のカーテンも光が遮られる厚手のものに変えてもらった。
ただ、これがあまりよくなかった。本当に視界が真っ暗になってしまうと、恥ずかしくない代わりにジョスランの次の行動がわからない。しかも発情期の時と違って、ノエル自身の意識がしっかりある状態だ。
何も見えず、視覚以外の感覚が鋭くなっている体を手探りで触られる。ジョスランの息遣いも自分のもののようにはっきりとわかって、結局ノエルはこれまで感じたことのない恥ずかしさを何度も上書きされることになった。
+++
そんなふうに仕事、ローランの父、そしてジョスランの婿としての務めをノエルはぐるぐるとこなし、いよいよ結婚式が来月に迫ってきた。
今晩のノエルは銀糸の刺繍があしらわれた濃緑の礼服に身を包み、スフィア公爵邸の夜会に参加している。
主催のスフィア公爵夫人をはじめ、情報交換仲間の夫人たちと挨拶を交わすノエルの隣にジョスランの姿はない。婚約者のエスコートなしで夜会に参加しているノエルに好奇の目が向けられる。
「見て。カルリエ侯爵令息だわ」
「大公殿下は? もしかしておひとりで?」
「そうみたいね。じゃああの噂は⋯⋯」
ノエルは談笑するふりをしながら、周囲の会話に聞き耳を立てた。というのもこのパーティーに来たのは、王太子とノエルに関する新たな噂が流れていると聞いたからなのだ。
知人への挨拶を済ませてノエルがひとりになると、会話したことのないオメガ女性に声をかけられた。胡桃色でさらりとした長い髪はハーフアップに結われ、サファイアブルーのドレスを纏っている。指輪をつけていない。番の気配も感じられないところから察するにまだ独身の婦人だ。
「ごきげんよう、カルリエ侯爵令息。少しお時間をいただいてもよろしいですか?」
「……ええ。構いませんよ」
口元を扇子で隠したまま小声で話しかけられ、あまり良くない話だろうなと推測する。番を持たないオメガは、同じアルファを巡って敵対することもあってオメガ同士であまり交流しない。特にノエルは未婚のオメガの中で最も地位が高いので、アロイスを除けばこうして他のオメガから話しかけられるのは稀なこと。なおかつ、普段交流しない相手がわざわざ持ってくる話は面倒なことがほとんどだ。
あまり人が多いところで話すことではないと言われて、ノエルは黙って後ろをついていく。貴族のオメガはめずらしいので、名乗られずとも誰かはわかる。この婦人はインス子爵家の次女、イザベラ・インス子爵令嬢。ノエルより七つほど年上のはずだが、この頃は宴会であまり見かけなかった気がする。
人通りが少ない窓際に差しかかったところで、イザベラ嬢の足が止まった。こちらに向き直った彼女は相変わらず口元を扇子で隠し、こげ茶色の瞳にはノエルへの敵意が滲んでいる。
「カルリエ侯爵令息。結婚式を中止なさるのでしたら、そろそろ公表していただけませんか?」
「結婚式を中止? そのような予定はありませんが」
「白々しい。大公殿下との結婚を取りやめて王太子婿になるのだと聞きましたけど?」
──はぁ……そんな話、一体誰から聞いたんだろう?
仲の良い夫人たちから前もって情報を得ていたので驚きはしなかったが、あまりにでたらめな話にノエルは心の中で溜息をついた。
もちろん、イザベラ嬢が話しているような事実はない。しかしこの頃になって、「カルリエ侯爵令息がベルクール大公との婚約を破棄して王太子婿になるらしい」と、まるで確定したことを伝え聞いたような噂が急激に広まりだしたらしいのだ。
予定どおり挙式すれば跡形もなく消え去る噂。しかし保護者を介して王立学院まで伝わるようなことがあったら、ローランが不愉快な質問を受けるかもしれない。そう考えると結婚式まであとひと月とはいえ放置できず、スフィア公爵邸の夜会に様子を見に来たというわけだ。
止めに入る人間が周りに居ないのをいいことに、イザベラ嬢が苛立ちを隠すことなくノエルとの距離を詰める。しかしノエルも怯むことなく、事務的な笑みで応戦する。
「聞いた、というのはどなたからですか?」
「覚えていませんわ。この頃はどこへ行っても聞きますから」
「そうですか。ただの噂話が事実のように広まっているのですね」
「ただの噂話? それならなぜ、大公殿下と一緒ではないのです?」
「私の婚約者は後ほど来ますよ」
いつもは家族三人で寝るのだが、今日はスフィア公爵夫人からの招待だったのでジョスランに息子を任せて自分が先に出てきた。今頃、ローランに寝る前の朗読をしているところだとノエルが説明すると、イザベラ嬢の扇子がみし、と音を立てた。扇子を握る手が怒りで震えている。ノエルがジョスランを「婚約者」と言ったことも、すでに家族の一員として受け入れられているような話も大いに気に入らないのだろう。
「インス子爵令嬢。誰が言い出したか定かでない話を信じ込むのはやめましょう。その話が真実なら、王室から何の発表もないのはおかしいですよね?」
王弟の再婚取りやめと、王太子の再婚約。結婚式のひと月前になっても王室が何も公表していないということは、つまりはどちらもありえないことなのだとノエルに説明されても、イザベラ嬢はどこか納得いかない様子だ。
これ以上の対話は無意味だと、ノエルは早々に話を切り上げた。
「あなたの気持ちもわかりますから、今回の無礼は大目にみます。ただ、私はカルリエ侯爵家の長男です。あなたのほうが年上とはいえ、次に話す機会があればもう少し礼儀を弁えてください」
去り際に無礼を指摘して、賑やかな場所に戻る。ノエルがちらりと後ろを振り返ってみると、イザベラ嬢は窓際から動かず、こちらを探るようにじっと見つめていた。王太子との復縁がただの噂かどうか、まだ様子見するつもりのようだ。
その後もノエルがひとりになると、タイミングを見計らったように未婚のオメガが噂の真偽を確かめにやってきた。それもジョスランと年が近い、ノエルより年上のオメガばかり。その度にノエルは淡々と復縁を否定し、誰からその話を聞いたのかと尋ねた。
しかし誰々から聞いたという話を辿っていくと、最後は「王宮で小耳に挟んだ」「王宮で立ち聞きした」という話に行きついてしまう。王宮でという部分は共通しているが、言い出した張本人を突き止めるのはさすがに難しそうだ。
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「スフィア公爵夫人。こちらでしたか」
「ええ。そろそろ頃合いかと思って待っておりましたわ」
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夫人たちから話を聞くと、今日の宴会もジョスランとノエル、そして王太子の話で持ちきりだという。夫人たちの協力で王太子とローランを比較するような話題が聞かれなくなり、このまま結婚まで何事もなく穏やかに……と思っていたのに、当てが外れてしまった。
「やはりご本人が来ると周りの食いつきが違いますね」
「今晩だけで噂はおさまりそうかしら?」
「まだなんとも。特に未婚のオメガからの反応が気がかりで」
ノエルに接触してきたのはきっと、他の縁談に目もくれずジョスランのことを想い続けてきたオメガたちだ。ノエルがきっぱり否定しても、納得いかない、信じられないという気持ちが彼女たちの表情から伝わってくるようだった。
ジョスランとの婚約を破棄するらしいと人づてに聞いて、彼女たちはどんなに喜んだだろうか。そう思うと同じくジョスランを慕っているノエルも複雑な気持ちになってしまう。しかし彼女たちにとって酷なことだとわかっていても、本当にただの噂なので否定するほかない。
せめて事実無根の話を流したのが誰かを突き止めて、自分の発言がどれほど多くの人を振り回したか反省を促したいところだが……
溜息を飲み込むノエルの隣で、スフィア公爵夫人が少し身を乗り出す。
「ねぇお婿様。馬鹿げた噂がぴたりとおさまる方法を教えてあげましょうか?」
「えっ? ぜひ知りたいです……!」
「大公殿下と番になってしまえばいいのよ。口で説明しても納得しない人たちだって、さすがに諦めがつくでしょう?」
「うぐっ……」
夫人のアドバイスに、ノエルは言葉を詰まらせた。アルファとオメガは、相手に番がいるか感じ取れる。そしてオメガが番になれるのは一生のうちひとりのアルファだけ。ジョスランと番になって公の場に出れば、王太子とノエルが復縁するなんて話はあっという間に消え去るはずだ。
ジョスランのフェロモンは非常に強いので、ノエルの発情期が来るのを待たずとも意図的に発情を起こせるだろうし、早くジョスランの番になって安心したい気持ちも大いにある。ただ、心の準備は万端でも、体のほうがなかなか追いつかない。
ジョスランが言うには、少しずつ慣れてきてはいるらしい。しかしノエルに経験がなさすぎるのか、体力がなさすぎるのか、それともジョスランが巧み過ぎるのか、いつもノエルが気を失って終わってしまう。そして起きた時にはもうローランが帰ってくる時間が迫っていて、遅すぎる昼食を急いで胃に詰め込んでいるのだ。
「結婚まであとひと月なんだから。もう番になっても構わないでしょう?」
「はい……できるだけ早く番になれるよう、私も頑張ってはいるのですが」
「あら。頑張るというのはどのように?」
──あっ。余計なことを言ってしまった……!
何をどう頑張っているのかと、夫人たちが興味津々といった様子でノエルにたずねてくる。彼女たちはきっと、ノエルがどんな努力をしているのか察しがついている。しかしわかっていても、あえてノエルの口から聞きたい。それがこの頃の夫人たちの楽しみなのだ。
夫人たちの質問にノエルが慌てふためいていると、休憩室のドアがノックされた。入ってきたのはノエルと揃いの礼服に身を包んだジョスランだ。
「やあ婿殿。迎えに来たよ」
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「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました
多崎リクト
BL
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巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
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【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
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王妃の椅子~母国のために売られた公子
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大陸で一番の強国であるディルア王国には男の王妃がいる。夫婦間は結婚当時より長年冷え切っていた。そんなある日のこと、王のもとへ王妃がやってきて「わたしを殺させてあげよう」と衝撃な一言を告げる。けれど王は取り合わない。
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