どうも、賢者の後継者です~チートな魔導書×5で自由気ままな異世界生活~

ヒツキノドカ

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カミングアウト(※本日二回目の更新です)

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 アルスたちの元からロナを助け出した翌日、俺たち二人と一羽はエルゴ村を出発していた。

 あの村にいて、またアルスたちと出くわしたら面倒だ。というわけで、近くのもう少し大きな町へと向かう途中である。

「これが紅貨か。綺麗な色だなあ」

 朝いちばんでエルゴ村の冒険者ギルドに寄り、ルビーワイバーンの売却金を受け取ってきた。何枚かルビーワイバーンの鱗よりさらに綺麗な紅の硬貨が混ざっている。

 この大陸で用いられる貨幣のうち、最高の価値を持つ紅貨である。
 何でも金以上に特別な鉱物が用いられているんだとか。

「いただいたお金も十分な額でしたが……冒険者ギルドに加盟していれば、もう少し高値で売れたかもしれませんね」

 ロナがそんなことを言う。

 ロナの格好は昨日新しく買った旅装だ。さらにあの後宿で湯浴みをさせ、伸びっぱなしだった髪も整えたおかげで、今のロナは見違えるような美少女となっている。

 大きな丸い瞳やぴこぴこと揺れる頭の上の丸い耳には、とても愛嬌がある。
 まったく、アルスは何を考えてロナに粗末な格好なんかさせていたんだか。

「……ケント様? あの、もしや私は何か粗相をしてしまったでしょうか?」

 そんなことを考えていると、ロナは不安そうにおずおずと尋ねてくる。
 しまった。
 ロナは長くアルスたちに暴言を吐かれ続けたせいで、自信を失ってしまっているのだ。
 ここは年長者として安心させないと!

「そんなことない。ロナがあんまり可愛いから、言葉を失っていたんだ」

「えっ」

「ロナはとても可愛いし、気遣いもできて素敵な子だ。だから気にしなくていい」

「……私は、そんなことを、言われるような者では」

「いや、自信を持ってくれ。ロナは可愛い。一緒にいると癒されるような気分だ」

「も、もういいですから!」

 真っ赤な顔で悲鳴を上げられてしまった。しかも視線を合わせてももらえなくなった。
 くっ、さすがに急に褒めるのは気持ち悪かったか!? 確かにこれでは可愛らしい女児を誘拐しようとする変態のようだったかもしれない。

「そうか……汝はその年頃の雌が好みなのじゃな……」

「断じて違うからな」

 フェニ公が妙な誤解をしているので突っ込んでおく。俺は元アラサー社会人だぞ。
 十~十二歳くらいの女の子なんていくら可愛くても保護対象にしか見えない。
 ……って、脱線したな。

「ロナ、さっきの話だけど、冒険者になると魔物を高額で買い取ってもらえるようになるのか?」

「は、はい。冒険者は有事の際にギルドの指示を受ける必要があったり、一定期間ごとに依頼を消化しなくてはならなかったりしますが、代わりにいろんな優遇措置があるんです」

「いろんな、ってことは、買い取り金額以外にも?」

「そうですね。たとえば通行税が安くなったり、普通の人手は立ち入り禁止の――ダンジョンなんかに入る権利がもらえたりします」

「ダンジョン? そんなのがあるのか?」

「はい」

 ロナからダンジョンについての説明を聞いた。
 簡単に言うと、“地形化した魔物”のことらしい。内部には人間をおびき寄せるための貴重なアイテムなんかが眠っているんだとか。

 そんなものがあるなんて、どこまでもファンタジーな世界だな。
 ダンジョンに入るかどうかはともかく、この世界で活動するなら通行税が安くなったり、行動の自由がききやすくなるのは重要だ。

「それじゃあ、機会があったら冒険者になろうかな」

「とてもよいと思います。ケント様なら、きっとすぐに有名人になってしまわれます」

 キラキラした目で見上げてくるロナが可愛らしい。思わず頭を撫でてしまった。ロナは嫌がる素振りもなく、むしろ嬉しそうに目を細めた。

 さすが虎人族。ネコ科っぽい。

『グルルルルルルルルルッ!』

 うお、魔物だ。
 赤い大きな猪のような敵である。

「クリムゾンボアですか……」

 ロナが呟いた。

「ルビーワイバーンに続いて、また赤い魔物か。これって何か理由があるのか?」

「多分我のせいじゃろうな」

「フェニ公のせい?」

 どういう意味だろうか。

「我はずっとこの付近におった。で、我から流れ出た大量の炎の魔力が周囲に満ち、多くの魔物がそれに準じた力を持つことになったんじゃろうて」

 フェニ公にそんな影響力があるのか……?
 正直あんまり信じられないな。
 とはいえ、貴重な情報だ。フェニ公の言うことが正しければ、目の前の猪は火を噴いたりしてくる可能性があるわけだし。

「ケント様、私にやらせてください。私にどんなことができるのか、ケント様に知ってほしいです」

 ロナが言ってくる。
 心配だけど、本人がそう言うなら任せてみようか。
 危なくなったら即座にロナを【プロテクト】で守れるよう、魔導書を構えておく。

「わかった。気を付けろよ」

「はい。……いきます!」

 ダンッ!

 ロナが勢いよくジャンプし、クリムゾンボアに肉薄する。

「【部分獣化】」

 ロナの腕が変化し、虎の前脚のような形になる。さらにサイズまで大きくなった。白い毛皮を纏ったロナの右腕は、容赦なくクリムゾンボアの顔面を殴り飛ばした。

 バキッ!

『ブギャウ!?』

 吹っ飛んでいくクリムゾンボア。

「見事に飛ばすもんじゃのー」

「……付与魔術もなしにあの威力って……ええ……」

「やりましたー!」

 絶命したクリムゾンボアを引きずってロナが戻ってくる。その表情は控えめながら、どことなく褒めてほしそうな雰囲気だ。

「すごいな、ロナは。こんなに大きなクリムゾンボアを一撃だなんて」

 虎は猫パンチで獲物の骨を砕くと聞いたことがあるが、もはやそんなレベルじゃない。
 よしよしと頭を撫でる。

「えへへぇ」

 嬉しそうに顔を緩めるロナ。
 可愛いな。
 片手で体長四メートルはあろうかという魔物を引きずってはいるけど。

「ロナ、虎の姿になれるのか?」

「全身は、無理ですけど。手や足なら、部分的に獣の姿になれます。あと、実は私、力持ちです」

「そうみたいだな」

「私、頑張ってケント様のお役に立ちますね!」

 ぐっと拳を握るロナだった。
 フェニ公がうんうんと頷く。

「賢者デオドロの後継者であるケントには、邪神討伐の責務がある。戦力は多いに越したことはない。役に立つのじゃぞ、ロナよ」

「……え? 賢者様の後継者? それに、邪神討伐……?」

 フェニ公の言葉に目を白黒させるロナ。

 ……普通こんな急に全部バラすか?
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