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1章
8話
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鉄壁にして完璧にして紺碧な呪い。ウィンクチャージ・ヨザクラ・プロキオン・スペード・オン・ザ・シールドは……異世界にきて些か調子に乗っていた。自嘲しよう。とある物語の物真似が脳内を駆け巡ったのであった。というこれも何処かで見たことがある。電撃に的に脳内に流れ込んできたのだ許してほしい。
異世界に転生してきて、鉄壁にして完璧にして紺碧な呪いを掛けられたのだから仕方ない。そりゃあ、ちょっとくらい頭が沸いたって仕方ないだろう。
おまけにラルフにガジガジされたんだ頭のネジの一本や二本外れたって不思議ではないだろ。そう思わないか。
っと、先ほど脳内に駆け巡った言葉について内省するのであった。
「俺、もう一回ラルフに挑んでみるよ」
カルさんは、うんうんという様に頷くのであった。
負けるかもしれないけど負けない。俺には、ライフジャケットのような命綱のようなパラシュートのような呪いが掛かっているのだから、問題はない。
しかし、先ほどの戦いを振り返ると、ラルフの動きについていけていないといった印象だった。そもそも、異世界転生前に四足歩行の動物と戦った何て記憶すらないのだから。基本的に四足歩行の動物は愛でるモノであって、戦う対象ではないのだ。
この世界では、戦わないといけないのだから仕方がない。相手は凶暴だ。こちらが近寄るだけで戦闘体制に入ってしまう位のモンスター、魔物なのだから。
とりあえず、身体で覚えるしかないのである。
俺は、何度も何度もヴァンパイア的な再登場を繰り返した。その度カルさんは、おはよーーーーっと言って来るのだった。月から来たVチューバーかよ。っと突っ込みたくなったのだが、おそらくスルーされてしまうので、こちらがスルーする事にしたのだった。
努力のベクトルが間違っているとでもいうのだろうか。ラルフを倒すために何度も挑み負けるを繰り返している。決して、努力していない訳ではない。
例えば、月に行きたいという夢を持っていたとしよう。その為に何かしている事は? いえ、特に何もしていません。となれば、そいつの夢は一生夢のままだ。夢のままというか、ただのホラ吹き野郎だ。
しかし、月に行く為に毎日ジャンプ1000回していますという人を見たらどう思うだろうか。勉強してロケットでも作りなさいと言いたくなってしまうだろう。
もしかしたらだけど、俺はこのようにベクトルを間違えているのかもしれない。そう思い、カルさんの目をじっと見つめるのであったが、急に女が顔を出したので直ぐに止めた。
ラルフ攻略サイトなんて何処かに存在しないかな……
ともあれ、37回も挑戦していれば多少はコツというモノを掴んでくる。ラルフの攻撃に移る初動や攻撃パターンといったモノが見えてくるのだ。しかし、頭で分かっていても身体がついてこない。やはり、ステータスに問題があるのか。
「カルさん、やはり、俺のステータスに問題があるのではないでしょうか」
「そうか? 私はそうは思わないぞ。問題があるとすれば、やはり、その考え方だろう」
「俺の考え方ですか? どういった考え方なのでしょうか」
「私に聞くな。何となくそんな気がするだけだ。考えろ」
「……はい」
考えるな感じろタイプだと思っていたが……まさかこれほどまでとは……しかも、最後に考えろって……そこはせめて感じろって言って欲しかったよ。
どうする? コツコツ戦闘を繰り返しデータを取集する事に集中すべきか、いっそのこと気分転換とか言って諦める方が良いのか? いや、友情・努力・勝利の法則を思い出すんだ。最近は、友情・チート・勝利が流行りだけれど、努力は忘れてはいけないよなみたいな感じか……何考えてるんだ、俺。
そうか。今までは、ステータスが足りないと思っていて大胆な動きを避けてきたけれど、ステータスは十分だとすれば、もっと大胆に立ち回る事が出来る。とりあえず、試してみるか。
ラルフに近づき互いに戦闘態勢に入る。先ほどとは異なる軽やかな身のこなしでラルフの攻撃を避ける。
ちょっとした心の余裕というやつがあるだけでこうも身のこなしが変わるとは思わなかった。
きっと、カルさんはこれを伝えたかったのだと信じて、信じ、信じている。
「なかなか良い身のこなしになったものだな。ステータスに変化はないが一体何をしたんだ?」
「カルさん、そんなギャグ要素は要らないですから。真面目にラルフの攻略方法を教えてくれればいいんですよ」
「喋る余裕も出来たか。ここに来て急成長だな。だが……」
やはり、体力的にきつい。鈍りに鈍ったこの身体では、ラルフに傷1つつける事が出来ないと悟ってしまった。
ラルフが飛び掛かって来た。バックステップで避けようとしたところ、足がもつれ転倒した。
運よく右手で持っていたショートソードがラルフの首をはね、何ともあっけない勝利を手にしたのであった。
「あの、これはノーカウントで」
「別にいいんじゃないのか、努力の成果だ」
「努力じゃなくて、まぐれですよ」
「運も実力の内っていうじゃないか」
「こっちの世界にもその言葉が存在するとは……」
友情・運・勝利ってギャンブル要素強くない。ともあれ、負ける事が無いのだから、この3つの言葉がとてもしっくりとくるのだ。
「まぁ、はっきり言って、お前のステータスでは余裕で倒せる相手ではない。私の計算上では、1000分の1の確率で勝てると思っていたが、思いの外、早かったな」
「なんすかそれ。0.1%って、爆死必須のガチャゲーみたいな確率じゃないですか」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「すいません。調子に乗りました」
あっけなくラルフの初討伐は終了したのだった。まるで、ファーストキスを事故死させたかのような思いだった。
異世界に転生してきて、鉄壁にして完璧にして紺碧な呪いを掛けられたのだから仕方ない。そりゃあ、ちょっとくらい頭が沸いたって仕方ないだろう。
おまけにラルフにガジガジされたんだ頭のネジの一本や二本外れたって不思議ではないだろ。そう思わないか。
っと、先ほど脳内に駆け巡った言葉について内省するのであった。
「俺、もう一回ラルフに挑んでみるよ」
カルさんは、うんうんという様に頷くのであった。
負けるかもしれないけど負けない。俺には、ライフジャケットのような命綱のようなパラシュートのような呪いが掛かっているのだから、問題はない。
しかし、先ほどの戦いを振り返ると、ラルフの動きについていけていないといった印象だった。そもそも、異世界転生前に四足歩行の動物と戦った何て記憶すらないのだから。基本的に四足歩行の動物は愛でるモノであって、戦う対象ではないのだ。
この世界では、戦わないといけないのだから仕方がない。相手は凶暴だ。こちらが近寄るだけで戦闘体制に入ってしまう位のモンスター、魔物なのだから。
とりあえず、身体で覚えるしかないのである。
俺は、何度も何度もヴァンパイア的な再登場を繰り返した。その度カルさんは、おはよーーーーっと言って来るのだった。月から来たVチューバーかよ。っと突っ込みたくなったのだが、おそらくスルーされてしまうので、こちらがスルーする事にしたのだった。
努力のベクトルが間違っているとでもいうのだろうか。ラルフを倒すために何度も挑み負けるを繰り返している。決して、努力していない訳ではない。
例えば、月に行きたいという夢を持っていたとしよう。その為に何かしている事は? いえ、特に何もしていません。となれば、そいつの夢は一生夢のままだ。夢のままというか、ただのホラ吹き野郎だ。
しかし、月に行く為に毎日ジャンプ1000回していますという人を見たらどう思うだろうか。勉強してロケットでも作りなさいと言いたくなってしまうだろう。
もしかしたらだけど、俺はこのようにベクトルを間違えているのかもしれない。そう思い、カルさんの目をじっと見つめるのであったが、急に女が顔を出したので直ぐに止めた。
ラルフ攻略サイトなんて何処かに存在しないかな……
ともあれ、37回も挑戦していれば多少はコツというモノを掴んでくる。ラルフの攻撃に移る初動や攻撃パターンといったモノが見えてくるのだ。しかし、頭で分かっていても身体がついてこない。やはり、ステータスに問題があるのか。
「カルさん、やはり、俺のステータスに問題があるのではないでしょうか」
「そうか? 私はそうは思わないぞ。問題があるとすれば、やはり、その考え方だろう」
「俺の考え方ですか? どういった考え方なのでしょうか」
「私に聞くな。何となくそんな気がするだけだ。考えろ」
「……はい」
考えるな感じろタイプだと思っていたが……まさかこれほどまでとは……しかも、最後に考えろって……そこはせめて感じろって言って欲しかったよ。
どうする? コツコツ戦闘を繰り返しデータを取集する事に集中すべきか、いっそのこと気分転換とか言って諦める方が良いのか? いや、友情・努力・勝利の法則を思い出すんだ。最近は、友情・チート・勝利が流行りだけれど、努力は忘れてはいけないよなみたいな感じか……何考えてるんだ、俺。
そうか。今までは、ステータスが足りないと思っていて大胆な動きを避けてきたけれど、ステータスは十分だとすれば、もっと大胆に立ち回る事が出来る。とりあえず、試してみるか。
ラルフに近づき互いに戦闘態勢に入る。先ほどとは異なる軽やかな身のこなしでラルフの攻撃を避ける。
ちょっとした心の余裕というやつがあるだけでこうも身のこなしが変わるとは思わなかった。
きっと、カルさんはこれを伝えたかったのだと信じて、信じ、信じている。
「なかなか良い身のこなしになったものだな。ステータスに変化はないが一体何をしたんだ?」
「カルさん、そんなギャグ要素は要らないですから。真面目にラルフの攻略方法を教えてくれればいいんですよ」
「喋る余裕も出来たか。ここに来て急成長だな。だが……」
やはり、体力的にきつい。鈍りに鈍ったこの身体では、ラルフに傷1つつける事が出来ないと悟ってしまった。
ラルフが飛び掛かって来た。バックステップで避けようとしたところ、足がもつれ転倒した。
運よく右手で持っていたショートソードがラルフの首をはね、何ともあっけない勝利を手にしたのであった。
「あの、これはノーカウントで」
「別にいいんじゃないのか、努力の成果だ」
「努力じゃなくて、まぐれですよ」
「運も実力の内っていうじゃないか」
「こっちの世界にもその言葉が存在するとは……」
友情・運・勝利ってギャンブル要素強くない。ともあれ、負ける事が無いのだから、この3つの言葉がとてもしっくりとくるのだ。
「まぁ、はっきり言って、お前のステータスでは余裕で倒せる相手ではない。私の計算上では、1000分の1の確率で勝てると思っていたが、思いの外、早かったな」
「なんすかそれ。0.1%って、爆死必須のガチャゲーみたいな確率じゃないですか」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「すいません。調子に乗りました」
あっけなくラルフの初討伐は終了したのだった。まるで、ファーストキスを事故死させたかのような思いだった。
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