【完】姪と僕とのグルメ事件簿【ミステリーオムニバスシリーズ1~4】

国府知里

文字の大きさ
6 / 45
姪と僕とのグルメ事件簿

第5話「姪と僕と、カップラーメンとブランドの名刺」

しおりを挟む
 

【プロローグ:夜食と、名刺の謎】

 ある晩、仕事が長引いた僕、高城真(33歳・弁護士)は、自宅のキッチンでカップラーメンの蓋を抑えながら、無意識にため息をついていた。

 そのとき、玄関のインターホンが鳴る。

 「おじちゃーん、泊まりにきたー!」

 声の主はもちろん、姪のひかり(5歳)。今夜は母親が急な出張で、急きょ我が家へ。

 「晩ごはん、カップラーメンだけ?」
 「これは、夜食」

 そう言って笑ったが、すぐに彼女の目がテーブルの上の“ある物”に釘付けになった。

 「これ、ママのバッグじゃない?」

 それは確かに──姉が宝物のように大事にしていた、シャネルのヴィンテージバッグだった。

 中には、高級感ある名刺入れ。
 そして、中身は空。

 翌日、それをきっかけに不可解な事件が動き出す。

【第一幕:ブランドバッグの落とし物】

 朝、ひかりを保育園に送り届けた帰り道、僕は昨夜のバッグの件がどうにも気になり、姉に連絡を入れる。

 「え? 私、バッグなんて落としてないよ。ていうか……今、持ってるよ?」

 驚きつつ確認してもらうと、姉の手元のバッグは確かに“本物”。では我が家にあるのは──?

 「偽物?」
 「それにしては、細部がリアルすぎる」

 気になった僕は、最寄りの交番に届け出る前に、カバンの内側をもう一度確認。

 そこには、小さな内ポケットに隠されていた名刺──『高原物産株式会社 営業部 長尾翔平』。

【第二幕:カップ麺と営業マンの秘密】

 「長尾翔平」は、実は最近弁護を依頼されていた案件の相手方。食品流通会社の営業で、某インスタントラーメンのOEMを巡ってトラブルになっていた。

 僕はその人物に連絡を取ろうとしたが、番号は使われていない。

 カップラーメンの製造元に問い合わせると、「その人物は3日前に突然退職し、連絡がつかない」という。

 調べを進めるうちに、バッグは「偽物のようでいて、本物から複製されたもの」、つまり、個人情報や持ち物から身分を偽装するために使われていた可能性が高まった。

 ひかりは何も知らずに呟く。

 「ねえおじちゃん、カップラーメンの味って、おんなじに見えて、ちょっとずつ違うんだって」

 ──その言葉で、僕は気づいた。

 事件の鍵は、「パッケージと中身の違い」だった。

【第三幕:偽装とすり替えの罠】

 実は、長尾は不正に“偽ブランド商品”と“偽食品”の流通に関与していた。

 彼は精巧な偽装品──ブランドバッグや名刺入れを使い、営業先に本物の商材を見せて信用を得た後、納品する品物は質の悪い模造品という手口を繰り返していた。

 問題になっていたラーメンも、外箱は正式ライセンスのものと酷似していたが、中身は賞味期限切れや粗悪なもの。

 事件のカギは、ひかりが発見した──カップ麺の底に貼られた、見慣れないQRコード。

 読み込むと、別の倉庫の在庫リストに飛ぶ偽装用サイトだった。

【最終幕:名刺入れの主と、正体の暴露】

 名刺入れに残された指紋と、同時に押収されたスマートフォンのGPSログにより、長尾翔平は都内のネットカフェに潜伏していたことが判明。

 警察と協力し、僕はひかりを連れずに現地へ向かう。

 ──しかし、そこにいたのは、本人ではなく“別人”。

 「長尾翔平」は架空の人物。
 本名は「森本稔」、食品偽装で過去に逮捕歴のある人物だった。

 彼は“偽名刺”“偽バッグ”“偽商品”という三重のカモフラージュで活動していたのだ。

【エピローグ:本物のカップラーメンと、本当の気持ち】

 事件解決後、僕たちは本物のカップラーメンを並べて、のんびり食べる。

 「ねえ、おじちゃん。ラーメンも、カバンも、名刺も……ホントのことがいちばんおいしいね」

 「……だな」

 ひかりの言葉に、僕はうなずく。
 
 本物を見分ける目と、本物の気持ちを大事にする──
 それが、僕たちの事件解決の流儀だった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...