【BL】皇位を継げないオメガ皇子が、アルファ従弟を育てた結果

縁堂幸

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 皇帝の御子。エルネスト・アークライト皇子はオメガだ。

 亡き皇后譲りのピンクブロンドに、皇族の象徴である金色の瞳。その容姿だけでなく、唯一の直系御子という地位もまた輝かしい。

 しかしエルネストは皇太子になれない。皇帝の跡を継げるのは、アルファかベータだと法で定められているからだ。

 それはかつて、オメガが皇帝になった乱世で生まれた決まり。番契約を解消されるとオメガが衰弱することを利用して、合意のない番行為に及んだアルファがいたのだ。

 オメガの皇帝は常に、自分の命を握られているようなものだった。番を解消される恐怖から、アルファの言いなりに。特定の家門に利権が集中することもあれば、理不尽な増税に民が苦しむこともあった。

 そのような過去を踏まえ、オメガが皇帝になれないと定められたのはエルネストが生まれるずっと前。それでファロン公爵家に嫁いだ皇妹から生まれたアルファ――従弟のライナス・ファロン公子が皇太子教育を受けることになった。

 親元を離れて皇宮で教育を受けることになったライナスは、当時まだ七歳。ライナスの兄――グスタフの代わりになろうと、エルネストはライナスのことを実の弟のようにかわいがった。それが幼くして親元を離れることになったライナスに対する、せめてもの罪滅ぼしだった。

 最初こそ申し訳なく思っていたエルネストだったが、ライナスはエルネストのことを「エル兄様」と呼んで慕うようになり、今ではライナスが跡継ぎになってくれて本当によかったと思っている。

 帝国の中には「直系御子が皇位を継げるよう法改正すべきだ」と唱え続けている者もいる。しかし彼らはオメガのエルネストを皇帝にすることで、アルファを皇后にしたいだけ。その証拠に、法改正派の貴族はアルファ持ちの家ばかり。

 自分が皇太子になった途端、腹に一物を抱えたアルファが群がってくる光景を容易に想像できる。だからエルネストは、ライナスが皇位を継ぐことを誰よりも望んでいるのだ。

 明日はとうとう、ライナスが成人する日。
 立太子の儀式を行って城下をパレードした後は、お祝いの宴会がある。

 妃か婿かはまだわからないが、ライナスが無事に伴侶を迎えた暁には宮内の仕事を引き継いで、あとは邪魔にならないよう自分はどこか辺境にでも嫁ごうというのがエルネストの計画なのだが。

 成人を明日に控えた夜更け。窓の外から雷の音が聞こえて間もなく、エルネストの寝室の扉がノックされた。

「エル兄様……!」
「来ると思ったよ」

 部屋に入ってきたのは寝間着姿のライナス。枕を抱えて震えている。ライナスは雷が大の苦手なのだ。
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