獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

文字の大きさ
554 / 765
千年王国

アセンとリンガ

しおりを挟む
 怪訝な顔をしたアセンは、私が返事をしてしまった事で、会話を許されたと思ったらしく、話しを続けています。

「愛し子様と大公閣下の武勇は・・・なんたらかんたら」

 むむむ。これは手強い。
 空気を読まないタイプね。

「ウジュカの討伐と支援の・・云々・・当然我が国への支援も・・・かんぬん」

 はあ?
 冗談じゃない!
 リアンを泣かせた相手に、、お金を使わなくちゃいけないの?

 〈本当に図々しい人ね。貴方が宮に押し掛けて来た事。忘れてないのよ?性格が顔に出るって言うけど。リアンの方が全然美人だわ。それで良くアーノルドさんを落とせると思ったわね?それに、見るからにアーノルドさんより年上よね?本気でイケると思ってるの?その根拠のない自信は、一体どこから来るの?〉

「は?何と仰っているのか全くわかりませんが?愛し子様は帝国語を、理解されておられないのでしょうか?」

「おい。不敬だぞ。愛し子様は神の御使いだ。この方の言葉を理解できないという事は、アウラ神に選ばれなかった。という事だ」

「は?・・・・しかし」

「俺達は愛し子様との会話が成り立っている。この会場に居る多くの者もそうだ。お前は神に選ばれなかった。それが全てだ。分かったら早う居ね」

 アレクさんに冷たくあしらわれ、マークさん、ロロシュさん。セルゲイさんまでが前に出て、漸くアセンは下がって行きました。

 私は誰かに、何かをしてもらうのが当たり前、と考えている人が苦手。と言うか嫌いです。

 愛し子という立場は、万民を愛さなければならないのかも知れませんが、私には無理です。幾らアウラ様が仲良くしてくれていても、私は唯の人なんだもん。

 そこで空中からぽとりと、私の手の中にチョコレートの箱が落ちてきました。

 これは・・・アウラ様が慰めてくれている、って事で良いのかな?

 ゴトフリーへ行った人達には、見慣れた光景ですが、他の人達にはそうではありません。

 これを見て居た貴族の人達が、神の奇跡が~!と、大騒ぎになる事は避けられず、其処は御愛嬌・・・では済まない状況です。

 取り合えず、チョコの箱は、ロイド様に進呈させて頂ただいて、あとは知らんぷり。でいいわよね?

「あの人が宮に押しかけて来たのって、私達に討伐と浄化をさせたかったからみたいね?」

「俺たち二人に会いたいなんて奴は、そんなものじゃないか?」

「そうよねぇ・・・でも頼み方ってありますよね?」

「だな。どの道暫くは、大会議での承認は降りないだろうし、俺達が心配してやる義理も無い。礼儀を欠いた相手なら、尚更だな」

「ほんと、それ。内状はあれだったけど、ヨーナムさんは真摯だったものね」

「ヨーナムか。あの爺さん、立ち直ったかな」

「どうでしょう。子供を亡くした親と一緒ですから、簡単にはいかないのじゃないかしら」

「ふむ。サタナスが面倒を見る、と言って居たから問題は無いだろうが」

「子守りをしてもらう約束も有るし、早く元気になってくれると良いな」

「子守り・・」

 先ずは子作りからだな?

 と耳元で囁かれ、顔が熱くなってしまいました。

「もう!こんなところで、恥ずかしいでしょ!」

 アレクさんの腕をぺシンと叩いたら、その手を捕まえられて、指先にキスされてしまい、益々顔が熱くなってしまいます。

「俺のひめは、恥ずかしがりのままだな?」

 はあ~~♡♡
 もう止めて。色っぽすぎる。
 まだ晩餐も始まってないのに、既に瀕死。
 これ以上HP削らないで!

「お~~い。まだ行列残ってんぞ~~」

「閣下。退屈だからって、レン様を揶揄ってはいけません」

「揶揄ってない。番を愛でてるだけだ」

「信じらんねぇ。閣下のメンタル鋼かよ」

「煩いぞセルゲイ。早く次を呼べ」

「かあぁぁ~~!?」

「はいはい。次、前へ!」

 一通り招待客とのご挨拶も済み、次は国内の貴族の方達です。

 此方は伯爵以上の高位貴族の方々が殆どなので、ご挨拶の行列も先が見えてきました。

 それに、伯父様やリアンパパ。メリオネス侯爵とマークさんの御両親のアーチャー伯夫夫。等々馴染み深い方々も多くて、助かりました。

 一生終わらないかも?

 と思われた挨拶ラッシュも漸く終わりを告げ、次は晩餐です。

 大食堂に通された、私の右隣の席に着いたのは、フレイアのお兄さんのリンガさん、タランの王太子殿下でした。

 フレイアの話しだと、異母兄弟に当たるという事でしたが、確かに飄々としたフレイアとは違い、ゴリゴリの武人って感じの人です。 

 別腹とは言え御兄弟なので、どことなくフレイアに似たお顔立ちですが、腕の太さとか、アレクさんといい勝負のゴリマッチョ。

 叔父にあたるロイド様とも、どことなく似ている気がします。

 大柄の2人に挟まれた私は、傍から見たら、更に小さく見えるようで、しかも2人とも武の人ですから、私に向けられる周囲の視線は、気の毒そうなものになって居ます。

 私的には、普段から騎士団の皆と一緒に過ごしているので、こういう事には慣れっこなのですが、荒事に縁遠い王侯貴族の方達には違って見えるのかも知れませんね。

 私の頭越しに交わされる、アレクさんとリンガ殿下の会話は、もっぱら魔物の討伐に関するお話で。食事の席でする会話としては、少々無粋なもの、と受け止められているようです。

「大公閣下とはこちらに居る間に、一度お手合わせをお願いしたい」

「俺はいつでも構わんぞ」

「では明後日は如何か?」

「良いだろう、場所は第2騎士団の練武場で良いな?」

「承った。これは楽しみだ」

「アレク。私も一緒に行っても良い?」

「ん?いいぞ。レンも偶には体を動かしたいだろう?」

「うん。ありがとう。リンガ殿下もよろしくお願いします」

「愛し子様に見学頂けるとは、光栄です」

「私も手合わせに参加するのですけど?」

「えっ?」

「なにか?」

「いや・・・大公閣下、宜しいのですか?」

「何がだ?」

「何がって・・・・」

「あぁ。ご心配して下さっているのですね?でも大丈夫です。私そこそこ強いので」

「は・・・はあ」

「明後日が楽しみです」

 リンガ殿下は微妙な顔をなさっているけれど、彼がアレクさん程強いとは思えないから、問題は無いと思います。

 私達の会話に聞き耳を立てていた、周りの人達はドン引きでしたが、私が気にする事ではありませんよね?

 ふと視線を感じて目を向けると、恨みがましい視線を送って来るアセンと、目が合いました。

 アセンの周りには、同じように不発に終わった、ヒラヒラ衣装を身に着けた人たちが集められていて、他の参席者の方達から、チラチラ、ヒソヒソされているようです。

 ロイド様の采配なのでしょうが、これは中々きついお仕置きだと思います。

 まあ、身から出た錆なので、私は何も気付かない振りで、ニッコリ笑顔を送っておきました。

 でも、この後のパーティーでダンスも有るのに。こんなにあからさまな事をして良いのかしら?

 アセンのあの様子だと
 絶対一悶着二悶着在りそうな予感。
 これは心して掛からねば!



しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日7時•19時に更新予定です。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

処理中です...