魔女の愛した永遠。

椿英-syun_ei-

文字の大きさ
8 / 14

第8話

しおりを挟む
 それから数ヶ月が経ったある日のこと。私は藤色の瞳を黒く染め、人間に変装して街へと向かった。私が敷地の外に出る機会は非常に少ないが、どうしても調べたいものがあり、出かけることにした。

 というのも、私の館を訪れる人間の数が増えており、少し面倒だと感じていたからだった。

 犯人は私ではないが、気が立っている人間から事件の全容を聞くことは難しく、誰も私と話し合おうとはしてくれないためだった。

 もちろん、不在時に館を燃やされるようなことがあってはいけないから、私が不在になると館の外は霧深い迷いの森へと変貌する。私の可愛い獣たちが侵入者たちをお出迎えするのだ。

 私は図書館を探した。最近発行された新聞をまとめて読むにはここが最適だと考えたからだった。

 直接、人に聞くのもいいが、顔立ちを変えても男には口説かれることが多く、女からはやっかみから邪険に扱われることがあった。

 催眠によって思い通りに情報を引き出すこともできなくはなかったが、意外性のない会話は私の望むところではなかった。

 街を探索すると、こじんまりとしてはいるが、地元の図書館なんだと分かる建物の標識が立っていた。

 私は中に入り、複数の新聞が一冊に閉じられて置かれている閲覧室を探した。奥まった個室が目的の場所のようだった。

 冊子を手に取り、見出しを確認した。探していた記事はすぐに見つかった。というのも、どの新聞社も同じ事件を取り扱っていたからだった。内容は以下の通りである。

“ここ数ヶ月、全身から血を抜かれ、乾涸びた状態の変死死体が頻繁に発見されている。その場所は森や人気のない脇道だけでなく、地下水路や工場跡地等多岐に渡っている。
 捜査本部が立てられたが、今のところ事件に使われた凶器や被害者たちの共通点も見つかっておらず、捜査が難航している。
 また、寝室で隣に寝ていた家族が亡くなっていたケースもあり、新たな感染症や東洋の魔女の呪いではないかという話が人々の中で飛び交っている。”

 おおよそこのようなことがどの記事にも書かれていた。

「なんて酷い。」

 私は口を震わせて言った。

「本当にひどい事件よね。」

 と同じテーブルに座っていた女が話しかけてきたが、私が起こっているのはそのことではない。もし私が犯人だとしたなら、無差別に人を殺すような真似はしない。それはきっと愛する人のためであり、あるいはこれから私を愛してくれる誰かのためである。

 そしてそれは必ず、私からのメッセージであることが伝わるようにより芸術的で洗練された私であることが分かるような方法を選ぶだろう。

 なんて、なんてひどいことを人々は言うのかしら。私は意気消沈しながら館に帰ることにした。途中、見たことない装飾や香水を手に取って買い物をし、荷物を即席の土人形に持たせて歩かせた。人間にはこの子が私に相応しい見た目の紳士に見えるはずだった。

 ひとしきり見て回った頃には気分も上向いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...