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第3章 弟子の魔法使いは優等生達を欺き凌駕する(何気なく)。
第22話 全てを知った彼の選択肢(弟子は悩むのをやめた)。
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「ノホホホホっ!」
上機嫌なジィちゃんがいます。自宅から居て当然なんだけど、テンションがおかしな方向で飛んでます。
嬉しそうなのは分かるが、側から見るとグラサン付けた年寄りが壊れたようにしか見えない。
……少々不安になるわけで。
「やっぱりクラちゃんは可愛いのぉ~。イノちゃんもスタイルが良い。高校生徒は思えんナイスバディじゃな~」
「……」
なんかアイドル雑誌を見ながら興奮してるジジィがいるよ。……俺のジィちゃんだけど。
「それで、どうでした? 長々と続いたデートは?」
「アレをデートとか言ったら、俺一生彼女とか無理だわ。胃に穴が開く」
料理を作り終えたマドカがキッチンから出て来る。
料理は美味そうだけど、いきなり飛ばしてくるマドカのお言葉で心の身が削げそう。
「入る高校を間違えたわ。ダンジョンのことで頭いっぱいだった。まさかここまで面倒が転がってくるなんて……」
ただダンジョンが借りたかった。それがこうなるとは……。
「本当にそう思っていますか? だとしたら、少々鈍い」
だが、聞いてたマドカの反応は軽口から少々辛口へ変わる。
少しだけ詰まらなそうに見ていた。
「いえ、衰えましたか? 勘が」
「そこまで言う?」
「───因果を引き寄せるチカラ。あの二人の弟子がトラブルメーカー体質を引き継いでいないと本気で思いますか?」
「……因果を引き寄せるとかカッコよく言っても、最後のトラブルメーカーで台無しだな!」
「おや? あまり誤魔化せてませんか、それは済みません」
全然誤魔化せてない。
まぁ、マドカの言うことも一理ある。否定し切れないし、まだマシじゃないかとも思っている自分がいた。
「結局のところ話の裏に藤原がいるって分かったことが一番の収穫かな。魔道具もそうだが、他所のクラスの暗躍事情なんて興味ない」
「藤原輝夜さんですか。藤原企業はよくチラシやCMでも見ますが、七大魔法名家ではないんですよね?」
「それに近い位置にいるって言った方がいいかな。名家なのは間違いないが……ちょっと複雑な家系でもあるんだ」
藤原家はかなり特殊な家である。
現当主はそこまで危険視していないが、代わりに藤原輝夜の危険度は極めて高い。
「目的に心当たりがあると?」
「大物食いを狙ってるなら、ほぼ確実に俺たちの席だろうな」
俺たちの席───すなわち七大魔法家の席だ。
「それは始まりの魔法使いの席ではないんですか?」
「いいや、必ずしもそうとは言えない。血が途絶えて力を失った家系も実はいくつかある。神崎家のように他所の血を取り込んで補っているのもあるが、乗っ取られて名が変わったところも存在する」
「──ワシのことじゃな」
「っ……え?」
雑誌に夢中かと思われたジィちゃんが呟く。
キョトンとした顔でマドカが見つめて、確認を取るように俺の方を向く。……俺は静かに頷いて肯定した。
「龍崎家は元々あるが、ジィちゃんは婿養子。……なんだよね?」
「うむ、死んだバァちゃんが龍崎家の人間でのぉ。色々あったが、養子として認められたのじゃ」
それが原因であのクソジジィと犬猿の仲になったがのぉ。なんてウザったそうに愚痴を漏らす。……あー、そこら辺から因縁があったんですねぇ。
そういえば子供の頃にふと昔のアルバムを見せて貰った時、バァちゃんが学生時代の写真があったが、大和撫子みたいで凄い美人だった。
「白坂を狙ってるのは、恐らく俺か神崎家に揺さぶりをかける為だと思う。いや、俺を巻き込んでいるから龍崎家が狙いか」
俺自身はもう神崎家と縁を切ってる。普通ならそう考えると思うが。
「どうでしょうか? それは関係者の中では常識だと思いますが、外部の藤原家からしたら、名字が変わっても神崎家との繋がりがあると考えませんか?」
なるほど、その可能性は捨て切れない。
だとすれば間接的に神崎家に攻撃を仕掛けていることにもなるが……。
「どっちが標的であっても、ダンジョンで俺を潰さないと話は進まないな」
「負けそうですか? 優等生たちに」
「それは確認か? それともまた軽口か?」
返答はない。微かに微笑んで見せて俺の返答を待つマドカ。
ジィちゃんも少し興味が出たか、チラリとこちらへグラサンを向けている。片方のグラサンは雑誌をガン見だけどな! そんなに良いのか? ちょっと興味が出て来んだけど。
「恐らく相手する奴らだけじゃない。あの学園の普通科以外の大半の生徒は、俺よりも才能がある。これは卑屈でもお世辞でもない。ただの事実だ」
魔法実習を見学する機会があって、確信へと変わった。
やはりのチカラは一般の学生レベルにも劣っている。
純粋な試験の評価だけなら、まず勝ち目はない。
「だから俺は俺の土俵でしか勝負する気はない。ダンジョンなら寧ろ好都合だ」
「不要な心配のようですね。では、予定通りに?」
「ああ、春野の策にわざ乗って、襲って来たら撃退して終わりだ」
まとめると意外と簡単に話が終わった。
ジィちゃんも興味を失ったか、再び愛読書を堪能している。孫して少々思うところある光景だが。……なんてアイドルたちの表紙を見て、不意に思い出した。
「……あ、そういえば霧島って奴に訊き忘れたことがあったな」
「情報提供者の彼女ですか?」
「ああ、藤原と春野が組んでる証拠動画を見せて来たんだが、その会話の中で気になる箇所があってな」
『それで……分かってんでしょうね?』
『ええ、勿論。貴方が裏切らなければ、お約束通りあの学園に戻して上げますよ。裏切らなければね?』
「あの学園って何のことだ? それが春野が危険を犯してる動機なのは、なんとなく分かるが」
「何でしたら調べて見ましょうか? 当日までに間に合うか分かりませんが、私の少々興味ありますし」
「う、うーん」
情報分析も可能なマドカの精霊魔法を頼るか。そう思って彼女にお願いしようしたところ……。
「さっきから言っとる春野とは、もしやアイドルのアヤちゃんのことか?」
……いましたよ。そこら辺の奴よりも情報が豊富そうなファンが。
「春野綾だけど知ってるの?」
「勿論じゃが、同じチームの中でも、あの子は不思議な子じゃからな」
不思議というか狂気で歪んでじゃないの? 口にはしないけど。
ところがジィちゃんが口にしたは、そういう意味ではないらしい。雑誌のページをめくって見せて来た。
「ほれ、この子じゃろう? アヤちゃんは」
そう言ってジィちゃんは、彼女が単体で写ってるページを見せた。
「学園とはおそらく彼処のことじゃろうな。妙なことじゃが、彼女だけ高校を変えたんじゃよ」
「彼処?」
「刃も知っとる筈じゃ。ぬしの……」
続けて告げられた内容。
それは俺の中で、ある種の疑念を生ませる。
十分な意味を持っていた。
そして夜、俺は自分の部屋でスマホ画面を覗く。
ある程度のやることは決まったが、今回は選択肢がある。面倒な選択であるが。
「さて、どうしようか」
いっそ面倒な奴らを全員一掃させてもと思ったが、やり過ぎて余計な連中まで引っ張り出されても困る。
「ただ排除を目指すか、それとも牽制で留めるか」
そうして決めた俺は、スマホでメールを送った。
緋奈から頼まれてすぐに、匿名で連絡を交換して来た相手へ。
ようやく分かった。その正体の名を添えて、俺は返信を待つと……。
「……やはりそう返すか」
しばらくして、承諾のメッセージが届く。それに加えて条件を加えて来た。
俺も了解と返してスマホをテーブルに置く。ベットに寝っ転がって、そっと目を閉じた。
そして嫌な夢を見る。
悪意が溢れた知らないダンジョン内部の景色。
俺は降り掛かる悪意を全て薙ぎ倒して行く。
悪意と呼ばれても、あの世界に比べたら弱々しく薄かった。
しかし、そんな俺を出し抜くように、別の悪意が何かを掠め取ろうとして、景色がまた一変した。
学園の外の景色。
夕方近くで誰かの悲鳴が聞こえた。
誰かの助けを呼ぶ声。誰かを嘲笑う声が重なり合う中。
ライフルを構えた俺は銃口をそちらへ向ける。
二つの声のうち、ひとつの方へと躊躇いなく、引き金を引い───。
スマホの目覚まし機能が作動。
鐘の音が部屋中に響いて、俺の意識を覚醒させた。
「嫌なタイミングで……」
偶然発動した『瞑想』が途切れてしまい、軽く気分が鬱になる。
狙って発動するとしんどいのに。思わずスマホを恨めしく投げ捨てたくなったが。
「八つ当たりは褒められませんよ?」
「……なんで隣でいるの?」
「そのスキルが発動中は、護衛が必要かと思いまして」
添い寝みたいに隣で薄着姿のマドカがいる。上しか着てない感じに見えるけど、下は大丈夫だよね?
いつの間に忍び込んだのか、俺が『瞑想』に入っていると感じてガードに来たらしい。
「まさか寝てないのか?」
「寝てましたよ。結界を張って抱き枕にしてました」
そうか、抱き枕のところは全く記憶にないので無視するが、随分と厳重に守られていたようだ。……お母さんやん。
「では少し早いですが、朝食にしましょうか」
「おー」
過保護なお母さんに付き添われて、俺はもっと早起きしてるだろうジィちゃんが待つリビングへ移動する。
気のせいか服から甘い蜜ような香がしたが、それについてマドカに訊こうと思わなかった。
そして話は土曜日へ飛ぶ。
本来なら休みである学園のダンジョンの入り口前。
「用意はいい?」
「ああ」
俺は春野について行くように、ダンジョンへ入ることになった。
上機嫌なジィちゃんがいます。自宅から居て当然なんだけど、テンションがおかしな方向で飛んでます。
嬉しそうなのは分かるが、側から見るとグラサン付けた年寄りが壊れたようにしか見えない。
……少々不安になるわけで。
「やっぱりクラちゃんは可愛いのぉ~。イノちゃんもスタイルが良い。高校生徒は思えんナイスバディじゃな~」
「……」
なんかアイドル雑誌を見ながら興奮してるジジィがいるよ。……俺のジィちゃんだけど。
「それで、どうでした? 長々と続いたデートは?」
「アレをデートとか言ったら、俺一生彼女とか無理だわ。胃に穴が開く」
料理を作り終えたマドカがキッチンから出て来る。
料理は美味そうだけど、いきなり飛ばしてくるマドカのお言葉で心の身が削げそう。
「入る高校を間違えたわ。ダンジョンのことで頭いっぱいだった。まさかここまで面倒が転がってくるなんて……」
ただダンジョンが借りたかった。それがこうなるとは……。
「本当にそう思っていますか? だとしたら、少々鈍い」
だが、聞いてたマドカの反応は軽口から少々辛口へ変わる。
少しだけ詰まらなそうに見ていた。
「いえ、衰えましたか? 勘が」
「そこまで言う?」
「───因果を引き寄せるチカラ。あの二人の弟子がトラブルメーカー体質を引き継いでいないと本気で思いますか?」
「……因果を引き寄せるとかカッコよく言っても、最後のトラブルメーカーで台無しだな!」
「おや? あまり誤魔化せてませんか、それは済みません」
全然誤魔化せてない。
まぁ、マドカの言うことも一理ある。否定し切れないし、まだマシじゃないかとも思っている自分がいた。
「結局のところ話の裏に藤原がいるって分かったことが一番の収穫かな。魔道具もそうだが、他所のクラスの暗躍事情なんて興味ない」
「藤原輝夜さんですか。藤原企業はよくチラシやCMでも見ますが、七大魔法名家ではないんですよね?」
「それに近い位置にいるって言った方がいいかな。名家なのは間違いないが……ちょっと複雑な家系でもあるんだ」
藤原家はかなり特殊な家である。
現当主はそこまで危険視していないが、代わりに藤原輝夜の危険度は極めて高い。
「目的に心当たりがあると?」
「大物食いを狙ってるなら、ほぼ確実に俺たちの席だろうな」
俺たちの席───すなわち七大魔法家の席だ。
「それは始まりの魔法使いの席ではないんですか?」
「いいや、必ずしもそうとは言えない。血が途絶えて力を失った家系も実はいくつかある。神崎家のように他所の血を取り込んで補っているのもあるが、乗っ取られて名が変わったところも存在する」
「──ワシのことじゃな」
「っ……え?」
雑誌に夢中かと思われたジィちゃんが呟く。
キョトンとした顔でマドカが見つめて、確認を取るように俺の方を向く。……俺は静かに頷いて肯定した。
「龍崎家は元々あるが、ジィちゃんは婿養子。……なんだよね?」
「うむ、死んだバァちゃんが龍崎家の人間でのぉ。色々あったが、養子として認められたのじゃ」
それが原因であのクソジジィと犬猿の仲になったがのぉ。なんてウザったそうに愚痴を漏らす。……あー、そこら辺から因縁があったんですねぇ。
そういえば子供の頃にふと昔のアルバムを見せて貰った時、バァちゃんが学生時代の写真があったが、大和撫子みたいで凄い美人だった。
「白坂を狙ってるのは、恐らく俺か神崎家に揺さぶりをかける為だと思う。いや、俺を巻き込んでいるから龍崎家が狙いか」
俺自身はもう神崎家と縁を切ってる。普通ならそう考えると思うが。
「どうでしょうか? それは関係者の中では常識だと思いますが、外部の藤原家からしたら、名字が変わっても神崎家との繋がりがあると考えませんか?」
なるほど、その可能性は捨て切れない。
だとすれば間接的に神崎家に攻撃を仕掛けていることにもなるが……。
「どっちが標的であっても、ダンジョンで俺を潰さないと話は進まないな」
「負けそうですか? 優等生たちに」
「それは確認か? それともまた軽口か?」
返答はない。微かに微笑んで見せて俺の返答を待つマドカ。
ジィちゃんも少し興味が出たか、チラリとこちらへグラサンを向けている。片方のグラサンは雑誌をガン見だけどな! そんなに良いのか? ちょっと興味が出て来んだけど。
「恐らく相手する奴らだけじゃない。あの学園の普通科以外の大半の生徒は、俺よりも才能がある。これは卑屈でもお世辞でもない。ただの事実だ」
魔法実習を見学する機会があって、確信へと変わった。
やはりのチカラは一般の学生レベルにも劣っている。
純粋な試験の評価だけなら、まず勝ち目はない。
「だから俺は俺の土俵でしか勝負する気はない。ダンジョンなら寧ろ好都合だ」
「不要な心配のようですね。では、予定通りに?」
「ああ、春野の策にわざ乗って、襲って来たら撃退して終わりだ」
まとめると意外と簡単に話が終わった。
ジィちゃんも興味を失ったか、再び愛読書を堪能している。孫して少々思うところある光景だが。……なんてアイドルたちの表紙を見て、不意に思い出した。
「……あ、そういえば霧島って奴に訊き忘れたことがあったな」
「情報提供者の彼女ですか?」
「ああ、藤原と春野が組んでる証拠動画を見せて来たんだが、その会話の中で気になる箇所があってな」
『それで……分かってんでしょうね?』
『ええ、勿論。貴方が裏切らなければ、お約束通りあの学園に戻して上げますよ。裏切らなければね?』
「あの学園って何のことだ? それが春野が危険を犯してる動機なのは、なんとなく分かるが」
「何でしたら調べて見ましょうか? 当日までに間に合うか分かりませんが、私の少々興味ありますし」
「う、うーん」
情報分析も可能なマドカの精霊魔法を頼るか。そう思って彼女にお願いしようしたところ……。
「さっきから言っとる春野とは、もしやアイドルのアヤちゃんのことか?」
……いましたよ。そこら辺の奴よりも情報が豊富そうなファンが。
「春野綾だけど知ってるの?」
「勿論じゃが、同じチームの中でも、あの子は不思議な子じゃからな」
不思議というか狂気で歪んでじゃないの? 口にはしないけど。
ところがジィちゃんが口にしたは、そういう意味ではないらしい。雑誌のページをめくって見せて来た。
「ほれ、この子じゃろう? アヤちゃんは」
そう言ってジィちゃんは、彼女が単体で写ってるページを見せた。
「学園とはおそらく彼処のことじゃろうな。妙なことじゃが、彼女だけ高校を変えたんじゃよ」
「彼処?」
「刃も知っとる筈じゃ。ぬしの……」
続けて告げられた内容。
それは俺の中で、ある種の疑念を生ませる。
十分な意味を持っていた。
そして夜、俺は自分の部屋でスマホ画面を覗く。
ある程度のやることは決まったが、今回は選択肢がある。面倒な選択であるが。
「さて、どうしようか」
いっそ面倒な奴らを全員一掃させてもと思ったが、やり過ぎて余計な連中まで引っ張り出されても困る。
「ただ排除を目指すか、それとも牽制で留めるか」
そうして決めた俺は、スマホでメールを送った。
緋奈から頼まれてすぐに、匿名で連絡を交換して来た相手へ。
ようやく分かった。その正体の名を添えて、俺は返信を待つと……。
「……やはりそう返すか」
しばらくして、承諾のメッセージが届く。それに加えて条件を加えて来た。
俺も了解と返してスマホをテーブルに置く。ベットに寝っ転がって、そっと目を閉じた。
そして嫌な夢を見る。
悪意が溢れた知らないダンジョン内部の景色。
俺は降り掛かる悪意を全て薙ぎ倒して行く。
悪意と呼ばれても、あの世界に比べたら弱々しく薄かった。
しかし、そんな俺を出し抜くように、別の悪意が何かを掠め取ろうとして、景色がまた一変した。
学園の外の景色。
夕方近くで誰かの悲鳴が聞こえた。
誰かの助けを呼ぶ声。誰かを嘲笑う声が重なり合う中。
ライフルを構えた俺は銃口をそちらへ向ける。
二つの声のうち、ひとつの方へと躊躇いなく、引き金を引い───。
スマホの目覚まし機能が作動。
鐘の音が部屋中に響いて、俺の意識を覚醒させた。
「嫌なタイミングで……」
偶然発動した『瞑想』が途切れてしまい、軽く気分が鬱になる。
狙って発動するとしんどいのに。思わずスマホを恨めしく投げ捨てたくなったが。
「八つ当たりは褒められませんよ?」
「……なんで隣でいるの?」
「そのスキルが発動中は、護衛が必要かと思いまして」
添い寝みたいに隣で薄着姿のマドカがいる。上しか着てない感じに見えるけど、下は大丈夫だよね?
いつの間に忍び込んだのか、俺が『瞑想』に入っていると感じてガードに来たらしい。
「まさか寝てないのか?」
「寝てましたよ。結界を張って抱き枕にしてました」
そうか、抱き枕のところは全く記憶にないので無視するが、随分と厳重に守られていたようだ。……お母さんやん。
「では少し早いですが、朝食にしましょうか」
「おー」
過保護なお母さんに付き添われて、俺はもっと早起きしてるだろうジィちゃんが待つリビングへ移動する。
気のせいか服から甘い蜜ような香がしたが、それについてマドカに訊こうと思わなかった。
そして話は土曜日へ飛ぶ。
本来なら休みである学園のダンジョンの入り口前。
「用意はいい?」
「ああ」
俺は春野について行くように、ダンジョンへ入ることになった。
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