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バトル通学

会って10秒プロポーズ

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 それからおれ達は、あーでもないこーでもないと、たくさん話をした。小猫ももう黙ってるようなことはなくて、ちゃんと会話に参加する。
 しゃべって笑うほど、シルアは光を増す。希望ってそういうことなんだな。

 明るくなると周囲がよく見える。暗いままでは分からなかったものが浮かび上がるんだ。

「あれ、何?」
「どれ?」
「ほら、中央に反射してる」

 キラッとときおり瞬いて、存在を主張しているそれは、近付くと物体ではなかった。そして円形に並んでる。

「これ魔法陣みたいじゃない?」
「ほんとだ! すげえ」
「綺麗じゃの」
「うん、綺麗だね」

 にっこりと微笑む二人を見て、おれはなんとなく聞いてみた。

「ねえ、二人はさ、どうして結婚するって決めたの?」

 いつも片方がなんか言うと、もう片方が同意してにっこりする、そんな仲良しな関係が、おれにとって癒しだったことは間違いない。でも一生をかける約束はそう簡単に結べるものじゃ、おれにとってはないと思うから。

「ん~、あの日さ、うさ衛門先生が言ったじゃん? 結婚してもらうって」
「うん」

 あの衝撃の一言ね。って、そんなに前? 会ったばっかじゃん!

「そしたら小猫ちゃん、僕に言ったんだ。『すまんの、わしは一生結婚せんのじゃ』って」

 驚いた。
 小猫、何があったんだろう。そんなことを言ってしまうほどのこと。

「はるたん、それだけでぜんぶ分かってくれたのじゃ。わしにもそれが分かった。ヒョ」
「で、結婚しない? って言った」
「うなずくしかないじゃろ。ヒョヒョヒョ、内緒じゃ」

 会って10秒でプロポーズ、みたいなことリアルであるんだ。というか、これ聞いても何にも分からないけど、二人には共通する何かがあったんだなぁってことだけ、分かった。

 残った大人たちとみんなで魔法陣に入ってみるとぎゅうぎゅうで、早速押されてはみ出た人が掴みかかって消されていた。
 謝ったら出られるって伝えたから、すぐ戻るって気にしなかったけど、いよいよ光が強くなっても戻って来なかった。
 シルアもここ出ちゃうから、もう出られないよね? NPCとはいえ後味悪いな。

「消えた人は戻って来ても、出られないんだよね?」
「そうじゃな」
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