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属性魔術
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さて、俺がAランク冒険者になった翌日のこと。
「……すみません。依頼に失敗しました」
気まずい思いで受付嬢に謝罪する俺。
「ええ!? ケント・ハヤミさんですよね! Aランクになったという! ゴブリン討伐に失敗したんですか?」
「はい……」
「何があったんですか?」
「ゴブリンをコロニーごと消し飛ばしてしまい……証拠になる“体の一部の回収”ができませんでした……」
そう。
俺は属性の書の試運転のため、ゴブリン討伐の依頼を受けた。
ゴブリンはリビットから離れた山に巣穴を掘り、巨大なコロニーを形成していた。
そこから人里に降りて農作物を荒らすので、討伐がギルドに依頼されていたのだ。
もっともゴブリンは繁殖力が高く、コロニーの中には百体以上もいた。
そんなもの全滅させられるわけがない、と考えたギルドは、討伐数に応じて報酬を出すやり方で少しずつゴブリンの数を減らそうとしていた。
そんな中、俺が何をしたかというと……
『お、ゴブリンのコロニーってあれか。それじゃあせっかく遠距離攻撃の手段を手に入れたんだから……せえのっ【フォトンレーザー】!』
キュボッ――ガラガラガラ!
『あれ……山が……崩れてる……!?』
……簡単に言うと、光属性の魔術を使ったら、山ごとコロニーが崩壊したのだ。
フェニ公は笑っていたが、ロナは絶句していた。
近くに人里はなかったので、人的被害はないのが救いだ。
「ご、ゴブリンのコロニーを潰したのですか? たった一人で?」
「それはまあ……そうですね」
「さ、さすがはガレオス様との一騎打ちで勝利したお方ですね」
引かれてる!
残念ながら妥当な反応だろう。俺も受付嬢の立場だったら同じリアクションをすると思う。
「と、とりあえず、確認が済み次第、報酬をお渡ししますね!」
「ありがとうございます」
受付嬢の説明によれば、討伐証明となるゴブリンの体の一部を持ってこなくても、コロニーの崩壊が職員によって確認されれば依頼達成となるらしい。
報酬ももらえるそうだ。
それはありがたい。
受付嬢との話を終え、少し離れた場所で待っていたフェニ公たちの元に戻る。
「悪い、お待たせ」
「よう、ケント! 一日ぶりだな!」
……と、そこにはガレオスの姿もあった。フェニ公たちと話していたらしい。
「今日は何してるんだ?」
「うむ。用が済んだのでギルド本部に帰ろうと思ってな! お前に挨拶をしようと待っていたのだ」
「用?」
ガレオスは頷く。
「もともと俺様は、この周辺で発生した巨大な魔力反応の正体を確かめるべくやってきたのだ。凶悪な魔物である可能性もあったから、偵察・可能なら討伐のためにな」
「巨大な魔力反応? そんなものがあったのか?」
「ああ。そして俺は確信した。その巨大な魔力の持ち主はお前だとな!」
びしっと指を突き付けてくるガレオス。
「何で俺だってわかるんだ?」
「うむ。実際に戦えばわかる。ギルド本部で観測された魔力反応は、相当なものだった。お前のような規格外の人間でなければ、あれだけの反応は出ん。そしてお前は悪しき存在でないこともわかった。ゆえに俺はここに居続ける理由はない」
魔力反応ねえ……そんなものが離れた位置からでもわかるようになってるのか。
もしかしたら、邪神の復活を察知するためのものだったりしてな。
「というわけで、俺様は転移陣に乗って帰る」
「転移陣?」
「転移陣というのは――」
……ガレオスの説明は大雑把すぎてわかりにくいので、俺なりにかみ砕くと。
どうも冒険者ギルドは瞬間移動を可能とする装置を開発したらしい。
しかし一度使うのに大量の魔力を必要とするので、使えるのはSランク冒険者のみ、しかも緊急事態の場合のみとされているそうだ。
ガレオスはそれを使って、他国にあるギルド本部からこのリビットまでやってきたと。
「Sランクになれば、申請さえ通せば世界のどこでも転移できるぞ~? 早くこっちに来るのだ、ケントよ」
「今のところそのつもりはないよ。Aランクで十分だ」
「うーむ、残念だ。ジルグ王国に来た時は、ギルド本部を訪ねるがいい。また俺様と模擬戦をしよう」
「……気が向いたらな」
口ではそう言うが、正直もう御免だ。
悪目立ちしそうだし。
「がっはは! ではな!」
ガレオスは笑い声を上げながら去っていった。
最後まで元気なやつだったな……
「ケントよ。これからどうするのじゃ?」
ガレオスを見送った後、フェニ公が尋ねてくる。
「うーん……とりあえず、少し魔術の練習がしたいな。このままだと属性魔術が使いにくくて仕方がない」
属性魔術は付与魔術と違って自分の体を使わない分、威力の調整が難しいのだ。
魔導書の補助によって、“賢者と同じ魔術の腕”はあるはずなんだが……適切な魔力の量がいまいちわからない。
単純な経験不足のせいでもあるんだろうが。
「では、魔道具を使うのはどうでしょうか?」
「ロナ、どういうことだ?」
「魔道具は職人に頼んで作ってもらえば、特殊な効果を与えられます。そのやり方を利用して、ケント様の魔力を押さえる魔道具を作ってもらえばいいのではないでしょうか」
「なるほど」
魔力を押さえる魔道具か。
それがあれば属性魔術も安心して使えるようになるかもしれない。
「ナイスアイデアだ。それでいこう」
というわけで、魔道具職人の工房に向かうことになった。
「……すみません。依頼に失敗しました」
気まずい思いで受付嬢に謝罪する俺。
「ええ!? ケント・ハヤミさんですよね! Aランクになったという! ゴブリン討伐に失敗したんですか?」
「はい……」
「何があったんですか?」
「ゴブリンをコロニーごと消し飛ばしてしまい……証拠になる“体の一部の回収”ができませんでした……」
そう。
俺は属性の書の試運転のため、ゴブリン討伐の依頼を受けた。
ゴブリンはリビットから離れた山に巣穴を掘り、巨大なコロニーを形成していた。
そこから人里に降りて農作物を荒らすので、討伐がギルドに依頼されていたのだ。
もっともゴブリンは繁殖力が高く、コロニーの中には百体以上もいた。
そんなもの全滅させられるわけがない、と考えたギルドは、討伐数に応じて報酬を出すやり方で少しずつゴブリンの数を減らそうとしていた。
そんな中、俺が何をしたかというと……
『お、ゴブリンのコロニーってあれか。それじゃあせっかく遠距離攻撃の手段を手に入れたんだから……せえのっ【フォトンレーザー】!』
キュボッ――ガラガラガラ!
『あれ……山が……崩れてる……!?』
……簡単に言うと、光属性の魔術を使ったら、山ごとコロニーが崩壊したのだ。
フェニ公は笑っていたが、ロナは絶句していた。
近くに人里はなかったので、人的被害はないのが救いだ。
「ご、ゴブリンのコロニーを潰したのですか? たった一人で?」
「それはまあ……そうですね」
「さ、さすがはガレオス様との一騎打ちで勝利したお方ですね」
引かれてる!
残念ながら妥当な反応だろう。俺も受付嬢の立場だったら同じリアクションをすると思う。
「と、とりあえず、確認が済み次第、報酬をお渡ししますね!」
「ありがとうございます」
受付嬢の説明によれば、討伐証明となるゴブリンの体の一部を持ってこなくても、コロニーの崩壊が職員によって確認されれば依頼達成となるらしい。
報酬ももらえるそうだ。
それはありがたい。
受付嬢との話を終え、少し離れた場所で待っていたフェニ公たちの元に戻る。
「悪い、お待たせ」
「よう、ケント! 一日ぶりだな!」
……と、そこにはガレオスの姿もあった。フェニ公たちと話していたらしい。
「今日は何してるんだ?」
「うむ。用が済んだのでギルド本部に帰ろうと思ってな! お前に挨拶をしようと待っていたのだ」
「用?」
ガレオスは頷く。
「もともと俺様は、この周辺で発生した巨大な魔力反応の正体を確かめるべくやってきたのだ。凶悪な魔物である可能性もあったから、偵察・可能なら討伐のためにな」
「巨大な魔力反応? そんなものがあったのか?」
「ああ。そして俺は確信した。その巨大な魔力の持ち主はお前だとな!」
びしっと指を突き付けてくるガレオス。
「何で俺だってわかるんだ?」
「うむ。実際に戦えばわかる。ギルド本部で観測された魔力反応は、相当なものだった。お前のような規格外の人間でなければ、あれだけの反応は出ん。そしてお前は悪しき存在でないこともわかった。ゆえに俺はここに居続ける理由はない」
魔力反応ねえ……そんなものが離れた位置からでもわかるようになってるのか。
もしかしたら、邪神の復活を察知するためのものだったりしてな。
「というわけで、俺様は転移陣に乗って帰る」
「転移陣?」
「転移陣というのは――」
……ガレオスの説明は大雑把すぎてわかりにくいので、俺なりにかみ砕くと。
どうも冒険者ギルドは瞬間移動を可能とする装置を開発したらしい。
しかし一度使うのに大量の魔力を必要とするので、使えるのはSランク冒険者のみ、しかも緊急事態の場合のみとされているそうだ。
ガレオスはそれを使って、他国にあるギルド本部からこのリビットまでやってきたと。
「Sランクになれば、申請さえ通せば世界のどこでも転移できるぞ~? 早くこっちに来るのだ、ケントよ」
「今のところそのつもりはないよ。Aランクで十分だ」
「うーむ、残念だ。ジルグ王国に来た時は、ギルド本部を訪ねるがいい。また俺様と模擬戦をしよう」
「……気が向いたらな」
口ではそう言うが、正直もう御免だ。
悪目立ちしそうだし。
「がっはは! ではな!」
ガレオスは笑い声を上げながら去っていった。
最後まで元気なやつだったな……
「ケントよ。これからどうするのじゃ?」
ガレオスを見送った後、フェニ公が尋ねてくる。
「うーん……とりあえず、少し魔術の練習がしたいな。このままだと属性魔術が使いにくくて仕方がない」
属性魔術は付与魔術と違って自分の体を使わない分、威力の調整が難しいのだ。
魔導書の補助によって、“賢者と同じ魔術の腕”はあるはずなんだが……適切な魔力の量がいまいちわからない。
単純な経験不足のせいでもあるんだろうが。
「では、魔道具を使うのはどうでしょうか?」
「ロナ、どういうことだ?」
「魔道具は職人に頼んで作ってもらえば、特殊な効果を与えられます。そのやり方を利用して、ケント様の魔力を押さえる魔道具を作ってもらえばいいのではないでしょうか」
「なるほど」
魔力を押さえる魔道具か。
それがあれば属性魔術も安心して使えるようになるかもしれない。
「ナイスアイデアだ。それでいこう」
というわけで、魔道具職人の工房に向かうことになった。
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