神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜

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第4章 弟子の魔法使いは試験よりも魔神と一騎討ち(でも試験荒らして学園トップ共を蹴落とす)

第47話 ミヤモト流VSエリューシオン流(弟子はペッタンに興味なし)。

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*作者からの補足説明*
 水の剣士(姉のサラ)風の槍使い(妹のリサ):エリューシオン流。
 魔剣使い(龍崎刃):ミヤモト流。


「意外だな。まさかお前の方から来るとは思わなかった」
「クククッ、オレに会いたかっただろう? わざわざ来てやったんだ。感謝しろ」

 第三層で白坂と鬼苑が対峙している。
 点数稼ぎの為に他のメンバーは散り散りになって、今この場にはいるの二人のみ。……実は何人か近くにいたが、二人が発する威圧に思わず隠れるようにして離れて行った。

「誰もいない。望み通りの展開だろ?」
「そうだな。邪魔が入らなければ負ける気はしない」

 ジャブ程度の軽い挑発。普段の桜香なら乗る事はないが、チームメイトをやられて大分気が立っている。

「貴様をここで倒す! そして内輪揉めも終わらせる!」
「お前の敗北で終わるかもな? 桜香ァ」
「気安く呼ぶなッ!」

 白坂が愛用の剣を抜いた。頑丈な素材で出来た西洋風の剣だ。

「ククククッ! 可愛い声で鳴けよ?」

 対する鬼苑は黒いトンファーを片手で構える。恐らく頑丈な金属の一つだろう。

「ハァ!!」
「ハハァッー!」

 飛びかかるように振り下ろされた剣戟を、片手のトンファーで受け止めた。




 その頃、同じ第三層の入り口では。

「探知したわ。白坂さんと鬼苑くんは西の方よ」
「ご苦労、西蓮寺。ではオレが行くとしよう。お前は第四層へ行っていい」

 生徒会副会長の西蓮寺七海の探知によって、白坂と鬼苑の位置が判明した。
 そして西蓮寺の言葉に礼を述べる土御門鷹海。生徒会の会長を務めている学園一位。学園ただ一人のSSランク。

 神崎、龍崎、四条に並ぶ七大魔法名家の一つでもある。
 さらに神崎とは昔からライバル関係にあり、何度か衝突した事があったが、とうの鷹海にそんな意識は全くない。

「刃君の方はいいの?」
「既に姫門の藍沢たちが行っている。同じSSランクだ。戦力は十分に集まっている」

 その向かった『星々の使い魔スター・ウォッチ』はリーダー共に全滅しているが、土御門たちはまだ気づいていない。

「学園側に従ってると思ってた」
「まずは鬼苑を狙う。最終日で龍崎が脅威となるならそちらへ移ろう」

 詳しい事は西蓮寺は聞いていないが、学園がこの試験を利用して何か仕掛けようとして、ターゲットを刃にしているのは気付いていた。
 姫門の生徒が緊急で参加して来たのも、学園側が手引きしたから。自分達の参加も関係しており、上位チームを倒せば成績やボーナスが付くようになっている。

 特に一位は報酬が圧倒的に良いから、他の二年や三年も刃を狙っている筈だ。

「報酬の件で龍崎や四条、藤原も狙い撃ちにされる。それだけでも奴らにしたら地獄だろう」
「だからまだ手は出さないってこと?」
「学園のトップが相手が不利な状況で仕掛ける訳がないだろう」

 と言ってもどうにもならなければやるしかないが。
 現にこれから向かう鬼苑たちは戦闘中である。どんな決着を迎えるか知らないが、どちらも消耗しているのは確実だった。



 六日目からの追加ルールによって、ダンジョン内の熱気が燃えるように加熱。
 大半の生徒たちは二層までで留まり、ミッションや魔物討伐でポイントを稼いで、また別チームに仕掛けて点数を半分にしようと策を練っているチームもある。

 三層以降は少数のチームしか入っていない。
 さらに第四層に限って言えば刃個人のチーム以外は春野たちやルールブ双子を除けば───ひとチームのみ。が入って来ていた。




「ハァァァッ!」
「「ッ!!」」

 ガキンッと互いの武器が衝突する。
 俺の二刀の魔剣から炎と風が衝撃となって相手を弾く。

「その程度で!」
「押し切れない!」

 しかし、双子の勢いは少しも衰えることはない。
 弾いたように見えてもすぐに食らい付いて、高速連携で追い詰めようとする。なんとか“風魔”の反射能力と左右の二刀で受け流しているが、彼女たちの槍術と剣術は一流であった。

「ミヤモト流──」
「「エリューシオン流──」」

 お互いに技を繰り出そうと勢いを溜める。

「二刀──『火斬旋風カザンセンプウ』ッ!」
「『青騎士の審判ブルー・ジャッジメント』」
「『緑騎士の審判グリー・ジャッジメント』」

 火を纏う斬撃の竜巻。
 水と風が混じり合った斬撃と突撃の衝撃。

「ふっ!」
「はっ!」

 こちらの斬撃の竜巻を弾いた双子が舞のように攻めて来る。

「ッ!」

 双子だけあってやはり連携が上手い。文句の付けようがない。
 舞を披露しながら武器を回して、俺の決め手をズレさせている。魔剣の攻撃が上手く機能していない。

「『乱れ水の矢アクア・アロー』!」

 レイピアの先端から細長い水の矢が放たれる。異世界の魔法だ。
 どうにか空の魔剣で防いだが、槍持の方が空いた隙間を一気に踏み込んで来た。

「『風の疾槍ウィンド・ランス』!」
「──ッ」

 こちらも異世界の風魔法。貫通の風を纏った槍が迫って来る。
 すぐさま太陽の魔剣で防ごうするが、突如もう片方の魔剣に引っ張られて体勢が崩れた。……空の魔剣の刃に水の矢が接着剤のように引っ付いて───糸のように伸びたレイピアの彼女が引っ張っていた。

「粘着性の水……『渦雨ウズアメ』か」
「っ!?」

 咄嗟に魔剣を手放してなかったら危なかった。 
 空いた手で槍を掴むと槍持の方が驚いた顔で無傷な手と俺を見た。なるほど。

「特性である『切断』で細切れになると思ったか?」
「耐久値はさっきの攻撃で見切った……どうして上がってる?」

 どうして? 不思議そうに言うが、そんなの───

「君たちの所為に決まってるだろう」
「がっ!?」

 掴んだ槍を引き寄せて腹へ蹴りを入れる。スタイルの“風魔”の影響でパワーが弱いが、別に筋力が普段より落ちている訳じゃない。内蔵に衝撃を与えるように連続の膝蹴りも打った。

「そのまま寝ていろ」
「ゲホッ!」
「リサっ!」

 レイピア持ちの方が叫んで駆けて来る。……こっちの方はリサって言うのか。気絶はしてないが、吐き気と内臓のダメージで体勢が崩れて膝をついた。トドメだ。

「させない!」

 しかし、それを許す片割れではなかった。
 神速のような脚力で首を狙った俺の柄の攻撃をレイピアの先端で弾く。その間に俺は距離を取って、落ちてまだ消えてなかった空の魔剣を回収する。

 一定距離で止まるとお互い睨み合う。

「今度こそ仕留める!」
「やってみろ。攻めるのはこっちだ」

 再び二刀流に戻ったところで……ミヤモト流───二刀。

「『烈火爆斬レッカバクザン』!」
「『水流の絶壁ウォーター・クリフ』!」

 エックスのように力強く振って鋭い爆裂の斬撃を放つ。
 それに対してレイピアの双子は異世界の上位防御魔法を展開。滝のような壁が目の前に現れた。

「ハァァァァァァァァーーー!」

 止まらず連続で爆裂の斬撃を打つけるが、滝の壁は崩れる気配を見せない。
 膨大な魔力をふんだんに注ぎ込んだようだ。風で強化されている俺の爆裂が通らない。

「やっぱり魔力が不足してる! 魔剣に注ぎ込んだ魔力も残り僅か!」
「そうだな。技も出来てあと一回か」

 その一回が決め手になるか。片割れが復活する前にこっちを片付けないといよいよマズイ。

「パワー、スピード、スキル! その全部が惜しい! 貴方のそれは全部が中途半端!」
「ッ……二刀──」

 “風魔”の瞬発力を活かして間合いを詰める。
 二本の柄同士を合体させて、上下刃付きの薙刀のような形状になった。そして───


「『火龍刃牙フレアーファング』ッ!」
「『爆風の絶壁エア・クリフ』!」


 ギリギリで復活が間に合った槍使いのリサが張った風の上位障壁が立ち塞がる。
 火龍の姿をした斬撃の牙が破ろうと喰らい付くが、障壁は厚く滝の絶壁と同じように防がれてしまった。

「ジーク・スカルスの融合武器を模倣した技術とトオル・ミヤモトの剣術は見事だった」
「けど致命的に火力が不足している。魔力不足を融合スキルで補っている。それは凄いけどまだ一歩も二歩も足りない」

 結構な魔法の連発であるが、双子の顔色に疲労は見られない。
 連続の攻防戦で少しは息を乱したが、それもすぐに治っており膝をついていた方もすっかり全開状態だ。……それに対して俺は……

「ハァ、ハァ……」

 もう『魔力・融合化』の反動が来始めている。回復の気も体力に回しているが、このレベルの相手を二人同時はいくら何でも無茶過ぎた。まだ融合化は維持しているが、消耗の方が上回っている。

「……」

 ついに持っていた魔剣二本が消えた。
 銃を抜こうか迷ったが、この双子が相手ではあまり意味がない。不意打ちでもない限り、弾かれるか躱されるだけだ。

「結構やるけどそろそろ終わらせる。覚悟」
「鬼苑の方も気になってきた。抵抗しても無駄」

 一方的に告げて双子は武器に属性魔力を注ぐ。間違いなく大技を使うつもりだ。
 すぐに対応を検討するが、良い答えが浮かんで来ない。魔力量の差が圧倒的に大きかった。


「ハァ、ハァ、確かに凄い魔力出力だ。魔剣の恩恵が全く意味をなさないなんて…………って言えば満足か?」
「「?」」


 魔力の出力で勝ち目ないのは最初から分かっていた。
 だから魔力勝負は途中から放棄した。している風に見せただけだ。

「ミヤモト流の剣技の真髄は、何でも斬れる事だ。属性剣技なんて二の次でしかない」

 派手なエリューシオン流とは違う。あちらは肌に合わなくて覚えなかったが、二人の剣舞や槍舞はかつて見せてくれた姫騎士ティア・エリューシオンの舞に近いものだ。教えたのは彼女かもしれない。

「魔剣を使用していたから気付かなかったか? 技の合間に何度か試していたんぞ?」
「……どういうこと?」
「……何をした?」

 そろそろ教えてやるか。女性の痴態をいつまでも晒す趣味はない。

「まずは? 俺は興味はないが、色々際どい格好だよ?」

 注意してあげるが、意味が分からない様子で双子は首を傾げる。
 深刻さが分かっておらず動作もゆっくりで、数秒遅れで揃って下を向いた……途端。

「「…………ーーーーーッッ!?!?!?」」

 ポケ~としていた顔が一瞬で赤面顔になった。戦闘態勢も崩れて大混乱している。
 上の制服のちょうど真ん中から縦に真っ二つに切れた事で、露わになった真っ白な胸元やお腹が丸見えになっている。

「これは……もしかして剣気!?」
「まさか!『剣導王』の極意を!?」

 一応下着も付けていたようだが、肌以外は狙わなかった俺の『剣気』によって、必要あるか分からないペッタンな白ブラも二つに分かれていた。
 
 そして見える山なしな更地に……ふむ。



「「ッッ───ブッコロスッッ!!」」


 一言であっという間にキレた双子。
 本気に殺してやるつもりか、水と風の属性魔力が制服を追おうと服装が変化。
 魔力、魔法武装と言うべきスキルか魔法を発動。制服の上が聖騎士のような青と緑の甲冑(西洋風の兜付き)が纏った戦乙女のようだ。
 ついでにハダけた胸元も元に戻っており、魔力の放出レベルがさらに上昇していた。

「凄い魔力だ。未熟なボディーがコンプレックスだったか?」
「「……ッ!!」」

 返答は強烈な殺気と魔力の重圧。羞恥心と言葉に対する屈辱だろう。
 魔力以外の要素での糸口が見えてきたが、やはり融合スキルだけではカバーし切れないか。

「……ッ、仕方ない」

 やむなく封印してある『神の刃セイバー』を解放しようとした。───その時だ。


「『鳳凰の幻炎ホウオウ・ゲンホムラ』」


 太陽のような金色の炎を纏った鳥────鳳凰が割り込んで来た。
 それを見た俺は安堵の息を吐いて笑みを溢した。全くやっと来たか。

「遅かったな。時間稼ぎも楽じゃないんだぞ?」
「悪りぃ、引き継ぎに結構手間取った」
「「だれ……?」」 

 炎の塊である鳳凰が奴の肩に乗るように控える。イケメンの肩に乗ると絵になるけど……。

親友トモだ」
「何カッコ付けてんだ? 似合わねぇー」
「うぐっ!? い、いいじゃんか! 別によー!」

 ミコこと四条尊は不貞腐れた様子で睨んでくる。いや、別にいいけどさ。

「「……なんかバカっぽいのが来たー」」
「俺もそう思う。バカっぽいよなー」
「助け寄越したくせになんでオレが省れてるのっ!?」

 だってバカっぽい。何でかって言われると……雰囲気?

「だぁぁぁーー!! もういいわ! 助けに来たぞジンっ!」
「そうみたいだな。助かるわ」

 もう色んな意味で荒れ狂う第四層にまた新たな来訪者。……呼んだの俺だけど。
 良いタイミングで駆け着けてくれた友へ、不器用ながら俺なりの挨拶を交わした。
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