ハズレ職〈召喚士〉がS級万能職に化けました〜無能と蔑まれた俺、伝説の召喚獣達に懐かれ力が覚醒したので世界最強です~

ヒツキノドカ

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「ほら、食事ですよ。食べなさい」
「……」

 エルフの少女の前に粗末な食事の入った皿が置かれる。

 変な匂いのする肉に、ろくに火の通っていない野菜入りのスープ。
 これでも奴隷の食事としてはマシなほうだ。
 商品として見た目の質が下がらないように、最低限の栄養バランスが考えられている。

「食べたく、ありません」

 エルフの少女はまったく食欲がなかったのでそう呟いた。
 次の瞬間、奴隷商人――イルブスは激昂した。

「お前の気分などどうでもいいのです! 食え、と言っているのですよ! モノ風情が!」

 イルブスが手に持った小さな板に魔力を流し込む。
 するとそれとリンクするエルフの少女に着けられた首輪から、強力な電撃が発生した。

「うああああああああああああああああっ!」

 エルフの少女は激痛にもだえ、汚い檻の床に倒れ込む。

 この首輪は奴隷商人の操作一つで高威力の電流を流し込んでくる。しかもこれを着けられている間装備者は魔力を使えない。
 奴隷の脱走防止・調教に用いられる極悪な装置である。

「かはっ……げほっ」
「食べなさい」
「はい……」

 立ち上がることもできず、エルフの少女は犬のように薄汚い食事を口に入れる。

 不味い。
 食べているだけで吐き気がする。

 けれど、エルフの少女にとってそれ自体は慣れたことでもある。

(ここでも、里にいたときと同じ……)

 忌み子。死んでしまえ。お前なんか生まれなければよかった。エルフの面汚し。色違いの目を持つ生まれながらの罪人め。穢らわしい。

(……私は、何のために生きているんでしょうか)

 色違いの両目を濁らせて、エルフの少女は拷問のような食事を続けるのだった。





「むっ! そこにいるのはロイ殿でござるか!? おーい、ロイ殿ー!」

 アルムの街の宝石商にジュードの隠し財産を売り払った後。

 ずだだだだーっ! とこちらに走り寄ってくる人影があった。
 その人物を見て俺は驚いた。

「カナタか?」
「わあ、カナタもこっちに来てたんだね!」
「うむ。久しぶりでござるなあ、ロイ殿、シル殿! あのときは世話になった!」

 深々と頭を下げてくる異国の少女カナタ。
 相変わらず動きがキビキビしていて気持ちいい少女である。

「ロイ、シル。この子誰?」
「拙者にも紹介してほしいでござる!」

 イオナとカナタは初対面だったので、とりあえずお互いを紹介しておく。

「イオナ殿でござるか! 拙者は冒険者のカナタと申す者。よろしく頼むでござる!」
「え、ええ。……なんかシルと似てるわね、この子」

 イオナがぼそりと呟いていた。
 それはちょっとわかる。犬系って感じだよな。

「あ、そうだ。エリクサー、ありがとな。あれがなかったら危ないところだった」
「気にすることないでござるよ。ロイ殿の役に立てたならよかったでござる」

 カナタはにっこり笑って言う。
 そこから少し雑談する流れになる。

「カナタはこの街で何してるんだ?」
「むー、探し物というかなんというか……あ、ロイ殿。近々この街にどえらい雷を落とすような何かに心当たりはないでござるか?」
「何か? 魔物ってことか?」
「別に魔物とは限らんでござる。人とか、災害でもありでござるよ」
「……悪い。心当たりはないな」
「そうでござるか……変なことを聞いて申し訳ない」

 しゅん、とカナタは肩を落とした。
 どうやらその探し物(?)というのは重要なことらしいが、わからないものはどうしようもない。

 今度はカナタが尋ねてくる。

「ロイ殿は何用でこの街に?」
「ああ、ちょっと野暮用でな」
「?」

 まさか人の拠点に入って隠し財産を回収したとは言えない。

「ああ、そうだカナタ、今ちょっと金が入り用なんだ。何かうまい儲け話を知らないか?」

 エリクサーなんて超レアアイテムを持っているカナタなら、何か俺の知らないような情報を持っているかもしれない。

 そう思ってダメもとで聞いてみると、カナタは腕を組んで難しい顔をした。

「むう、拙者あまり事情通ではござらんからなあ……あ、でもそういうことに詳しそうな知り合いはいるでござる」
「そうなのか?」
「冒険者の中で、一番物知りらしいでござるよ。今聞いてみるでござる」

 カナタは荷物から魔力鉱石を加工したような道具を取り出し、何やら操作する。

『……もしもし、カナタ? 何か用ですか?』

 魔道具から何か聞こえてきた。
 大人っぽい雰囲気の女性の声だ。

「拙者ではなく、ロイが聞きたいことがあるそうでござる」
『ロイ? ……ああ、あなたが以前言っていた<召喚士>の?』
「うむ、行き倒れていた拙者に食事を振る舞ってくれた恩人でござる!」

 そう言ってカナタは魔道具を渡してくる。

 ……というかこれ、まさか離れた場所の人間と会話ができる『通信石』じゃないか!?
 これもエリクサー並みに希少なはずなんだが……本当にカナタは一体何者なんだ。

「も、もしもし」
『以前は私の同僚を助けてくれて感謝します、ロイさん。ところで私に聞きたいこととは?』
「あー、いや、そのですね」
『手早くお願いします。私はこのあと会議が三つ控えているのです……! 本当に手短にお願いします!』

 どうやらカナタの知り合いは忙しい人らしかった。
 聞くだけ聞いてみよう。

「その、あと一週間で八千万ユールほど稼がなくちゃいけないんですが、何かいい方法を知りませんか?」
『ヒルド山地に向かってサファイアワイバーンを三体狩ることをお勧めします』
「え?」
『あなたの現在地はアルムの街ですね? 残り時間、現在地、もろもろ考慮した結果それしか存在しません。
 サファイアワイバーンは一体三千万で取引されるので三体で九千万ユールとなり、規定額を超えます。これで問題ありませんか?』

 おいおいおい。
 この一瞬で解決策を提示してくるって何者だこの人?

『ああもう会議が始まる……! では私はこれで!』

 プツッ。ツー、ツー、ツー……
 通信が切れた。

「やっぱりクラリスは物知りでござるなー」

 カナタが呑気にそんなことを言っていた。
 しかしこの情報の価値は大きい。
 俺はシルに尋ねる。

「シル。ヒルデ山地までどのくらいかかる?」
「んーと、イオナに乗ったらふもとまで一日ちょっとかな」

 時間制限的にも問題なさそうだ。
 そういうわけで、俺たちはヒルデ山地へと向かうことになった。

 目標、サファイアワイバーン三体。
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