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グレフ村に到着
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「たいへん美味にござった!」
「あ、ああ。それはよかった」
行き倒れの少女が食事の手を止めたのは、俺やシルの数倍の量を一人で食べきった後だった。
食材は多めに集めておいたから別にいいんだが、この小柄な体のどこにそんな量が入ったのか不思議でならない。
「拙者はカナタと申すもの。修行を兼ねて旅をしていたのでござるが、食糧が尽きてしまい……窮状を救っていたいたことには感謝してもしきれ申さぬ。お主たちは命の恩人にござる」
深々と頭を下げてくる。
「気にしないでくれ、当然のことをしただけだから。俺はロイだ」
「私はシルだよ!」
「ロイ殿とシル殿でござるな。その名はしかと胸に刻み込んだでござる!」
真剣な表情で行き倒れ少女――カナタはそう告げた。
改めてカナタのことをよく見てみると、かなりの美少女であることがわかる。頭の後で束ねた黒髪は絹糸のようにサラサラで、大きな瞳は意志の強さを秘めているように感じる。
年齢は俺と同じか、少し下くらいだろうか。
「ところでロイ殿は冒険者でござるか?」
「ああ、そうだな」
「もしや<召喚士>でござるか?」
「……そうだ」
「やはりそうでござったか!」
目をきらきらさせてカナタは立ち上がる。
「先ほど食材を集める際の手際、実に見事でござった! 拙者も冒険者ゆえ、他の<召喚士>も何度か見たことがあるが……あそこまで多くの召喚獣を持ち、さらに一度に操れる者など見たことがござらん! ロイ殿はすごいでござるな!」
感嘆したように身を乗り出してくるカナタ。
そんなにストレートに褒められるとむずがゆい。
というか、カナタ、冒険者だったのか。
剣を持っていたし、なんとなくそんな気はしていたが。
「そうだよ、ロイはすごいんだよ!」
「なんでお前が得意げなんだ、シル」
隣でわがことのように胸を張るシルにそう突っ込んでおく。いや、どっちかというと凄いのは俺というよりシルだと思うが。
「本来ならば何か礼をせねばと思うが、拙者は今無一文ゆえ……ううむ」
がさごそと荷物を漁るカナタ。
「いや、別にいいぞ? 俺が好きでやったことだし」
「そういうわけには――おお、これがござった! ロイ殿、これを差し上げる!」
カナタは荷物の中から液体入りの瓶を出して渡してきた。
「これは?」
「『えりくさー』とかいう代物にござる!」
「――は!?」
俺は瓶を取り落としそうになった。
「ロイ、えりくさーって何?」
「エリクサーって言えば『万能回復薬』のことだろ……状態異常、体力が瓶一本で完全回復するっていう、究極のポーション……」
噂には聞いていたが実物を見たのは初めてだ。少なくとも一般冒険者には絶対に出ない超高級品である。
「こ、こんなものもらえるか!」
「しかし、他に渡せるものがないのでござる。どうせ貰い物でござるし、ロイ殿が役立ててくれるなら拙者も嬉しい」
カナタはそう言うとてきぱきと荷物をまとめて立ち上がった。
「それでは拙者は先を急ぐゆえ、これにて失礼する。ロイ殿、シル殿、またいつか!」
そう言ってまた深々と頭を下げると、カナタは去っていくのだった。
結局あの少女は何者だったんだろうか。
謎だ……
そんなことがありつつも俺とシルは先に進み、やがて目的地にたどり着いた。
「ここがグレフ村かー。なんだかのどかなところだね!」
「そうだな」
グレフ村は山あいの村だが、アルムの街に向かうための中継地点としてそれなりに栄えている。冒険者ギルドもあり、武器屋・防具屋などもある。必要なものは一通りそろうはずだ。
「とりあえず宿を探すか」
「はーい!」
そんなやり取りをしつつ、俺たちはグレフ村を移動していった。
▽
「逃がしただと!? てめえら、<召喚士>なんてザコ相手に何してやがるんだ!」
「ひいっ! す、すいやせんっ!」
アルムの街の一角にある無骨な建物。
その最上階にある部屋で、Bランクパーティ『鉄の山犬』のリーダー、ジュードは怒りで顔を赤くしていた。
「仮にもお前ら、『鉄の山犬』のメンバーだろうが! 人探し一つマトモにできねえのか!?」
「すいやせんっ、どうかお許しをぉお……!」
ジュードの恫喝に子分たちは怯えながら謝罪を口にする。
ジュードはロイを捕まえるために子分たちに街を見回らせていた。
相手はたかだか<召喚士>。支部長の話ではオークエリートを倒したらしいが、武闘派揃いの『鉄の山犬』が集団で当たれば遅れを取るはずがない。そう思っていた。
実際には、相手は見事にこちらの張った網を潜り抜けて逃げ切ったようだが。
「こんなザマじゃ、ネイルの旦那に顔を合わせられねえ……恥さらしもいいとこだ」
このままでは『鉄の山犬』の看板に傷がつく。
舌打ちしながらジュードは今後のことを考え、子分たちに指示を出した。
「とにかく情報を集めろ。聞き込みによりゃあ、街の外に出たって報告もある。半分は街の中をしらみつぶしに、残りは街の外を当たれ」
「で、ですがボス、街の外なんて探すにはパーティの半数でも人手が足りやせん!」
『鉄の山犬』は大所帯のパーティであり、メンバーの数は五十に迫る。しかし街の外を当てもなく探し回るにはそれでも心もとない。
ジュードは吐き捨てるように言った。
「最寄りの街には俺たちと懇意の連中もいる。そいつらも動かせ」
違法薬物の売買、裏取引の際の護衛など、各種悪事に手を染める『鉄の山犬』は近隣各所にパイプを持つ。
彼らから情報を得れば、人探しもたやすい。
「は、はいっ! わかりやした!」
「わかったらさっさと動け、ボンクラども! 次トチったらロイの前にてめえらをぶち殺すぞ!」
ジュードの怒鳴り声に押され、子分たちはバタバタと動き出すのだった。
「あ、ああ。それはよかった」
行き倒れの少女が食事の手を止めたのは、俺やシルの数倍の量を一人で食べきった後だった。
食材は多めに集めておいたから別にいいんだが、この小柄な体のどこにそんな量が入ったのか不思議でならない。
「拙者はカナタと申すもの。修行を兼ねて旅をしていたのでござるが、食糧が尽きてしまい……窮状を救っていたいたことには感謝してもしきれ申さぬ。お主たちは命の恩人にござる」
深々と頭を下げてくる。
「気にしないでくれ、当然のことをしただけだから。俺はロイだ」
「私はシルだよ!」
「ロイ殿とシル殿でござるな。その名はしかと胸に刻み込んだでござる!」
真剣な表情で行き倒れ少女――カナタはそう告げた。
改めてカナタのことをよく見てみると、かなりの美少女であることがわかる。頭の後で束ねた黒髪は絹糸のようにサラサラで、大きな瞳は意志の強さを秘めているように感じる。
年齢は俺と同じか、少し下くらいだろうか。
「ところでロイ殿は冒険者でござるか?」
「ああ、そうだな」
「もしや<召喚士>でござるか?」
「……そうだ」
「やはりそうでござったか!」
目をきらきらさせてカナタは立ち上がる。
「先ほど食材を集める際の手際、実に見事でござった! 拙者も冒険者ゆえ、他の<召喚士>も何度か見たことがあるが……あそこまで多くの召喚獣を持ち、さらに一度に操れる者など見たことがござらん! ロイ殿はすごいでござるな!」
感嘆したように身を乗り出してくるカナタ。
そんなにストレートに褒められるとむずがゆい。
というか、カナタ、冒険者だったのか。
剣を持っていたし、なんとなくそんな気はしていたが。
「そうだよ、ロイはすごいんだよ!」
「なんでお前が得意げなんだ、シル」
隣でわがことのように胸を張るシルにそう突っ込んでおく。いや、どっちかというと凄いのは俺というよりシルだと思うが。
「本来ならば何か礼をせねばと思うが、拙者は今無一文ゆえ……ううむ」
がさごそと荷物を漁るカナタ。
「いや、別にいいぞ? 俺が好きでやったことだし」
「そういうわけには――おお、これがござった! ロイ殿、これを差し上げる!」
カナタは荷物の中から液体入りの瓶を出して渡してきた。
「これは?」
「『えりくさー』とかいう代物にござる!」
「――は!?」
俺は瓶を取り落としそうになった。
「ロイ、えりくさーって何?」
「エリクサーって言えば『万能回復薬』のことだろ……状態異常、体力が瓶一本で完全回復するっていう、究極のポーション……」
噂には聞いていたが実物を見たのは初めてだ。少なくとも一般冒険者には絶対に出ない超高級品である。
「こ、こんなものもらえるか!」
「しかし、他に渡せるものがないのでござる。どうせ貰い物でござるし、ロイ殿が役立ててくれるなら拙者も嬉しい」
カナタはそう言うとてきぱきと荷物をまとめて立ち上がった。
「それでは拙者は先を急ぐゆえ、これにて失礼する。ロイ殿、シル殿、またいつか!」
そう言ってまた深々と頭を下げると、カナタは去っていくのだった。
結局あの少女は何者だったんだろうか。
謎だ……
そんなことがありつつも俺とシルは先に進み、やがて目的地にたどり着いた。
「ここがグレフ村かー。なんだかのどかなところだね!」
「そうだな」
グレフ村は山あいの村だが、アルムの街に向かうための中継地点としてそれなりに栄えている。冒険者ギルドもあり、武器屋・防具屋などもある。必要なものは一通りそろうはずだ。
「とりあえず宿を探すか」
「はーい!」
そんなやり取りをしつつ、俺たちはグレフ村を移動していった。
▽
「逃がしただと!? てめえら、<召喚士>なんてザコ相手に何してやがるんだ!」
「ひいっ! す、すいやせんっ!」
アルムの街の一角にある無骨な建物。
その最上階にある部屋で、Bランクパーティ『鉄の山犬』のリーダー、ジュードは怒りで顔を赤くしていた。
「仮にもお前ら、『鉄の山犬』のメンバーだろうが! 人探し一つマトモにできねえのか!?」
「すいやせんっ、どうかお許しをぉお……!」
ジュードの恫喝に子分たちは怯えながら謝罪を口にする。
ジュードはロイを捕まえるために子分たちに街を見回らせていた。
相手はたかだか<召喚士>。支部長の話ではオークエリートを倒したらしいが、武闘派揃いの『鉄の山犬』が集団で当たれば遅れを取るはずがない。そう思っていた。
実際には、相手は見事にこちらの張った網を潜り抜けて逃げ切ったようだが。
「こんなザマじゃ、ネイルの旦那に顔を合わせられねえ……恥さらしもいいとこだ」
このままでは『鉄の山犬』の看板に傷がつく。
舌打ちしながらジュードは今後のことを考え、子分たちに指示を出した。
「とにかく情報を集めろ。聞き込みによりゃあ、街の外に出たって報告もある。半分は街の中をしらみつぶしに、残りは街の外を当たれ」
「で、ですがボス、街の外なんて探すにはパーティの半数でも人手が足りやせん!」
『鉄の山犬』は大所帯のパーティであり、メンバーの数は五十に迫る。しかし街の外を当てもなく探し回るにはそれでも心もとない。
ジュードは吐き捨てるように言った。
「最寄りの街には俺たちと懇意の連中もいる。そいつらも動かせ」
違法薬物の売買、裏取引の際の護衛など、各種悪事に手を染める『鉄の山犬』は近隣各所にパイプを持つ。
彼らから情報を得れば、人探しもたやすい。
「は、はいっ! わかりやした!」
「わかったらさっさと動け、ボンクラども! 次トチったらロイの前にてめえらをぶち殺すぞ!」
ジュードの怒鳴り声に押され、子分たちはバタバタと動き出すのだった。
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