41 / 765
アレクサンドル・クロムウェル
紫藤 蓮/シトウ・レン ハロウィン
しおりを挟む「しっかし、結構な人出よねぇ」
「そうだねぇ。去年までは、例のウィルスのせいで自粛続きだったし」
そうなのです。昨年までの自粛の鬱憤晴しか、今年の市のイベント担当者と観光協会の方々の、お祭り関係への、熱の入れようは半端ではなく。
このハロウィンパーティと称されたイベントも、市の夏祭りや、クリスマスイベントと肩を並べる力の入れ様です。
その煽りで、イベントの参加を打診された我が社の社長が、私たちの直属の上司に丸投げした結果。
「うちの課に、コスプレ好きがいたな」
とヤベちゃんに白羽の矢が立ったのです。
それにしても、コスプレの事は、会社には内緒にしていたのでは?
「ああ。メイクのハウツー動画をUPしたら、身バレした」
笑っていますが、大丈夫なのでしょうか?
最近動画のコメント欄に剣呑な内容の書き込みがあったり、差出人不明の、嫌がらせの手紙が来るって言っていたのに。
「これも有名税ってヤツ? でも、あたしは芸能人じゃ無いから、誰も守ってくれないじゃん? だから、警察にも届けは出してあるし、暫くは、コミケ以外の大型イベントには行かないから心配ないよ」
「でも・・・」
心配する私と肩を組んで、ヤベちゃんは「あっち見て」と近くの郵便局を指差しました。
「あそこに立ってる、青いシャツのオジさんと隣のポロシャツの人ね、あれ警察の人」
「えっ?そうなの?」
「そうそう」
ヤベちゃんによると、嫌がらせの相手は、判明しているけれど、行方が分からなくなっているとのこと。
嫌がらせの理由は、奥さんから離婚を切り出され、その奥さんが残していったPCに、ヤベちゃんの動画がいくつか残っていて、ヤベちゃんのせいで、奥さんが離婚を言い出したのだと、誤解と思い込みした挙句の逆恨みらしい。
奥さんの所にも、ヤベちゃんのことを責めるLINEが来ていたそうで、ヤベちゃんの動画は、偶々保存していただけで、離婚の理由ではない、頼むから人の話を聞いてくれ。と何度も説明したけれど、分かって貰えなかったのだそう。
迷惑千万な話ですが、そんな男だから離婚したくなるんでしょう。
けど、今もヤベちゃんに対する、嫌がらせは続いていて、彼女が目立つことをしたら、相手が現れるかもしれないので、そこを捕まえてしまおう、と言うことらしいのですが。
「そんな、囮捜査的なのって、ありなの?」
「まぁ、普通なら “なし” だよね。でもあたしの方からお願いしたんだ」
「なんで? 危ないよ?」
「だって、一方的ににやられっぱなしで、こっちが我慢するのもねぇ、なんか癪に触らない?」
「それは分かるけど。でも・・・」
やっぱ、心配だよ?
「れんちゃんは、良い子だなあ」
とウィッグを乱さないように、そっと頭を撫でられました。
「お巡りさんもいっぱいいるし、大丈夫よ。だから心配しないで、今日はさ、やな事忘れて、目一杯楽しもうよ」
イケメンの顔で、ニカリとされれば、これ以上、何かを言うことは出来ません。
そうだね。と頷いた所で、パレード開始のアナウンスが流れました。
パレードは幼稚園児の行進から始まり、小学生のマーチングと続いて、総勢20組が参加する中で、私達の順番は真ん中辺り。
私達の一つ前が、高校生のマーチングなのですが、私が通った高校のマーチング部も演奏しながら隊形を変えたり、踊りの担当の子やガーズが居たりと、見て聞いて楽しいものでした。
でも、今の子達は、更なる進化を遂げて、楽器を演奏をしながら行進して、更に踊るのですね。
もちろん重い楽器を抱えているので、ステップがメインとなるのですが、楽器の重量だけでも大変でしょうに、それで踊るとか、本当に素晴らしいです!
ビバ青春!です。
ヤベちゃんに “ふるッ!” って突っ込まれてしまいました。
古すぎますか?
感動したうちのおばあちゃんが、よく使うのですが・・・。
ヤベちゃんは「若いっていいわあ」とこぼしていますが、ヤベちゃんだって充分お若いですよ?
「だって、あの肌見なよ。プルップルのつやっつやよ?」
そう言われてみると、確かにあのハリ感は羨ましい気がします。
「そうだね。なんかほっぺが、プンッ!て感じ」
すると、パレードに参加している、同僚の1人が話に割り込んできました。
「そんなババ臭いこと言ってから、2人とも行き遅れんだよ」
「はい?」
「今なんて言いました?」
セクハラ発言のこの男は、これでも一応先輩です。
「やっぱ女は若くて可愛くないと、なあ?」
この先輩は、日頃からセクハラ、モラハラ発言が多く、女子社員からの苦情が殺到している人です。
上司からも、何度も注意を受けているにも関わらず、自分の何が悪いのか、まったく理解していませんね。
女子社員からの評判が悪すぎて、総スカンをくらい、閑職に回されたと聞きましたが、自分が崖っぷちだと、気付いていないのでしょうか?
「足立さん。それセクハラですよ」
ヤベちゃんの声が地を這う低さです。
今の姿だと、迫力もイケメン度も200%UPです。
110
あなたにおすすめの小説
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜
高瀬船
恋愛
「出来損ないの妖精姫と、どうして俺は……」そんな悲痛な声が、部屋の中から聞こえた。
「愚かな過去の自分を呪いたい」そう呟くのは、自分の専属護衛騎士で、最も信頼し、最も愛していた人。
かつては愛おしげに細められていた目は、今は私を蔑むように細められ、かつては甘やかな声で私の名前を呼んでいてくれた声は、今は侮辱を込めて私の事を「妖精姫」と呼ぶ。
でも、かつては信頼し合い、契約を結んだ人だから。
私は、自分の専属護衛騎士を最後まで信じたい。
だけど、四年に一度開催される祭典の日。
その日、私は専属護衛騎士のフォスターに完全に見限られてしまう。
18歳にもなって、成長しない子供のような見た目、衰えていく魔力と魔法の腕。
もう、うんざりだ、と言われてフォスターは私の義妹、エルローディアの専属護衛騎士になりたい、と口にした。
絶望の淵に立たされた私に、幼馴染の彼が救いの手を伸ばしてくれた。
「ウェンディ・ホプリエル嬢。俺と専属護衛騎士の契約を結んで欲しい」
かつては、私を信頼し、私を愛してくれていた前専属護衛騎士。
その彼、フォスターは幼馴染と契約を結び直した私が起こす数々の奇跡に、深く後悔をしたのだった。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?
梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。
そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。
何で!?
しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に?
堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる