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第二章
第二十二話
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王国『マーズ』
王都と13の大集落から成る国。
王都は国の中心に位置し,大集落は王都を取り囲むように広がっている。
この国でいう大集落とは何個かの集落がまとまってできたモノであり,王都にて王に直接仕えるモノ達とそれぞれの大集落の長のことを,この国では「貴族」と呼んでいる。
ここは,王国の南に位置する集落─ナン
大集落サティンの長のお膝元であり,集落というよりは一つの町と言っていいほど大勢の人で賑わっている。
そんな集落の宝石店に,深々とフードを被った一人のリザードマンが足を踏み入れようとしていた。
カランカラ―ン
「いらっしゃいませぇー!って,何だいあんた。」
フードの男を見た店主のおばあさん。
にこやかだった顔が一瞬でしかめっ面になる。
「ここはアンタみたいな身なりの整ってない若造が入っていい場所じゃないよ。それともなにか,そのなりで金持ってんのかい?」
蔑むような眼で男を見つめる店主。
男は,そんな店主の態度をものともせず,周りに陳列されているきらびやかな宝石の数々にも目もくれずに店主のいるカウンターへと一直線に歩いていく。
「・・・あんたに売りたいモノがある。」
カウンターの前まで来て,男はそう言い放つ。
店主はより一層怪訝な顔をする。
「はっ,売りたいモノ?あんた,うちの店を八百屋かなんかと勘違いしてるんじゃないだろうね。あんまりふざけてると衛兵を・・・」
そこまで言って,店主は目を見開いた。
開いた口がふさがらない。
フードの男が懐から取り出したそれが,カウンターに出したそれが,きらびやかな光沢のある紅いそれが,あまりにも思いがけないものだったからだ。
「・・・るびぃ?」
フードを被ったリザードマン─マルは,宝石店を後にして人気のない山道を歩いている。
腰には,金でパンパンになった巾着袋を提げている。
─マル君。今更なんだが,20万ダラルは少々安すぎないか?あの店主の反応を見ただろ?少なくとも100万ダラルで売ることはできたはずだ。
アルフレートは,少し不満げにマルの脳内に直接語り掛ける。
今までこれといった不満をアルフレートから向けられたことのなかったマルは,アルフレートの言動をやや意外に思いつつも,応答する。
(本当に今更だな。別にいいじゃねぇか。そもそも金は二の次だったわけだし,これだけあれば当分食費や宿泊費には困らない。金が足らなくなったらこれまでみたく代わりに宝石で支払ったり,また宝石を売って金を作ればいい。)
─「また宝石を売って金を作ればいい」だって?マル君,その発言は少々いただけないぞ。私にだって魔法へのプライドがある。私の魔法で作り出した宝石にも多少なりとも思い入れがあるんだ。支払いに宝石を使うのは,相手へのお礼の気持ちもあるから今まで何も言わずに許してきた。だがしかしッ!金に換えるとなると話は別だ。安売りすることは絶対に許せない。
(あんたに魔法へのプライドがあるなんて話初耳なんだがな。・・・まぁいいや,そこまで言うんならわかったよ。次からは100万で売ってやる。)
─・・・いや,できればもう少し高く売ってほしい。
(100万でもダメなのかよッ!?)
マルは,アルフレートと脳内でそんな会話をしながら,山を登っていく。
ふいに,木陰から三人のリザードマンが彼の前に現れた。
「兄ちゃん,ちょっと止まってもらおうか。」
二人は細身,一人は大柄。三人とも,手に棍棒を持っている。
サッ,サッ
マルの後ろの木陰からも,二人のリザードマンが出てくる。
その二人はどちらも細身だが,手にはサーベルを持っている。
そんな状況に,マルはにやりと口角をあげる。
やっとか。
怪訝な顔をする前の三人。
「あんたら,宝石店を出た時からついてきてただろ。」
「・・・へぇー,気づいてたのか兄ちゃん。じゃあ何で逃げずに,わざわざこんな人気のない場所まで来たんだ?」
マルの後ろにいるリーダー格と思われる細身の男が,サーベルを肩に担ぎながらマルに尋ねる。
「そりゃあ逃げる必要がねぇからな。狙いはあんたらだし。」
ピリッ
空気が変わり,マルの周りに緊張感が走る。
「・・・なるほど。てめぇの意図は分からねぇが,俺たちをなめ腐ってるってことだけはよぉくわかったぜ。」
リーダー格の男が,サーベルの切っ先をマルの背中に向けた。
「お前の身に着けてるもん全部よこしな。それと,どこで宝石を手に入れたのかも詳細に教えろ。そうすれば,命だけは助けてやる。命だけはな。」
ドスの利いた声だ。
その声には流石のマルも,
「フッ」
耐え切れずに鼻で笑ってしまう。
「あっ?何がおかしい。」
「いやぁすまん。お前ら,ほんっとについてねぇなぁと思ってな。─剣化。」
マルの両腕が,ロングソードに変わる。
「・・・なるほど,腕に自信があんのか。だが,これだけの人数を相手に勝てると思ってんのか?」
「ああ,・・・勝てるさ。」
マルの目から,光がなくなった。
王都と13の大集落から成る国。
王都は国の中心に位置し,大集落は王都を取り囲むように広がっている。
この国でいう大集落とは何個かの集落がまとまってできたモノであり,王都にて王に直接仕えるモノ達とそれぞれの大集落の長のことを,この国では「貴族」と呼んでいる。
ここは,王国の南に位置する集落─ナン
大集落サティンの長のお膝元であり,集落というよりは一つの町と言っていいほど大勢の人で賑わっている。
そんな集落の宝石店に,深々とフードを被った一人のリザードマンが足を踏み入れようとしていた。
カランカラ―ン
「いらっしゃいませぇー!って,何だいあんた。」
フードの男を見た店主のおばあさん。
にこやかだった顔が一瞬でしかめっ面になる。
「ここはアンタみたいな身なりの整ってない若造が入っていい場所じゃないよ。それともなにか,そのなりで金持ってんのかい?」
蔑むような眼で男を見つめる店主。
男は,そんな店主の態度をものともせず,周りに陳列されているきらびやかな宝石の数々にも目もくれずに店主のいるカウンターへと一直線に歩いていく。
「・・・あんたに売りたいモノがある。」
カウンターの前まで来て,男はそう言い放つ。
店主はより一層怪訝な顔をする。
「はっ,売りたいモノ?あんた,うちの店を八百屋かなんかと勘違いしてるんじゃないだろうね。あんまりふざけてると衛兵を・・・」
そこまで言って,店主は目を見開いた。
開いた口がふさがらない。
フードの男が懐から取り出したそれが,カウンターに出したそれが,きらびやかな光沢のある紅いそれが,あまりにも思いがけないものだったからだ。
「・・・るびぃ?」
フードを被ったリザードマン─マルは,宝石店を後にして人気のない山道を歩いている。
腰には,金でパンパンになった巾着袋を提げている。
─マル君。今更なんだが,20万ダラルは少々安すぎないか?あの店主の反応を見ただろ?少なくとも100万ダラルで売ることはできたはずだ。
アルフレートは,少し不満げにマルの脳内に直接語り掛ける。
今までこれといった不満をアルフレートから向けられたことのなかったマルは,アルフレートの言動をやや意外に思いつつも,応答する。
(本当に今更だな。別にいいじゃねぇか。そもそも金は二の次だったわけだし,これだけあれば当分食費や宿泊費には困らない。金が足らなくなったらこれまでみたく代わりに宝石で支払ったり,また宝石を売って金を作ればいい。)
─「また宝石を売って金を作ればいい」だって?マル君,その発言は少々いただけないぞ。私にだって魔法へのプライドがある。私の魔法で作り出した宝石にも多少なりとも思い入れがあるんだ。支払いに宝石を使うのは,相手へのお礼の気持ちもあるから今まで何も言わずに許してきた。だがしかしッ!金に換えるとなると話は別だ。安売りすることは絶対に許せない。
(あんたに魔法へのプライドがあるなんて話初耳なんだがな。・・・まぁいいや,そこまで言うんならわかったよ。次からは100万で売ってやる。)
─・・・いや,できればもう少し高く売ってほしい。
(100万でもダメなのかよッ!?)
マルは,アルフレートと脳内でそんな会話をしながら,山を登っていく。
ふいに,木陰から三人のリザードマンが彼の前に現れた。
「兄ちゃん,ちょっと止まってもらおうか。」
二人は細身,一人は大柄。三人とも,手に棍棒を持っている。
サッ,サッ
マルの後ろの木陰からも,二人のリザードマンが出てくる。
その二人はどちらも細身だが,手にはサーベルを持っている。
そんな状況に,マルはにやりと口角をあげる。
やっとか。
怪訝な顔をする前の三人。
「あんたら,宝石店を出た時からついてきてただろ。」
「・・・へぇー,気づいてたのか兄ちゃん。じゃあ何で逃げずに,わざわざこんな人気のない場所まで来たんだ?」
マルの後ろにいるリーダー格と思われる細身の男が,サーベルを肩に担ぎながらマルに尋ねる。
「そりゃあ逃げる必要がねぇからな。狙いはあんたらだし。」
ピリッ
空気が変わり,マルの周りに緊張感が走る。
「・・・なるほど。てめぇの意図は分からねぇが,俺たちをなめ腐ってるってことだけはよぉくわかったぜ。」
リーダー格の男が,サーベルの切っ先をマルの背中に向けた。
「お前の身に着けてるもん全部よこしな。それと,どこで宝石を手に入れたのかも詳細に教えろ。そうすれば,命だけは助けてやる。命だけはな。」
ドスの利いた声だ。
その声には流石のマルも,
「フッ」
耐え切れずに鼻で笑ってしまう。
「あっ?何がおかしい。」
「いやぁすまん。お前ら,ほんっとについてねぇなぁと思ってな。─剣化。」
マルの両腕が,ロングソードに変わる。
「・・・なるほど,腕に自信があんのか。だが,これだけの人数を相手に勝てると思ってんのか?」
「ああ,・・・勝てるさ。」
マルの目から,光がなくなった。
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