シノアルカナ

久米

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第一話

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 そこは――地獄だった。

  
 一面に広がる鮮血。絶え間なく木霊する哀絶悲嘆の叫声。
 誰も彼もが苦悶に喘ぎ、絶望し慟哭している。これを地獄と言わず何という。
 闇に覆われた空間。出口はなく、救済もない。
 そこに集められた数百人。生きて出られるのはたった一人だけ。そんなルールを課せられて、皆正気を失った。
 愛を誓い合った者、友と呼び合った者、我が子と慈しんだ者――それぞれがそれぞれの想いを自ら踏みにじりながら、絶叫して殺し合った。
 大切なものを失えば、もう後戻りはできない。それ以下の連中を殺さない理由はなく、生かすことなど あり得ない。
 闇に渦巻く憎悪と悲しみ。
 一人、また一人と死んでいく。
 その中で、いつからか脳裏に声が聞こえてきた。

 祈祷イノリ――願望イノリ――夢想イノリ――幻想ユメを抱き渇望せよ。

 それはさながら天啓のように、魂に刻まれるほど絶対的な言葉だった。
 その言葉に中てられて、生き残っている大半の者がすでに精神に異常を来していた。これは現実ではない、夢だと現実逃避をする者もいれば、完全に人を辞めて獣と化した者もいる。現実から目を背けた人間の末路があれなのだとすれば、ああ――なんて醜い。
 吐き気を催す幻想。
 腐臭を撒き散らす祈祷。
 どれもこれもいらない、必要ない。
 脳裏に響き渡る夢幻の誘いに、少女は抵抗する。

 そして――
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