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姪と僕とのグルメ事件簿
第6話「姪と僕と、焼き鳥とネクタイと睫毛」
しおりを挟む【プロローグ:焼き鳥屋で見た不思議な客】
金曜の夜、僕、高城真(33歳・弁護士)は、仕事帰りに駅前の焼き鳥屋でひとり酒を決め込んでいた。
「すいませーん、ねぎま三本と、レバーと……あと、つくねも」
その声に、ふと顔を上げると、隣のカウンター席に、ひときわ奇妙な出で立ちの男が座っていた。
ネクタイは柄物、しかも上下逆。目元には異様に長く、濃い睫毛。
「……まるで舞台メイクみたいだな」
そんな印象を持ちつつも、特に関わることなく夜は更けた。
──しかし、翌日その男が、ひかりの保育園で“窃盗未遂”の容疑者として話題になることになるとは、このとき想像もしなかった。
【第一幕:保育園での奇妙な盗難騒ぎ】
翌朝、姪のひかり(5歳)を保育園に送った僕は、先生に呼び止められた。
「昨日、園児の保護者ロッカーから、お財布が盗まれそうになったんです」
監視カメラには、園児の送迎に紛れて建物に入ってきた男の姿が映っていた。
──昨夜の、あのネクタイ逆さ男だ。
だが、財布は盗まれていない。犯行未遂。
「でも、なんで保育園なんかに?」
そう考える僕の足元に、ひかりがトコトコとやってきた。
「ねえ、おじちゃん。昨日、睫毛のなが~い人が、先生のスマホじっと見てたよ?」
──睫毛、ネクタイ、焼き鳥屋の男。
僕の中で三つの点がつながった。
【第二幕:ネクタイと睫毛の偽装】
あの男、どうやら“保護者のふり”をして保育園に入り込んでいたらしい。
しかし、顔を隠すことなく堂々と犯行に及ぶ不自然さ。警察に確認しても、該当人物に心当たりなし。
ひかりはまた妙なことを言った。
「なんかね、先生のスマホに“おいしそうな焼き鳥”がいっぱいあった」
──焼き鳥?
確認すると、先生のスマホのSNSには、焼き鳥屋での写真が多数アップされていた。
その中に──昨夜のあの男が“後ろ姿で”写り込んでいた。
僕は写真の位置情報を元に、ある事実にたどり着く。
その焼き鳥屋は、保育園の裏の通りにある“裏口”から徒歩1分。
【第三幕:秘密の写真と、消された過去】
この件の裏には、“園児の保護者どうしのトラブル”があった。
一年前に転園したある母親が、保育園のある職員との交際写真を無断でSNSにアップ。
その結果、職員は退職。関係者は散り散りに──。
今回の“睫毛の男”は、その職員の兄だった。
弟の無念を晴らすため、関係者の持ち物やスマホから、証拠写真を探し回っていたのだ。
だが、その方法は明らかに間違っていた。
ネクタイを逆さに締め、睫毛を強調し、別人のような風貌で現れることで、過去を隠そうとする人物の悲しみ。
僕は、そっと言った。
「あなたの弟は、あなたが犯罪者になることを望んじゃいない」
【エピローグ:焼き鳥と本当の話】
事件は、無断侵入と個人情報の不正取得未遂で穏便に処理された。
焼き鳥屋に再び足を運んだ夜。
ひかりは、つくねをぱくりと口に運びながら言った。
「おじちゃん、ネクタイって、まちがえてもいいけど、気持ちはまちがえちゃダメなんだよね?」
「……たぶん、そうだな」
睫毛の奥に隠された悲しみも、焼き鳥の煙の向こうに消えていった。
そして、僕たちの物語は、まだ続く──。
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