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姪と僕とのグルメ事件簿
第1話「姪と僕と、自転車のグルメ殺人」
しおりを挟む【登場人物】
●高城真(たかぎ・まこと):33歳。冷静沈着な弁護士。理詰めで物事を考える癖があるが、姪の前ではおろおろしてしまう。
●ひかり:5歳。真の姪。保育園児。好奇心旺盛で鋭い観察眼を持ち、おじさんを翻弄しながら事件解決の糸口を見つける。
【プロローグ】
都内の下町、春の風に桜の花びらが舞う朝。
高木真は、姉の頼みで姪・ひかりを保育園まで送り届ける途中だった。
「おじちゃん、きょうはじてんしゃでいくの!」
言われるがまま、折り畳み式の電動自転車にひかりを乗せ、保育園までの道を走る。
途中で立ち寄ったのは、ひかりのお気に入りのパン屋『ラ・ルシュ』。
しかし、ドアを開けた途端──
「……うわ……」
焼きたてのパンの香りのなかに、違和感のある匂い。そして、店主・岸本がレジカウンターの奥で倒れていた。
【第一幕:パン屋の死】
通報し、警察が現場検証を行う。死因は一酸化炭素中毒。
しかし不審なのは、店の換気扇が止められており、厨房にはガスオーブンが動いたままだったこと。
「事故に見せかけた……殺人?」
真は店主の人間関係を洗いはじめる。岸本は料理好きで評判の、地域密着型のパン職人。
だが、最近SNS上で、隣の人気カフェ『フラットビーンズ』との確執が噂されていた。
【第二幕:カフェの秘密】
ひかりを保育園に送り届けたあと、真はひかりが描いたスケッチブックの一枚に目を留める。
そこには、パン屋の裏でカフェの店主と見知らぬ人物が言い争っている様子が描かれていた。
「ひかり、これ、いつ見たの?」
「きのう、えんそくのときに。あの人、あめをなげてた」
飴? 真の脳裏に何かが引っかかる。
カフェに足を運び、店主・宮田に話を聞く。
「岸本さんとは、まあ……あんまりうまくはいってませんでしたね。味のことで、ちょっと」
さらに調べると、宮田には過去に飲食店での不祥事歴があり、岸本にその事実を知られていたことが発覚。
【第三幕:アメと換気扇】
再び現場を訪れた真は、ひかりと一緒に店内を観察する。
「おじちゃん、これ、おかしいよ。かべにあるやつ、みんな同じむきむいてない」
ひかりが指さしたのは、厨房の換気パネル。そのひとつだけが逆向きだった。
中を開けてみると、飴の包み紙と小さな電子部品が。
それは、スマートスイッチ式の換気装置用リモートジャマー。犯人はそれを用いて、遠隔で換気を止め、ガスを充満させたのだ。
【終幕:グルメと正義】
犯人はカフェ店主・宮田。
自店の開発した新作スイーツと酷似したパンを岸本に先に出され、怒りを覚えた末の犯行だった。
飴は、自作スイーツの試作品で、そこに仕込まれた部品が証拠となった。
「動機は些細だが、命を奪ったことは消せない」
「……でも、おじちゃん。パン屋さんのパン、みんなすきだったよ。わたしも、またたべたい」
涙ぐむひかりを抱き上げ、真はそっと頷いた。
「きっと、また誰かが、あの味を引き継いでくれるよ」
事件が解決し、保育園の帰り道。
ひかりは真の背中で、安心したように眠っていた。
自転車は、ゆっくりと夕暮れの街を走っていった。
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