神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜

ルド

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第5章 弟子の魔法使いは世界を彼らと共に守り抜く(掟破りの主人公大集結編!!)

第80話 ジーク・スカルス(弟子は師匠の登場で色々諦めた)。

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 ジーク・スカルス。またの名をシルバー・アイズ。またの名を魔導王。原初の継承者。もしくは……

「アハハハハハハハハハハ! とうとう来たか! 魔導神!」
「初めまして、でいいんだよな? 仮面の魔神」

 塔が倒れる中、空中で二人の神が対面した。
 銀髪とローブ姿をしたジークこと魔導神。高級そうな目元を隠す仮面とドレスを身に付ける魔神。
 しばし見詰め合っていると邪悪な笑みを浮かべていた魔神が指先を落下する塔の方へ。魔力を流すと浮力を失っていた塔に力が戻って、倒れた状態のままであるが、落下が止まった。

「いきなり乱暴だねぇー。さすが荒っぽい神さま」
「悪質な神様に成り下がってる。お前らよりはマシだろ?」

 ビリビリと火花が散っている。お互い殺気立った魔力も漏らす。今にも激突しそうな雰囲気であるが……。

『また貴様かァァァアアアアアア!』

 その二人の間を割ってジークの方へ飛び掛かる魔王ファフニール。その表情は憤怒の形相で歪んでいた。
 今ではすっかり嫌悪の対象となった神族。別世界で何度も邪魔された鬱憤。そして重要で大事な塔をオモチャのように蹴られた恨み。プラス憎たらしい笑みが見えて理性の沸点が限界を超えた。

「ファフニール!?」
『貴様は手を出すな! このフザケた神は我が!』

 割り込んでジークへと迫る黄金の異形人。両手に雷光で出来た槍状の剣を構えていた。

「あ、この間の金ピカ。まだ左遷されてなかったか」
『キ、切り刻んやるわァァァァァアアアアアア!』

 分かりやすい火に油。全身から雷光と炎を迸らせた魔王が怒りの咆哮と共に襲い掛かった。

「『術式重装マジック・ブースト』、『零極・盾ノーマル・シールド』、『短距離移動ショートワープ』」

 しかし、激突する直前でジークの前に何枚もの不透明な壁が展開される。
 透明でも魔力として視認する魔王は片っ端から斬って突き進んで行く。最後の壁を打ち破ったところでジークの姿が魔王の視界から完全に消えた。

『っ──後ろか!』

 だが、魔王の動揺は少ない。刹那で魔力を感じ取った背後に向かって槍剣の横薙ぎ。さらに雷の斬撃波を放って吹き飛ばそうとする。

「『再起復活リトライ・リボーン』残念。外れだ」
『な! ガハっ!?』

 が、捉えたと思ったジークは『再起復活リトライ・リボーン』の効果で『短距離移動ショートワープ』を連続で発動。攻撃を受ける前にさらに裏に回り込んで魔王を背中から蹴り飛ばした。

「お前は後回しだ。相手して欲しいなら良い子で待ってろ」
『っっ! 舐めるなァァァ!』

 まるで相手にされていない。そんな屈辱的な扱いに激情が増して顔がより歪む。両手を振るうと闇に染まった黄金の火弾を嵐にように飛ばして行く。

「『術式重装マジック・ブースト』、『碧極・遮蔽布ブルー・テーラ』」

 だが、今度は水のカーテンで出来た盾を無数に展開するジーク。
 包囲して火攻めで襲って来る魔王の攻撃を弾き飛ばす。さらに残っている水のカーテンを操って魔王をグルグル巻きにして拘束すると右腕に魔力を集中させて突っ込む。意図に気づいた魔王が慌てて逃れようとするが、水の拘束は強く間に合わない。

『オノレェェェェエエエエエエっ!!』
「『術式重装マジック・ブースト』、『翠極・風拳グリーン・ナックル』」

 莫大な暴風を込められた鉄拳が魔王の金顔を打つ。ハンマーのように真下の地面まで勢いよく叩き込まれて地面すら穿ち、巨体が深く陥没するまでに至った。

「主犯の魔神まで辿り着いた時点でもうお呼びじゃないだ。そこで大人しく寝てろ」

 ぼやくように言った通り魔王は死んでいない。かなりのダメージを負っているが、致命傷はギリギリ逃れて……いや、打ち込んだジークによって見逃されていた。

「トドメ刺すべきなんだろうが……守護獣だからなー」

 ただの魔王ならジークも瞬殺を選んだが、魔王ファフニールは守護獣の龍種。神側の守護獣である以上さすがに問答無用で始末を付けるのには躊躇いがあった。

「多分体内の魔王の魔力が原因だろう。終わり次第排出させれば……まぁあとで良いけど」

 堕ちちゃってる以上はお説教も確定である。今やるのは面倒だとジークは魔王を放置して行儀よく待っていた魔神の方を見た。

「律儀に待ってくれてありがとう」
「いやいや良いよ。ボクの下僕が悪いんだし」

 魔王が戦闘不能になったのに笑顔で許す魔神。でも目が全然笑っていない。ジークは気にせず話を進める。

「お前は大人しく捕まってくれるか? 今ならリゾート施設で三食フルコースとクマさんが付いてくるが?」
「捕まると思う? 前半は魅力的だけど後半は意味分かんないよ?」

 不思議そうに首を傾げながら魔神は真上に巨大な魔法陣を展開させる。人目でそれが転移の魔法陣だと理解したジークだが、どうして止めようとはせずそのまま見送る姿勢である。

「あれ? 止めないの? 逃げるよボクたち」
「止めたいが、こんなところで本気でやり合ったらマズイだろ? 常識的に」
「君が常識を語るか魔導神」

 半目でジトと見つめる魔神。ジークの非常識振りは彼女の耳にも届いているようだ。一番の常識外な男が何をほざくのかと言った視線を向ける。

「オレだって最低限の常識くらいある!」
「街中で塔を落とそうとした奴に最低限の常識もあるかなぁ?」

 ──。聞いていたトオルやマドカ、気絶寸前の刃の心は一つとなった。零も聞いていたが、心を無にして誤魔化した。

「弟子が本気で不味そうなんだ。それにこの場にいるオレは所詮は分身。全部対処するには少々力不足なんだよ」
「知ってる。掛かって来たら本気出せばなんとかなる気がするね」

 苦戦は避けらないけど。口にはしないが、魔神も目の前の男が分身体だと登場の時点から理解していた。

「濃度を抑えるほどの魔力コントロールは流石だけど」
「分身だからし易いだけだ。オリジナルのオレだったらこうはいかない」

 神としての魔力。その濃度が薄過ぎる。恐らくこの世界や他の世界への影響を最小限に抑える為。本体ではなく魔法で生み出した分身を寄越したようだが、濃度を下げ過ぎている。魔力量はかなりのもので手数も多そうであるが、魔神の方も本気で挑めはなんとか勝てると感じた。

「だから行くなら行けよ。可能ならそのまま他所の世界に行ってくれない?」
「それは無理な相談だねぇー。実験の為の場所はもう用意してあるんだ。拠点へ移動したらすぐ準備させてもらうよ」
「そうか……」

 そう言い残して魔神は展開されていた魔法陣の中へ消える。
 魔王も塔から降り注いだ光と魔法陣を包み込まれて消えて、塔自体も光の粒子となってその場から消滅した。

*作者コメント*
 前半終了! ここから後半へ続きます!
 存在自体がチートな師匠が参戦しましたが、分身なのであんまりチートは無理です。……色々やってますが、アレでもセーブされてるんですマジで!

 もしオリジナルだったら…………まず塔を蹴った時点で塔がボキッと折れてます。
 魔王を本気で蹴ったり殴ったりしたらその部分が粉砕されるかと。その前に大火力で消し炭にしてます。
 
 まぁ最低限の常識はあるので街中でテロ級の攻撃は控えると思いますが(汗)。
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