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姪と僕とのグルメ事件簿
第5話「姪と僕と、カップラーメンとブランドの名刺」
しおりを挟む【プロローグ:夜食と、名刺の謎】
ある晩、仕事が長引いた僕、高城真(33歳・弁護士)は、自宅のキッチンでカップラーメンの蓋を抑えながら、無意識にため息をついていた。
そのとき、玄関のインターホンが鳴る。
「おじちゃーん、泊まりにきたー!」
声の主はもちろん、姪のひかり(5歳)。今夜は母親が急な出張で、急きょ我が家へ。
「晩ごはん、カップラーメンだけ?」
「これは、夜食」
そう言って笑ったが、すぐに彼女の目がテーブルの上の“ある物”に釘付けになった。
「これ、ママのバッグじゃない?」
それは確かに──姉が宝物のように大事にしていた、シャネルのヴィンテージバッグだった。
中には、高級感ある名刺入れ。
そして、中身は空。
翌日、それをきっかけに不可解な事件が動き出す。
【第一幕:ブランドバッグの落とし物】
朝、ひかりを保育園に送り届けた帰り道、僕は昨夜のバッグの件がどうにも気になり、姉に連絡を入れる。
「え? 私、バッグなんて落としてないよ。ていうか……今、持ってるよ?」
驚きつつ確認してもらうと、姉の手元のバッグは確かに“本物”。では我が家にあるのは──?
「偽物?」
「それにしては、細部がリアルすぎる」
気になった僕は、最寄りの交番に届け出る前に、カバンの内側をもう一度確認。
そこには、小さな内ポケットに隠されていた名刺──『高原物産株式会社 営業部 長尾翔平』。
【第二幕:カップ麺と営業マンの秘密】
「長尾翔平」は、実は最近弁護を依頼されていた案件の相手方。食品流通会社の営業で、某インスタントラーメンのOEMを巡ってトラブルになっていた。
僕はその人物に連絡を取ろうとしたが、番号は使われていない。
カップラーメンの製造元に問い合わせると、「その人物は3日前に突然退職し、連絡がつかない」という。
調べを進めるうちに、バッグは「偽物のようでいて、本物から複製されたもの」、つまり、個人情報や持ち物から身分を偽装するために使われていた可能性が高まった。
ひかりは何も知らずに呟く。
「ねえおじちゃん、カップラーメンの味って、おんなじに見えて、ちょっとずつ違うんだって」
──その言葉で、僕は気づいた。
事件の鍵は、「パッケージと中身の違い」だった。
【第三幕:偽装とすり替えの罠】
実は、長尾は不正に“偽ブランド商品”と“偽食品”の流通に関与していた。
彼は精巧な偽装品──ブランドバッグや名刺入れを使い、営業先に本物の商材を見せて信用を得た後、納品する品物は質の悪い模造品という手口を繰り返していた。
問題になっていたラーメンも、外箱は正式ライセンスのものと酷似していたが、中身は賞味期限切れや粗悪なもの。
事件のカギは、ひかりが発見した──カップ麺の底に貼られた、見慣れないQRコード。
読み込むと、別の倉庫の在庫リストに飛ぶ偽装用サイトだった。
【最終幕:名刺入れの主と、正体の暴露】
名刺入れに残された指紋と、同時に押収されたスマートフォンのGPSログにより、長尾翔平は都内のネットカフェに潜伏していたことが判明。
警察と協力し、僕はひかりを連れずに現地へ向かう。
──しかし、そこにいたのは、本人ではなく“別人”。
「長尾翔平」は架空の人物。
本名は「森本稔」、食品偽装で過去に逮捕歴のある人物だった。
彼は“偽名刺”“偽バッグ”“偽商品”という三重のカモフラージュで活動していたのだ。
【エピローグ:本物のカップラーメンと、本当の気持ち】
事件解決後、僕たちは本物のカップラーメンを並べて、のんびり食べる。
「ねえ、おじちゃん。ラーメンも、カバンも、名刺も……ホントのことがいちばんおいしいね」
「……だな」
ひかりの言葉に、僕はうなずく。
本物を見分ける目と、本物の気持ちを大事にする──
それが、僕たちの事件解決の流儀だった。
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