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第3章 私はただ静かに研究したいだけなのに!
13 条件
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私が助手に求める条件は「空を飛ぶということの危険性を理解し、助手の仕事が危険なことだと自覚して、ある程度の危険を覚悟している」ということだ。
もちろん、本当に怪我をさせたり、命を危険に晒す気は無い。
助手の安全を第一に考慮するし、危険なことならまず私が自分で実験して、安全性を確かめてから助手に手伝ってもらう。
それでも本人にこの助手の仕事は危険だと認識してもらわないといけない。
危険だと認識して、自分の身を守ろうと自分で自分の身を守ることを意識してもらわなければならない。
意識して自分の身を守ろうと常に注意してもらい、こちらの指示に従ってもらわないといけない。
自分の頭でも考えて、常に自分の身に危険がないように、危険が及んだときにどうするかを常に考えてもらわなければならない。
どんなにこちらで細心の注意を払っていても、相手の不注意で怪我をする可能性はある。
共に空を飛ぶ人には自分が危ないことをしているという自覚を持って欲しい。
その自覚がなければ、無自覚に危険なことをして命を落としてしまうことになりかねない。
自覚をして、危険を意識して、感知して、察知して、避けたり防いだり、自分の身を最大限守る努力を自らが率先して積極的にしてほしい。
自分の命を大事にしてほしい。
自分の身の安全を第一に考えてほしい。
注意力と想像力を働かせてほしい。
実験の成功ではなく、自分の身を守ることを1番に考えてほしい。
助手に望むことは危険なことをするという認識と自覚と覚悟を持っているということだけだ。
もう一つ望むとしたら頑丈なことくらいで頭脳は特に求めていない。
こちらの世界の重力などの理を理解していない人間に研究の中身の協力は期待できない。
理術の開発ではなく、実際に理術を使う段階での飛行実験に付き合ってくれる人間が必要なだけだから、それには頭脳よりも肉体の頑丈さの方が重要になる。
空を飛ぶという行為はとても危険なことだから、はっきり言って、命の安全の保障を100%することができない。
危険が少なくなるように最大限の努力はするが、完全に0にはできない。
人間だから、高い所から落ちて地面に叩きつけられたら、当然怪我するし、最悪の場合は死ぬ。
さすがに死ぬ覚悟まですることは求めない。遺書を書かせる気は無い。そこまでは必要ない。
バンジージャンプで飛ぶくらいの覚悟でいい。
「紐が切れたら地面に叩きつけられて死ぬ……かもしれない。だから、紐が切れないように気をつけよう」という覚悟くらいでいい。
下手したら死ぬかもしれないという認識を持って、危険性を自覚して、死なないように気をつけようという覚悟を持ってくれるくらいでいい。
必要最低限それくらいの覚悟がいる。
本当に最悪の場合は死ぬこともあるということを頭で理解して、そうならないように助手自ら注意してもらう必要がある。
空を飛ぶ以上、転落という危険は避けては通れない。
ここから落ちる可能性がある。
ここから落ちたらどうなるか。
ここから落ちないためにはどうするか。
ここから落ちてしまった場合はどうすれば助かるか。
そういったことを常に考えてもらわなければならない。
私だって実験で人を死なせたくはない。
全力で死なないように手を尽くす。
でき得る限り危険は排除する。
それでもやはり本人に危機意識を常に持ってもらわないといけない。
こちらが気を付けるだけでは不十分だ。
安全性を上げるためには、助手本人の協力も必要になる。
そのために必要なのが、本人の自覚だ。
自分がどれだけ危険なことをしようとしているのかということを自覚してもらわなければならない。
自覚して、正しく危険を認識して、その上で覚悟を持ってもらわなければならない。
命の危険がある分だけ賃金は弾む。
でも、お金に釣られるだけで、何の覚悟も無い人間には私の助手は務まらない。
「助手の仕事中に怪我をしても死んでも文句は言いません。自己責任です」という内容の誓約書にサインしてもらい、その後に私と一緒に屋上から飛び降りてもらうというやり方は脅しのようだが、必要なことだ。
私もこんなふうに脅すようなことはしたくはないのだが、これから先のことを考えたら避けては通れない問題だ。
自分だけでなく、人と共に空を飛ぶことを考えたら、どうしても協力者が必要になる。
本当ならこんな脅しのような方法を使うつもりは無かった。面接段階で危険性についてしっかり説明して、それを理解して納得してくれる人を助手として採用しようと考えていた。
しかし、事務を通じて募集をかけてもらうと思った以上に助手の応募者が多かった。
高い賃金、労働者に優しい労働条件に釣られた人と、理術目的の人が想像以上に多かったようだ。
スパイは多少は困るがあまり気にはしない。私の理術を盗むのは不可能だからだ。
助手は弟子ではないので、私の理術について教える気は無い。一切詳しい原理などは説明はしない。
見てるだけで重力や引力などの理について理解できる人間はこの世界にはいないだろう。
いるとしたら、それは天才だ。
私から盗まなくても自分でもっと素晴らしい理術を発明することができる。そんな天才が危険を犯して他人からわざわざ盗む真似なんかしない。
盗んだ場合、認定理術師として私はその助手を処分しなければならない。
そんな危険で馬鹿な真似をするような人が天才である可能性は0に近い。
確率として低過ぎるので、盗まれることを心配するだけ無駄だ。
理術を教えた弟子が裏切る方が危険が高いから、弟子をとる場合は人柄や出身など背後関係の洗い出しなどの徹底した調査が必要になる。
しかし、何も教えないで、ただ言ったことだけをしてもらう助手ならば、それ程人間性や背後関係などは気にする必要は無い。最悪の場合は解雇してしまえばそれで済む。
普通ならそういった命の危険があることは弟子にさせるらしい。
弟子をとることを事務から勧められたが、まだ私には弟子はとれない。
だから危険なことを助手にしてもらわなければならない。
これから飛行理術を発明、開発していくと、必ず一緒に飛んでくれる人が必要になる。
研究室の外で実験はすることになるからメイドのライラに協力してもらうわけにはいかない。
予想以上の人数に当初の計画で対応しきることは不可能だった。
数人なら時間をかけてしっかりと話し合いをすることができたが、数十人となると一人一人にそれほど時間をかけて面接することはできない。
短時間に私が口頭で危険性を説明しても、取り敢えずその場では理解したふりをされてしまう可能性が高い。
残念なことに、私にはそのふりを見破るだけの力が無い。
こちらがどれだけ心を砕いて細心の注意を払っていても、相手が危険を正しく理解していなくて、現状を正しく認識していなくて、危険をなめて、安易に不注意なことをしてしまったら、どれだけ危険を排除しても意味が無い。
ちょっとした油断や不注意で死んでしまうかもしれない。
ちょっと強引で乱暴な手段だが、相手が本当に助手となる危険性を認識して自覚して覚悟しているかを確認するためにはやむを得なかった。
この条件さえ満たしているなら、助手になる目的も本人の能力も問わない。人格に多少の難があっても許容する。
これだけの応募者がいるのだから、一人くらいは条件を満たす人がいるだろうと安易に考えてしまったのがいけなかった。
多くの学生が応募してきたので、2日に分けて面接することにしたが、1日目は全員不採用、というか全員が辞退してしまった。
その辞退者たちから噂が広まり、2日目の面接予定の応募者のほとんどが面接前に辞退してしまった。
2日目で辞退しなかった応募者は1人だけ。
その人の面接時間になった。
研究室の扉がノックされ、ライラが扉を開けて対応してくれている。
さて、唯一辞退しなかった応募者はいったいどんな人だろう?
期待と不安が半々な気持ちで私は最後の応募者が研究室の中へ入って来るのを待った。
もちろん、本当に怪我をさせたり、命を危険に晒す気は無い。
助手の安全を第一に考慮するし、危険なことならまず私が自分で実験して、安全性を確かめてから助手に手伝ってもらう。
それでも本人にこの助手の仕事は危険だと認識してもらわないといけない。
危険だと認識して、自分の身を守ろうと自分で自分の身を守ることを意識してもらわなければならない。
意識して自分の身を守ろうと常に注意してもらい、こちらの指示に従ってもらわないといけない。
自分の頭でも考えて、常に自分の身に危険がないように、危険が及んだときにどうするかを常に考えてもらわなければならない。
どんなにこちらで細心の注意を払っていても、相手の不注意で怪我をする可能性はある。
共に空を飛ぶ人には自分が危ないことをしているという自覚を持って欲しい。
その自覚がなければ、無自覚に危険なことをして命を落としてしまうことになりかねない。
自覚をして、危険を意識して、感知して、察知して、避けたり防いだり、自分の身を最大限守る努力を自らが率先して積極的にしてほしい。
自分の命を大事にしてほしい。
自分の身の安全を第一に考えてほしい。
注意力と想像力を働かせてほしい。
実験の成功ではなく、自分の身を守ることを1番に考えてほしい。
助手に望むことは危険なことをするという認識と自覚と覚悟を持っているということだけだ。
もう一つ望むとしたら頑丈なことくらいで頭脳は特に求めていない。
こちらの世界の重力などの理を理解していない人間に研究の中身の協力は期待できない。
理術の開発ではなく、実際に理術を使う段階での飛行実験に付き合ってくれる人間が必要なだけだから、それには頭脳よりも肉体の頑丈さの方が重要になる。
空を飛ぶという行為はとても危険なことだから、はっきり言って、命の安全の保障を100%することができない。
危険が少なくなるように最大限の努力はするが、完全に0にはできない。
人間だから、高い所から落ちて地面に叩きつけられたら、当然怪我するし、最悪の場合は死ぬ。
さすがに死ぬ覚悟まですることは求めない。遺書を書かせる気は無い。そこまでは必要ない。
バンジージャンプで飛ぶくらいの覚悟でいい。
「紐が切れたら地面に叩きつけられて死ぬ……かもしれない。だから、紐が切れないように気をつけよう」という覚悟くらいでいい。
下手したら死ぬかもしれないという認識を持って、危険性を自覚して、死なないように気をつけようという覚悟を持ってくれるくらいでいい。
必要最低限それくらいの覚悟がいる。
本当に最悪の場合は死ぬこともあるということを頭で理解して、そうならないように助手自ら注意してもらう必要がある。
空を飛ぶ以上、転落という危険は避けては通れない。
ここから落ちる可能性がある。
ここから落ちたらどうなるか。
ここから落ちないためにはどうするか。
ここから落ちてしまった場合はどうすれば助かるか。
そういったことを常に考えてもらわなければならない。
私だって実験で人を死なせたくはない。
全力で死なないように手を尽くす。
でき得る限り危険は排除する。
それでもやはり本人に危機意識を常に持ってもらわないといけない。
こちらが気を付けるだけでは不十分だ。
安全性を上げるためには、助手本人の協力も必要になる。
そのために必要なのが、本人の自覚だ。
自分がどれだけ危険なことをしようとしているのかということを自覚してもらわなければならない。
自覚して、正しく危険を認識して、その上で覚悟を持ってもらわなければならない。
命の危険がある分だけ賃金は弾む。
でも、お金に釣られるだけで、何の覚悟も無い人間には私の助手は務まらない。
「助手の仕事中に怪我をしても死んでも文句は言いません。自己責任です」という内容の誓約書にサインしてもらい、その後に私と一緒に屋上から飛び降りてもらうというやり方は脅しのようだが、必要なことだ。
私もこんなふうに脅すようなことはしたくはないのだが、これから先のことを考えたら避けては通れない問題だ。
自分だけでなく、人と共に空を飛ぶことを考えたら、どうしても協力者が必要になる。
本当ならこんな脅しのような方法を使うつもりは無かった。面接段階で危険性についてしっかり説明して、それを理解して納得してくれる人を助手として採用しようと考えていた。
しかし、事務を通じて募集をかけてもらうと思った以上に助手の応募者が多かった。
高い賃金、労働者に優しい労働条件に釣られた人と、理術目的の人が想像以上に多かったようだ。
スパイは多少は困るがあまり気にはしない。私の理術を盗むのは不可能だからだ。
助手は弟子ではないので、私の理術について教える気は無い。一切詳しい原理などは説明はしない。
見てるだけで重力や引力などの理について理解できる人間はこの世界にはいないだろう。
いるとしたら、それは天才だ。
私から盗まなくても自分でもっと素晴らしい理術を発明することができる。そんな天才が危険を犯して他人からわざわざ盗む真似なんかしない。
盗んだ場合、認定理術師として私はその助手を処分しなければならない。
そんな危険で馬鹿な真似をするような人が天才である可能性は0に近い。
確率として低過ぎるので、盗まれることを心配するだけ無駄だ。
理術を教えた弟子が裏切る方が危険が高いから、弟子をとる場合は人柄や出身など背後関係の洗い出しなどの徹底した調査が必要になる。
しかし、何も教えないで、ただ言ったことだけをしてもらう助手ならば、それ程人間性や背後関係などは気にする必要は無い。最悪の場合は解雇してしまえばそれで済む。
普通ならそういった命の危険があることは弟子にさせるらしい。
弟子をとることを事務から勧められたが、まだ私には弟子はとれない。
だから危険なことを助手にしてもらわなければならない。
これから飛行理術を発明、開発していくと、必ず一緒に飛んでくれる人が必要になる。
研究室の外で実験はすることになるからメイドのライラに協力してもらうわけにはいかない。
予想以上の人数に当初の計画で対応しきることは不可能だった。
数人なら時間をかけてしっかりと話し合いをすることができたが、数十人となると一人一人にそれほど時間をかけて面接することはできない。
短時間に私が口頭で危険性を説明しても、取り敢えずその場では理解したふりをされてしまう可能性が高い。
残念なことに、私にはそのふりを見破るだけの力が無い。
こちらがどれだけ心を砕いて細心の注意を払っていても、相手が危険を正しく理解していなくて、現状を正しく認識していなくて、危険をなめて、安易に不注意なことをしてしまったら、どれだけ危険を排除しても意味が無い。
ちょっとした油断や不注意で死んでしまうかもしれない。
ちょっと強引で乱暴な手段だが、相手が本当に助手となる危険性を認識して自覚して覚悟しているかを確認するためにはやむを得なかった。
この条件さえ満たしているなら、助手になる目的も本人の能力も問わない。人格に多少の難があっても許容する。
これだけの応募者がいるのだから、一人くらいは条件を満たす人がいるだろうと安易に考えてしまったのがいけなかった。
多くの学生が応募してきたので、2日に分けて面接することにしたが、1日目は全員不採用、というか全員が辞退してしまった。
その辞退者たちから噂が広まり、2日目の面接予定の応募者のほとんどが面接前に辞退してしまった。
2日目で辞退しなかった応募者は1人だけ。
その人の面接時間になった。
研究室の扉がノックされ、ライラが扉を開けて対応してくれている。
さて、唯一辞退しなかった応募者はいったいどんな人だろう?
期待と不安が半々な気持ちで私は最後の応募者が研究室の中へ入って来るのを待った。
応援ありがとうございます!
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