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愛し子と樹海の王
ここはダンジョン。ではないの
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「たからばこ ないねぇ~」
「そうねぇ。何にもないわねぇ」
右手をクオン、左手をノワールと繋ぎ、私達の前方は太郎と次郎が、後ろにはアンが居ます。
母は強しと言うけれど、後ろに控えたアンは、見慣れぬ場所に、興味津々で匂いを嗅ぎまわる、やんちゃ坊主共々、私達の事もがっちりガードしてくれています。
転移させられた部屋から出て、曲がりくねり入り組んだ通路を歩いていると、theダンジョンって感じです。
でも、モンスターも居ないし、トラップも無し。勿論宝箱もセーブポイントも有りません。
延々と続く薄暗い通路と、だだっ広いだけで、石像一つ無い部屋ばかり。
本当に何もない。
この洞窟遺跡は、自然の洞窟に手を加えた物の様です。
自然にできた洞窟は、入り組んでいて、迷ったら出て来られなくなる事も在るって聞いています。
今進んでいる方向は合っているのかしら?
どこかで道を間違えたのかな?
このまま外に出られなかったら、どうしよう。
段々不安になってきちゃった。
手持ちの食料は、懐に押し込んでおいた、なんちゃってエナジーバーが3本。
ノワールとクオンは、基本的に食事をする必要はないけれど、甘いものは大好きだし。
私の魔力も分けて上げなくちゃならない。
アン達は、魔物でも居れば、自分達で狩って来るのだろうけど、今の所生き物らしい姿は見ていない。
もし脱出できなかったら、飢えと渇き、どっちで天に召される事に成るのかしら。
せめて水だけでも確保出来たら、少しは気が楽になるのだけど・・・。
魔法でお水を出そうとしても、手に溜めた魔力は、どういう訳か、空気の中に溶けて消えてしまい、発動する様子が有りません。
私だけがおかしいのかと、クオン達にも魔法を使ってみて貰ったけれど、同じように不発です。
アンなんて、得意の風魔法が出せなくて、しきりに首を傾げていました。
帯に挟んでいたスクロールも反応なし。
この洞窟は、何かが魔法の発動を阻害しているようです。
だとしたら、最初の部屋で光っていた魔晶石は、どういう仕組みに成って居るのかしら?
「それにしても、ここは何処で、この遺跡は何なのかしら」
「ここがどこかは わからないけど。なんなのかは分かるよ?」
「あら。そうなの?」
「うん。ここはね。まぞくがすんでたとこなの」
「「ねぇ~」」
クオンとノワールは互いに頷き合っている。
「二人ともなんで分かるの?」
「ん~~と、なんとなくしってた」
「ぼくたちの、おやのきおくって、クレイオス様はいってたよ?」
「あぁ。そういう事ね」
ドラゴンは自分が一生を終える時、長い生の中で得た知識や記憶を、子供に譲り渡すのだ、とクレイオス様は言ってたっけ。
そっか・・・クオンとノワールの親はもう居ないのね。広大なヴィースのどこかで生きていてくれたら。
いつか二人が、親と再開出来たら、って思っていたけど。
それはもう、叶わないのね。
「でも、へんだよね。ぼくたちのお母さんは、れんさまなのにね~」
「ね~~!!」
「ッ?!・・・・お母さん?」
「そうだよ! ぼくをたまごから かえしてくれたのは、れんさまでしょ?」
「ぼくの、いたいとこなおしてくれて、いっぱいやさしくしてくれたもん」
「「だから、れんさまは ぼくたちの おかあさん!!」」
やだ!もう!!
なんで、こんなに可愛いの?!
お母さん、感動で泣いちゃいそうよ!!
「でもね。おかあさん ってよんだら あれくがおこるから ダメって」
「うん。クレイオスさまがいってた」
「あぁ・・・まぁ、そうよね」
私的には、お母さん って呼んでもらっても、全然構わないけどね。
この二人が ”お母さん” なんて呼ぶのを聞いたら、アレクはショックで倒れちゃいそうね。
それより、ここが魔族の居住地だったなら、どこかに出入り口が必ずある筈だし、水場も有る筈よね?
有るか無いか分からない物を探すより、どこかに必ず有るものを探す方が、全然マシ。
俄然やる気が出てきましたよ!
出口が遠いなら “回復の泉” なんて贅沢は言わないから。
お水だけでも確保したい。
それから小一時間ばかり、滑らかに整えられた通路を歩き回り、だだっ広いだけで、似たような部屋を覗いて回っていると、他とは違い、奥の方に石で出来た、カウンターらしき物が設置された部屋に行き当たりました。
カウンターの裏には、大人が3人くらい横並びで通れそうな、大きな出入り口が見えます。
「何かしら?」
そう呟いたとき、太郎と次郎が、その出入口目掛けて、突進して行ってしまいました。
「あっ! こら!待って。 太郎!次郎!」
一目散に突進する太郎と次郎は、何かを見つけた様子です。
慌てて2匹の後を追い、カウンターを回り込むと、出入り口だと思っていた場所は、下層へ下る階段でした。
人の往来が多かったからでしょうか。
階段は艶々で、中央部分がすり減っています。
そして、階段を下り切った先で、しきりに太郎と次郎が、吼えているのが聞こえます。
「アン。腕白坊主達に勝手に走って行っちゃダメって。教えといてね?」
私の小言に、アンは二パッと開いた口から、ヘッヘッ ヘッヘッ と息を吐いています。
その仕草が、犬っぽくて、お前はハスキーか?! なんて思ってしまいました。
太郎たちの吠える声に、怯えや警戒した処は無いようです。
それでも何が有るか分かりません。
私は刀の柄に手を掛けたまま、階段を下りて行ったのですが・・・・。
そこには・・・・。
あった!! 在りましたよ!!
「回復の泉?!」
「れんさま、ちがうよ?」
「これ、まそすい」
「え? あ・・・そうなんだ」
アクアマリンの様に、薄い水色に輝く泉の正体は、魔素水で満たされた地底の池でした。
でもでも!
回復の泉と間違えて、クオンとノワールに冷静な突っ込みを入れられてしまったけれど、私、悪くない。
だって魔素の発する水色の光が、洞窟の壁でチラチラ揺れて、凄く幻想的な光景なのです。
それに、切実に欲しかったんだもん。
回復の泉。
でもまぁ。魔素水でお腹は膨れませんが、これで魔力切れを起こす心配はなくなりました。
最悪の場合。
ドラゴンの二人だけじゃなく、魔獣であるアン達も、魔素水が有れば、生き延びられると思います。
こうなると確実に足を引っ張るだけの私は、肩身が狭いったら。ねっ?
「れんさま、どうしたの?」
「お水みつかったのに、うれしくない?」
やだ。また心配かけちゃった。
「そんな事ない。とっても嬉しい。太郎。次郎も、お水を見つけてくれて、ありがとう」
太郎と次郎の頭をなでてやると、二匹の尻尾はプロペラみたいに、ブンブン振り回されていて、とても嬉しそう。
もふもふって、やっぱり正義よね。
こんな状況でも、癒されるわ~。
これで、アレクがいてくれたらな・・・。
ええい!弱気になって居る場合ではないのです。
何としても外に出て、みんなで揃って、アレクの所に帰らなくちゃ!
「そうねぇ。何にもないわねぇ」
右手をクオン、左手をノワールと繋ぎ、私達の前方は太郎と次郎が、後ろにはアンが居ます。
母は強しと言うけれど、後ろに控えたアンは、見慣れぬ場所に、興味津々で匂いを嗅ぎまわる、やんちゃ坊主共々、私達の事もがっちりガードしてくれています。
転移させられた部屋から出て、曲がりくねり入り組んだ通路を歩いていると、theダンジョンって感じです。
でも、モンスターも居ないし、トラップも無し。勿論宝箱もセーブポイントも有りません。
延々と続く薄暗い通路と、だだっ広いだけで、石像一つ無い部屋ばかり。
本当に何もない。
この洞窟遺跡は、自然の洞窟に手を加えた物の様です。
自然にできた洞窟は、入り組んでいて、迷ったら出て来られなくなる事も在るって聞いています。
今進んでいる方向は合っているのかしら?
どこかで道を間違えたのかな?
このまま外に出られなかったら、どうしよう。
段々不安になってきちゃった。
手持ちの食料は、懐に押し込んでおいた、なんちゃってエナジーバーが3本。
ノワールとクオンは、基本的に食事をする必要はないけれど、甘いものは大好きだし。
私の魔力も分けて上げなくちゃならない。
アン達は、魔物でも居れば、自分達で狩って来るのだろうけど、今の所生き物らしい姿は見ていない。
もし脱出できなかったら、飢えと渇き、どっちで天に召される事に成るのかしら。
せめて水だけでも確保出来たら、少しは気が楽になるのだけど・・・。
魔法でお水を出そうとしても、手に溜めた魔力は、どういう訳か、空気の中に溶けて消えてしまい、発動する様子が有りません。
私だけがおかしいのかと、クオン達にも魔法を使ってみて貰ったけれど、同じように不発です。
アンなんて、得意の風魔法が出せなくて、しきりに首を傾げていました。
帯に挟んでいたスクロールも反応なし。
この洞窟は、何かが魔法の発動を阻害しているようです。
だとしたら、最初の部屋で光っていた魔晶石は、どういう仕組みに成って居るのかしら?
「それにしても、ここは何処で、この遺跡は何なのかしら」
「ここがどこかは わからないけど。なんなのかは分かるよ?」
「あら。そうなの?」
「うん。ここはね。まぞくがすんでたとこなの」
「「ねぇ~」」
クオンとノワールは互いに頷き合っている。
「二人ともなんで分かるの?」
「ん~~と、なんとなくしってた」
「ぼくたちの、おやのきおくって、クレイオス様はいってたよ?」
「あぁ。そういう事ね」
ドラゴンは自分が一生を終える時、長い生の中で得た知識や記憶を、子供に譲り渡すのだ、とクレイオス様は言ってたっけ。
そっか・・・クオンとノワールの親はもう居ないのね。広大なヴィースのどこかで生きていてくれたら。
いつか二人が、親と再開出来たら、って思っていたけど。
それはもう、叶わないのね。
「でも、へんだよね。ぼくたちのお母さんは、れんさまなのにね~」
「ね~~!!」
「ッ?!・・・・お母さん?」
「そうだよ! ぼくをたまごから かえしてくれたのは、れんさまでしょ?」
「ぼくの、いたいとこなおしてくれて、いっぱいやさしくしてくれたもん」
「「だから、れんさまは ぼくたちの おかあさん!!」」
やだ!もう!!
なんで、こんなに可愛いの?!
お母さん、感動で泣いちゃいそうよ!!
「でもね。おかあさん ってよんだら あれくがおこるから ダメって」
「うん。クレイオスさまがいってた」
「あぁ・・・まぁ、そうよね」
私的には、お母さん って呼んでもらっても、全然構わないけどね。
この二人が ”お母さん” なんて呼ぶのを聞いたら、アレクはショックで倒れちゃいそうね。
それより、ここが魔族の居住地だったなら、どこかに出入り口が必ずある筈だし、水場も有る筈よね?
有るか無いか分からない物を探すより、どこかに必ず有るものを探す方が、全然マシ。
俄然やる気が出てきましたよ!
出口が遠いなら “回復の泉” なんて贅沢は言わないから。
お水だけでも確保したい。
それから小一時間ばかり、滑らかに整えられた通路を歩き回り、だだっ広いだけで、似たような部屋を覗いて回っていると、他とは違い、奥の方に石で出来た、カウンターらしき物が設置された部屋に行き当たりました。
カウンターの裏には、大人が3人くらい横並びで通れそうな、大きな出入り口が見えます。
「何かしら?」
そう呟いたとき、太郎と次郎が、その出入口目掛けて、突進して行ってしまいました。
「あっ! こら!待って。 太郎!次郎!」
一目散に突進する太郎と次郎は、何かを見つけた様子です。
慌てて2匹の後を追い、カウンターを回り込むと、出入り口だと思っていた場所は、下層へ下る階段でした。
人の往来が多かったからでしょうか。
階段は艶々で、中央部分がすり減っています。
そして、階段を下り切った先で、しきりに太郎と次郎が、吼えているのが聞こえます。
「アン。腕白坊主達に勝手に走って行っちゃダメって。教えといてね?」
私の小言に、アンは二パッと開いた口から、ヘッヘッ ヘッヘッ と息を吐いています。
その仕草が、犬っぽくて、お前はハスキーか?! なんて思ってしまいました。
太郎たちの吠える声に、怯えや警戒した処は無いようです。
それでも何が有るか分かりません。
私は刀の柄に手を掛けたまま、階段を下りて行ったのですが・・・・。
そこには・・・・。
あった!! 在りましたよ!!
「回復の泉?!」
「れんさま、ちがうよ?」
「これ、まそすい」
「え? あ・・・そうなんだ」
アクアマリンの様に、薄い水色に輝く泉の正体は、魔素水で満たされた地底の池でした。
でもでも!
回復の泉と間違えて、クオンとノワールに冷静な突っ込みを入れられてしまったけれど、私、悪くない。
だって魔素の発する水色の光が、洞窟の壁でチラチラ揺れて、凄く幻想的な光景なのです。
それに、切実に欲しかったんだもん。
回復の泉。
でもまぁ。魔素水でお腹は膨れませんが、これで魔力切れを起こす心配はなくなりました。
最悪の場合。
ドラゴンの二人だけじゃなく、魔獣であるアン達も、魔素水が有れば、生き延びられると思います。
こうなると確実に足を引っ張るだけの私は、肩身が狭いったら。ねっ?
「れんさま、どうしたの?」
「お水みつかったのに、うれしくない?」
やだ。また心配かけちゃった。
「そんな事ない。とっても嬉しい。太郎。次郎も、お水を見つけてくれて、ありがとう」
太郎と次郎の頭をなでてやると、二匹の尻尾はプロペラみたいに、ブンブン振り回されていて、とても嬉しそう。
もふもふって、やっぱり正義よね。
こんな状況でも、癒されるわ~。
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