獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

文字の大きさ
412 / 765
愛し子と樹海の王

コーヒーブレイク

しおりを挟む
 side・レン


 リリリ・・・・・・リーーーン。


 ああ。
 この鈴の音。

 懐かしくて、澄んだこの音色は、アウラ様に呼ばれたの?

 アウラ様は元気になって、お庭に戻ったのかな?

 このまま、目を開けたら、アウラ様に会える?

 でも・・・・凄く眠い。
 なんで・・・・こんなに眠いの?


 ん~~?
 頭を撫でてくれてるのは、だぁれ? 

 ”眠りなさい・・・ゆっくり眠って、心と体を癒しなさい”

 早く起きなきゃ・・・アレクさんが心配しちゃう。

 ”大丈夫。何も心配しないで。もう少し寝てていいよ”

 本当に?
 じゃあ、後ちょっとだけ・・・ちょっとだけね。

 ふわふわ・・・
 あったかくて気持ちいい

 後もうちょっとだけ・・・・

 アレク・・・・あと・・・ちょっとだけ。


 ◇◇◇


 あれ・・・・・・・?

「・・・・・・ここ・・・どこ?」

 辺り一面真っ白・・・?

 ベットの御布団も。
 天蓋の幕も・・・・カーテンも?

 病院・・・?
 では無いわよね?

 とっても明るいけど、お日様でも、蛍光灯の明かりでもない。

 わぁ! 風を孕んで揺れるカーテンが、優雅だこと。

「そうじゃなくて。 だ・か・ら! ここどこっ?!」

 勢いよく布団を跳ね上げて、ベットから降りようとしましたが、何故か足に力が入らず、へなへなと床に座り込んでしまいました。

「え~~っと。これは、どうしたもんでしょう」

 なんか、すっかり足が弱ってる?
 熱が有るのか、体がだるくで、頭もぼーっとした感じで、気持ち悪い。

 私、何やってたっけ・・・・・?

「はっ!! ドラゴニュート!!」

 そうよ!
 アレクさんと一緒に、瘴気溜まりを確認しに行って、瘴気が襲って来て。
 真っ黒なドラゴニュートが現れて・・・。
 黒い風が・・・・・・。

 ・・・なんか変な模様が・・・・腕に。

 その後は・・・・?

 その後の記憶が全くありません。
 って事は、あの後私は、気を失うかなんかして、現在に至る。って感じですかね。

 袖をまくってみたら、やっぱりへんな模様が腕に浮かんでいます。

 もう!なんなのこれ?!

 婚姻紋といい、この変な模様といい。
 なんか、タトゥー愛好家みたいになっちゃってる。

 ここが何処だか分からないし。
 歩けないし。
 アレクさんは居ないし。

 素敵なベットで寝かされてたって事は、拉致監禁・・・っとは違うわよね?

 それに・・・・アウラ様の鈴の音を聞いたような・・・・。

 アウラ様のお庭に、建物はなかった筈だけど。

 こうなったら最後の手段です。

「すみませーーーん!! だれかぁー!! アーレークーー!! いないのーー?!」

 アレクが傍に居ないなんて、絶対おかしい。そんな事在り得ない。

 拉致られたのでもなんでも、現状確認必須です。
 その為には、人と話さなきゃ!

「だぁーーれーーかぁーーー!! いませんかぁーーーーーッ!!」

 かぁ・・・かぁ・・・か・・・。

 まさかの、脳内エコーじゃない木霊が、室内から帰って来るとは・・・。

 シーーーーン・・・・・・。

 って・・・何この静寂?
 本当に誰も居ないの?

 どうしましよう。
 ベットに戻る事も出来ないのに・・・・。

 ・・・・まいっか。

 監禁されてるわけじゃなさそうだし、その内誰か来るでしょう。
 幸いお部屋は暖かいし、カーペットはふっかふか。

 御布団も枕も、手が届く。
 誰か来るまで、二度寝を決め込んだっていいですよね?

 寝相が悪くて、ベットから落ちた、と思われたら恥ずかしいけど。

 それはそれ。これはこれ。

 体調は最悪。
 それなのに大声を出したせいで、目の前がグルグル回りはじめています。

 ここが何処で、自分に何が有ったにせよ、体調の回復が最優先。
 いざという時、走って逃げられるくらいには回復しておかないとね。

 ・・・・今アレクさんは傍に居ない。
 念話も通じない・・・・。
 だったら自分で、何とかするしかないじゃない。

 私は大人の女なの!
 アレクさんが居ないからって、寂しくて泣いたりしないんだから!

 ふわふわ、スベスベの上掛けを体に巻き付け、カーペットの上で丸くなっても、体の半分が冷えて冷たい。

 アレクのばか。
 どこに居るの?
 一人だと寒くて、寂しいよ。


 ◇◇


「・・・・起きて・・・レン」

「ん~~~もうちょっとぉ」

「なんで床で寝てるの? 寝るならベットで寝なさい」

「ふぇ・・・・・・・?」

 肩をゆすられて、薄目を開けると、長い睫毛に縁どられた、銀色の瞳が目の前に。

「あ?・・・・アウラ様?! えっ? あれ? 夢?」

 ウルウル、キラキラの瞳の中に、間抜けな顔の私が写っています。

「寝ぼけている? まだ具合が悪いの?」

 額に手を当てられて、心配そうに瞳を見つめられ・・・・。
 肩から流れ落ちた、サラサラの銀髪が頬をくすぐって・・・。

「本・・・・物・・・?」

 すっかり痩せてしまわれたけど、本物のアウラ様です。

「うぅ・・・」

「どうしたの? やっぱり調子悪い?」

「うぇ・・・・うぇ~~~~ん!! アウラ様だぁ~~~!!」

「あぁ・・よしよし。心配をかけてしまったね」

 目の前の銀髪に縋りつき、子供みたいに声をあげて泣く私を、アウラ様はそっと抱き上げて、背中を撫でてくれました。

 でも、何時までもエグエグと泣き止まない私に、アウラ様も困ってしまったのでしょう。ベットの上に私を下ろすと、あれやこれやと、世話を焼き始めてくれました。

「もう泣かないの。可愛い顔がべちょべちょじゃない。ほら、お鼻チーンして」

 何処からともなく取り出した、ティシュを渡してくれましたが。

 絶世の美貌の神様が、お鼻チーン ってお母さんでしょうか?

 顔面と言動のギャップが・・・・。

 その後も顔の腫れを取って、水分補給が大事と果実水を出してくれたり、ベットを整え直してくれたりと、それはそれは、まめまめしくお世話してくれました。

「ごぺんださい・・・アウラ様ぼ具合が悪いどに・・・」

「いいから。 もう、また泣いて・・・もう一回チーンして」

「ヴぁい・・・グスッ・・・ここどこですかぁ」

「何処って、私の庭だよ? 君のダメージが大きいって聞いて、部屋を用意したんだ」

 ” ほら ” とアウラ様が手を振ると、優雅なカーテンと白い壁が消え、見慣れたお庭に姿を変えました。

「ホントだぁ。一度起きた時、誰も居ないし、呼んでも返事が無かったから、誰かに拉致られたのかと思いました」

「拉致って・・君、自分の状況分かってないの?」

「私なんでここに来たんでしょうか? アウラ様が呼んだんですか?」

「お互い万全な状態では無いし、良いものが有るから、一服しながら話をしよう」

 アウラ様がとても懐かしく、豊潤で芳しい香りがたつカップを、差し出してくれました。

「こっこれはッ!!」

「フフ・・・。ヴィースでは、何故かコーヒー文化が育たなくてね。お茶ばかりで飽きたかな、と思って」

「文化が育たないって事は、コーヒーがあるんですか?」

「あるよ。タランと、帝国の南の辺境で細々と栽培しているね」

「やった。・・・・カフェラテ、エスプレッソ、アイスコーヒー、コーヒーゼリー。寝起きの一杯、徹夜のお供」

「楽しそうだね?」

「ええ。ワクワクします。うふふ。美味しい」

「さて。喜んで貰った処で、まじめな話をしよう」

 久しぶりのコーヒーを啜る私に、アウラ様は今の私の体の状態や、呪いを受けた原因と、呪いを解くために、アレクさん達が何をしようとしているのか、を説明してくれたのでした。

「呪い、ですか」

「呪いと言っても、私に掛けられている、怨みつらみとは違う。魔法契約に違反した罰則は、私やクレイオスでも、解呪は出来ないんだよ」

「内容だけでも、分からないの?魔法契約って、アウラ様に誓うんですよね?」

「君、契約内容をベラベラ喋る、弁護士とか司法書士を知っている?」

「・・・分かり易い説明、ありがとうございます。でもアウラ様、私に嘘つきましたよね?嘘つきな弁護士は、悪徳弁護士って言いませんか?」

「嘘? なんの事かな?」

 しらばっくれて。
 目が泳いでるじゃないですか。
 身に覚え、有りまくりですね?

「ヨシタカ様 結婚してましたけど? またうっかりとか言って、誤魔化すんですか?招来の時のあれ、確信犯ですよね?」

「あはは・・・何か勘違いしたかなぁ」

 はぁ・・・。
 この神様、絶世の美男子さんなのに、なんか残念なのよね。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...