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幸運
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僕は幸運だ。くじでハズレを引いたことがないしどんな事故も未然に防いでいる。何に関しても僕の思い通りになっていく。今まで何不自由なく生きていたが、それがただの「形式上の幸運」であることに嫌気がさしている。自分が幸運で良いことがあった時は必ず誰がが損をしているは確かで、僕が1つ何かを得た時他人は確かに何か一つを失っていく。それは他人を不幸にしているに変わりないので、そんな自分がどんどん嫌いになっていく。僕は損をしたいと思っているのに、勝手に神様がそれを奪い取ってただ僕の為でもない、形だけの幸運を与えてくる。
こうなったら、親も周りの人間も全部僕の為に仕組まれた形だけを取り繕ったなにかではないか?そう考えずにはいられなかった。自分だけの幸運をテーブルにしてその上に僕以外の人間の駒が、僕を中心としてただ無感情でシステムされた世界を構築しているとしか思えない。そうして自分以外が信用できなくなって怯えている。
もう自殺してこんな人生を終わらせよう。駅のホームで息を飲んだ。僕が死ねばこんな気持ちの悪い世界を終わらせられる。
「3番線電車が参ります」
駅員の声と共に震える足を動かしてジリジリと端の方へ歩み寄る。心臓が急かすように高鳴り、音がどこかスローモーションに聴こえる。トンネルの方から大きな機械が頭を出してやってくる。手の冷や汗が心地よいとすら感じた。体を前に預けてーー
「あぶないっ!」
ドン、と衝撃が来たが、明らかにその体を弾いたのが電車では無いのが分かった。目を開けたら僕は反対のホームの方に体を傾けており、正面では同じ歳くらいの若い男がこちらを見ていた。
「キャーーー」
女性が叫ぶ。電車はそのまま男に向かって猛スピードでぶつかった。と思ったら一気に駆け抜けて行き、姿は見えなくなった。僕はコンクリートに尻もちをついたまま目をこれでもかと開けてその一瞬の情報を受け取った。
「やば……人轢かれたよ今!」
周りにいた若者がそう言ってスマートフォンを構える。人がぞろぞろと集まっていき僕は囲まれるような形になった。色々な視線が汗だらけで冷えきった心臓に響いていく。
「また、僕のせいで」
きっと僕は助けられたんだ。しかしその代わりに一人の男が死んだ。また誰も望んでいない、正体不明の幸運がこうした未来を生み出したのか。呼吸が速く、弱くなっていく。死すら拒んでくるのか。何故そこまでして無価値の幸運をもたらす?今こちらを見ている人達も全てこの決まった結末に用意された群衆に過ぎない。底知らぬ狂気に追いかけられているような気がした。
無理やり人の山をかき分けて階段をひたすら登る。改札を飛び越えて橋になっている道へ出て、手を膝に当てて上がりきった息を抑える。
「死ぬ……死ぬんだ……絶対に……」
僕は死ななければならない!この不幸を終わらせるために!僕にとっての幸福は死ぬ事だ!
「ふざけんなよ」
身を乗り出してそのまま重力を遥か下、地面に傾ける。そうだ、これで死ねるーー
そう思っていた。
「がっ!」
硬い感触が肌に伝わった後、何かが強く打ち付けられた音がする。それは自分の頭ではなかった。
「なんでーー」
橋の下にいたであろう男がまるで用意されたかのように余すことなくクッションとなり、僕の体は傷一つ着いていなかった。男は白目を剥いていて、後頭部からは赤黒い血が垂れるように出てドクドクとコンクリートを染めていく。
「キャーーー」
また近くにいた女性が叫び声をあげて後ろに下がっていく。女子高生3人組が「待って、人倒れてる……」と呟いて、全員みるみる顔を青ざめていく。
「ちょっと君!どこに逃げるんだ!」
飛び降りる前の橋の上に駅員らしき人物が自分に向かって大声で告げる。
「やめろ!俺は死ぬんだ!」
捕まったら終わりな気がした。この駅員の行動も幸運のレールに敷かれた、機械的な動きをしていて僕を死から遠ざけるつもりだ。疲労しきった体を無理やり起こしてまた走り出す。逃げなければーーそして僕はいち早く死ななければーー
僕は気づいたら馴染みのあるホームセンターに辿り着いていた。そうだ、縄を買って首を吊ろう。奥の列に陳列されている程よい太さの麻縄を手に取って購入した。店員にはこんな形相でレジに持っていったので変な目で見られたような気がした。そんなことはどうでもいい。無様な程に不格好な走りとも言えない足つきで人気のない森へと向かう。精神状態のせいかただ動きすぎたせいか分からない過呼吸を胸を2回ほど叩いて落ち着かせる。それでも心はちっとも沈静せず、半狂乱になりながら震える手で幹に縄をしばりつけ、もう片方を首に巻き付ける。
「死ねーーさっさと死ね!」
思いっきり幹の反対方向に体を預ける。息ができない。全身が赤信号を発しているかのように暴れ始める。頭の辺りが透明な感覚に包まれて意識が朦朧としていく。このままーーこのままーー
「……あ」
と思っていたら急に僕はその苦痛から開放された。顔の半分を地面に着けて横たわっている。音のした方向を見ると縄が耐えきれずブツンとちぎれていた。
「死にたい……死にたいのに……」
涙が溢れても何も変わらない。これも「幸運」とやらなのか。天罰としか思えない。こんなの幸運でもなんでもない、地獄そのものだ。
声にもならない喘ぎがしんとした森の中で響く。これは実は幸運なんて優しいものではなく、最終的に周りだけでなく僕をも不幸にする超常的なものではないか?そんな疑問がつい頭で浮かんだ。考えても仕方ない。僕はこの力がなんだとしてももう死ななければならない。簡単に死ねないと言うなら死ねる方法を見つければいいだけの話だ。重たい体をゆっくりと、少しずつあげて、また歩き始める。
この幸運から逃げるためにただただ走り続けた。人々の視線など気にせずにひたすらに走り続けた。頭が全く回らず他に死ぬ方法も不明なままで、少しでもこの世界から離れようと行き場もない場所へ僕は向かっている。
やがて公園付近の一本道に出た。僕はこの運命からどうにかして脱出しなければならない。そう思って足をまた踏み出そうとした時、一人の女性が目の前に現れた。
「あっ、夏野くんじゃん!……え、どうしたの」
写しているものが現実かも分からない瞳孔で声のする方を見た。見覚えのある人物でつい動きを止めてしまった。
「川田さん」
「なんかあった?」
川田さんは大学で仲良くなった同学年の女の子だ。冴えない僕に何故か話しかけてくれて、意気投合したので学校以外の日も会って遊ぶことが時々あった。
「えっと……その……」
よくよく考えたら僕が川田さんみたいな可愛くて性格のいい女の子と仲良くできるのはおかしいだろ。見た目も僕の好みでおかしさを感じなかった今までの自分が不思議になるくらいだ。
「川田さんも、もしかして……」
僕の幸運、とも今は言い難い運命に用意されただけの人間か?
「幸運すぎて死ねないんだ、僕」
自分のこの性質のことを初めて口に出した。ただ川田さんを信じて、答えを待つ。彼女は数秒ポカンとした後クスクス笑った。
「どういうこと。なんか中野くん変だよ」
「変なのはこの世界だ。さっき自殺しようとしたら2回とも防がれた。首を吊ろうと思ったら縄がちぎれて死ねなかった。何故か死ねないんだよ」
肩を掴んでなりふり構わず全て話す。和やかな表情だった川田さんの顔がみるみる不安そうになっていく。
「冗談……だよね……?」
「本当だよ!ああそうだ!川田さん僕を殺してくれないか?」
咄嗟に思い浮かんだが言った後になって結末が分かってしまった。
「嫌に決まってるじゃん!なんで死なないとなの?」
「じゃあーー僕を殺さないと僕が川田さんを殺すって言ったら?」
それでももう一歩踏み込んだ。もうなんでもいい、僕を死に導いてくれよ。
「殺さないよーーだって私中野くんのこと好きだから!」
最悪の答えだ。頭の中ではブーイングの嵐が鳴り止まない。
「幸運ならいいじゃん。中野くんが幸せなら私はいいよ?」
「僕が得をした分他人が絶対に損をするんだよ!求めてないのに!これ以上人を不幸にするくらいなら死んだ方がマシだ!」
「……私はそれでも生きていいと思う。中野くんは生きるべきだよ。優しすぎるから他人のこととか考えちゃうんだよ。中野くんが幸せになっても誰も不幸にはならないと私は思う」
「ああーー」
ああーー川田さんまでそんなことを言うのか。僕の本当の味方はいないのか?川田さんまで僕のくだらない「幸運」に仕組まれた偶像なのか?それだけは考えたくなかった。
「僕は川田さんのこと嫌いだよ」
それだけ告げて肩を突き飛ばす。
「いたいっ……なんで、中野くん、なんで……」
「もう分かったよ。全部嘘だ。でも死ぬことも止めてくるんだろ。なら世界が許すまで僕は何回でも死のうとするよ」
「待って!中野くん!待って!」
もし僕が生まれていなかったら川田さんはどんな人だったのだろう。僕が存在しなかったら世界はどうなっていただろう。そもそも存在しないのか、それともこの世界から僕だけを抜き取って、周りの人間が皆中身を持って普通の生活をしているか、考え始めたらキリが無かった。
自分は頭がおかしいのか。本当は幸運だったのはたまたまで今変な考えが頭をよぎっているだけか?悩みすぎて精神に異常をきたしているだけの可能性だってある。ポンポンとでてくる「もしも」の話がこんがらがり、もう何が正解で何が間違いかも一切不明になってしまった。
ただ一つ一貫して変わらない思いがある。僕はどうにかして自殺をするということだ。この際世界がどんな作りでも構わない、自分はなるべくして異常になったのだから鬱病患者の様に死ぬことだけを考えればいいのだ。
「3番線電車が参ります」
これ以上おかしくならないように回数を携帯にメモした。これで1947回目の自殺の試みだ。僕の犠牲になって死んでいった人達は笑えることに大した報道もされず、明らかに不可解だ。こうなることも分かっていた。今はただ、ただこの世界が「もういいよ」と言うまで自殺をしようじゃないか。こんな人生なのだから、死後は大層いい世界なんだろうな!
笑いながらやって来る電車に近寄った。
こうなったら、親も周りの人間も全部僕の為に仕組まれた形だけを取り繕ったなにかではないか?そう考えずにはいられなかった。自分だけの幸運をテーブルにしてその上に僕以外の人間の駒が、僕を中心としてただ無感情でシステムされた世界を構築しているとしか思えない。そうして自分以外が信用できなくなって怯えている。
もう自殺してこんな人生を終わらせよう。駅のホームで息を飲んだ。僕が死ねばこんな気持ちの悪い世界を終わらせられる。
「3番線電車が参ります」
駅員の声と共に震える足を動かしてジリジリと端の方へ歩み寄る。心臓が急かすように高鳴り、音がどこかスローモーションに聴こえる。トンネルの方から大きな機械が頭を出してやってくる。手の冷や汗が心地よいとすら感じた。体を前に預けてーー
「あぶないっ!」
ドン、と衝撃が来たが、明らかにその体を弾いたのが電車では無いのが分かった。目を開けたら僕は反対のホームの方に体を傾けており、正面では同じ歳くらいの若い男がこちらを見ていた。
「キャーーー」
女性が叫ぶ。電車はそのまま男に向かって猛スピードでぶつかった。と思ったら一気に駆け抜けて行き、姿は見えなくなった。僕はコンクリートに尻もちをついたまま目をこれでもかと開けてその一瞬の情報を受け取った。
「やば……人轢かれたよ今!」
周りにいた若者がそう言ってスマートフォンを構える。人がぞろぞろと集まっていき僕は囲まれるような形になった。色々な視線が汗だらけで冷えきった心臓に響いていく。
「また、僕のせいで」
きっと僕は助けられたんだ。しかしその代わりに一人の男が死んだ。また誰も望んでいない、正体不明の幸運がこうした未来を生み出したのか。呼吸が速く、弱くなっていく。死すら拒んでくるのか。何故そこまでして無価値の幸運をもたらす?今こちらを見ている人達も全てこの決まった結末に用意された群衆に過ぎない。底知らぬ狂気に追いかけられているような気がした。
無理やり人の山をかき分けて階段をひたすら登る。改札を飛び越えて橋になっている道へ出て、手を膝に当てて上がりきった息を抑える。
「死ぬ……死ぬんだ……絶対に……」
僕は死ななければならない!この不幸を終わらせるために!僕にとっての幸福は死ぬ事だ!
「ふざけんなよ」
身を乗り出してそのまま重力を遥か下、地面に傾ける。そうだ、これで死ねるーー
そう思っていた。
「がっ!」
硬い感触が肌に伝わった後、何かが強く打ち付けられた音がする。それは自分の頭ではなかった。
「なんでーー」
橋の下にいたであろう男がまるで用意されたかのように余すことなくクッションとなり、僕の体は傷一つ着いていなかった。男は白目を剥いていて、後頭部からは赤黒い血が垂れるように出てドクドクとコンクリートを染めていく。
「キャーーー」
また近くにいた女性が叫び声をあげて後ろに下がっていく。女子高生3人組が「待って、人倒れてる……」と呟いて、全員みるみる顔を青ざめていく。
「ちょっと君!どこに逃げるんだ!」
飛び降りる前の橋の上に駅員らしき人物が自分に向かって大声で告げる。
「やめろ!俺は死ぬんだ!」
捕まったら終わりな気がした。この駅員の行動も幸運のレールに敷かれた、機械的な動きをしていて僕を死から遠ざけるつもりだ。疲労しきった体を無理やり起こしてまた走り出す。逃げなければーーそして僕はいち早く死ななければーー
僕は気づいたら馴染みのあるホームセンターに辿り着いていた。そうだ、縄を買って首を吊ろう。奥の列に陳列されている程よい太さの麻縄を手に取って購入した。店員にはこんな形相でレジに持っていったので変な目で見られたような気がした。そんなことはどうでもいい。無様な程に不格好な走りとも言えない足つきで人気のない森へと向かう。精神状態のせいかただ動きすぎたせいか分からない過呼吸を胸を2回ほど叩いて落ち着かせる。それでも心はちっとも沈静せず、半狂乱になりながら震える手で幹に縄をしばりつけ、もう片方を首に巻き付ける。
「死ねーーさっさと死ね!」
思いっきり幹の反対方向に体を預ける。息ができない。全身が赤信号を発しているかのように暴れ始める。頭の辺りが透明な感覚に包まれて意識が朦朧としていく。このままーーこのままーー
「……あ」
と思っていたら急に僕はその苦痛から開放された。顔の半分を地面に着けて横たわっている。音のした方向を見ると縄が耐えきれずブツンとちぎれていた。
「死にたい……死にたいのに……」
涙が溢れても何も変わらない。これも「幸運」とやらなのか。天罰としか思えない。こんなの幸運でもなんでもない、地獄そのものだ。
声にもならない喘ぎがしんとした森の中で響く。これは実は幸運なんて優しいものではなく、最終的に周りだけでなく僕をも不幸にする超常的なものではないか?そんな疑問がつい頭で浮かんだ。考えても仕方ない。僕はこの力がなんだとしてももう死ななければならない。簡単に死ねないと言うなら死ねる方法を見つければいいだけの話だ。重たい体をゆっくりと、少しずつあげて、また歩き始める。
この幸運から逃げるためにただただ走り続けた。人々の視線など気にせずにひたすらに走り続けた。頭が全く回らず他に死ぬ方法も不明なままで、少しでもこの世界から離れようと行き場もない場所へ僕は向かっている。
やがて公園付近の一本道に出た。僕はこの運命からどうにかして脱出しなければならない。そう思って足をまた踏み出そうとした時、一人の女性が目の前に現れた。
「あっ、夏野くんじゃん!……え、どうしたの」
写しているものが現実かも分からない瞳孔で声のする方を見た。見覚えのある人物でつい動きを止めてしまった。
「川田さん」
「なんかあった?」
川田さんは大学で仲良くなった同学年の女の子だ。冴えない僕に何故か話しかけてくれて、意気投合したので学校以外の日も会って遊ぶことが時々あった。
「えっと……その……」
よくよく考えたら僕が川田さんみたいな可愛くて性格のいい女の子と仲良くできるのはおかしいだろ。見た目も僕の好みでおかしさを感じなかった今までの自分が不思議になるくらいだ。
「川田さんも、もしかして……」
僕の幸運、とも今は言い難い運命に用意されただけの人間か?
「幸運すぎて死ねないんだ、僕」
自分のこの性質のことを初めて口に出した。ただ川田さんを信じて、答えを待つ。彼女は数秒ポカンとした後クスクス笑った。
「どういうこと。なんか中野くん変だよ」
「変なのはこの世界だ。さっき自殺しようとしたら2回とも防がれた。首を吊ろうと思ったら縄がちぎれて死ねなかった。何故か死ねないんだよ」
肩を掴んでなりふり構わず全て話す。和やかな表情だった川田さんの顔がみるみる不安そうになっていく。
「冗談……だよね……?」
「本当だよ!ああそうだ!川田さん僕を殺してくれないか?」
咄嗟に思い浮かんだが言った後になって結末が分かってしまった。
「嫌に決まってるじゃん!なんで死なないとなの?」
「じゃあーー僕を殺さないと僕が川田さんを殺すって言ったら?」
それでももう一歩踏み込んだ。もうなんでもいい、僕を死に導いてくれよ。
「殺さないよーーだって私中野くんのこと好きだから!」
最悪の答えだ。頭の中ではブーイングの嵐が鳴り止まない。
「幸運ならいいじゃん。中野くんが幸せなら私はいいよ?」
「僕が得をした分他人が絶対に損をするんだよ!求めてないのに!これ以上人を不幸にするくらいなら死んだ方がマシだ!」
「……私はそれでも生きていいと思う。中野くんは生きるべきだよ。優しすぎるから他人のこととか考えちゃうんだよ。中野くんが幸せになっても誰も不幸にはならないと私は思う」
「ああーー」
ああーー川田さんまでそんなことを言うのか。僕の本当の味方はいないのか?川田さんまで僕のくだらない「幸運」に仕組まれた偶像なのか?それだけは考えたくなかった。
「僕は川田さんのこと嫌いだよ」
それだけ告げて肩を突き飛ばす。
「いたいっ……なんで、中野くん、なんで……」
「もう分かったよ。全部嘘だ。でも死ぬことも止めてくるんだろ。なら世界が許すまで僕は何回でも死のうとするよ」
「待って!中野くん!待って!」
もし僕が生まれていなかったら川田さんはどんな人だったのだろう。僕が存在しなかったら世界はどうなっていただろう。そもそも存在しないのか、それともこの世界から僕だけを抜き取って、周りの人間が皆中身を持って普通の生活をしているか、考え始めたらキリが無かった。
自分は頭がおかしいのか。本当は幸運だったのはたまたまで今変な考えが頭をよぎっているだけか?悩みすぎて精神に異常をきたしているだけの可能性だってある。ポンポンとでてくる「もしも」の話がこんがらがり、もう何が正解で何が間違いかも一切不明になってしまった。
ただ一つ一貫して変わらない思いがある。僕はどうにかして自殺をするということだ。この際世界がどんな作りでも構わない、自分はなるべくして異常になったのだから鬱病患者の様に死ぬことだけを考えればいいのだ。
「3番線電車が参ります」
これ以上おかしくならないように回数を携帯にメモした。これで1947回目の自殺の試みだ。僕の犠牲になって死んでいった人達は笑えることに大した報道もされず、明らかに不可解だ。こうなることも分かっていた。今はただ、ただこの世界が「もういいよ」と言うまで自殺をしようじゃないか。こんな人生なのだから、死後は大層いい世界なんだろうな!
笑いながらやって来る電車に近寄った。
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