【詩集】冴えない日々の真ん中で

椿英-syun_ei-

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2024年11月30日SOUL STAMP RECORD vol.8

椅子

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椅子がある
誰のものかは分からないけれど
誰もが目を奪われている

半径10mよりももっと離れた場所まで
豆粒に見えるほど遠くまで
物欲しそうでありながら
畏敬と嫉妬と意地悪な諦めの表情を
次から次に覗かせては
皆が目を逸らしてゆく

私が、私が、と手を伸ばすこともせず
椅子に近付くものを茶化しては
追い払うだけの空白

それでも着実に少しずつ
その椅子に近づく者がいる

世界中に存在するその特異点を
臆することなく
「自分のものだ」と叫ぶ彼らが
その椅子を手に入れた時
手に入れたことに満足することはあるのだろうか

聞いてみたい
あの場所に座った時
そこに見える景色はどれほどのものなのか
有象無象が蠢いているだけの
なんてことはない
なんてことはないものなのか

聞いてみたい
聞いてみたい
僕にその資格はあるのだろうか

彼らに近付くことすら躊躇い
遠ざかってゆく

好奇心が
憧れが
目に見えぬ壁を越えた時
そこに幸せがあると信じられるか否か
そもそも幸せであるかどうかを
気にしてはいないのか

手のひらにまた
爪を食い込ませることしかできない
そんな僕にも権利はあるのか

手を伸ばす
自分でも気付かず
ゆっくりと
僕の視界に僕の手が
希望は隠れて一瞬暗くなる
視界が少し狭くなって
見苦しく広げた僕の手が
やたらと醜悪に見えて
引っ込めたくなる安易さを
もう片方の手で叩き出してやればいい

初めて知る
手を伸ばす一瞬の
とてつもなく長い心細さを

ああやっと
僕は僕をやめることができる
一片の欠片ほどでも構わないから
あの椅子に辿り着く者たちと
ほんの一部でも同じだと
胸を張ってみたいと思っていた

模造した
偽物だった
それでも僕は夢焦がれた
焦がれた先で燃える心を
椅子の上に置いてみたいと願う

そこに1つの椅子があった
指を差されようとも
僕はまた 新しい椅子を探している
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