片隅

ねのん

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第一節

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ため息が自然とこぼれたのは
この俺が
初めて彼女に会った時だった。


それは
まだ本当の愛も恋も経験した事がない
学生の時だった。

雨が降った後の路上で、
大きなサングラスをかけ
バターロールを食べながら
黒ずくめでこちらを眺める、
高身長で華奢なその女性は
都会の雰囲気が漂う『大人の女性』
であった。

大体15歳程の青年は
その女性のミステリアスな瞳に
何かを感じずにはいられなかった。

恥ずかしくって、
女性から反対側の壁を向きながら
歩き去ろうとする。

が、女性はそれを許さず
青年に話しかける。

「この近くに高校があるの?」

いきなり過ぎて驚き、
噛みながらただ一言

「はい」

としか青年は言えなかった。

「連れていってくれる?
   名前を忘れたけど、
   その制服だけは覚えてるの。」

女性はサングラスを外し、
海外の血をほのかに感じさせる
その大きな鋭い瞳を向ける。
青年はすぐに目をそらし
高校に向けて歩き出した。
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