【完】姪と僕とのグルメ事件簿【ミステリーオムニバスシリーズ1~4】

国府知里

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リベンジマリッジ

【第一話 ふたつの陽性反応】

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 朝からお腹がムカムカしていた。けれども食欲はある。トーストは三枚食べたし、バナナも齧った。
 こりゃもしやと、コンビニで妊娠検査薬を買い、トイレで試すと、秒で出た。はっきりとした陽性反応。

「……マジ?」

 思わず鏡に向かって微笑む。
 桑原希美、三十歳。元出版社の編集者。結婚を機に退職し、今は主婦。妊活歴、二年と八ヶ月。晴れて、授かりました。

「よっしゃあああああああ!」

 個室トイレで静かにガッツポーズ。浮かれすぎてトイレットペーパーを巻きすぎた。

 帰宅すると、ポストに茶封筒が届いていた。宛名は自分。差出人は──探偵社。

「……あ」

 先月、うっかり見てしまった夫・和真のスマホ。通知画面に、女の名前とハート。なにかの間違いであってほしい。でも、万が一ってあるから。
 冷静を装って調査を依頼していたのだった。

 封筒を開ける。中には写真。会社帰り、腕を組む夫と若い女性。カフェに入り、ホテルに消える──。

 陽性反応、その二。こっちのほうが濃い。

「はっはーん、なるほどぉ~」

 希美は即座にスマホを開き、マタニティ用の名付けアプリと復讐リストアプリを同時に起動した。

「いけない、お腹の子に悪影響。だけど……復讐も、母親の責任ってもんよね」

 希美の“陽性反応”は、笑顔で燃え上がった。



「ただいま~……あれ?なんか匂いすごいな」

 和真が帰宅すると、ダイニングテーブルにズラリと並ぶ料理。

「今日のテーマは“精力と誠実を応援する夜”だよ」

 希美はエプロン姿でニコニコ。メニューは、ニラレバ炒め、ウナギの蒲焼き、すっぽんスープ、そして真ん中には巨大な“ニンニク爆弾鍋”。

「えっ、いや、すごいけど……これ全部ひとりで?」

「あなたに食べてほしくて♪元気つけて、ちゃんと……家庭を大事にしてねって意味♡」

 和真、咳き込む。

(え、ばれてる?いや、ばれてない。たぶん。たぶん!)

 希美は朗らかに、ニンニクを山盛りでよそってやる。



 その夜。

 風呂上がりの和真が寝室に行くと、枕元に小さなメモ。

《今日のひとこと:嘘をつくと、枕が重くなるって知ってた?》

「ひえっ……」

(でも、ギャグっぽいし、冗談かな?)

 和真、安堵して眠りにつく。希美は別室で、アイス片手に復讐ノートを開く。

「第1フェーズ、『ばれてない風』完了っと」

 希美は夜空に向かってつぶやいた。

「お腹の子よ、見てなさい。ママは強くて優しくて、ちょっとだけイジワルな女でありたい」

 次回、「うす皮1枚のプライド」──ご期待ください!

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