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第7話
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だけどやっぱり彼はそれからしばらく私の前に現れることはありませんでした。
二ヶ月もすれば東洋の魔女にももう戻って来ないのだと分かりました。
愛しい人は死んでしまったのね。今度こそは本物だと思っていたのに残念。もっとも、本当にそんなものがあるのか、今では大変疑わしいものだけれど。
私は自嘲気味に微笑んだ。手に持ったグラスには私が生まれた時と同じ年号のワインが注がれている。もうこの世には私しか持っていないであろう年代のワインを。
と、館の扉が開く気配がした。敷地の中で何かあれば私はいつでも知ることができるが、基本的に正面玄関に誰かが手を置いた時にだけ反応するようにしている。
だって、もし軍隊や民衆が私を襲うことがあれば、不意を突かれたフリをして楽しみたいではないか。
魔女は人間で暇つぶしをするしかやることはないのだ。
私はとっておきの毛皮のファーを手にとって肩にかける。季節外れだが、体温調節が必要な人間とは違う。ノースリーブの赤いサテンドレスを着て妖艶な娼婦のように振舞おうではないか。
玄関ロビーへの扉を開け、男を出迎える。
「来訪者様、私を狩りに来たの?それとも愛されに来たのかしら。」
いつもの口上を述べると、屈強で武装をした男がこちらに銃口を向けた。
「魔女め。街の者をどこにやった!」
「濡れ衣だわ。」
私を抱きたいという人間はそう多くない。そういう人間はだいたいが噂好きの都会の貴族や怖いものに挑むことが最大の美学と信じて疑わない愚かな田舎者ばかりだ。
そして、最も多いのが同じ地域に住む人間たちからの復讐を誓う者たちだ。疫病や奇怪な殺人、あるいは大量の失踪事件があると、魔女の仕業だと言って私に危害を加えようと向かってくる。
赤子の手をひねるよりも簡単という言葉があるが、私にとっては料理を食べるのと同じぐらい簡単にこの者たちを葬ることができるということになぜ気付かないのだろうか。あるいは気付いても止められない衝動があるのかもしれない。そう、私のように。
男は怒鳴った。
「嘘を吐け!街では乾涸びた死体がゴロゴロ見つかってる。俺の家族も失踪してそのままだ。お前が攫ったんだろう。このバケモノ!家族を返せ!」
「それはまた奇妙ね。でも身に覚えもないし、責められる謂れもないわ。お帰り頂くかここで死ぬかお選びになってくださる?」
男が一歩後ずさったが、ここから出て行く気はないようだった。
「そう。選択は決まったのね。」
「あぁ。お前を殺して生きて帰る!」
銃声が響き、私に向かって弾丸が発射される。
と、剥いたバナナの皮みたいに弾丸は放射状に分裂し、薄皮のように引き伸ばされ、魔女を避けて後方へと飛んでいった。
それらは壁に突き刺さったが、その形状は針のように鋭く、元の形を保ってはいなかった。
魔女は銃口を掴む。男は情けない声を出して小便を漏らしたが、ヘタリ込むことも逃げることもできず固まっていた。
「あら、人の家を汚すなんて、なんてひどい人。」
うっすらとだが、男の体から白い湯気が上がるのが分かる。私は愉快になって誰もが口づけたくなるような魅惑的な笑顔を男に向けた。
「ねぇ、人間の体はほぼ水でできてるって言うでしょ。体の芯の芯まで凍らせてしまうと粉々にして掃除がしやすくなるの。そういう最後で構わないかしら。」
急速に体温を奪われた男は、寒さで体が震え、顎が片ついた。上下動する頭部を了承と見た魔女は一歩男から離れた。
「今日はお会いできて光栄でしたわ。」
そう言って魔女はお辞儀をし、一瞬で氷漬けになった侵入者を見えない衝撃で粉々に砕いてしまった。
二ヶ月もすれば東洋の魔女にももう戻って来ないのだと分かりました。
愛しい人は死んでしまったのね。今度こそは本物だと思っていたのに残念。もっとも、本当にそんなものがあるのか、今では大変疑わしいものだけれど。
私は自嘲気味に微笑んだ。手に持ったグラスには私が生まれた時と同じ年号のワインが注がれている。もうこの世には私しか持っていないであろう年代のワインを。
と、館の扉が開く気配がした。敷地の中で何かあれば私はいつでも知ることができるが、基本的に正面玄関に誰かが手を置いた時にだけ反応するようにしている。
だって、もし軍隊や民衆が私を襲うことがあれば、不意を突かれたフリをして楽しみたいではないか。
魔女は人間で暇つぶしをするしかやることはないのだ。
私はとっておきの毛皮のファーを手にとって肩にかける。季節外れだが、体温調節が必要な人間とは違う。ノースリーブの赤いサテンドレスを着て妖艶な娼婦のように振舞おうではないか。
玄関ロビーへの扉を開け、男を出迎える。
「来訪者様、私を狩りに来たの?それとも愛されに来たのかしら。」
いつもの口上を述べると、屈強で武装をした男がこちらに銃口を向けた。
「魔女め。街の者をどこにやった!」
「濡れ衣だわ。」
私を抱きたいという人間はそう多くない。そういう人間はだいたいが噂好きの都会の貴族や怖いものに挑むことが最大の美学と信じて疑わない愚かな田舎者ばかりだ。
そして、最も多いのが同じ地域に住む人間たちからの復讐を誓う者たちだ。疫病や奇怪な殺人、あるいは大量の失踪事件があると、魔女の仕業だと言って私に危害を加えようと向かってくる。
赤子の手をひねるよりも簡単という言葉があるが、私にとっては料理を食べるのと同じぐらい簡単にこの者たちを葬ることができるということになぜ気付かないのだろうか。あるいは気付いても止められない衝動があるのかもしれない。そう、私のように。
男は怒鳴った。
「嘘を吐け!街では乾涸びた死体がゴロゴロ見つかってる。俺の家族も失踪してそのままだ。お前が攫ったんだろう。このバケモノ!家族を返せ!」
「それはまた奇妙ね。でも身に覚えもないし、責められる謂れもないわ。お帰り頂くかここで死ぬかお選びになってくださる?」
男が一歩後ずさったが、ここから出て行く気はないようだった。
「そう。選択は決まったのね。」
「あぁ。お前を殺して生きて帰る!」
銃声が響き、私に向かって弾丸が発射される。
と、剥いたバナナの皮みたいに弾丸は放射状に分裂し、薄皮のように引き伸ばされ、魔女を避けて後方へと飛んでいった。
それらは壁に突き刺さったが、その形状は針のように鋭く、元の形を保ってはいなかった。
魔女は銃口を掴む。男は情けない声を出して小便を漏らしたが、ヘタリ込むことも逃げることもできず固まっていた。
「あら、人の家を汚すなんて、なんてひどい人。」
うっすらとだが、男の体から白い湯気が上がるのが分かる。私は愉快になって誰もが口づけたくなるような魅惑的な笑顔を男に向けた。
「ねぇ、人間の体はほぼ水でできてるって言うでしょ。体の芯の芯まで凍らせてしまうと粉々にして掃除がしやすくなるの。そういう最後で構わないかしら。」
急速に体温を奪われた男は、寒さで体が震え、顎が片ついた。上下動する頭部を了承と見た魔女は一歩男から離れた。
「今日はお会いできて光栄でしたわ。」
そう言って魔女はお辞儀をし、一瞬で氷漬けになった侵入者を見えない衝撃で粉々に砕いてしまった。
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