28 / 82
急転
しおりを挟む
「ほら。服、買ったわよ。これで文句ないでしょ?」
「「……」」
オールドダイル討伐から数日経った。
ブルークラブの群れ討伐したことで山道が通れるようになり、魔力糸の服を作るのに必要な素材が届くようになった。行商はすぐにグレフ村にやってきて、すぐに服屋には素材が補充された。
その後俺たちは依頼を受けたりして時間を潰しつつ、服屋に商品が補充されたタイミングで店にやってきたわけだが――
「……何で黙ってるのよ。何か言いなさいよ」
「すっごく可愛いね!」
「はあ!?」
シルの率直な感想にイオナがぎょっとしたようにのけぞった。
シルの言う通り、魔力糸で織った服を着たイオナはとても可愛らしかった。「邪魔だから」とくくられた長い赤髪は華やかに見え、短めの下衣は細くしなやかな足を際立たせる。
魔術剣士風の衣装、といった感じだろうか。
「べ、別に、店の人間が選んだやつを適当に着ただけよ」
「そうなのか? でも、よく似合ってるぞ」
「~~~~っ、フン!」
素直な感想を告げると、イオナは顔を赤くして視線を逸らした。
よっぽど褒められ慣れていないんだろうか。
けれど何というか、そういうところは――
「……可愛いな」
「ぅえっ!?」
「あ、いや、違う! 微笑ましいとか、そういう意味で!」
「だからって……あー、もう、がるるるるるるるるっ!」
「唸るのは勘弁してくれ!」
試練の間でのトラウマを思い出しそうになる!
イオナが頭の上から湯気を出しながら威嚇してくる。普通の少女なら可愛い照れ隠しの仕草だが、今の俺の気分は猛獣使いのそれである。
「ねえロイ、私は? 私は可愛くないの?」
なぜかシルが不服そうに距離を詰めながら抗議してきた。
「別にそうは言ってないだろ」
「違うー! そういうのじゃなくて、ロイに褒めて欲しいの~~~~!」
「……まあ、いつもお前には助けられてるよ」
「それでそれで?」
期待するようにシルが先を促してくる。意地でも言わせるつもりか。
自分から言いたくはないが、ここで言わないと拗ねそうだしなあ……
「あー……可愛いよ」
「やったー! ロイに褒められたー♪」
両手を上げてその場でくるりと回るシル。
「……お客さん、二股するなら両方幸せにするんだよ」
「俺たちはそういうのじゃないですから!」
服屋の店主のいらない誤解を解きつつ、俺は勘定を済ませてからシルとイオナを連れて店外に出た。
――そして。
「よう、探したぜ。てめえがロイって<召喚士>か?」
「――ッ」
かけられた声に、俺はぎくりと肩をこわばらせた。
声の主は身長二メートルに迫ろうかと言う大男だった。
何より特徴的なのは全身を覆う黒い鎧だ。
本人の風貌と合わせて、ただの鉄とは比べ物にならない重厚な威圧感を放っている。
「……『黒鉄のジュード』」
「うちの手下が世話になったそうじゃねえか。悪いが半殺しくらいは覚悟してもらうぜ? 後ろの女たちもな」
「「……」」
オールドダイル討伐から数日経った。
ブルークラブの群れ討伐したことで山道が通れるようになり、魔力糸の服を作るのに必要な素材が届くようになった。行商はすぐにグレフ村にやってきて、すぐに服屋には素材が補充された。
その後俺たちは依頼を受けたりして時間を潰しつつ、服屋に商品が補充されたタイミングで店にやってきたわけだが――
「……何で黙ってるのよ。何か言いなさいよ」
「すっごく可愛いね!」
「はあ!?」
シルの率直な感想にイオナがぎょっとしたようにのけぞった。
シルの言う通り、魔力糸で織った服を着たイオナはとても可愛らしかった。「邪魔だから」とくくられた長い赤髪は華やかに見え、短めの下衣は細くしなやかな足を際立たせる。
魔術剣士風の衣装、といった感じだろうか。
「べ、別に、店の人間が選んだやつを適当に着ただけよ」
「そうなのか? でも、よく似合ってるぞ」
「~~~~っ、フン!」
素直な感想を告げると、イオナは顔を赤くして視線を逸らした。
よっぽど褒められ慣れていないんだろうか。
けれど何というか、そういうところは――
「……可愛いな」
「ぅえっ!?」
「あ、いや、違う! 微笑ましいとか、そういう意味で!」
「だからって……あー、もう、がるるるるるるるるっ!」
「唸るのは勘弁してくれ!」
試練の間でのトラウマを思い出しそうになる!
イオナが頭の上から湯気を出しながら威嚇してくる。普通の少女なら可愛い照れ隠しの仕草だが、今の俺の気分は猛獣使いのそれである。
「ねえロイ、私は? 私は可愛くないの?」
なぜかシルが不服そうに距離を詰めながら抗議してきた。
「別にそうは言ってないだろ」
「違うー! そういうのじゃなくて、ロイに褒めて欲しいの~~~~!」
「……まあ、いつもお前には助けられてるよ」
「それでそれで?」
期待するようにシルが先を促してくる。意地でも言わせるつもりか。
自分から言いたくはないが、ここで言わないと拗ねそうだしなあ……
「あー……可愛いよ」
「やったー! ロイに褒められたー♪」
両手を上げてその場でくるりと回るシル。
「……お客さん、二股するなら両方幸せにするんだよ」
「俺たちはそういうのじゃないですから!」
服屋の店主のいらない誤解を解きつつ、俺は勘定を済ませてからシルとイオナを連れて店外に出た。
――そして。
「よう、探したぜ。てめえがロイって<召喚士>か?」
「――ッ」
かけられた声に、俺はぎくりと肩をこわばらせた。
声の主は身長二メートルに迫ろうかと言う大男だった。
何より特徴的なのは全身を覆う黒い鎧だ。
本人の風貌と合わせて、ただの鉄とは比べ物にならない重厚な威圧感を放っている。
「……『黒鉄のジュード』」
「うちの手下が世話になったそうじゃねえか。悪いが半殺しくらいは覚悟してもらうぜ? 後ろの女たちもな」
44
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる