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ティエラ ドラゴネス王国記
カエルレオス
しおりを挟むside・カル
「大きな木ねぇ。実もすっごく大っきいわ。皇宮のラシルの木の5倍くらいありそう。ラムートの木って、皆んなこんなに大きいの?」
『いや。ドラゴンと龍のサイズだからね。それにアーロン達が、私を創った時も、この木に実った果実を食べたんだ。原初からドラゴンと龍が守り育てて来た特別性だからだよ』
「ふ~ん、凄いねぇ。ドラゴンと龍は、自然との親和性が高いって言うか、自然そのものって気がするわ」
『あながち間違いではないよ? 私達は生き物だけど霊体に近い。その分自然の恩恵も受けるし、逆に自然に影響を与えることも出来る』
「ファンタジーよね~。何時かドラゴン達が地上に戻ってくればいいのにな。そうしたら、カルの子孫もバンバン増えるかも知れないよ?」
『そうだね。でも子孫は増えるかも知れないけど、それはもう龍じゃない』
「なんで?」
『レンは何故私達龍が、希少種なのか分かる?』
「ウ~ン?」
フフ。
真剣に考えてる。
レンは人族で、私よりうんと若くて弱くて。あっという間に儚くなってしまう種族なのに、たまに私より年上みたいな態度を取る。
私と比べたら赤子のような存在なのに、レンの側に居ると、何もかもが上手くいくような気になるんだよな。
不思議な人だ。
「う~~~ん。わからないわ」
降参。と両手を上げる仕草が子供みたいだ。
普段の落ち着いた様子とこの落差に、アレクはメロメロのデレデレなんだよね。
アレクの厳つく厳しい顔は、醸し出す雰囲気も相まって、それはそれは恐ろしげに見えるらしいけど、人の美醜なんて私達龍やドラゴンには興味の対象外。
レンはアレクのことを世界一の美男だと思っていて(正直言って、私のほうが美しいと思うけどね。だってアレクは、私のような輝く鱗も、鬣も持っていないからね)アレクはレンにだけは、砂糖菓子のような甘く蕩けた表情を見せる。
本当にお似合いな二人だと思う。
誰も二人の絆を、引き裂くことなんて出来ない、運命の番。
私は番を得られない、と予言された時絶望もした。
その理由が、私の番が他の雄を選ぶからだと知り、まだ見ぬ番を恨みもした。
何故私だけが! とアウラと番に怒りを覚えたけれど、悠久の時を経て理解したことは。全ての事象は、収まるべきところに収まるように出来ている。という事。
たった1人の時間は、恨みを抱えたままで生きていくには長過ぎた。
アウラと番への怒りも薄れ、ただ待ち続けることに意味などない、と考えていた時。薄暗い地下の魔素湖で過ごしていた私の前に突然現れ、光の中へ連れ出してくれた私の救い主。
あの時近づいてくる魔力を、衝動的に引き寄せた過去の自分を、私は褒めてやりたいと思う。
「黙り込んじゃってどうしたの?」
『どう説明しようか考えてた。理由はよく分からないけど、龍とドラゴンが番うと、ドラゴンしか産まれてこない。人と番うと産まれてきた子は、姿は龍だけど龍と呼ぶには弱すぎる。レンがさっき言った様に、龍は自然との親和性が高い。だけど他の種族の魔力が混ざると、力を失ってしまうことが多いんだ』
「じゃあ。私の魔力が混ざるから、カルの子も弱くなるの?」
『どうかな? 君は純粋な人とは言えないし、かと言ってドラゴンとも違う。交尾もしないし、どんな子が生まれてくるのか、私も想像がつかない』
「そうなんだ」
『確実にわかるのは、人より長生きするってことくらいかな』
「長生き・・・そう・・・長生きなのね」
おや?
この反応は・・・。
クレイオスかアレクから、寿命の話しを聞いたのかな?
でもあの様子だと、アレクが話したとは思えない。
だとすればクレイオスか?
本当に酷なことをするよね。
「ねぇ。どの実がいいかしら?」
目をキラキラさせて、一生懸命ラムートの実を選んでくれている。
本当に可愛らしい人だ。
私の知る限り、愛し子は皆美しい人だったらしい。
その中でも、レンの様にたおやかな人は居なかったのじゃないかな。
アレクが執着するわけだよ。
レンの気を引こうと、必死になっているアレクは、ちょっと微笑ましい気分になる。
大人の雄振っているけど、私から見ばアレクも子供みたいなものだしね。
皆んなは気付いていないけど、龍とドラゴンの執着は、獣人なんかより、よっぽど深くて激しい。
あのクレイオスが、大人しくアウラの言うことを聞いているのがいい証拠だ。
レンはあの薄暗い地下から、私を連れ出してくれた。
あの夜、月明かりを浴びて舞い踊る君は、本当に綺麗だった。
『そうだね・・・あの辺りの実はどう?』
「どこどこ?」
『真ん中くらいで、日が当たっているところ』
「ほんとだ。張りもあって他の実より大きいね。でも高くない?」
『私が龍なのを忘れてる?』
「あっ。そっか」
『失礼するよ』
「うわっ! ちょっとカル。なんで抱っこなの? 下ろして!」
『でも、届かないよ?』
「それなら、龍に戻って私を乗せてくれればいいじゃない」
『ここは狭いから、龍の姿に戻ったら、枝が刺さって魔力に集中できない』
「でも! カルの匂いがついたら、アレクが怒っちゃう」
『ねぇ、レン?』
「なあに? 下ろしてくれる気になった?」
まったくこの子は。
アレクの事しか、考えていないんだな。
『それは無理だよ。君、あそこまでよじ登るつもり?』
「やってやれない事は無いかと」
『君が怪我をしたら、アレクの怒りを買うのは私だよ? 君に怪我をさせるくらいなら、臭いがついたと怒られる方がマシだ。』
「そうですか・・・」
『私が言いたかったのはね。君達に困ったことが起きたら、いつでも助けるって話。私は龍で無駄に長生きだし、それなりに財貨も溜め込んでいる。国の1つ2つ、献上することも出来る』
「ドラゴンが宝石とかを集めるのが好きって話はよく聞くけど、龍もだったのね? だけど、もう宝石も国もいらないかなぁ」
『レンは無欲だなぁ。まあ、私は君の眷属だし、一生君の味方だってこと。それだけは忘れないで』
「・・・ありがとう。カルって優しかったのね」
『私はいつでも優しくしていたつもりだけど? なにか誤解してないか?』
「そんなことはないと思うけど。それより魔力を込めてしまいましょう。早くしないとアレクが探しにきちゃうわ」
私の子供の種を作ろうという時に、気にするのはアレクのことか・・・。
『そうだった。アレクに暴れられたら大変だ』
冗談めかしてみたけれど、これほどまでに想われている、アレクが羨ましくて仕方がない。
腕の中のレンは、羽のように軽くいい匂いがする
小さくて柔らかくて・・・。
招来の日。
レンを迎えに行ったのが私だったなら、今とは何かが違ったのかな。
「う~ん。どっちも食べ頃みたい。どっちにする?」
『右のほうが赤くて甘そうじゃない?』
「じゃあ、これにしよっか」
『うん。これがいい』
私が本当に食べたいのは、君なんだけどね。
でも私は君を困らせたり、悲しませたりはしない。
私は君がくれる、この贈り物だけで充分幸せだ。
「繭に魔力をあげる感じで良いのかしら?」
『クレイオスからは、何も聞いていないから良いんじゃない?』
「そう? ではでは。始めましょうか」
レンの魔力は穏やかで温かい。
この温かい魔力で育まれたレンとアレクの子供達は、みな腕白だけど優しい子達だ。
私の子も、あの子達のように優しく勇敢な子に育ってほしい。
間違っても悪竜なんて呼ばれて、討伐対象になんてなってほしくないからね。
最初のラムートの実へ魔力を注いだ後、レンはもう一つ魔力を注いだらどうか、と提案してくれた。
「一回で成功するとは限らないでしょ?」
私のことを真剣に考えてくれているのが嬉しくて、レンの提案に乗ることにした。
それに腕の中の温もりを、手放したくもなかったしね。
魔力を注ぎ終わった2つの果実を、亜空間にしまっている間に、レンは疲れたのか眠ってしまった。
私を信じ切った無防備な寝顔。
穏やかな呼吸の一つ一つに、心が張り裂けそうだ。
数え切れない夜を、恨み焦がれた私の番。
君に選ばれることは無いけれど。
今この刻だけは、君は私だけのものだ。
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