3 / 45
姪と僕とのグルメ事件簿
第2話「姪と僕と、インドカレーと昆虫の光」
しおりを挟む【プロローグ:スパイスの香りと奇妙な光】
東京・荻窪。
午後五時を過ぎた街は、夕暮れの風にスパイスの香りが混ざり始めていた。商店街の外れ、小さなインドカレー専門店「ナーランダ」の看板が、パッと蛍光灯に照らされて灯った。
「おじちゃん、今日のカレーはバターチキン?」
そう聞くのは、保育園帰りの姪・ひかり(5歳)。手には昆虫図鑑、背中にはてんとう虫型のリュック。僕──高城真(たかぎ・まこと)、33歳、弁護士。日々案件に追われながらも、姪の保育園のお迎えと夕食は僕の“仕事”になっている。
「ひかり、今日はスペシャルメニューだって。『ミステリー・ビリヤニ』って書いてある」
「ミステリー!? 虫入ってないよね?」
そんな冗談を言いながら入った店の奥で、僕たちは奇妙な光景に出会うことになる。
【第一幕:不可解なビリヤニ事件】
店内に入ると、香ばしいスパイスの香りと、どこか鉄のような匂いが混ざっていた。
厨房の前では、店主のバルマさんが何やら青ざめた顔をしていた。
「……すみません、今日は……営業できません」
カレーを目当てに訪れていた客がざわざわと帰っていく中、僕たちだけがその場に残った。
「厨房で、何かが……爆発したんです」
案内された厨房の中では、蛍光灯が一部破損し、カウンターには焦げた匂いと共に、何か黒い破片のようなものが散らばっていた。
「虫……じゃないよね? これ」
ひかりが破片をのぞき込みながら言った。
僕は破片の一部を拾い上げ、見覚えのある形に眉をひそめた。
「これ、LEDじゃない。蛍光灯の……しかも、改造されてる」
【第二幕:謎の昆虫マニアとビルの裏】
カレー店があるビルの裏手には、小さな昆虫ショップ「Bugs&Glow」がある。
ここには“蛍光昆虫”という、紫外線に反応して光る外骨格を持つ昆虫が展示されていた。店主の大江翔太(おおえ・しょうた)は、奇抜な髪型に黒ぶち眼鏡の青年。
「ビリヤニに蛍光灯? あ、それ、多分うちのLED誘虫ライトじゃないっすかね」
「誘虫ライト?」
「虫、特に甲虫系は紫外線に集まるんすよ。改造した蛍光灯、仕込まれてたら……虫が集まって、最悪死ぬっすよ」
まさか、と思いながらバルマさんに尋ねると、昨日夜中に天井から奇妙な“羽音”が聞こえたという。
調べていくうちに、事件の背景に浮かび上がってきたのは、近隣店舗間の“営業妨害”だった。
【第三幕:光る昆虫とカレーの陰謀】
実は、数軒隣の洋食チェーン店「ベル・エトワール」がここ半年、売り上げを落としていた。
店長の宮永は元々「ナーランダ」で雇われ店長をしていたが、独立して失敗し、因縁があったという。
誘虫ライトを仕掛け、天井裏の通気孔から甲虫を大量に送り込んだ。狙いは、衛生問題の演出。
しかし、誤って高圧蛍光灯を改造して使ったことで、過熱とショートが起き、厨房の一部が損傷。
昆虫たちの死骸がスパイスの香りと混ざって、異臭騒ぎへとつながったのだった。
【最終幕:小さな証拠と姪の一言】
決定的な証拠となったのは、ひかりが拾っていた“昆虫の羽根”。紫外線に当てると、鮮やかな緑色に光った。
「これ……あの昆虫ショップのやつだ!」
大江の証言と照らし合わせると、それは特定の業者しか取り扱っていない種類。
宮永の裏ルートの仕入れが発覚し、営業妨害と器物損壊での立件が可能となった。
【エピローグ:スパイスと、光る未来】
事件解決後、バルマさんは厨房を修復し、「蛍光灯ビリヤニ」のジョークメニューを作った。ひかりはそれを見て笑った。
「虫入ってないよね?」
「安心しろ、これは野菜だけだ」
ひかりと僕の、奇妙な日常は、今日もカレーの香りと共に続いていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

