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第6話
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明日の朝には会いに来てくれるものと思っていた愛しい人が屋敷に訪れたのは、初めて会った日から一週間も経ってからのことだった。雲ひとつない空に夜の帳が落ちた頃、彼は現れた。
「あぁ、愛しい人。なぜ会いに来てくださらなかったの?」
駆け寄るようにして近づくと彼は言った。
「この胸の炎が冷めてしまわないか確かめる必要があったからです。」
彼は私の手を取り、その甲に口づけををした。
「貴女は本物の愛を探していると言っていた。ならばこれは必要な行程だと思いませんか?」
私は頰が赤くなるのを感じた。
「えぇ、えぇ、仰る通りですわ。」
「赤く染まるお顔もとても可愛らしいのですね。」
これ以上翻弄されまいと私は握ったままだった右手を引っ込め、外に続く扉へと歩き出した。その背中に向かって彼は言う。
「どちらへ?」
「貴方について、確認しておきたいことがあります。ついてきてください。」
そう言うと、彼は私の隣に駆け寄り、私をエスコートしようと右腕を差し出した。特に断る理由のない私は左手を彼に預けた。
「星が綺麗ですね。」
と、彼が言う。こうして空を見上げている間に、私が行こうとする道を察して足元にある小枝等をさりげなく蹴ってどかしていく。
あまりに自然な動作だったから始めは気付きもしなかったが、高台にある崖を目指して歩いているから、物音がする回数が増えて彼の挙動に気付いてしまった。
「貴方、とても優しいのね。」
照れたのか、彼は反対の方に少しだけ視線を逸らした。
「それに、可愛い人。」
「あ、見てください。」
照れ隠しと分かったが、タイミングよく、私たちは崖の一番高いところまで踏破していた。
「あぁ、なんて良い眺めだ。この景色を一緒に見たかったのですか?」
「いいえ、愛しい人。私の目的は他にあります。」
「愛しい魔女。ではどのような理由でこの場所へ来たか教えて頂けませんか?」
「先日、貴方は私のペットたちを手懐けました。」
「あれはでも、許して頂けたのではないですか?」
「もちろん、許しています。」
「では、何が?」
「貴方はあの子達を手懐けてしまいましたが、それでは貴方が痛みを感じる存在なのかどうか分からなかったのです。」
不安そうに見つめる表情に一切の変化はなかった。私は続けて告げた。
「この崖から飛び降りて頂けませんか?その後、私が崖を切り崩して、貴方の上に石の雨を降らせましょう。」
私は崖の先を指して言った。
「そうすれば、貴方が物理的にも、私の魔術からも、傷付くことはないと証明することができます。」
自分の前に両手を重ね、彼に言った。
「愛しい人。受けて頂けますか。」
そう言うと、彼は私に向かって深々とお辞儀をした。と、そのまま崖の先の虚空を目指して迷いなく歩き始めていった。彼は言った。
「貴女の愛がどんなに重く、固いものであったとしても、私ならきっと受け止められると証明しましょう。」
そして、崖の先端に辿り着くと私の方を向き、両手を広げて後ろ向きに落下していった。その刹那、私と目が合ったかと思うと、なんと彼は微笑んでいたではないか。
「なんと勇敢な方。」
私はそう呟くと地面に両手を重ねて軽く押してやった。私が両手を置いた場所から前方に向かってひび割れが発生し、みるみるうちに彼の上へと降り注いでゆく。念には念を入れ、さらに星の球体に似せた炎の塊で仕上げをする。
それらが地面にぶつかるとまるでこれから星が誕生するのではないかと思われるほど鮮やかに燃え上がった。
全てが済んだことを確認すると私は踵を返し、軽く坂になった林道を降りていった。彼を救い出すか迷ったが、彼は微笑んだのだ。どんな窮地にも屈せず、私の前に戻ってくることこそ、無敵の人と呼ぶのではないか。私は彼の無事を信じ、そのまま我が家へと帰ることにした。
「あぁ、愛しい人。なぜ会いに来てくださらなかったの?」
駆け寄るようにして近づくと彼は言った。
「この胸の炎が冷めてしまわないか確かめる必要があったからです。」
彼は私の手を取り、その甲に口づけををした。
「貴女は本物の愛を探していると言っていた。ならばこれは必要な行程だと思いませんか?」
私は頰が赤くなるのを感じた。
「えぇ、えぇ、仰る通りですわ。」
「赤く染まるお顔もとても可愛らしいのですね。」
これ以上翻弄されまいと私は握ったままだった右手を引っ込め、外に続く扉へと歩き出した。その背中に向かって彼は言う。
「どちらへ?」
「貴方について、確認しておきたいことがあります。ついてきてください。」
そう言うと、彼は私の隣に駆け寄り、私をエスコートしようと右腕を差し出した。特に断る理由のない私は左手を彼に預けた。
「星が綺麗ですね。」
と、彼が言う。こうして空を見上げている間に、私が行こうとする道を察して足元にある小枝等をさりげなく蹴ってどかしていく。
あまりに自然な動作だったから始めは気付きもしなかったが、高台にある崖を目指して歩いているから、物音がする回数が増えて彼の挙動に気付いてしまった。
「貴方、とても優しいのね。」
照れたのか、彼は反対の方に少しだけ視線を逸らした。
「それに、可愛い人。」
「あ、見てください。」
照れ隠しと分かったが、タイミングよく、私たちは崖の一番高いところまで踏破していた。
「あぁ、なんて良い眺めだ。この景色を一緒に見たかったのですか?」
「いいえ、愛しい人。私の目的は他にあります。」
「愛しい魔女。ではどのような理由でこの場所へ来たか教えて頂けませんか?」
「先日、貴方は私のペットたちを手懐けました。」
「あれはでも、許して頂けたのではないですか?」
「もちろん、許しています。」
「では、何が?」
「貴方はあの子達を手懐けてしまいましたが、それでは貴方が痛みを感じる存在なのかどうか分からなかったのです。」
不安そうに見つめる表情に一切の変化はなかった。私は続けて告げた。
「この崖から飛び降りて頂けませんか?その後、私が崖を切り崩して、貴方の上に石の雨を降らせましょう。」
私は崖の先を指して言った。
「そうすれば、貴方が物理的にも、私の魔術からも、傷付くことはないと証明することができます。」
自分の前に両手を重ね、彼に言った。
「愛しい人。受けて頂けますか。」
そう言うと、彼は私に向かって深々とお辞儀をした。と、そのまま崖の先の虚空を目指して迷いなく歩き始めていった。彼は言った。
「貴女の愛がどんなに重く、固いものであったとしても、私ならきっと受け止められると証明しましょう。」
そして、崖の先端に辿り着くと私の方を向き、両手を広げて後ろ向きに落下していった。その刹那、私と目が合ったかと思うと、なんと彼は微笑んでいたではないか。
「なんと勇敢な方。」
私はそう呟くと地面に両手を重ねて軽く押してやった。私が両手を置いた場所から前方に向かってひび割れが発生し、みるみるうちに彼の上へと降り注いでゆく。念には念を入れ、さらに星の球体に似せた炎の塊で仕上げをする。
それらが地面にぶつかるとまるでこれから星が誕生するのではないかと思われるほど鮮やかに燃え上がった。
全てが済んだことを確認すると私は踵を返し、軽く坂になった林道を降りていった。彼を救い出すか迷ったが、彼は微笑んだのだ。どんな窮地にも屈せず、私の前に戻ってくることこそ、無敵の人と呼ぶのではないか。私は彼の無事を信じ、そのまま我が家へと帰ることにした。
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