しあわせDiary ~僕の想いをあなたに~

翡翠ユウ

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第二章 第1話 社会への第一歩

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 役目を終え情欲で満たされたそれを取り去った芹乃加奈は、もう何度も愛し合っているのに相変わらず逞しいままの高橋翔のそれを見た。
 こんなにも連続で愛し合えた人は彼が初めてだった。それゆえに芹乃も夢中で彼を求め、全てを自分のものにしたいという欲をその身に宿しては彼の愛を受け止め続けた。

 すごい。まだこんなに元気なんて……

 芹乃は年上である自分に対してこんなにも魅力を感じてくれるのが嬉しくて仕方がなかった。
 だからこそその喜びを何回でも、そしてずっと感じていたいと思った。さらに、もっと強く、濃密に愛し合いたいとも思った。

「加奈さん?」

 高橋がそんな芹乃に問いかけた。
 その声は届いていたけども、その時の芹乃の心にはとあることが浮かんでいた。

―もしも、このまま着けずにしたらどうなるんだろう。

 間違いなく今まで以上に気持ちがいいに違いない。それに直に温もりを感じて至上の喜びを感じるに違いない。
 してみたい。いや、したい。それでもしも万が一のことがあれば、それはそれでずっと彼と一緒にいることが出来る。彼をずっと私のものに出来る。

 そんなドロっとした感情が芽生え始めた。

「ねぇ、翔くん」

 芹乃は静かに、そして妖艶に口を開いた。
 しかし次の言葉を発しようとした時、最後のストッパーとして中村の言葉が頭を過った。

―絶対に着けなさい。それこそデキてからじゃ遅いのよ? 高橋くんはまだ新入社員なんだから、今後のことを考えるには早すぎるし重すぎるわ。

 また、それ以外にも多くの言葉が芹乃の脳裏に蘇った。そして高橋のことや今後の関係を天秤に乗せ、二人がずっと幸せでいられる未来を考えた時、次の言葉が出た。

***

 加奈さんはなにやら考えている感じだった。
 その間、僕は仰向けに寝転がっており、僕のをじっと見ている加奈さんを見ていた。
 するとその口が開かれた。

「……今度は私がしてあげるね」

 その顔は妖艶ではあったけれど、何かに納得したようなそんな感じがした。

「…ぁ」

 すると加奈さんがゆっくりと僕のを舐め始めた。
 ねっとりとした唾液が舌先から溢れ出し、舌全体を使って舐め回し始めた。
 そしてぐっしょりとなったそれを静かに咥えた。

「…っ…っ……」

 唾液の淫らな音や時々えづくような声を漏らしながら加奈さんの頭が上下に動いていく。また、口内でも舌がねっとりと絡み付き、吸い付きとともに僕を悦楽へ誘おうとしていた。

 温かい。柔らかい。そして気持ち良すぎる。
 ストロークのリズムもちょうど良く、それでいて適度に吸い付いてくれる。
 これがこんなにも気持ちいいものだったなんて知らなかった。
 僕は次第に頭の中が真っ白になっていった。そして体の奥から我慢の出来ない衝動が押し寄せてきた。

「加奈さん…そろそろもう……」
「いいよ。このまま出して」

 そう言った加奈さんの顔がさらに淫靡に、それでいて全てを受け止めてくれる聖母のように見えた。
 口内がさらに真空になった。そして唾液の音もストロークも激しくなった。
 そして

「加奈さ…っ! ぁぁ…っっ!」

 僕はその口の中で果てた。
 しかもその勢いは止まらず、しばらくの間放ち続けた。それを全て受け止めている加奈さんはびっくりしたような顔をしているも、少しすると嬉しそうに表情を緩めた。また、口内では全てを吸い取るかのように舐りながらねっとりと刺激を与え続けていた。

 それからやっと勢いが止まると、加奈さんがそこから口を離した。そしていかにもその中に僕のがあるだろうと分かるくらいに口を膨らしていた。
 そこで加奈さんが僕のことを見てきた。そしてなんと

「ん…っ」

 喉が動いたのだ。
 文字通り全てを吸い取った加奈さんはとても満足気に微笑むと、舌先を出して唇を一舐めした。
 その時、僕は何とも言えない愉悦と衝動に駆られた。そして

「翔くん?」

 気が付いた時には加奈さんを押し倒していた。そして果てたばかりなのにも関わらずもう再起したそれに新しいものを着けると、再び加奈さんの中に入れた。
 加奈さんはまた甘い声を上げながらも驚いた顔で僕のことを見ていた。そんな僕は夢中で動き、それから何度もキスをして愛しまくった。
 自分でも驚くくらいに頭の中は加奈さんのことでいっぱいだった。そして、さっき飲んでくれたという初めての経験と嬉しさ、さらにどうしようもなく溢れてきた独占欲が心を満たし、もっと欲しい、もっと注ぎたいという欲が昂った。

「もっと加奈さんが欲しい。僕のを受け取ってほしい」
「うん。全部あげるよ。だから全部ちょうだい」

 その言葉により僕の中で何かがプツンと切れ、もう止まれないという気持ちしかなくなった。

「加奈さん…加奈さん……」

 それからも僕は何度も動き、加奈さんとともに果てた。そしてまた愛し愛されを繰り返した。

****

「……?」

 妙な時間に目を覚ました。
 あれから僕達は二人とも動けなくなるまで愛し合った。だから結局何回したのかなんて覚えていなかった。でも箱の中身が無くなったのは覚えている。
 僕は隣で寝ている加奈さんを見た。その顔はやはりいつ見ても整っていて、すっぴんなのに張りも艶もよく、血色もとても良かった。

 本当、僕にはもったいないな。

 そう思いながら静かに寝息を立てている加奈さんを抱きしめた。
 もちろん僕達は何も着ていないのでお互いの肌のぬくもりが直に伝わってくる。また、加奈さんを腕の中に包むとその柔らかさがよく分かり、華奢なわりには凹凸がはっきりしたスタイルであることもよく分かった。

「加奈さん、こんな僕の彼女でいてくれてありがとう。ずっと大切にするからね」
「……うん」

 寝ていると思っていた加奈さんが返事をしたのだ。そしてゆっくりと目を開けると、驚いている僕の目を真っ直ぐと見て微笑んだ

「起きてたの?」
「翔くんが手を回した時からね。ねぇ、翔くん。私もありがとうね。最後は私のことを選んでくれて」
「僕にはやっぱり加奈さんしかいないから」

 僕は静かにキスをした。そして唇が離れると今度は加奈さんからキスをしてきた。

 ふと時間を見ると、深夜三時を過ぎたところだった。
 疲れていたこともあってかなり深い眠りだったのだろう。この短時間でもぐっすり寝たような感覚だった。

 すると加奈さんが起き上がってベッドから下りるとキッチンの方に向かった。
 やっぱり綺麗なスタイルだ。後ろ姿も横も前も、全てにおいて黄金比並に完璧すぎる。
 完全に生まれたままの姿でコップを出すと、そこに飲み物を入れて持ってきてくれた。

「どうぞ」
「ありがとう」

 僕も起き上がるとベッドに並んで座って飲んだ。
 それは驚くほど喉ごしがよく、一瞬の内に体に吸収されていった。

「これは何? ものすごく美味いんだけど」
「スーパーとかで売ってるただの水よ」
「え、そんなまさか」
「きっとかなり喉が渇いてたのよ。それに……かなり動いたでしょ?」
「確かに。でも加奈さんもでしょ?」
「だってしょうがないじゃない。すごく良かったんだから。それに……」
「それに?」
「何回やっても翔くんが治まらないから。どうしてそんなに出来るの?」
「それこそ分からないんだよね。昔は一回か二回で終わりだったんだけど、やっぱり加奈さんだからかな。何回しても足りない感じなんだよね」
「そう…… 私としても、その…何回も求めてくれて嬉しいわ」
「逆に、加奈さんもどうしてそこまで体力も性欲も続くの?」
「性欲って…… そうね、私も翔くんだからじゃないかしらね。だって今までで一番気持ちいいんだもの」

 加奈さんの頬が少しだけ赤くなった。それがなんだかとても愛らしく見えてそこにキスをした。

「まったく……」
「ところで、どうして僕のを飲んでくれたの?」
「嫌だった?」
「ううん。それも今までに一度も無かったから嬉しかったよ。あと、なんかものすごくもっとしたくなった」
「あの後からもっと凄かったものね。実は私も初めてだったんだけど、翔くんのを飲んでみたくなったのよ。あと、せめてそれを体の中に入れてみたくて」
「だったら今は加奈さんの中に僕のがちゃんと入ったんだね」
「言い方はともかくとして、そうね。……本当はに入れて出してほしかったな」
「何か言った?」
「なんでもないわよ」

 そこで僕は何となく思ってしまった。
 もしも出したのが口ではなく、だったらと。

 いや駄目だ。それは早すぎる。僕はまだ新入社員だ。もしものことがあったら加奈さんを傷付けるに違いない。それに、加奈さんはそういう順序は絶対に守るタイプだろう。だからそんなことをするのは僕がちゃんとした社会人になってからだ。

「ところで、あの時加奈さんは何かを少し考えていたみたいに見えたけど、何かあったの?」
「なんでもないわよ。ちゃんと抑えたから」
「抑えた?」
「ううん、違う違う。とにかくなんでもなかったの。だから気にしないで」

 なんだろう、加奈さんが少し慌てたような気がした。
 まぁいいか。気にしないでってことは気にしちゃいけないんだろうし。
 そんな時だった。

「あ」

 腹の虫が鳴った。

「カレーって感じの時間じゃないわね」
「そうだね」
「なんならコンビニまで散歩にでも行く?」
「この辺ってコンビニあったっけ?」
「あるわよ。車の窓から見えなかった?」
「加奈さんしか見てなくて」
「まったく」
「まぁ、そうだね。せっかくだから行ってみようかな」

 ということで僕達は着替えを済ませると財布だけ持って家を出た。まぁ、着替えたと言っても部屋着なんだけども。

 深夜の道はとてもしんとなっていて、まだ点いている街灯とあと数時間もすればなりを潜める星と月の明かりしかなかった。もちろん人通りなんか無く、まるで別の世界にでも飛ばされたような感覚を覚えた。
 ふと道に立っているミラーに目を向けた。そこにはペアルックの僕達が手を繋いで歩いている姿が映っていた。

「なんかいいなぁ」
「なにが?」
「なんか学生に戻ったような気がしてさ」
「ほんの数日前まで学生だったじゃない」
「それでもだよ。合宿の時なんかは夜に抜け出してコンビニに行ってアイスを買ったんだよ。それで見つかって怒られたっけなぁ」
「学生らしいわね。でもそうね。私はそういうのはなかったけど、きっとそういうことをしていたなら懐かしく感じていたのかしらね」
「もしも僕と加奈さんが同じ学校だったら、きっと付き合っていたのかな」
「どうだろうね。でも私の学生時代は教室の隅で本を読んでいたり、何かをするにも大人しい人としかやらなかったから、いわゆる陰キャみたいな感じだったわよ? それに、私のほうが二つ上なんだから会えてなかったかもよ?」
「そうかもしれないね。でも、今がこうして繋がっているんだから、もしもの過去でも繋がっていた可能性もあるよ。本当にそうだったら僕は嬉しいなぁ」
「それは私もよ。というか、案外ロマンチストというか女子みたいなことを考えるのね」
「嫌?」
「ううん。なんか可愛いなって思って」
「加奈さんのほうが可愛いよ」

 そんなこんなでコンビニに到着すると、二人で思い思いに食べたいものをカゴに入れていった。それもまたまるで一緒に暮らしているみたいで嬉しくなった。

「加奈さん」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
「なによ?」
「いや、これはまた今度」

 不意に僕が考えている未来についてを話してしまいそうになってしまった。
 だがこれもまだ早いのだ。僕はまだそんな責任を持てない新社会人なんだから。

 不思議そうな顔をした加奈さん。でもすぐに元の凛とした顔に戻った。
 それからコンビニを出て加奈さんの家まで歩いた。
 本当、加奈さんといる全ての時間が幸せすぎる。僕は本当に満たされている。だから

「加奈さん」
「ん?」
「大好きだよ」

 ともう何回目かのそれを言った。
 すると加奈さんは

「私もよ」

 と照れながら言ってくれた。
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